チリの風   その636  15年7月6日―12日

先月まったく雨の降らなかったサンティアゴですが、この週末かなりの雨になりました。山では1.5mの積雪でアンデス山脈は真っ白です。
それで土曜日のサッカー教室も日曜日のマラソン練習も中止でした。
先日チリのU16代表が長居競技場で試合。カトリカファンクラブのメンバーで私と一緒にサン・カルロスで応援していて今年帰国した家族がその応援に駆けつけました。カトリカのユニフォームを着て行ったらチリ選手が大喜びで騒いだとか。チリと日本の国際交流の印ですね。私は運動ばかりに偏ってはいけないとゲーテ学院で行われた芸術祭を見学に。歌や踊りに文化発表会とチリの若手の活躍を楽しみました。

(政治)

1) バチェレット
もうチリの風と言うと最初にバチェレットが出るのが普通になりました。それくらい私が彼女に入れ込んでいるわけではありません。
サッカーのアメリカップに熱中して、ファンの代表を自認していた彼女はチリがそれに優勝したので、人気が急上昇と思われましたが、今週発表の数字は全く逆で支持するは27%、不支持は68%と最悪です。
逆風はまだあります。先に内務大臣を更迭しましたが、彼が税務局の長官に圧力をかけ与党側が関連していたソキミチ社の政治献金問題にあまりタッチしないように指示をしたとその前長官が裁判所で告白。その資金はバチェレットの選挙費用に回ったわけですからね。これからますます彼女の近くに問題が迫ってきます。前長官は前大蔵大臣も前内務大臣と組んで資金集め人間マルテルに絡んでいたと報告しています。
最右翼のUDI党の元党首は同じ嫌疑で裁判にかかっていますが、自宅謹慎処分となり、裁判が終わるまで家の外に出られません。体調を崩したので入院するため外出禁止処分を一時解除することを申請し、それは受理されました。
さて人気が落ちる一方のバチェレットは、人気回復のために、今回は経済成長回復のために何が必要かと言う委員会を設定しました。先日の政治の透明化委員会は時間と金の割にはあまり有意義ではなかったですが、今度はどうかな?
しかしそれだけでは国民は納得しないと考えた彼女は金曜日に全閣僚会議を行い、一日いっぱいかけて、選挙の公約実施で何が足りないか、何を優先すべきかを話し合いました。 彼女はすべてが約束通り進んでいるわけではないと先ず自己批判をし、それをどう公約実現に結びつけるか閣僚の力を借りたいとしたわけです。やり方は正しいですね。
教育問題はますます先鋭化してきました。教員組合が全然態度を和らげないで政府と対決しており、もう40日もストに入っているのに、一向に前進が見られません。
そして経済の停滞からバチェレットが選挙の時の公約した教育の無償化が危うくなってきました。与党内でも実施は不可能とする声が大きくなっています。新大蔵大臣は可能な限り約束は守るが、税収入が延びなければそれ以上のことはできないとコメント。
土曜日、雨の中で労働組合や学生連合がデモ。公約の労働法改正を最後までやり遂げるよう政府に圧力をかけています。与党側の中から公約を全部実行するなんて最初から可能性は無かったという発言も出ています。選挙の公約って嘘ばかりですか?資金がないから実行できないと言う大蔵大臣は正直なのか嘘つきなのか?

ボリビアの海問題ですが、ハーグの国際法廷はまだ審査中で動きはありません。しかし今週南米を訪問したローマ法王がラ・パスでモラレス大統領と話したあと、「チリとボリビアの間で真摯な会話が発展するのを願う」とコメント。
ボリビア側はローマ法王もチリの暴力的な領土略奪を認めていないと発言。チリは直ちに「真摯な会話を拒否し裁判に持ち込んだのはどちらか忘れたのか」と反撃。いつもの通りですね。

(経済)

1) チリ経済
中銀の発表では今年の経済成長は2.3%、来年は3.0%になるだろうとのこと。毎回発表される数字が下がっていきます。どこまで落ちるのかな?バチェレットの選挙の公約実現がますます遠のきますね。
今週は銅の価格が過去6年で最低のポンドあたり2.4ドルまで下がり、それを受けて為替で1ドル651ペソまで下がりましたが、週末にそれぞれ2.5ドル、647ペソまで戻しました。
2) 労働時間
OECDの発表で昨年の平均労働時間が一番長い国はメキシコ。話題のギリシアは4位、チリはその次の5位で1990時間。日本はずっと下で1728時間、一番短いのはドイツで1371時間とか。日本で言われるドイツ人は勤勉でギリシア人は怠惰と言うのとは全く逆のようですね。しかし国の経済繁栄の基礎は労働時間の長さだけではないわけですね。
3) 車の販売
新車の販売が急激に減少しています。今年に入って毎月前年対比10−15%も下がっています。

(一般)

1) 大雨
先週まで雨が降らないサンティアゴでしたが、今週は全く逆で大雨になり、水害になったり、時速50キロの強風が伴ったので木が倒れるなどの事故も相次ぎました。来週は雨は上がるが気温が下がるとの予想です。
2) 保守の国
チリは南米の中でも保守的な国でしたが、かなり変わってきました。                       もう少しするとマリワナが認められそうです。ウルグアイは昨年から販売も認められていますが、チリの場合、薬用などの場合、個人が決められた広さの場所でマリワナの栽培を許されることになりそうです。
ついでに書くとたばこ規制法が考えられていますが、それが成案するとたばこの製造・販売に影響してきます。チリでたばこを製造している会社は工場閉鎖を考慮中と発表。その会社の製品がチリの煙草市場の9割以上を占めているとか。たばこの葉の生産農家は死活問題です。
それから長い間もめている妊娠中絶も理由によって合法化されそうな雰囲気です。
まだあります。同性間の結婚ですが、すでに約100組のカップルが結婚手続きの申請に入りました。
与党の中のキリスト教民主党DCがそれらの項目に反対していますが、抑え込まれそう。
しかし問題はバチェレット政権がうまく運営されていない状況下、与党内の対立も目立つようになり、社会党はDCが与党の結束を乱す行動をするため政治がうまく回らないとコメントしています。内紛の拡大化ですね。
3) 国の安全
アメリカ政府がチリに旅行する自国民にチリの一部の地区は安全ではないので注意をするようにと警告しました。 
チリの外相はすぐに反応して、アメリカに旅行するチリ人にアメリカの一部の地区は反黒人運動など過激な行動も目立つので注意が必要と警告しました。両方とも当たっていますね。
4) 大気汚染
この大雨で何日かは大気汚染問題は薄れますが、数日もするとまた空は真っ黒です。その対策として排気ガス対策車の通行制限を常時実施することが計画されています。車の通行量が少なくなれば一般に交通渋滞が減少するわけで、私有車をやめて公共のバスを利用してほしいと言うわけ。
しかしこれに対し、専門家から排気ガス対策にはほとんど影響しないし、金持ち階級は2台目の車を買おうとするから交通渋滞にもそれほど影響をするか疑問とされています。
トラックの通行を止めようとすれば大変な反響があるでしょうね。今週、ガソリンスタンドの前に車の長蛇の列が並びましたが、それはワッツアップでガソリンがなくなるから早めに給油しておいたほうが良いと流れ、それを見た人が列を作ったもの。まったく根拠はなかったようです。

(スポーツ)

1) サッカー
先週の土曜日の決勝戦の後、土曜日、日曜日、そして月曜日と三日間、チリの夜のニュースの話題の中心が優勝関連の件でした。まぁ100年に1度ですからね。この優勝の後、FIFAのランキングでチリは11位に上がりました。
1部2部リーグのチームが争うチリカップ戦が始まりました。国内リーグ戦はあと2週間くらいで始まります。
アメリカ大会中の飲酒運転で事故を起こし問題になったビダルの裁判で、2年間の国内運転免許停止はかわらないものの、奉仕活動(事故現場の消防署に寄付する、その地区の学校で子供に挨拶をするなど)をすればこの問題の棚上げを認めるとか。なにそれ?っていう感じです、彼は裁判沙汰が治まればレアル・マドリッドに移籍すると言われています。
2) パンアメリカン・オリンピック大会
カナダで今週からパンアメリカン大会が始まりました。競技が始まった初日に先ず女子のトライアスロンリベロが金メダルを獲得。そして男子のローラースケートでシルバも金メダル。他にも体操、水泳などのメダルが取れそうな種目が注目されています。総合ランキングでチリは9位の予想。前回よりたくさんメダルが取れるかな?            


以上