チリの風   その936  2021年4月19日―25日 

サンティアゴ期待の雨は、確かにありましたが、火曜日と金曜日の二日、ほんの霧雨でした。
金曜日の最高気温は15度で、晩秋の雰囲気です。今までは太陽が出れば暑くなるので昼間はベランダに座りませんでしたが、今はポカポカするのが気持ちよく日向ぼっこを楽しんでいます。今週から夜になると電気ストーブを使い始めました。

月曜日、親父の命日でした。お祈りをしてから外に出たとき彼が使っていた懐かしいジャンパーを着ました。歩きながら一人で親子の会話をしました。海軍兵士だった彼は終戦で故郷に戻り結婚、最初に生まれたのが私でした。その頃、世界で最貧国の一つだった日本で生き延びるのは大変な苦労だったわけですが、両親のおかげで3人兄弟はちゃんと成人しました。

今週もマラソン練習と散歩を続けています。週末は10キロを走り、その後、久しぶりに嫁さんに散髪してもらいました。

  

(政治)

1)ピニェラ動向
  第27回イベロアメリカのテレビ会議が開かれ、ピニェラはフランス・スペイン・ポルトガルなどの大統領の前でコロナ問題について、世界で意見や情報の交換に問題があるとし、チリでの実態をちゃんと連絡できなかったと自己批判。自分たちがやったことの成功と失敗がちゃんと伝わればそれは諸外国にとって良い先例になっただろうとするものです。さぁ、これからはどうなるでしょうか。そしてバイデン主催の気候変動サミットで大気汚染を減少するため火力発電を止めて太陽光発電などに替えているとコメントしました。しかし日本・中国・ロシア・ドイツなどと世界のトップが参加するテレビ会議で演説するのですから、立派なもの。

  しかし外交の輝かしい実績と違い、内政は最悪の事態です。それは厚生年金の第3回目の引き出し問題です。国会で賛成案が成立したのですが、野党だけでなく、与党議員も多く賛成しました。政府はそれに反対し憲法裁判所に持ち込みました。市民はそれに抗議し、一般市民の鍋たたき運動や、過激市民の道路封鎖などの騒ぎが起きました。まだまだ続きそうです。一番右翼のUDI党議員がピニェラは間違っている、市民が苦しい状況で、それを軽減するこの引き出しを邪魔するべきではないとしました。
  野党議員はピニェラの罷免を要求する運動も考えているとか。おまけに何人かの大臣が自分たちは憲法裁判所に持ち込むつもりはなかったとコメントし、内閣分裂の様相です。ピニェラはそれらの大臣を罷免することは可能ですが、それをすると彼も任期を待たず大統領を辞めることになるでしょうね。

  ここで書きたいのですが、政府はそうした人を助けるための貧困層援助・中間層援護の施策を実施しています。新聞の特集記事でその政府援助策の世界対比が出ました。各国の通貨でなくドルに換算されています。
  2021年案ですが、チリの場合、貧困層には320ドル、それは国民の68%が対象、中間層には720ドル、(17%)です。アメリカは1400ドルで39%が対象。アルゼンチンは216ドルを6%。ブラジルは68ドルを22%に。コロンビアは38ドルを16%に。どうですか、チリ政府は頑張っていると思いませんか。その記事を見るまで、私はチリと世界の比較など全く分かっていませんでした。厚生年金の手持ちの資金を引き出すのではなく、政府が国民に援助する方が国民のためになるわけです。それをなぜ、議会が認識・後押しせず、引き出し競争に走るのかが不可解。つまり政府中枢が政府の援護策の適切な宣伝をしていなかったのが最大の失策かもしれません。それに関連して超富裕層への増税が計画されています。

  さて来週の火曜日に憲法裁判所で引き出し不可の結論が出れば、怒った民衆がそのビルに襲い掛かることも考えられますね。モネダ宮殿の近くのビルです。それを防ぐために、明日、政府がその議会に提出した案を取り消すかもしれません。来週、大事件が行らないことを願います。
  IMFはチリの今年の経済成長率は6%を越えると何度もその数字を上げていますが、彼らはその払い出しを止めるように勧めているのは今までと同じです。

(経済)

1)銅価格と為替
  新聞の経済欄にこれから銅とリチウムは現在の石油のような重要性を持つことになるとする文章が出ました。銅の価格は1ポンド4.33ドルと上昇気流に乗っています。為替は、1ドル705ペソでした、 一時700ペソを切って690ペソ台まで落ちましたが、最後に700台に戻りました。新聞の記事に銀行の予想として今年の末には政治の混乱がなければ1ドル650ペソ、おかしくなれば1ドル750ペソになるだろうとのこと。当たるかな?
2)首都圏の失業率
  この3月は11.3%。37万人が失業状態です。
  今までは平均で3.6か月で新しい仕事が見つかったのに、今は6.7か月。確かに厳しくなっていますね。

(一般)

1)コロナ問題
  首都圏が完全自宅待機になって3週間たちました。新聞にその2週間の患者の動きが発表されました。全部で52の市・区・町・村のうちわずか6区だけが減少し、そのほかは横這いもしくは増加になっています。数字が減ったのはサンティアゴの東部と言われる地区で例えばラス・コンデス区は10万人当たりの患者数がそれまでより45%減少し80人になりました。逆にロ・エスペロ区は171人から354人に、倍増しています。その理由として東部地区は自宅勤務が多く外に出る人が少ないが、そのほかの地区は青空市場や街頭商人などどこででも仕事をしているのがコントロールされていないから。
  またワクチン接種率が東部は高いとなっています。
  つまり完全外出禁止令が出されると患者数は減ることが確認されますが、コントロールが悪いと見せかけの禁止令は意味がないとなります。これは世界どこでも同じでしょうね。
  上記の国際会議でピニェラはそこまで詳しく自己批判したかな?これは首都圏だけの問題ではなくチリ全国が同じような状況です。
2)自由報道ランキング
  チリはランク3(顕著な問題を抱える)に入り世界54位になりました。素人の私にはチリの報道は政府に偏っているわけでもなく、政治経済の両面でかなり真実を伝えていると思うのですが、プロの人の見る目では顕著な問題を抱えているのですね。その違いがよく理解できません。日本はそれより下の67位でした。
3)マプチェ問題
  放火と占拠事件は継続。いったいどこまで行くのかな?ピニェラ政権ではもう何もできないのははっきりしていますね。
4)移民の強制送還便
  イキケから約100名の移民が母国へ飛行機で送還されました。不法移民・犯罪者などでチリ居住が認められないとされた移民ですが、母国で同じように不幸が待っている人が多いでしょうね。チリに夢を見て入国してきた人たちですが。

(スポーツ)

1)サッカー
 国内リーグ戦は一番人気のコロコロとチリ大学がぶつかりコロコロが勝ちました。コロコロのホームでの試合でチリ大学は過去20年間一度も勝ったことがありません。この勝利でコロコロはリーグ戦の首位になりました。(注 先週の首位のカトリカは今週はお休み)先シーズン2部リーグに落ちそうだったコロコロが首位に立つなんて。不思議です。
 そのほか南米のチーム別大会で一番大事なリベルタドール杯に参加しているチリの2チームの結果はラ・カレラは初戦を引き分け、カトリカはコロンビアで惨めな敗戦でした。
 もう一つの南米カップ戦ではワチパトが敵地でアルゼンチンのサン・ロレンソに勝ちました。東京オリンピックの女子チリ代表は日本と同じグループに入りました、初戦はイギリスと札幌で対戦。オリンピック開催されるかな?


以上