チリの風 その106  05年1月2日―8日

しかし暑い日が続いています。35度を超える日もありました。そんな日に、野外でタイヤの検品をしているとさすがに、もう年ですから、仕事がきついと思ってしまいます。しかし、そんな外の仕事を毎日続けている建設業界の労働者諸君とか、露天で行商している人からすれば、私は甘いとなるのでしょうが・・・。でも暑いです。


(政治)
1)トップはやはり彼の話題。現在外国でもっとも有名なチリ人、ピノチェットさん。最高裁から、放免権を認められなかったことから、とうとう自宅逮捕になりました。
また事務所などの家宅捜査を受けてしまう。さらに息子と娘、さらに私設秘書も取調べを受け、本丸から出城まで丸裸になる日が近い。
調査結果の発表では、彼の口座には(さらに隠し口座も見つかっていますが)今まで言われていた金額よりかなり多くの金額が見つかっています。
しかし軍が動かないのはどういうことか?動いたところで、国民の理解は得られないと見ているのか、もうピノチェットを見限っているのか?それとも最後は政治判断に持ち込むことを政府と協議済みなのか?

2)公共事業省関連
国会議長が、大臣を批判して、議長職を辞任させられている事件は、決着がつきました。下院がとうとう彼の辞職を承認しました。それも、彼は与党側なので、通常なら、野党が不信任、与党は信任を投票するはずですが、今回は与党が不信任、野党が棄権と、全く理解できない投票結果でした。大統領は彼と元議長との仲直りを図る周囲の動きを抑え、自分は彼と面談する気持ちは全く無いと冷たい反応。
一方、辞任した大臣が中央銀行の頭取になる件は、野党や国民が難色を示すなどの大スキャンダルにはなっていません。

3)離婚法が発令されてしばらくたちました。その次に、労働時間短縮法が成立し、今回はセクハラ禁止法が上院で成立。人気取りなのか、チリ国会も世界の動きについていく力が出てきたのか・・・
13年間、審議が続けられたこの法案は下院にまわされ3月には新法案になる見込み。
ところで、今年から週48時間労働が45時間に短縮されました。しかしこれに従わないとして数社が罰金を課せられそうですが、それらの会社は、自分たちは法律を遵守している、間違っているのは政府だと戦う姿勢。で、問題になっているそのやりかたは昼食時間を延ばし、労働時間は確かに45時間にしながら、実質拘束時間は昨年と同じというもの。
薬局やスーパーはこの方式で、人員の増加と開店時間の縮小の両方を防ごうとしたもの。裁判になってどう結果がでるだろう。


(経済)
1)貿易黒字
2003年の貿易黒字は30億ドルでしたが、04年にこれが3倍の90億ドルに。
何しろ98年から6年間で輸出額は2倍の320億ドルですからね。
もっとも本当の話は、輸出の約半分は銅で、その価格が1年で2倍になったのが輸出額激増の理由ですから、銅の価格が通常レベルだったら、貿易黒字は昨年の2倍にしかなっていなかったのですが・・・それでもすごい!

2)チリの経済成長に伴い、チリ国民所得も増加の一方
2004年の推定数字では、チリの国民一人当たり所得は5802ドルになり、世界第54位。一昨年の4573ドルから27%アップと大幅に上昇。これはチリ経済の発展とチリペソが堅調で対ドルに切り上げがあったことが寄与している。
ちなみに日本は36184ドルで、世界9位にランクされている。日本とチリの差は毎年接近している。
さて04年の年間インフレは2.4%と発表されましたが、この物価上昇の理由の3分の1は石油価格の上昇が理由だったとか。さて石油価格の安定とドルの安定が今年05年の経済動向のキーですが、どうなるのだろう?

3)エネルギー危機
昨年の冬、アルゼンチンからの天然ガスの供給が一部削減になり、町工場の一時閉鎖など、社会全体が多大の迷惑を蒙りましたが、なんと今年は年初から、問題です。  
今夏の暑さは異常で、アルゼンチンでもクーラーの使用が極端に増加した結果、天然ガスの消費増が顕著になり、チリ向け輸出を30%削減せざるを得ないというもの。去年の冬と似たような見解。さてチリ政府、この問題をどうさばくのか?

(一般)
1)クスコのインカの壁に落書き
チリでは建物の壁に落書きがしてあるのは珍しくありません。ちゃんと犯人が捕まらないのがその理由でしょうが、落書きが犯罪との意識が足りない(少ない)からでしょう。ところで二人のチリ人がクスコで落書きをして逮捕されました。2−3年の有罪が見込まれていますが、これに対し、ラゴス大統領がそんなに目くじらを立てず国外追放にしてほしい、大それた犯罪ではないのだからとコメント。
ペルー側はこれに対し、ラゴス大統領の見識を疑うと態度硬化。さてどうなるか。

2)連続バス事故
まずサンフェルナンドで深夜、バスが歩道橋に激突し11人死亡の大事故、続いて南部で崖に転落4人死亡のバス事故が連続。
歩道橋に衝突したバスを調べたところ、タコグラフにしかけがあって、時速は100キロ以上記録されないようになっていた。つまり事故時、120kで走っていたかもしれないわけだ。これに関しては、バス会社をひんぱんに訪れる機会のある私としては、機械を改造することはこのバス会社だけでなく、他にもあるだろうと言っておきます。運転手が個人的にするのと会社ぐるみでやる所があるようです。速度を上げると事故の可能性は増えるが、目的地につく時間は短縮されます。すると、あのバス会社はいつも早く着くと評判になり、客数が増えるということになります。
さて今回のケースは、事故の起こったのは朝3時半で運転手の居眠りか、バスの整備不良か、速度を上げすぎたドライバーの運転ミスなのか?

3)チロエの教会修復
世界文化遺産に認定されているチロエ島にある幾つもの元ジェスイット派教会がよる年波に勝てず崩壊の危機になるあることは既にお知らせしたとおりです。それらの修復のため、インテルアメリカーノ発展銀行が提出した19億ペソのうち既に半額が使用され5つの教会が修復されました。残りの資金はキンチャオなど他の教会にあてられるらしい。キンチャオの教会は2年前に見に行きました。島で最大規模のものですが、いかにも明日崩れますという風情でした。今年もまた3年連続でチロエの教会を見に行きたいな。
ところで、政治家のピニェラがチロエ島の15%に当たる14万ヘクタールを購入したことが発表されました。しかし金持ちは何でも好きなことが出来るということですね。

4)バケーション
スペイン語ではバカシオンですが、普通使われるときはVacacionesと複数にして使われます。つまり休暇は一日ではなく何日もまとめて取るものだということです。
さて最近の統計でチリ人は毎年夏に休暇を取る人64%、2年おきにとる17%、時々取る14%、取れない5%となりました。休みを取って海辺(とくに第5州)に行くのが一番人気があるそうです。
観光客が増えて、観光地で貸し出される家の値段が急に高騰している由。一番人気の高いプコンなんて、最高給クラスの貸しハウスは1ヶ月、200万ペソとか。つまり毎日7万ペソ、ホテル並みの値段ですね。

5)チリ料理の起源
どの料理を皆さんは知っていますか?

A)カスエラ
マプチェ族のコルとスペイン料理プチェロの合わさったもの
スープのなかに鶏か牛肉が入っています。

B)セビッチェ
アリカ地方ではずっと昔から、生の魚を唐辛子だけを香辛料にして食べていた。
(これってチリ料理?)

C)クラント
チロエ島では6千年前(!?)からこの料理が知られている。
私のアパートで8日の晩も友だちと、この料理を楽しみました。
クラントのほんまものは穴を掘って、そこへ熱くした石を並べ、その上に肉や野菜、魚介類を並べ、葉っぱをかぶせて蒸していくものですが、家庭料理としてはなべの中にそれらの具を並べ、それに少量の水とワインを加え、とろ火で長時間火にかけると出来上がります。

6)アジア津波
チリ人でもこの津波で死亡が確認された人がでてきていますが、その中の一人フランシスカは新婚旅行の途中でこの津波にあったとか。残念ながら死体が見つかり、彼女のものと確認されました。

7)カトリック教会の責任
神父がセクハラ事件を起こし、起訴、有罪になった事件で、裁判所は、被害者への賠償金をその神父が支払うよう命じ、責任はカトリック教会が肩代わりすることになるだろうとの予想は外れました。その神父が裁判所の出した判決通りの巨額の賠償金を支払えるわけが無く、教会が逃げれば、被害者にすれば喜びも中くらいということになるのだろうか?

8)ラブ・パレード
もう10年以上も前から同名のパレードが欧州で行われています。ドイツが発祥の地のようですが、DJを使ってテクノポップの音楽で踊るというもの。サンティアゴで初めてのこのフェステバルに10万人の若者が参加したらしい。この暑いのに。


(スポーツ)
1)コロコロの監督が首になりました。
その理由が面白い。彼は、チームを運営する管理組合が(既に破産状態なので管財人が入っている)ろくに選手の補強をしてくれないことを批判して、こんなチームでは南米のクラブ対抗戦、リベルタドーレスカップで勝ち目が無いとコメント。
これに対し、監督はすべての試合を勝ちに行くのが仕事。それを始まる前から勝てないだろうといってしまえば、監督の責任は果たせないというのがクビの理由。
選手は、彼をかばう立場に出て、トーナメント開始直前の合宿練習を拒否する動きを見せていましたが、次の監督が先月までチームの中心だった選手になったので、騒ぎは一段落。

2)パリダカ・レース
正式にはパリ・ダカ−ル間ではありませんが、毎年、年始めに行われるこのレースは自動車、オートバイファンには人気のレースです。チリからはオートバイの部にデ・ガヴァルドが出ていますが、残念ながら、事故を起こし、途中で棄権。優勝も上位入賞も出来ず。

以上