チリの風 その941 2021年5月24日―30日

嫁さんに付き合ってイタリア広場に行きました。その近くの事務所で手続きを終えた後、広場に面したチリ大学劇場の横の喫茶店に入りました。テラスでコーヒーを飲みながら広場を見ると何台もの警察の車が止まっていました。そこのシンボルのバケダーノ将軍の銅像はすでに違う場所に運ばれていますが、その基盤の周りに木の枠が置かれ、そこに近づけないようになっています。デモ隊は一人もいないのに警官が大勢、立ったり歩いたりしながら警戒体制を敷いていました。何のためかな?そこで毎週、金曜日にデモ隊と警察が争いましたが、今週ももめるのでしょうか?
1昨年の10月からチリは変わりました。もう中南米の優等生ではありません。いつ暴動が再発生してもおかしくない雰囲気。悲しい。

さて今週の山歩きはサン・ラモンの川めぐりコース。全部で5時間歩きました。特に疲れも残らず、順調でした。このままいくと、サン・カルロス山岳公園がオープンされれば、ビスカッチャ山(5時間コース)そして去年の初めに行ったアポキンドの滝(7時間コース)に挑戦したいです。そうはいかないかな?
ラソン練習も老人としては通常にすすんでいます。今日も10キロ走り、家に戻ってコーヒー・ケーキを楽しみました。幸せです。

(政治)

1)ピニェラ動向
 いろんなグループの人をモネダ宮殿に招待し、貧困層・零細企業への政府援助を検討、それを発表しました。
 実はその前にプロボステ上院議長キリスト教民主党DC)が、与野党の意見を聞いて政府援助を決定すると言いながらピニェラは何もしないと厳しいクレームを出しました。
 そこでこの政府案発表になったわけですが、プロボステ議長は発表された政府案について私たちが提案したことを時間をかけて数字を下げるのだからどうしようもないと再度厳しいコメントしました。
 これに関し政府は彼女は次の大統領選挙にDCから出るつもりなのでここで反政府色を強く打ち出し、人気を得たいのだろうと嫌みのコメントをしました。

 来週の火曜日に彼は国会で任期最後の年次教書を発表します。あっと驚く内容があるでしょうか?

2)大統領選挙
  候補者の中で一番右はUDIのラビン、一番左は共産党のハドゥエです。ハドゥエは社会動乱の犯人を釈放するよう働きかけているグループに賛成しました。それをラビンは、「反乱グループが教会に放火したりしたとき、、ハドゥエはそのグループの近くにいたから彼らを釈放しようと呼び掛けるのは当然だ」と犯罪グループと共産党を一緒に扱いました。
  するとハドゥエはいつまでたってもラビンはピノチェットの色が薄れないなと嫌みのコメント。どちらもどちらです。
  世論調査では、右翼・旧左翼・新左翼がほとんど同じくらいの支持を受けているみたいです。
  と言うことは一次選挙を勝ち抜いて大統領選挙の決選に上記の二人が出る可能性は高いのですね。
  大統領選挙の前に州知事選挙があります。今月の選挙で16の州で知事が決まったのはほんの少しで、残りは決選投票が6月13日に行われます。首都圏は新左翼の女性とDCの男性候補の争い。新左翼が勝つのかな?

3)選挙投票
  先日の選挙は40%ほどの投票率でしたが、それを義務制に戻す動きが出ています。
  しかし不思議ですね。10年ほど前、それまでの義務制を自由選挙に替えたとき、「皆さんの自由を取り戻しました。国家権力が皆さんを縛る時代は過ぎました」と言っていたのに、その逆をするのに自己批判も何もありません。そういう議員を次の選挙で落としたいですね。
  義務制になると投票に行かない人は罰金を取られます。
  私の意見と同じことが新聞の社説にも掲載されています。

  さて憲法委員会の選挙で選ばれた多くの人の意見が新聞に掲載されましたが、厚生年金についてはほとんどの委員が現行制度を廃止し、国が責任を持つべきだとしています。今まで各自が貯蓄した金額はすべて国が吸収するのでしょうか。それは簡単ですね。
  しかし数年後に、国の厚生年金は以前の民間制度より効率が悪いとなったとき、どうしますか?
  その時、差額は政府が払えばいいのだとなれば、ずるずる赤字が増えるだけです。
  私は今の制度が始まった最初から利用しましたが、確かに良く機能したと感じます。新憲法の発足する前で良かった、運があったと思います???。
4)政治犯の釈放
  先の憲法委員会の選挙で、多くの委員を出した民衆リストグループは政治犯の釈放を呼びかけ、それが国会でも検討され始めました。
  共産党はそれに賛成しています。現在までに判決が出て有罪になったのは25名です。
  しかし地下鉄の駅を潰し、教会に放火して、スーパーマーケットで略奪とやりたい放題だったそれらの犯人を政治犯とする考えが私には理解できませんが、それが通るとすれば、私の頭が正常ではないと言うことですね???
  月曜日に私たちが訪れたイタリア広場でこの金曜日、政治犯釈放のためのデモが行われ何人かが逮捕されました。
  そのうちの一人は先日の憲法委員会で当選した委員でした。
  ところで最高裁判所はその動きに反対の声明を出しました。

  その事件はともかくとして、新左翼グループが際立った動きを見せ、それを抑えるグループが3分の1もありませんから、次の憲法はどうなるのでしょう。もしかしたら中国やべネスエラのようになるのでは、何それ?
私の予想ですが、チリは新憲法で破滅すると言うことです。

今日、与党の2大政党UDIとRNの本部が襲われました。例の新左翼運動です。そこで逮捕されたうちの一人は先年、警官に押されてマポチョ側に落ちた人間でした。相変わらず行動を続けていますね。

5)学校授業
  政府は学校での通常の授業を後押しすると決定しました。
  それはオンラインで行われた昨年の授業では生徒の学力が目に見えて下がったからです。公立・私立の学校でほとんどの生徒が合格レベルに達しなかったらしい。そうですね、通常の授業が学校教育の基本ですよね。
  もっとも反政府側の区長が、それに対して反対の声明を出しました。生徒の命がもっと大事だとするわけです。
6)最低賃金
  今までの所 世界の最低賃金の比較で1位はルクセンブルグ2188ドル、日本は1384ドル、アメリカは1257ドルです。
  チリは611ドルですから極端に低いですが、国会で若干上げることが決まりそう。もっともほんの少しで世界レベルからは遠いですが。

(経済)

1)銅価格と為替
  銅価格は1ポンド4.6ドルと先週より高くなりました。為替は1ドル730ペソでした。
  銅の価格が高値で安定はチリ政府にとっては最高の喜び。いやチリ国民にとってもと言えるでしょう。
  ところでガソリン価格が2014年以来最高のレベルになりました。
  ドルが一時700ペソだったのが730ペソになったので値段が上がるとか。これは嘘でしょうね。
  700ペソに下がった時、ガソリン価格は下がっていませんから。
2)消費税IVA
  先週、一部の品目の消費税を下げるとする動きが出ていることを書きましたが、チリのIVAは19%、世界的にみても断トツの高い数字です。欧米諸国では1桁が通常ですね。
  アメリカの場合は国としての税はなく、各州が独自の数字を決めているとか。そしてその各国の税率はチリの様に唯一ではなく、 品目によって違いがあるとか。
  それなら政治・経済が落ち着くまで、例えば食品のIVAは10%にすることはできそうですね。
3)株式市場
  先週、大きく下げたチリの株式市場IPSAですが、今週は少し回復しました。もっともまだ4285ポイントで以前の4500ポイントには
  まだ遠いです。

(一般)

1)コロナ問題
  しかし良くなりません。水曜日の新規患者は8117人。死亡者は185人。木曜日はさらにひどく8680人、119人、陽性率は10%でした。
  この感染者数は過去で2番目に高い数字です。金曜日も8426人と三日連続8000人を超えました。
  いつも言うようにPCR検査数が増えれば感染者数も増えるのは自明ですが、その三日とも感染率が10%を越えた高い数値でとどまっているのが問題です。何だかまたピークが来るみたいです。
  土曜日は7772人で、陽性率は9%と、少しですが下がりました。
  これで病人が増え、緊急病床は全国平均で96%が使用され、ほとんど空きベッドはありません。

  移動許可書(パス)が機能し始めました。
  2回ワクチンを接種した人はそのパスを手にすれば、自宅待機令の時でも外に出られます。
  私の場合、今まで週末は外に出るのに警察の許可書が必要でしたが、それもこれからは不要です。
  このパスの説明をする厚生大臣に、記者が「これだけ患者が増えているのに、自宅待機を勧める医師会の動きに逆行し、市民に外出を認めるのはいかがなものか」と質問すると「老人が家の中で閉じ込められる、子供が公園で遊べずに家の中でむすっとしている。スポーツマンが外を走れない、そんな生活が素晴らしいとは思わない、通常の生活ができるようにしていくのが私たちの願望だ」とキッパリ。さぁどうなるかな。このパスのおかげでバスで旅に出る人が増え、ホテルの使用率も上がっているとか。
  今週もワクチンが多く到着しましたから、その内、2.3か月で、集団免疫ができて、事態が落ち着くのが見込めます。頼むは、ホンマ。
  ただ問題は市民が約束を守らないことです。現行の夜間外出禁止は夜10時からです。
  夜のテレビニュースで、さぁもう10時を過ぎました。繁華街の動きを見てみましょう。するとなんと、車の動きは通常、人の行き来も昼頃と同じ。誰も禁止令を守っていません。それを取り締まることもないのですね。
  もちろんそれは政府の意向なのでしょうが。
2)警官殺人
  南のアラウカニア州で警官が銃で殺されました。その時の様子がニュースで出ましたが、道路に倒した木を置き、車はそれを避けるため速度を落として道の反対側に出て、その後、元の側に戻っています。そこに銃を構えた犯人がいれば、誰でも殺人が出来そう。しかしわざわざ警官を狙うと言うのは政治殺人ですね。ペルーで左翼ゲリラが20人ほど市民を殺人したようですが、チリのマプチェも犯罪組織の様になっていますね。その警官の葬式でピニェラに雑言が出たらしい。ピニェラがちゃんとしたマプチェ対策をしないので彼が殺されたと言うものでしょう。
3)イエズス会神父
  もう長い間問題になっていますが、神父の年少児への性的暴行事件が本格的に裁判になる様子。前にローマ法王がチリを訪問した時この種の事件に関して質問を受けると、彼は「証拠もないのに余計なことを言うな」と反論しましたが、カトリックは低いレベルですね。
4)チリとボリビア間鉄道
 チリ最北端のアリカとボリビアのラ・パスを結ぶ鉄道が走り始めました。16年間、止まっていましたが、運行再開です。途中の駅があった所は最高600人の人が住んでいましたが、今は無人の町。
 また賑わいが戻ってくるかな?

(スポーツ)

1)サッカー
  国内リーグ戦
  上からオヒギンス、ラ・セレナそしてカトリカです。混戦と言うかレベルが低い戦いと言うかのどちらでしょう。
  国際大会
  やっとチリのチームが1次予選を勝ち抜きました。リベルタドール杯に参加しているカトリカは最終試合に勝ってグループ2位になりベスト16に進出しました。
  今から30年前、コロコロがその大会で優勝しましたが、それがチリの唯一の勝利です。
  コロコロが優勝した時の決勝戦を私はモヌメンタルサッカー場で見ました。そして年末のトヨタカップを東京まで見に行きました。
  チリに戻る時、同じ飛行機でした。それが最初で最後ですね。
  そろそろチリ代表チームの試合があります。アメリカップとワールドカップの予選です。

  さぁどうなるかな?


以上