チリの風 その161 06年1月23日―1月29日

 チリの風 その161 06年1月23日―1月29日

先週までも30度を越す暑い日が続いていましたが、今週は異常でした。
水曜日なんかサンティアゴで気温が37度まで上がりました。観測所での測候で37度なら外気温は40度じゃないですか?
その日、いつものように仕事から戻ってきた私はすぐに服を着替え、近くの丘を目指してマラソン練習。暑さと熱さでアパートに戻ってきたときは疲労困憊。よれよれでした。このとき私は「スポーツは身体に良いというのは間違いかも知れない」と思いました・・・・。


(政治)
1)ピノチェット問題
昨年の暮れ、チリの風でピノチェットのニュースが最近少なくなったが決して問題がなくなったのではなく、大地震の前の静けさですと書きました。当たり!でした。今週のトップニュースです。
さて今週、彼の家族が裁判所から出頭命令を受けました。奥さんと子供一通りに。(5人の子供うちの4人)容疑は10億ペソの脱税となっています。この5人の内、長女を除く4人は期日に出頭しその日の内に、仮釈放になりました。
しかしその裁判所への出頭命令が出る前に、隣国アルゼンチンに車で入った長女ルシア(60歳)はメンドーサからブエノス・アイレスまで飛行機で飛び、さらにアメリカのワシントンまで飛ぶ。その飛行場で入国管理に引っかかり、長時間の審査を受けている途中、突如アメリカへの政治亡命を申請。二日、刑務所で過した後、作戦を変え、政治亡命の申請を取り消す。
これでアメリカ政府は彼女を国籍のあるチリに戻すことに決定。彼女は土曜日に帰国、その場で月曜日の裁判所での訊問まで収監されました。
しかしテレビ番組で、彼女の行動について是非を問う番組がありましたが、右翼側の国会議員が、彼女(と家族)が取り調べられているのは脱税容疑で殺人や強盗容疑ではない、それを鬼の首でもとったかのように大騒ぎする一部の勢力は単に政治的な見地からピノチェットたたき、もしくは右翼たたきをしている卑怯な人間にすぎないと強気の反応。
これは一部、正しい見方かもしれない。つまりピノチェットを有罪に出来ない司法が、面子を保つためにその家族を攻めているともいえるからだ。両親(ピノチェット夫妻)を脱税で調べるのは当然でも、その金を回してもらった子供を攻めるのは適当だろうか?
私なら、ピノチェット家族に、四の五の言わずに税務署の言うとおり二億円ほどの税金を払ってしまい、問題を消すほうが得策と薦めたいがどうだろう。半分やそこら持っていかれてもこれからの生活に困るわけでなし、二度と政治的醜聞に襲われない方が人生を楽しめると思うのだが・・・・。
それから私に理解できないのはなぜ彼女がアメリカに飛んだのかということだ。60歳の彼女はどういう勝算をえがいて入国したのだろう。もちろん詳細にプランを練ったものと考えるが、それにしては向こうでの動きは地味なものだった???
彼女はアメリカで一般犯罪人のように収監されたが、ここで何ヶ月もがんばる必要があるのならチリで裁判にかかったほうがマシと考えて帰国したのか?それなら、甘いとしかいえないが。

2)まぁそれに比べると軽いのがチリの政治界。話題は次の大統領バチェレットの組閣で30日の月曜日に発表されるとなっている
これに関連して与党DCの間で党として誰を大臣に推すかで2つのグループに別れ大喧嘩中。以前から私が言っているように、DCは二つに分かれて片方は与党に残って少数党になり、もう一つのグループはRNと組んで中道政党になるのが正解。これで右のUDI、中央のRN・DC、そして左翼の社会党共産党の3グループになれるはずです。さぁ政界再編制はいつかな?

3)現役の大統領ラゴスはメキシコのフォックス大統領をチリに迎え同国との経済協定に調印。最後の締めくくりをしています
メキシコといえばラテンアメリカの大国、チリにとっても大事な国のはずですが、一般市民の反応やマスコミの取り扱いも小さなものでした。
その前にエクアドルの大統領もチリを訪問しましたが、これもマスコミからほんの小さな扱いしか受けませんでした。
ところで、私にはメキシコのフォックスのほうが毎週話題になるベネスエラのチャベスよりずっとまともな気がします。
昔、チャベスが政権をとる前に、夏のバケーションでベネスエラに行ったことがあります。カリブ好きの私は、そこのマルガリータ島に行きました。そこでいろんなレベルの人と話をする機会がありましたが、とにかく賄賂の横行している国で、袖の下を使わなければ商売がまともに進まないというのを聞いて、よかったこんな国に住んでいなくてと思ったものです。チャベスになってその傾向が一段と激しくなったと聞くとチリに住んでいる幸せを感じます。
ところでおなじみのフジモリですが、ペルーからフジモリ派の候補として大統領選挙に出ている女性候補チャベス(ベネスエラの大統領とたまたま同じ苗字)がチリを訪問しました。彼女はペルー政府が在りもしない犯罪をフジモリにかぶせようとしているのを容認できないし、日本政府はそれらの事実を認識していないとコメントし、自分が大統領に当選すれば、フジモリを首相に起用したいとしています。


(経済)
1)失業率の低下
やっぱりこれは経済だけでなく市民生活で最も重要なファクターでしょうね。過去8年間で始めて失業率が7%を切りました。05年10−12月の平均失業率はラゴス政権で今まで達成できなかった6%台(正確には6.9%)を記録。よかったですね。

2)自由貿易協定
チリ政府は、既に42か国とこの協定を結んでいるがこの3月までにさらに2カ国(パナマとペルー)と協定が成立する見込みと発表。この他にアジア関係では日本,マレーシア,タイと話が進んでいる由

3)銅の価格はまた上がって219セント(1ポンドあたり)になりました。毎度ありがとうございます。チリとしてこれ以上素晴らしいニュースはありません。1月の月間平均価格が210セントと予想されていますが,これも過去最高とか。そしてエスコンディーダ鉱山なんか,その上に生産量を増やしており笑いが止まらないらしい。
ところで鉱山といえば例のローヤリティ税の問題があり、これを払っていないエスコンディーダと大蔵省の戦いは続いています。3月の新政権の発足前にこの問題を清算すると現大臣は意気込んでいますが・・・
それから先週、コデルコとそこで働く下請け労働者との間で協定が結ばれたと書きましたが、その合意は最終ではなかったようで問題再発の気配です。近年コデルコでおこった死亡事故の3分の2が下請け企業の労働者でしたが、これは使っている安全器具の差といわれています。装備に差別があるわけですね。また賃金は同じような仕事をするコデルコ社の労働者の半分どころかひどい場合、30%しかもらえないと下請け労働者はクレームしています。

今週、ランカグアに行ってコデルコのエル・テニエンテ鉱山の従業員運搬をしているバス会社に行きました。並んでいるバスの窓ガラスが軒並み割られていて、ビニールを張って応急処置されていました。しかし下請け労働者の怒りもすごいものです。

2)自動車の価格が下がる傾向が続いています。
これは自由貿易協定による輸入税の減免、ドルの低下によりペソ立て価格の下降、それに競争の激化がその原因といわれています。いずれにせよ消費者にとってはうれしいニュース。


(一般)
1)老齢化
日本と同じようにチリ社会も老齢化の波は避けられません。10年前に厚生年金加入者で40歳以下の若手は64%だったのですが、昨年,それが50%に減少。逆に40台が31%から40%に上昇となっています。もちろんそれに伴って50歳台も増加しています。
ということは後、10年もすれば、年金を受け取る人数が急増して、もう余裕がないので。以前ほど支払えませんと言うことにならないだろうか?それなら早めに私も受け取りを始めようかな?
チリでは普通、男性が65歳、女性が60歳で定年退職し,厚生年金のもらい始めます。

2)首都のサンティアゴを始め、中央部各地が乾燥と暑さで苦しんでいるチリですが、チリ北部は逆に雨で困っています。第1州イキケの内陸部で、洪水で孤立した部落が続出しています。これはボリビアの冬と呼ばれる現象で、この時期毎年繰り返されるものです。道路が川になってしまって車ではとても通行できません。

3)サンティアゴ1000と呼ばれる芸術祭が終了し、今シーズンは20日間で44の舞台があり、昨年の観客数13万人を超えたらしい。良かったですね。

4)奨学金の配分にエラーがあったことは既にお知らせしましたが、恥の上塗り、エラーの上にまたエラーと言う感じで、当初1万4千人だった奨学生の数が2倍の2万8千人になり、なんだか最後は5万人ほどとか。いったいエラーの分析,それへの対応など、どうなっているのだろう?

5)チリの航空産業は年々活発になっていますが、05年は国際線が11%アップ、国内便は17%のアップになりました。国内線の搭乗客は180万人,国際線は197万人です。
国際線の主な目的地は圧倒的にアルゼンチンのブエノス・アイレスがトップで約25%のシェア-。続いてサン・パウロ、3位は欧州のマドリッドでした。


(スポーツ)
1)国内サッカーのリーグ戦が始まりました。順当にコロコロ、ラ・ウーは勝ちました。
それに先立って今年のリベルタドール杯が始まり、まずチリ代表としてコロコロがメキシコのグアダラハラと対戦しました。ホームでの試合にもかかわらず3対1の敗戦。メキシコとチリのレベルの差を示しました。

2)デービスカップ戦を前にして、チリの選手はビーニャのATP大会に集中しています。これを起爆剤にしてデービスカップ大会の会場ランカグアに乗り込みたいところ。上手くいくかな?


今週お客さんを迎えました。チリに住んでいる日本人の私のところに日本ですんでいるチリ人のお客さんです。しかし世界も狭くなったということを実感します。

さて2月3日から19日までバケーションをとります。パートナーと二人でエジプト、ヨルダンの旅に出る予定。もっとも私の場合、途中で予定が変わることはよくありますが・・・。旅の様子はチリの風の旅の欄に掲載します。


以上