チリの風   その151  05年11月14日―20日

チリの風   その151  05年11月14日―20日

18日の金曜日、その日も暑い日でしたが、仕事が終わった後、タイヤ・リキャップ工場の裏の芝生でアサード(焼肉)パーティをしました。販売関係者が生産部門の工員さんを招待したわけです。参加者は全部で20人を超え、飲んで食っての大騒ぎ。彼らは美味しい肉を腹いっぱい食べられる機会はそうないので、次々に肉を皿に盛っていきます。同じようにアルコールを取るので、すぐに酔いもまわり、冗談か本気か分からないことを口にしはじめ・・・・酔ってくると人間、本音が出ますからね。


(政治)
1)しかし逆に笑ってしまいました。何がって?2週間前はペルーとの国境問題、先週はフジモリ元ペルー大統領問題と、2週間続けてペルーの話で持ちきりだったマスコミが今週は忘れたかのように、ペルーに触れません。もうこれほどはっきり方向転換されるとチリのマスコミって読者のために書いているのか、読者をある方向にリードするために書いているのか分からなくなってきます。そこで、それを新聞社やテレビ局が図っているのか, 政府が彼らを指導しているのか、私は疑うということになるわけです。

2)で、じゃ今週のトップニュースは, 私にすれば韓国で開催されているAEPCの話題になるべきだと思いますが、そうじゃないんです。それもほんの少しの取り扱いで、最も話題になったのは大統領選挙についてでした。政治好きな私としては、もっとも得意の分野なのですが、それが私の感触とマスコミの取り扱いには大きな差がありました。
さて今週、第2回目の候補者間の討論会がありました。前回の興奮を繰り返してほしいと願って、いさんでテレビの前に座った私でしたが、1時間半の討論会の最後まで見ることが出来ませんでした。飽きちゃって。最低のレベルで、全く意外性もなく、質問を聞いただけで各候補者がどう回答するか分かるような感じ。見続ける気持ちも薄れました。(私はアマで、プロじゃないからそんな贅沢が言えるのですね。プロの人ならいくら面白くなくてもその討論会をちゃんと詳細に分析して、些細なことを針小棒大に膨らませ面白い話を作らなければいけませんからね。)
ところで、じゃ何故そういった話が今週のトップになったかと言えば、その前日発表になった世論調査で, 右翼側候補者の二人の推定得票を合計すれば、現政権側の候補者のそれを始めて上回ることになったからです。つまり現政権が危機感を持ち、それをマスコミを通じて表現したと言うことになるのでしょうか。マスコミはもう外国ペルーの話ではなく国内の方に注目してほしいとの要請。
ここまでは土曜日に書いたのですが、日曜日の朝刊を見て驚きました。チリ二大紙の一つラ・テレセラの日曜版に「現政権の人気が高くても次の大統領選挙にバチェレットが勝てるとは決まっていない」というラゴスのコメント、私が考えていたことがそのまま一面トップに書いてありました。開いた口がふさがりません、そこまで政府の肩を持つのか?ラゴスの人気は人気最後の最近の調査でも58%と異常に高いのですが、私はこの数字の信憑性を・・・・、疑っています。
しかし、そうだとすれば、チリのマスコミって、甘いですね、もっと自分の声、独自の判断を表明してもらいたいもの。
(日本のマスコミがどうなのか良く分かりませんが・・・・)

3)完全に消えた国境問題に比べ、フジモリ関連はわずかに残っていますが、娘さんがお父さんを訪問するためチリについたくらい。
これもチリのニュースに出れば出るほど、ペルーを刺激するわけで、ラゴス大統領がこの辺にしておこうと頼んでいたりして。
フジモリ側としては、先週は自分の思い通り展開で有頂天だったと思いますが、忘れられてしまったような今週は不本意な状況。なんとかそれを打開するパフォーマンスが必要です。彼なら, 何かやるでしょうね。自分の存在をアピールする何かを。もちろん最高のシナリオは有名な弁護士を起用してチリで自由を回復すること。ペルーで訴えられている罪状のうち、大半が根拠不足で取り消されていますが、これらを考慮してチリの裁判所が、仮の自由を与えれば、チャンス!サンティアゴから政治活動。元フジモリ派でその後、相手側に寝返った国会議員の切り崩し、そのあと着々と準備を整えてリマに戻る・・・と言うストーリーが推測されます。
最も彼の弱点のモンテシーノが刑務所から逆襲を仕掛けてくる可能性もあり、常に良い方向に向かうとは決まっていませんが。

3)APECで小泉、ラゴス、トレドの日本、チリ、ペルーの三人が並んで歩いている写真がありましたが、その時どんな思いをしながら歩いたのでしょうか?またこれがマスコミに出るんだよなと思っていたとか?

4)我がピノチェットも新聞に継続して出ています。裁判官の前で始めて軍の諜報機関(DINA)の元長官コントレーラスと対決。しかし新聞に発表された二人のコメントは愉快この上ない。例えば、元長官がこの組織は軍隊に属していたから自分はすべての行動を軍の司令長官たるピノチェットに報告していたと発言すると、ピノチェットはそうだったかな、良く覚えていない、まぁ彼の報告は嘘が多いからね・・・これは二人とも正しいのか?
それから元長官が、自分が長官の任についていた時、朝食を毎朝ピノチェットと二人で取っていたとコメントすると,ピノチェットは、それは全く嘘じゃの、たまに自分のところに来ることはあったけど・・
最悪なのは、DINAはピノチェットの指揮下にあったから、非合法活動も含め、すべての責任はピノチェットにあったとする点で、彼は、それは嘘じゃよ、そんなことはないはずだ、そうだったとしたら,忘れてしまった。
しかしよくそれで裁判官訊問が通るものです。さすが、ピノチェット、しびれるほどの素晴らしさです。


(経済)
1)銅の価格がとうとう2ドルを越えました、しかも年間平均価格が130セントにもなり、1ドル以下のそれを予想していた少し前からすれば、利益が上がってしょうようがないという状態。
しかしそこで思うのですが、その利益を、民間企業はともかく、国の場合は税収のアップで国庫に入ってくるわけですが、なんとか国民に還元できないものかと?
今年度に限り税率を下げるなんていうのは、たんなるおまけ、ばら撒きに過ぎませんが, 病院や学校を建設する方法ならすぐに利益の還元を国民に出来るのではと思います。
橋梁の建設とか新高速道路の建設なんていうのは、ずっと前から民間に請け負わせて、それにかかった建設費用はその後の使用料と言う形で国民から徴収していますから、税収入を使う必要なし。とすれば教育、保険関係でしょう。
なぜか銅の価格はこれからも高値を更新すると予想されています。しかし原油の値段が下がり始め、チリではガソリンは毎週のように安くなっていますが、どうして銅の価格が一方的に高値を更新するのか不可解。
このため多額のドルが流入して、チリではドル価格の下落傾向が止まりません。輸出業者の悲鳴が出て、政府も何らかの対策を検討中とか。ドルが安くなって利益の出る人間が市場を操作していることもあるのでしょうね。
ガソリン価格は最近の1ヵ月半で90ペソ(約18円)安くなっています。

2)日本との自由貿易協定
しかしまだ新聞報道には小さくしか出てきません。APECでラゴスは小泉とこの点に関して話し合っていると思いますが。とにかく両国間の貿易は一方的にチリの出超です。日本からの輸出の半分は車、チリからの輸出の半分は銅ですが、日本からの輸出は年間約八億ドル。チリからは約40億ドル。チリももっと日本品を買ってもらいたいもの・・・・
チリのウォーカー外相は、韓国,中国などの国とは既に協定を締結したので、あとは「アジアセット」で一気にやりたいと、アジアを軽く見た発言しているが不愉快。その彼の言うセットには日本,インド、タイ、マレーシアなどが含まれている。

3)チリの進歩の一つに道路網の整備(高速道路)と首都サンティアゴの地下鉄(メトロ)の建設があります。今週、地下鉄の次の目標として東部のラス・コンデスで現在の路線をさらに東へ延長しロス・ドミニコスまで、また南西にも延長し新しくマイプ地区にも入ると発表されました。工事は2009年に完成の予定。
で、そのロス・ドミニコスっていうのが私の住んでいる地区で、駅の出来る予定の公園は私のアパートから歩いて1分。これは便利になります。もちろん、それまで4年間は交通渋滞などで不便になりますが・・
そうか、私の持っている資産の価値が上がると言うことか、ついている、喜ばしい。ねっ。


(一般)
1)経済と関係しますが、中南米の中で、チリが国民の中で富裕層が占める割合が一番高いという調査結果が出ました。もちろん各国の物価によって違いますが、チリの場合は所得が約5千ドル以上あるクラスを富裕層と呼ぶそうです。日本との物価比較をすると約4分の1くらいと考えられますから、日本では毎月収入が約2百万円以上の層とでも言えるでしょうか。
それがチリでは国民の7.3%を占めて、中南米のトップ。2位はメキシコで僅差の7.2%。もっとも絶対数では人口の多いブラジルがトップです。しかし10年, 20年前には想像も出来なかった躍進です。
ところで、その喜ばしいニュースとは裏腹に、私はここにもう25年以上住んでいるので、チリの実情は、そんなに良い話ばかりでないことを良く認識しています。
もちろん運が良かった人は別として、その運がない人は、そしてそれが大多数ですが、国の経済が順調に伸びても個人(家族)の生活は一向によくなりません。
今週のチリの風のトップに書いた会社のアサードでも、工員さんは安い給料で厳しい環境の仕事をしていますが、他に仕事を探している(替わりの)人間はたくさんいますから、文句を言って辞められるわけはありません。仕事がないのは地獄ですからね。
ところで先週、グッドイヤーのリキャプタイヤ部門の部長をしていた人間がミシュランに移りましたが、競争他社に移るのはここでは全く問題になりません。私の部下のセールスマンも他ブランドの経験者が多いですが、それも運の問題で、実力とこねがあって始めて実現するわけです。
個人の問題はともかく、チリ国が着実に中南米レベルを脱皮して先進国に近づいても、底辺に残される国民は厳しいです。仕事のない若年層、仕事を終えた高年層(厚生年金だけでは生きていけない)などチリの問題は重いです。

2)ポルノ問題
世界的な幼児ポルノ供給網にチリがからんでいて、今週何人かが逮捕されましたが,大学関係者が含まれていて唖然とさせられました。しかしそこまで来るともう病気なのでしょうね。そこから抜け出せないで・・
コンセプシオン大学の哲学教授もその一人。しかしその大学も大変な迷惑です。

3)選挙が後3週間に近づいて来ましたが、いつもの通り、新聞などで選挙立会い人名簿が発表になっています。それは一般有権者の中から抽選で選ばれますが, 運悪く?それに選ばれてしまうと当日は朝早くから終了までその場に立ち会う必要があります。これを怠ると警察沙汰。裁判所に呼び出され罰金刑です。運の悪い人は何回も呼び出されるとか。ちゃんと市役所の人間が手当てをもらってその仕事をすればよいと思うのですが・・・


(スポーツ)
1)テニス
しかし実力だけでなく運が必要なのは何も会社の仕事だけではありません。今回中国上海のマスター大会に招待されたゴンサレスは補欠で入場しながら、正選手が欠場したため繰り上げで選手権に出場、第1試合を見事勝利で飾りました。これはと期待を持たせましたが、残念なことに、次の戦いアルゼンチンのガウチョ戦に2対1で敗れ,準決勝進出は出来ませんでした。しかしこの試合も、第1セットを6対1で取り,第2セットも3回もマッチポイントを取ったのですが、勝ちきれずズルズルと負けてしまったもの。惜しい。現在彼のATPランキングは12位です。 

2)ゴルフ
チリのゴルフプレーヤーで今年世界的動きをしたのは女性ではぺロットで、米プロツァーに参加するだけでなく優勝。男性ではフェリッペ・アギラールが欧州ツァーの参加資格を得ています。

3)サッカー
古巣のチリ大学チームに戻ったサラスはアルゼンチン、イタリア時代の活躍とは程遠く、平凡なプレーを繰り返していますが、一部のマスコミから夜遊びが過ぎると追求されたところ、私には自分の時間を自由に使う権利があると軽い受け答え。しかし彼ほどのレベルの人間が精進することがスポーツ選手にとって如何に大事がわからないのでしょうか?試合のない日といって朝方まで踊ったり酒を飲んでいて良いわけがないだろうに・・・
我がカトリカは23日の水曜日、ブエノス・アイレスでボカ・ジュニア-と南米カップの準決勝戦。さぁどうなるか?


以上