チリの風  その175  06年5月8日-14日

チリの風  その175  06年5月8日-14日

とうとうサンティアゴで最低温度が零下の日がでました。いよいよ寒さが到来ですね。ところがそれ以上に深刻な問題は空気汚染です。木曜日、仕事で行ったクリコ(第7州)から戻ってきて、夜の公園を走るつもりでしたが, 余りの空気の悪さにそれを部屋の中の体操、腹筋, 腕立て伏せ、に変えました。しかしこれでは先進国の首都とは言えませんね。
さてこのHPの旅行記のところでエジプト・ヨルダンの旅の第1部を掲載しました。このあと2,3,4部と続きます。写真などを入れて体裁を整えたものを最終校正が終わってから掲載することにします。向こうにいたのはわずか2ヶ月前のことですが、それ以降に、イスラム教徒のコプト教会襲撃、テロリストのシナイ半島のリゾート地攻撃、大統領選挙運動の混乱, 鶏のインフルエンザ騒ぎと立て続けに問題が起こりエジプトはかなり厳しい状況です。ヨルダンもこの13日にパレスチナハマス政権を糾弾する声明を発表し中東情勢は混乱の一途。私の紀行文でそんな雰囲気が伝わるかな?


(政治)
1)バチェレットはウィーンで開催された第4回欧州ラテンアメリカ会議に出席のため欧州訪問。それに先立ってスペインとボスニアを訪問しました。さてウィーンの会議には, 各国の元首が集まりました。その中で注目を浴びたのはベネスエラとボリビアで欧州側はモラレスの天然ガス国有化を厳しく責め、またチャベスは無責任な人気取り政策を行い国際的に問題を起こしているとしました。
チャベスが南米の中で大きな顔をしてブッシュはアホだと言っているときは私はその思想内容を理解できたのですが、次はイランと大統領を招待しその関係をさらに緊密なものにしたいとコメントしたとき、これはおかしい, 彼の後ろに誰かいて筋書きを書いているのではないかと感じました。モラレスがチャベスに操られているのは見えますが, じゃ誰がチャベスを操っているのか?面白いですね国際政治も。
(もっともチャベスは既に2000年にテヘランを訪問している)
その会議でチャベスはバチェレットに擦り寄って、私はあなたのファンです。チリに石油を150年後でも困らないほど供給する用意がありますとかコメント。会議参加者の記念写真でもバチェレットの肩に手を置いて親密振りをアピール。もちろんバチェレットにすれば、なんやこの不細工なおっさん, 馬鹿にせんとって気持ち悪いと言う感じでしょうが、そうとはコメントしていません。
ブラジルの新聞にルラ大統領の失敗として南米地域の主導権をベネスエラに奪われたと厳しい論調が載りましたが、それがスペイン語に翻訳されてこっちの新聞にも掲載されました。先週の4カ国会談もベネスエラを除いてブラジル,アルゼンチンそしてボリビアで会談すべきとしています。それは当然ですが, 勝手にチャベスが来てしまったんですよね。
そうそうモラレスのところにトレドが近づいてきて親密そうに手を取りましたが,モラレスはなんだいあいつは,兄貴分のような顔をしてオレはあいつが嫌いなんだよと厳しく撥ね付けました。
そのモラレスはバチェレットと面談していますが、欧州側がこぞってボリビア天然ガス国有化宣言を批難したため、悲願のボリビアの海問題を会議の席に出せず、バチェレットさん例の件もよろしく,お忘れにならないようとだけしたらしい。国際情勢って微妙な点で大きく変わりますからね。

2)安楽死法案
世界的に安楽死を認める動きがありますが,それがチリでは大問題。与党側がこれを国会に提出したいと発表すると, 野党の右翼は国民の尊厳を損なうものだと大反対。与党の中のキリスト教民主党は野党と一緒になってこの法案を阻止するとかこれで与党連合もおしまいだとか騒いでいます。キリスト教の影響でこの種の問題(安楽死, 堕胎など)はチリでは非常にタッチーです。

3)現役の政治家もがんばっていますが、過去の人になりそうなラゴスはどうでしょう?先週の新聞では奇跡の大逆転とか、なにやら思わせぶりなラゴスの動静を書いていましたが、今週は何も起こりませんでした。時期尚早かな?さて彼の政権の最後の年に首都サンティアゴのメーンストリートたるアラメダ通りの全面舗装を行いました。この先10年か15年は舗装工事を行わなくても良いくらいの出来栄えを保証しますとし、夏の休暇時期にセンターの道路を締めて,市民に大きな影響を出しながら行われました。完成したとき, 通りに横断幕がかかり, 私たちは約束を守りましたと大喜び。ところが1年も経たないうちにその舗装に穴があき始め、何が15年やと市民の疑惑の目が。これもラゴスの責任でしょうね。


(経済)
1)銅の値段がとうとう4ドルまで来ましたね。少し前,とうとう3ドルまで来ましたと書いたのですが。つまり銅の価格は実態とかけ離れ, 投機筋の思惑通りに動いています。コデルコから安く買う契約をしている中国の会社が値段を高くしてその差額を抜いているなんてことは無いのでしょうね。2003年の年平均が80セントですからね,幾らなんでも5倍ですよ。
それでチリ政府の財務状態はこれ以上ないほどの豊かさですが,未だにそれをどのように使うかの論議が活発化しません。それが不可解。
新聞に過去チリではこのような幸せな状態が3度あった。(硝石ブームと60年代,80年代に銅で)1800年代の末から1900年代の始めの硝石ブームの時には公務員の数が一挙に十倍になり。それが中産階級の基礎を作り出したと言う説はあるが、それぞれの時代の政府はそれを上手く運用できず,結局なし崩し的に貯蓄は消えていったとされています。,
さて銅の高値とドルの安値はもう同じグループですね。ドルは安い、ほとんど1ドル510ペソです。もちろんペソが強いのではなくドルが弱いのですが。輸出産業の悲鳴が聞こえます(銅や金銀の鉱業をのぞいて)
それでもこの先4年間は最低6%の経済成長が見込まれるらしい。

2)チリの国際競争力低下
2005年にチリは国際競争力のランキングで19位につけていましたが今年は24位に転落。チリ側の発表ではチリは確かにレベルが上昇しているのだが、急成長した中国に抜かれてしまったらしい。日本は昨年は21位で今年は17位だから,中国と共にチリを抜いた国の中に入っています。チリの問題点とし, インフラがまだ不十分, 教育制度も少し見劣りするらしい。


(一般)
1)大気汚染の問題が深刻です。とうとう準非常事態まで来て、古い車は60%、新型エンジンの車も20%の運行制限で、工場も操業削減指示が出ました。しかし問題はそれが正しい手なのか、それで事態がよくなるのか認識されておらず抜本的な解決になっていません。しかしこの問題は過去20年、30年同じなのですが・・・

2)マプチェ問題
これも難しい。過去に木材会社のトラックを襲ったり, 事務所に火をつけたりして刑務所に入っているマプチェ族の人間が4人即時釈放を要求してハンストに入りました。それが60日以上継続され,生命の危険に及んでいます。これを支援するグループがバチェレットの欧州外遊にもつきまといスペインでもオーストリアでもデモ行進をしています。
しようがなく国会議員とテムコの司教が仲介に入り、14日のネゴで一応ハンストは中止, 4人は病院に搬入されました。さて国会で彼らの処遇をどう扱うか見ものです。

3)ネオナチ
こんなグループが世界的に存在するのですね。先月、このグループとパンク(頭をスキン・ヘッドにしている)の争いがあり、ネオナチのメンバーがパンクの一人を殺害しています。警察が調査に入ったら、ネオナチのグループに現役の警察官がいて、その2人が今週クビになりました。他に軍隊関係者もいるらしい。

4)高校生の反乱
5月に入って三回目の騒乱。今週は、先の騒乱と同じ要求で市内交通料金の低減と大学入試の無料化。確かに組織力があると見えて全国的に盛り上がり1300名の逮捕者を出す騒ぎになりました。しかし文部省もやり方が下手ですね。高校生と交渉が出来ないなんて。

5)ダヴィンチ・コード
この映画の封切りが間近ですが、カトリック関係者の間からこの映画の内容を疑問視する声が高く、ボイコット運動のようになっています。もちろんそういわれれば見に行こうかなと思う人間も多いでしょうが・・・
イスラムではこの種の映画を作ることさえ不可能でしょうが,キリスト教はもう少し大人になればよいのですが。

6)子供が大事にされなければ,その国の将来はない。
で、子供の保護状態の調査が世界レベルで行われ,デンマーク,フィンランド,ノールウェイ,日本が最高ランクになりました。そしてチリも堂々の11位。乳幼児の死亡率は低く,就学率や栄養状態は良かったようです。もちろんラテンアメリカではトップです。


(スポーツ)
1)世界で4番目に高いヒマラヤのローチェ8516mにチリの登山隊が登頂成功。チリの登山レベルは高い。

2)テニス
ローマのマスターズATP大会でゴンサレスは準々決勝まで進出。ランキングを一つ上げ,来週は世界の8位になるらしい。

3)サッカー
リーグ戦が終末にかかり,南米カップにチリを代表する2チームはどれかに興味が絞られています。今のところ、ワチパトとコロコロになりそうですが、最終戦までもつれこむかもしれません。大学チームのチリ大学は今週ライバルのカトリカ大学を破り3位につけています。


以上