チリの風  その105   04年12月27日―05年1月2日

新年おめでとうございます。もっともあの津波のおかげで新年を祝うという雰囲気ではありませんが。しかし人生というのは、そんなものですね。個人の努力や実力では全く太刀打ちできない大きな力があって、その中で細々と生きているのが私たち・・・。
チリ人でも行方不明になっている旅行者が何名も出て、その家族がタイに飛んだニュースが出ています。援助隊として医師団も出発しました。それからインドネシアにチリ人のプロ・サッカー選手が40人以上プレーしているというのは知りませんでした。全員無事だったようです。


(政治)
1)新聞社との新年インタビューで、ラゴス大統領はにこやかに答えています。
「04年は良かった。確実にチリは成長しました。昔からすると別の国でしょう」
確かにそうかも知れない。普通、任期の最終年になると、もう次の大統領の出現を待って現職大統領の人気が落ちるものだが、彼の信任票はまだ60%以上と高い。
7年間続いたアジア危機の影響からきたチリの低成長は完全に今年で終わりを告げたようです。(あの津波が、第2次アジア危機を呼び起こさないか心配していますが)
それから既にお知らせしたチリの子供の学力問題についてもふれ、「チリの子供は他国の子供より劣っているということはありません。ラテンアメリカの国でこのテストを受けている国はほとんどありません。またチリが教育をおろそかにしているというのも当たっていません。ただ当国の一人当たりの所得は年間4千ドルです。それを3万ドルの米国に比較するのは無理があります」
(彼の発言は、少しピントがずれているようですが・・・)

2)公共事業省の大臣が辞任。
そうでしょうね、当然でしょう。ところがここからが、チリらしいところ。
その1)先日、この件で辞任を表明した下院議長が、(大臣が辞任するなら自分のコメントは正しかったではないかとして)辞めるといったが、下院でそれを可決してからだと風向きを変更
その2)辞めさせられた大臣は何と、中央銀行の総裁に横滑り。これでは国民は納得しないだろう。
その3)橋が落ちたのは、事業省の要求と違ったスペックの橋が建設されたからだと発表されていました。(この橋の発注をしたのは現在大統領をしているラゴスが公共事業省の大臣をしていたとき、じゃラゴスの責任か?)
ところが、ここにきて、橋は35トンの重量制限があったのに、その橋を百トントラックが通過したからだと発表されました。
じゃ、はっきりしてくるのは橋の建設業者の責任(手抜き)ではなく、超過過重の車両の運行を許可した人間の責任、もしくはそのトラック会社の責任と言うことになるのでは。もっともこの先はまた闇の中になるのかもしれませんが。

3)トラン・サンティアゴ(市内交通)のテンダーが締め切りになり、なんとアラメダ通りを走るセントロの路線をコロンビア資本が勝ちとりました。これから細部を煮詰めて05年の8月から実際にそのバスが走ることになります。そうか、外国資本が強そうだとは聞いていたが、コロンビアとは。もちろん、一部の路線はチリ資本が取っています。バス代は現行の340ペソ(60円)と同等になる予定。
ついでに、夏の間、市民は多く市外に出てしまうので、交通量が減少します。これを利用して、1月と2月の間、その目抜き通り、アラメダの道路補修工事が行われます。その間、車はセントロをあちこち迂回させられて、交通渋滞でしょうね。


(経済)
1)投資
何に投資をすれば、一番利益が出たか? 毎年年末になれば出てくる特集ですが、
04年は株ということになりました。中心銘柄(IPSA)に投資していれば、21%の利益。続いて投資信託(16%)、厚生年金の積み増し(5%)、ユーロを買っていれば1.5%、損をした例では物価上昇率を利用した(UF)貯金が0.3%の損、一番アホだったのはドルを購入した人で6%の災難となっています。

2)失業率
チリの失業率が、経済の好調さを繁栄せず、意外に高い水準を推移していることはかなり前から指摘されていますが、その原因の一つとして、女性の労働市場への進出があげられています。つまり従来、家庭で主婦をしていた女性まで、外に仕事を求めて出るようになったというわけです。一理ありそう。

3)金鉱山事業への投資
この先3年で、チリへの金鉱山投資は30億ドルになるだろうと言う見通しが発表されました。やっぱり私の見通しは正しかったですね。例のローヤリティ税が問題になっていた頃、チリへの鉱山投資は激減するだろうと外国資本は脅しをかけていましたが、他の国に比べて投資効率の高いチリへの投資が減少するわけがないとにらんでいました。ねっ。金鉱山関連で一番高額投資はカナダ資本のP.ドームの16億ドルですが、投資先はセロ・カサレ鉱山です。
銅鉱山ほどの派手さはありませんが(銅は輸出国としてチリは世界のトップクラス、金はまだ世界の14位)着実に金生産国として力をつけてきています。
もちろん銅のほうも元気で、コデルコは次の10年間で生産量を70%アップと発表、銅価が高値安定で笑いが止まらないでしょうね。

4)チリの銀行の世界進出
チリ銀行(Banco de Chile)はニューヨークとマイアミに支店を持っていますが、他の都市、国にも進出の計画を立てています。他の銀行もこの国際化の波に乗り遅れまいと計画中で、欧州、アジアにもチリの旗をたてた銀行が設立されそうです。

5)労働法改正
今年から労働時間が週48時間から週45時間に短縮になりました。それにしてもまだ長いけど。


(一般)
1)大晦日
他の国と同じく、チリも大晦日は盛大に騒ぎます。普通、家族友だちが集まって夜遅くに食事をし、その後、12時の花火見学に出かけると言うのが多いようです。
その中でもバルパライソの花火は有名で、何でもラテンアメリカで最大規模とのことです。隣国からも観光客が来るらしい。今年は隣りの町、ビーニャも花火大会を催し、競争しています。100万人の人出とか。
サンティアゴではセントロのエンテル・タワーのそれが有名で30万人集まったらしい。
私の住んでいるアパートの前にあるロス・ドミニコス公園でも、ラス・コンデス区役所主催の新年パーティがあり、夜10時ごろからバンドが入って、人が踊り始め、12時になる前にカウントダウン、12時から花火、結局3時半まで騒いでいました。チリにはクエッカというリズムがあるのですが、こうして皆で踊るときはクンビアが人気です。野外で、それぞれ勝手に踊っていますが、見ていると熱心に踊っているのはほとんど女性で、男はその横で、所在なげに、ぼけっとしているのが多かった。
踊りに加わらなかった私はアパートに戻りましたが、うるさくてよく眠れず。

さて1月に入って、チリは夏のバケーションシーズン。人々は海岸地方に大挙して進出します。大半の人はまとめて3週間の休みを取ります。ホテルは高いので、家(または部屋)を借りて一家で過ごすというのをよく聞きます。同僚に聞いたら、1軒借りて一日三千円くらいとか。他の同僚で、自分で海辺に別荘を持っていて、それをこの期間、他の社員に貸して、一年分の維持費をひねり出す人もいます。
私の部下のセールスマンも3週間休暇をとりますが、その間電話で顧客と連絡を取ります。他社に負けないように(そうさせているのは私かな?ごめん)

2)津波関連
津波関連で新聞に二つの投書が載っていました。ひとつは1960年にチリで大地震があったとき(これが現在、史上最大の地震となっています)日本から調査団が来て、その結果、津波被害を防ぐため、海岸沿いに背の高い木を中心とした森の作成が急がれるとされているが、政府の監督不行き届きか、これが実行されていないというもの。
もう一つはちゃんとスペイン語にはマレモト(Maremoto)という単語があるのに何故、ここにきてツナミと呼び変えなければならないのかと言うもの。
ところで、チリではアリカとアントファガスタ海岸に津波検定設備があるそうです。


(スポーツ)
1)サッカー選手の災難
チリ大学はチリではコロコロと並ぶ人気チームです。その05年の選手の給料予算が発表になりましたが、最高水準にあった96年のなんと5分の1です。
(当時月1億7千万ペソだったのが、今年は月4千5百万ペソ――-7百万円)
それでもその給料が遅延、未払いになるのですから。プロの選手も大変です。


以上


新年の計は元旦にありといいますが、さて今年の計画は。みなさんどうですか?
私は、第3作目の小説(9月11日)を仕上げること、4月のマラソン挑戦、それに眼の調子が悪いので眼科に行く。これが3大計画です。
昨年末、会社の年末パーティで、頼まれて20分ほどショーをしましたが、日本語の歌も歌ってくれと言われ、長崎は今日も雨だったを歌いました。その説明をするときに、長崎と広島は原爆の落ちたところで、年月がたってもその地には何かが残されており、その人生の神秘を探して人が尋ねてくるとしました。翌日、何にもの人から、昨日の歌の歌詞はわからなかったが、きっと素晴らしい内容なんだろうねと言われ、頭をかきました。
会社でイドロ(アイドルの意味)と呼ばれることもあります。もっともこれをいうのは一緒に食事をしている職工さんです(秘書のおねえさんではありません)