チリの風  その637 15年7月13日―19日

サンティアゴは寒くなりました。最低気温が零下になったりしました。
もっとも私がすごしたことがある札幌やトロントの冬と比べれば過ごしやすいのは間違いないです。さて、雨が降って少しはスモッグが消えましたが、原因は同じなので何日か経つと元に戻り、また準非常事態になっています。
それでももちろんマラソン練習と山歩きはしっかり続けています。
それからジャズの演奏会があったので行ってきました。最初のトリオが最高でした。ベースマンの歌がハートに突き刺さって、サッカーの時のように叫びました。やっぱり乗ります。身体が勝手に動き出して。
先日、南米の太平洋戦争について話をする機会がありましたが、9月にインカについて講演します。歴史上の3大英雄と言うとアレキサンダージンギスカンとインカのパチャクチですが、そのパチャクチを中心に話をします。現在、原稿を準備中です。
(ごめん、上の3人を歴史上の英雄と言っているのは今のところ、私だけです)
日曜日のマラソン練習は冬休みに入ったので参加者は、私のほかに峰村さんと新参加の三輪さんだけ。それでもちゃんと3人で10キロを走り切りました。

(政治)

1) 新政権
バチェレットは政権2年目に入った現在、政権第2期として気持ちを入れ替えて国の経営に当たるとしました。そしてそのスローガンを「すべてをチリのために(todo por Chile)」としました。
しかし漏れてきたのは以前に大統領候補だったフレイの選挙スローガンが「すべてをチリのために」、全く同じですが、その同じ広告会社を雇用して同じフレーズを選ばせ、なんと2千万ペソと多額の費用を支払ったとか。バチェレットとその会社に何か関係があるのでしょうか? 
ボリビアの海問題でローマ法王から援護の印を得たとするモラレス大統領は世界のカトリック信者はボリビアを応援していると、どの会議でも話しますが、チリ側は勝手にしなさいと相手にしていません。
2) 5つの州で州知事が交代になりました。内務大臣がそれを今週発表しました。問題が起きている(起きそうな)州の知事を外し、ほかの人間を任命したのですが、与党側の政党はちゃんとした相談がなかったことをクレームしました。また社会党2名や社会民主党3名は入れ替えがあったのにキリスト教民主党はなかったのは内務大臣が所属している党だからではないかとか。
任命されたうちの一人がたった2日で辞任しましたが、その人間は刑事問題などを抱えていたと言われ、いつもと同じで任命するときの事前調査がきちんと行われていない問題を暴露しました。改善すると言っても全然良くなっていないわけです。          
3) 公約問題
税制・教育・労働の3方面で法の改正を行うと約束しその実現に向けて政府は国会と連動して活動しています。
しかしそのいずれもが予想したような方向に進んでいないことが現政権の落ち込みの要因になっています。
教育問題では大学の無償化について予算の問題から、当面は公立大学を中心に実施していくことになっていますが、私立大学はそれでは来年度の入学希望者が激減するのではないかと疑惑を表明、これに対し公立側の受け入れ学生数を大幅に増やすことはないから心配はいらないと政府はコメントしています。しかしそれらの大学の取り扱いが不明瞭で、識者のコメントですが、「これは教育の無償化ではなく、いくらかの学生の特別扱いだ」と冷たい見方。政府も無策ですね。
教員組合のストは50日になってまだ継続し、いったいどうすればストが終焉するのか組合側も政府側も明確でありません。
労働組合のスト権についても、与党内のDC党は一部の項目にはっきりと反対を表明しており、同じ与党内の共産党と向かい合う様子。両党の亀裂は明白で、与党分裂の瀬戸際まで行くのは時間の問題でしょう。問題がなければ両党は手を握れますが、このように政府公約が危なくなって来れば両方とも意地になって相手を攻撃しますから。
バチェレットにリーダーシップが無く、国民の信頼を失った現在、各政党は生き残りをかけて失敗を他人に擦り付けようとするのは必然。それがチリの政府・与党の実態です。
景気回復が遅れれば、すべての政府案のベースが失われ、援助計画は絵に描いた餅になってしまうわけで、3公約を押し進めれば進めるほど失敗の可能性が高くなる矛盾をはらんでいます。

(経済)

1) 銅価格の低下と為替の問題
なんと銅の価格がポンドあたり2.48ドルに下がり、為替も1ドル646ペソまで下がりました。
コデルコ銅公社の国庫に納める今年度の税金が71億ドルと予想され前年対比約50%の減少になるとか。これが政府の公約に影響してくるわけですね。
IMFの予想ではチリの今年の成長率は2.5%ですが、毎月その数字が下がってくるのがつらいですね。
2) 中銀の金利政策
経済行動が停滞していることを理由に中銀が公定歩合を3%に据え置くことを決定しました。下げても大きな投資は出ないでしょうね。

(一般)

1) 脱獄
メキシコの脱獄問題は世界中の注目を浴びていますが、チリでも脱獄がありました。放火・強盗などの罪で刑務所に入っていたマプチェの人間がハンガーストを実施して刑務所を出されることになり、矯正収容所と言う軽い管理の場所に入れられたのですが、あっという間に逃げ出しました。
裁判所の考えが一定でない、もしくは一般人とマプチェの間の取り扱いに差があるわけです。今までもそうだったし、これからもそうでしょう。
これに関連しますが。チリで2014年に起こった17万件強の泥棒で12%だけが裁判所で裁かれています。警察の力が足りないのでしょうか。
2) 世界の大学ランキング
今週発表されたそのランキングでカトリカ大学が376位、チリ大学が425位に入りました。ハーバードやマサチュセッツ工科大学などがいつもの様にトップを飾っています。
3) 冬の祭典
プンタ・アレナスのお祭りの最後を飾るのは海水浴です。 体感温度マイナス3度の寒さの中、市長を含め多くの参加者が海に入りました。しかしそこは夏でも海水の温度が低く水泳はできないところなのですが!!!

(スポーツ)

1) パンアメリカン大会
カナダで実施中パンアメリカンオリンピックでチリは前回のメキシコ大会の金メダル3を上回る4を獲得しています。まだその数は増えそうです。
2) テニス
デービスカップの地方レベル戦でチリはメキシコと対戦。
5対0で勝利を得、ラテンアメリカ地区第2グループの最終戦に出場が決まりました。9月に多分、ベネスエラと対戦する見込み。
3) サッカー
サッカーですが、今週、出てくる話題は試合のことではありません。
先ず、バチェレットは番組で「チリにワールドカップを招待したいですね」とニコニコしながら話はじめ、その次に「サッカーのチリ代表が合宿所にしているピント・ドゥランを改造したい」とコメントしたところ、各スポーツ代表から厳しいクレームが出ました。
「先のアメリカップで多大の利益を出したサッカー連盟は自分の懐から費用を出せるが、その他のスポーツ団体は代表選手を世界大会に送る費用にも事欠いている。いったい大統領はスポーツはプロサッカーしかないと考えているのか」
スポーツ担当大臣は国費で合宿所の改装はしないとコメント。逃げの一手ですね。
もう一つの問題はファンの暴走で、すでに3試合で競技場内でファン同士、ファンと警察で暴動がおこり、競技場の椅子などが大量に破壊され、試合は中止になっています。
イギリスやアルゼンチンで良く報道される暴動がチリで日常茶飯事になったのは全く不可解ですが、今それを抑えないと誰もサッカー場に行かなくなるでしょうね。


以上