チリの風 その160 06年1 16日―22日

チリの風 その160 06年1 16日―22日

陽射しの強さは相変わらずですが、朝会社に出る時、今までより外が薄暗いのに気づきます。そして近くの公園に落ち葉が目立つようになりました。そうか夏も盛りは過ぎかと思わされます。
でもまだまだ30度を越える厳しい夏が継続しそうですが・・・


(政治)
1)しかしチリもなかなかのものです。新大統領が決まりましたが、政治が動揺しませんでした。勝者も敗者もしっかり結果に反応しています。
バチェレットの次の仕事は組閣ということになります。男女同数の大臣を任命したいと言っていますが、大臣だけでなくその下の各省の幹部にも多数の女性を起用するのか問題になっています。私にすれば、適格者がいれば女性でも男性でも良いというのが正しい姿勢で、とにかく男女同数にするというのはは間違いと思いますが・・・。彼女の持つ海辺の別荘に入って、考え事をまとめるらしい。
それより面白いのは与党グループの一つキリスト教民主党(DC)の動きで、現党首サルディバルでは将来がないと、大統領候補になっていたアルベアルが次期の党首になりたいと発表し注目を浴びています。まだ何ヶ月か先の選挙ですが、早々とアルバルーンをあげ、敵を牽制です。
さて先週、選挙に勝ったバチェレットのところへ政財界、軍部のトップが挨拶に駆けつけましたが、DC党首のサルディバルが来たときの彼女の挨拶は強烈でした。ほとんどあなたには挨拶なんかしたくないのよと言わんばかりに一瞬、頬をくっつけただけでした。これがテレビのニュースに出るのですから。

2)外国の話。
ボリビアの新大統領が22日の日曜日就任しましたが、モラレスはそれに先だってティワナク遺跡で儀式を行いました。インカより古い文明の遺跡ですが、自分は今までの大統領とは違うと言う意識の表明です。これでカトリックは国の中心信仰ではない、太陽の神を崇めようなんていいだしたら楽しいのですが。
彼の就任式にチリからラゴス大統領が出席しましたが、野党側の国会議員は全員彼に同行するのを拒みました。ところでラゴスのほかにモラレスから招待されたチリインディオのマプチェ代表も就任式に出席。
とにかくモラレスは現ペルー大統領のトレドと違ってインディオ色を前面に押し出しています。
彼の国会での大統領就任演説をCNNスペイン語チャンネルで見ましたが、立派なものでした。
例えば、「残念ながらボリビア汚職度は南米2位です。これを何とかしようではありませんか?」とか「識字率が低く(20%が文盲とか)まだ身分証明書を持っていない国民が多数いるのを諸外国の助けを借りて何とか是正したい」その他、国の借金の問題とか、麻薬生産の問題などでも低姿勢だが、すべてに積極的なのが好感持てました。チリとの問題も「ここにチリ大統領が臨席されていることこそ新しい関係の第1歩と考えられる。自分はチリの大統領の就任式にためらわずサンティアゴに向かう」と表明。ラゴスも感激した表情を見せていました。
しかし明確にキューバやベネスエラの例を出し、国家がすべての分野に関与するという社会主義姿勢をとるとしたのも注目されました。
演説の最後に彼がアイマラ語を使い始めるとCNNはそれを無視して今までの演説内容の解説を始めたのは全く尊敬を欠いたものでした。
さてペルーの場合は今年4月の大統領選挙に向け、競争激化という感じですが、反チリを明確にするウマラに対抗してもう一人の有力候補フローレスも反チリを表明するようになってきました。最近リマに夏休みで行ってきた私の知人でチリ在住のペルー人の話では、チリよりかなり遅れたがペルーでも高速道路やショッピング・モールの建設などは進んできている。ただ国民の考え方は従来と同じで世界を目指した近代化にはほど遠い。選挙時に反チリで盛り上がってもそれを実施するだけの力はないだろうとのことでした。しかし心配な状況にはかわりありません。
フジモリは全く蚊帳の外で、目立つのが好きな彼とすればこの状況は死ぬよりつらいものだろう。
ところでブラジルとアルゼンチンの大統領は全く肌合いが違い、上手く行きませんが、ベネスエラのチャべス大統領を入れ今週、3人でブラジリアで会談。3カ国の同盟で天然ガスの流通のためのガスパイプの建設に合意しました。建設費用は200億ドルと見積もられています。ベネスエラの南部からブラジルを通ってアルゼンチンの南部までのルートです。3人ともずいぶん仲よさそうに写真に写っています。もちろんボリビアも入れてあげるよと色目を使っています。しかしエネルギー源を持つベネスエラの影響力は強烈ですね。チャべスは人格とか実力ではとても南米で特筆されるものを持たないと見ますが、こうして毎週、南米中で話題を引き起こしています。しかし彼の国内でのやりかたはとても尋常とは思えず(なりふりかまわないやりかた)いつまで政権を維持できるのか逆に興味のあるところ。現在国会で彼に反対する勢力はほぼゼロですが、それは反対政党が選挙をボイコットしたためで、そんな馬鹿なことはチリでは通りません。 


(経済)
1)05年のチリ経済は6.3%の成長を示しましたが、06年も同じような数字が見込まれています。つまりまだ勢いがありそうです。
05年の貿易額は歴史上かってないものになりました。新記録おめでとう。さてチリの輸出は米国,日本,中国の3カ国で40%を占めました。この3カ国が買ってくれないとチリは動きが止まるわけですが、逆に上記3カ国もチリからの輸出が止まると国家経営?に影響が出るはず・・・

2)コデルコとその鉱山で働く下請け企業の労働者の間で一応取り決めが出来たそうです。不思議なことに労働者が要求していた一人当たり50万ペソの臨時ボーナスを認めたのか認めないのかがはっきりしませんが、何はともあれよかったですね。この取り決めが最終ならまたコデルコの操業も平静に戻るでしょう。

3)エネルギー問題はどの国の政府も頭の痛い問題ですが、チリでは2020年には現在の2倍のエネルギーが必要と計算され,それをまかなうために第11州の超大型水力発電ダムが必要とされています。しかし地元の人間を巻き込んで,それは自然破壊になるからと建設反対の声が高く調整が難航しています。隣国からの天然ガスの供給は契約があってもないのと同じくらい信用できませんから,どこかでエネルギー源を確保しなければね。

4)05年のチリでの車の販売数も歴史上かってなかったものとなりました。18万2千台とか。日本車も良く売れています。


(一般)
1)大学受験が終わり、試験の点数が発表になったことは既にお知らせしています。それを受け各学生は志望大学の志望学科に入学申請し、手続きも全部終わっています。
その次が大学入学金の支払いですが、これが非常に高く、貧しい家庭では簡単には支払いできません。そうでしょう、平均家庭収入が50万ペソにならないチリで、百万ペソとかの高い入学金のほか毎月大学に納める授業料が20万ペソ以上するのですから。で、奨学金が必要となるのですが、今年の政府の奨学金授与者が発表され、喜ぶ子弟と悲しむ子弟の両極端はいつものことでした。ところが今年はいつもとはちょっと違い、貧困家庭の子弟に奨学金が余りまわっていません。そういう学生グループのクレームを全く無視していた文部省ですが、ある日突然、基礎インフォメーションにエラーがあったと記者会見。なんと奨学金を渡す学生のリストを貧乏な家族からではなく裕福な家庭からの順番にしていたらしい。しかしこんな初歩的エラーをしていてはチリ(の大学)は諸外国と競争していけるものだろうかと考えてします。
当初、1万4千人としていた奨学生の数をその倍の2万8千人とし、まだ増やすかもしれないとか・・恥の上塗り?いったいどこから際限なく財源が出てくるのだろう。野党は文部大臣の辞任を要求しています。
私なら国立大学(チリ大学)の授業料を高校並みにおさえ、私立大学の入学金、授業料には国は関与しないことにします。今みたいに国立私立の大学に政府援助が必要と考えると全部失敗することになるでしょう。
ところでチリの識字率は現在96%。つまりまだ4%の人間は文字の読み書きが出来ないことになりますが、老人を除くとチリで文盲はほとんどいないと思われます。

2)炭素14の検査の結果、9千年前の人類の生活の後が第11州で発見されました。州都コジャイケから35キロの地点にある洞窟で人骨が発見されたもの。
私がコジャイケに最後に行ったのは04年のことですが、11州はチリでもっとも近代化が送れているところ, 逆にいえばもっとも自然が残っている州です。
さてこれがチリ最古の遺跡と新聞の見出しは言っていますが、もちろんこれはエラーでしょう。
私の知っている限りでも、第10州のモンテ・ベルデは1万年以上前のものですから、ここがチリ最古ではないはず。
しかしベーリング海峡を渡ってアジア人が北アメリカに入ったのが、約1万1千年前といわれますから、その頃にチリの南部に人が住んでいたことが分かれば、アジア人渡来説について変更が必要です。つまりその時期がずっと定説より早まるか、アジア人渡来とは別の説(南米原人説、アフリカから渡来したとする説、さらに最後はアジア人が太平洋を越えて南米に入ったという説)が力を増やしていくのでしょうね。

3)交通の話題。今週、サンティアゴの市内バスの一部がバス台を10ペソ下げました。運賃350ペソだったのが340ペソになりました。運賃が下がって文句を言うのはなんですが、原油価格の高騰から来月に大幅値上げなどという噂もあり、それなら何故こんな細かな値下げをする必要があるのか理解できません。
サンティアゴの市内バスが新式の白バスに切り替わっていますが、今週も旧型の黄色バス500台が廃車になり白バスに切り替わりました。

それからコデルコとそこで働く下請け労働者の戦いが一応休戦成立と上記に書きましたが、彼らはコデルコの二つの鉱山、アンディーナとエル・テニエンテ鉱山に向かう道を遮断し交通麻痺にさせました。警察が出て労働者を逮捕しますが、またしばらくすると他の労働者が遮断をはかり、そのときに通りかかったバスやトラックに投石しガラスを割る騒ぎがずいぶん出ています。いゃ、マイッタとお客さんのトラック屋さんが苦い顔。何でも彼の会社のトラックのフロントガラスが何台も投石でやられたとか、いやはや。

4)夏のこの季節、多くの人が海岸地方にバケーションにでかけ、目に見えて車の走行量が減っています。で、スモッグも少なくなりました。
外にいけないかわいそうな人のためにサンティアゴ1000という文化祭が実施されています。1000というのは千も催し物があると言うちょっと張ったりな数字ですが, 演劇や舞踊が毎日あちこちの劇場で行われています。
またプロビデンシア区が恒例のジャズ・フェスチバルを開催。20日その最終日にいってきました。マポチョ川に沿った公園を舞台にした会場でしたが、9時から深夜までたっぷりジャズを楽しみました。最後のアメリカのバンドは、大半がキューバ人で、途中からサルサの演奏を始め、会場中で踊りました。もちろん私も気の狂ったように踊って、それまで川の風で肌寒かったのに急に汗をかきました。

5)ところで2005年中にチリを訪問した外国人の数はチリ観光局によると200万人強と発表されましたが3分の1がアルゼンチンから、3分の1が欧米から、そして残りの3分の1はその他の国からです。
13番目に台湾が1185人で入り、日本を上回っていますが、極東からチリまで来るのですからたいしたものです。
チリの主な観光地としてはアリカの内陸部のチュンガラ湖、イースター島バルパライソの街並み、チロエ島の教会、南部の自然(滝や森林)があげられています。

みなさんもそのどれかに行かれたでしょうか?


(スポーツ) 
1)テニス
ATP4大会の一つ豪州オープンが始まりましたが、口ほどもなく、チリ代表のゴンサレスとマスは敗退してしまい、今年のチリテニス界は厳しいですね。来月のデービスカップはどうなるかな?

2)サッカー

いよいよサッカーシーズンの開幕です。来週、リベルタドール杯の第1回戦、コロコロがメキシコのチームと戦います。

以上