チリの風  その940  2021年5月17日―23日

週末、最低気温が零度まで下がったサンティアゴです。もう冬ですね。マラソン練習をするとき、手袋を使い始めました。
天気予想が当たって木曜日に、強風・ 雷を伴った雨になりました。翌日、嫁さんと二人で、太陽の出た午前中、家の近くを1時間少し道路を覆うような木の葉の上の散策を楽しみました。近くのアンデス山脈は雪で真っ白でした。
今週の山歩きは久しぶりに第1展望台に。日本人学校の登山教室では初級コースで低学年の子供でも歩けるのですが、そのサン・カルロス経由ルートは今は封鎖されており私が冒険コースと呼んでいるプラサ経由で登りました。距離は短くなるけど傾斜がきつくなります。往復3時間で歩き、展望台からの景色を楽しみました。一度も転倒なし、良かった。そのあたりも木曜日の雨で、雪をかぶったようです。
日本の歴史を勉強していますが、ユーチューブを毎日調べています。私の好きな縄文時代の新しいビデオが、いつも見つかります。知らないことをメモにするのがなにより楽しみです。

(政治)

1)ピニェラ動向
 選挙の終わった日に、彼は多くの閣僚などと会談。そのあとテレビのカメラの前で「市民の声を尊重する」と敗北宣言をしました。任期の最後までどのように生き延びるのかな?何か必殺の事項を用意できるかな?日本語を間違った、必殺ではなく国民が驚く大提案です。内閣改造をするようですが、それは大提案にはなりませんね。
エクアドルの大統領交替式に招待されたようですが欠席するとか。
2)選挙の結果
1490万人の有権者のうち投票したのは633万人と43%だけでした。
 新憲法委員会の155 名の委員を選ぶこの選挙で目立ったことがあります。既存の政党が軒並み下落したことです。野党の中心グループ、キリスト教民主党DCは48名候補を立てその内たった2名が当選しました。大統領選挙にも問題が出てその党首が辞任しました。
 さて各項目で3分の1の委員が反対すればその項目・内容は成立しません。つまり3分の1の委員を持っていれば敵対グループの攻撃をしのげるわけです。与党側、右翼の委員は2分の1どころか、3分の1にも届かずわずか37名。つまり残りが手を組めば、どんな憲法でもできます???
 水利権、中央銀行の独立性、憲法裁判所とか幾つもの討論されそうな議題があります。厚生年金は、多分、最重要項目になるでしょう。
 委員の内訳は平均年齢は45歳、最年少は20歳、最高齢は81歳とか。どこの党にも属しない独立派が104人と67%を占めます。確かに今までの議員とは違うことがすぐにわかりますね。
 その中の「民衆のリスト」と言うグループは27名も委員に当選し第3位を占めました。(1位は与党グループ、2位は野党グループです)
 彼らは政治犯を釈放するよう要求しています。彼らの言う政治犯とは1昨年10月からの社会騒乱で、例えば地下鉄の駅に放火した事件、それで 逮捕され有罪になった人は政治犯としています。そして彼らは現行の年金システムAFP廃止を唱えています。そんな極端なグループが大きな勢力を占めると言うのはチリの現状を示しています。
 あの社会騒乱の時、週末にイタリア広場にデモ隊が集まり反政府集会をしましたが、その数が数千人から、数万人そして100万人にまでなりました。
 つまりその集会に参加したデモ隊の多くはまだ同じ情熱で反政府運動を続けているのですね。それは一時の熱気と思った私の考えとはずいぶん違いました。
 でも間違えていたのは私だけではありません。プロの政治評論家もそのグループが大きな勢力を占めるとは選挙前にはコメントしていませんでしたから。

 もう一つの選挙ですが、大統領候補者が一部、正式に決定しました。与野党のグループ各党が、それぞれの候補者を予備選挙で争い、代表候補を選ぶことになりそうですが、左右がそれぞれ一人づつ決定できるのか、何名もの候補者が選挙に出るのかまだ決まっていません。
 野党の中では、既成の党と、新左翼共産党が同じ条件で候補者選びに並ぶかどうかが問題ですが、どうやら同意に達することはない見込み。
 この選挙の結果から言うと、旧左翼より新左翼の方が勢いがあるわけですが、旧左翼の社会党の候補者は、新左翼共産党には政府を作り国民のための政治を実施する力はないとし、彼らは口先だけの大衆迎合主義者としました。

 この選挙の前には右翼政権は継続せず、次は左翼が大統領になるだろと思われていました。選挙の結果もそれを証明しています。しかしこの野党間のぎくしゃくした関係から、右翼・旧左翼・新左翼の3分裂になると思われます。と言うことは、私の見る目ではもう一度、右翼が政権を握るのではとなります。
 もちろん右翼系も順調ではなく大混乱が発生しました。右翼側の候補者は4名です。
 それは一番右翼のUDI代表で選挙戦に出るラビン(前ラス・コンデス区長)、それにRN党のデスボルデス(元大臣・元党首)、ブリオネス(エボポリ党、前大蔵大臣)それにシーシェル(元大臣。無所属)です。ラビンの選挙参謀カルテル現区長はシーシェルについて、一度も選挙に出たこともなく、全くの素人が大統領候補になるのはお笑いだと酷評しました。ついでにブリオネスもピニェラ政権の失敗・問題点の元凶ではないかコメント。まるでラビン以外に候補者はいないとしました。
 シーシェルは怒り狂うこともなくにっこり笑って、「今回の選挙で既存政党が市民に評価されていないことが明白になったわけで、私の政治方針を検討してもらい、既存の政党のようにしがらみで生き延びているのではないことをわかってもらえれば、私が当選することも十分あると思うがどうですか」なかなか良い口調ですね。
 その後、カルテルは私の発言は問題点があったとコメント。これはピニェラが、左翼のエラーを私たちも繰り返すのかとUDIにクレームしたからだと思います。違うかな?
 1次選挙の後の決選投票で右翼候補が共産党候補と対戦すれば、国民の多くは右翼に入れるはずです。どうでしょう?
 まだこの話は続きがあって、伝統の中道左翼政権は左の社会党PSと民主主義の党PPD、それにキリスト教民主党DCです。PPD党首はこの大統領選挙に出馬すると意気込んでいましたが、最後に諦め社会党の候補者の応援をするとしました。それて彼は不出馬について聞かれた時、PPDの存在感は減少しているとはっきり回答。消滅するのか社会党と合併するのか。
 そして新左翼共産党と敵対するならPSと PPDが合併し、歴史的に手を組んでいたDCと一体になって過去の連合政権の再現を狙う可能性がありますが、左翼と相いれないDCは中道左翼を離れ、UDI以外の中道右翼と組む可能性もあるとも思えます。つまりDCの新党首は当分、情報収集・交換と面談で寝る時間がないほど忙しいでしょうね。 チリの政界は大混乱です。
 ところで国会で討議されていた超富裕者への課税は議決されませんでした。超富裕者のグループが議員に圧力をかけたのかな?

(経済)

1)株式市場
  チリの株式市場IPSAは選挙の後の月曜日になんと9%も下がりました。これでは政治・経済の安定はないと見られたわけですね。選挙の前の5月14日に4574ポイントだったのが、いろいろ動いた結果、週末の木曜日は4079で終えました。昨年11月以来の低い数字です。多くの人が泣いていますね。
2)消費税IVA
  チリの消費税は一律19%です。それを一部の品目で下げ、市民の生活援助の一環にする可能性が出てきました。例えば、パンなどの食品、それにガソリンなどです。
  下がる時は誰も文句を言わないでしょうが、コロナ問題が終わって正常化した時、19%に戻しますと政府が発表すれば、市民が怒り狂ってデモをするかな?

(一般)

1)コロナ問題
  木曜日の新規患者は7600名と1か月ぶりの大きな数字。陽性率も10%を越えています。金曜日も同じレベル。つまり感染者7000名、死亡者100名が標準化しています。
  今週、ファイザーなどのワクチンが数十万人分も到着し、20代の若者に接種の番が回ってきました。いつも同じことを思いますが、ワクチンがあって、それを接種する人が順調に増えているのにどうして感染者数と感染率が減少しないのかな?
  厚生省の発表ですが、ワクチンが役に立っている例として緊急病棟に入院した人とワクチンの関係で、30代の人の場合、ワクチン無しなら人口の2.3%、1回の接種なら1.8%、2回の接種なら0.5%に減少するとか。しかし高齢の70歳の場合、無しは17%、1回は13%、そして2回接種は3%。未接種の17%が2回接種で3%まで下がっています。緊急病棟に入る危険性はほとんどありません。つまり高齢で2回接種の私はかなり有利なところにいますね。良かった。

   最右翼のUDI党は政府に強制自宅待機のレベル1を緩和するよう要求しました。外に出られない、仕事ができないのを何とか緩和させてほしいと言うわけです。
  ところで、昨年そのレベル1になったとき、首都圏は車も人の動きもほとんど止まりました。死に絶えた町のようでした。ところが今年は違います。そんな条件でも車も人も動いています。つまり市民がそれを尊重しないで、陸軍・警察のチェックもそれほど厳しくないということでしょう。

  さぁ、これからどうなるのか。このまま悪い状態が継続するのか、ワクチンの影響が出始めるのか?
  ワクチンを2回接種した人に緑の身分証明書として特別の許可を出し、地区の外出禁止条例とは別に自由に行動できる権利を与えるということを政府は考えています。
  それに関し、ワクチンはすべて同じレベルではなく、チリ国内の調査でファイザー製は90%台、中国製は60%台の有効性と大きな差が出ているから、2回接種すれば安全が保障されるという政府案は納得できかねるとする医者の論文が新聞に掲載されました。
  これは政府としては大きな声では言えませんね。中国の援護で大量のワクチンが来て接種が順調に推移したわけですから。もっとも私は、その可能性を考えてワクチンは中国製なら接種しない、ファイザーに限るとしたのですが。
  今日、ピニェラは飛行場に向かい、到着した220万人分の中国製ワクチンを受け取りました。その時、この緑の身分証明書に関しレベル1、2の地区内で自由に歩ける、レベル2から上は他州に旅行できることにするとコメント。まだいつからそのシステムが機能するかは分かりません。
  それから、それを国際的にする緑のパスポートに関し、中国製ワクチンは欧州では認められていないからチリ国内はともかその緑のパスポートは意味がないとする声も出ています。
  ワクチン接種者は1回目だけならチリではもう1000万人になっています。
2)イキケの海戦
  5月21日は太平洋戦争のイキケの海戦のあった日で祝日になっています。毎年、この日、バルパライソで海軍パレードが行われますが、今年は中止。コロナ問題はそうした集まりを禁じさせました。ピニェラはその記念式典にモネダ宮殿から画面で参加しました。
  所が金曜日が祝日になったので3連休。多くの人が首都圏から外に出ようとしました。もちろんそれには許可が必要です。その許可証を調べるために各地に検問所が設けられましたが、その所で車・トラック・バスが長蛇の列になりました。サンティアゴからバルパライソまで普通2時間かかりますが、木曜日の夕方からはなんと8時間もかかったとか。車の中の人は苦しんだでしょうね。許可証がないので元に戻りなさいと言われれば気が狂いそうになったかな。

3)イスラエル・パレスチ ナ
  チリにはパレスチナの移民が多くいます。サッカーの1部リーグにもパレスチナはチームを持っています。
  今回のイスラエルパレスチナの争いで、イスラエルがガザに攻撃を加えたことに抗議してチリのパレスチナ人グループが街頭デモをしました。多くの車が列を作り、パレスチナの旗を掲げて、反イスラエルを叫びました。
 
  

(スポーツ)]

 1)サッカ ー
  国内リーグ戦は首位に4チームが並んでいます。ニュブレンセ、アウダックス、コロコロそしてオヒギンスです。
  人気チームのチリ大学は10位、カトリカは6位です。
  さてリベルタドール杯、南米杯の二つの国際カップに参加中のチリの4チームは今週は4チームともに敗戦。
  国別の今日までの勝率で、上位はアルゼンチンとブラジルにエクアドル。下位は9位がボリビア、10位はチリでした。
  ただカトリカは最終戦に勝てば、1次予選を勝ちぬいてベスト16に入れます。


以上