チリの風   その638  2015年7月20日―26日

今週もいつものように楽しい毎日でした。
土曜日のサッカー教室はいつもより少なめだったのでの練習最後のゲームに小さな子供も最後まで試合参加しました。ゴール前まで詰めたら最後はシュートですが、そこまでは行くのになかなかゴールが決まりません。うれしかったのは一部の子供だけ光るのではなく、ほとんどの子供にチャンスがあったことです。ゴールが決まらないと私は大げさに悔しがります。子供はもっと悔しく感じるでしょう。それが次の一歩につながるわけです。
日曜日は5人でマラソン練習。そのあと9月の発表会目指してアンデス民謡の練習会。最後近くに雰囲気が良くなり盛り上がりました。

(政治)

1) 大混乱
同じことを書いているようですが、毎週問題が複雑化、もしくは悪化しているのは事実です。
バチェレットに実力がないことから、政府・国会運営がちゃんと行われず、与党側もこのままでは次回の選挙で痛い目に合うと、政府に逆らうような言動を見せ始めています。
バチェレットの一番の護衛は共産党で、彼女の公約を全部実現させようとしています。予算の問題からすべての公約実現は無理だと新大蔵大臣がコメントすると、彼を罷免して他の大臣が必要ではないかと言うコメントも出てきます。予算のことでチリ社会の改善計画を中止・延期するのは認められないと言うのが彼らの論理です。
与党の中から無理はしないほうが良いのではと言う反論があると、それでは共産党は与党グループから離脱しますよと脅迫じみたコメント。現在保有している大臣や各省のディレクターの職をみすみすと捨てるとは誰も思わないでしょうが。共産党のコメントに対し、「チリは皆が思っているほど基盤がしっかりしてるわけではなく、それを無視して国民に夢をばら撒くごますり政治をするなら、教育にも、格差の是正にも、社会の発展にも悪い影響を与えるだろう」とコメントする識者もいます。
 バチェレットの精神状態が悪いと言う報道は以前にも出ましたが、もう身内も信用できないようになってきてますます落ち込んでいるようです。テレビのニュースに出る彼女を見てももう老人ですね。顔のしわがひどい。彼女は医者なのだから心身ともに気を付ける必要があることは理解していると思いますが、そうでもないようです。前内務大臣、前大蔵大臣が検察に呼ばれました。今は証人のようですが、風が変われば訴訟の対象になりえます。その時はバチェレットにも強い影響が出ます。
2) 教育問題
国会で新教育法案が可決されましたが、その前日の教育委員会で、法案を棚上げする動きがでました。与党側の議員にもそれに賛成が出て、採決がどうなるか危ぶまれました。
政府は野党側に連絡を取って法案成立に協力を要請するありさま。
教員組合も二つに割れていて、共産党系のグループは法案賛成、反対グループは法案否決を目指し、国会議事堂に両グループが乗り込み野次の応酬。下院委員長が聴衆席の沈黙がなければ議事は進めないと何度も呼びかけました。
結局法案は成立しましたが、全く支離滅裂で法案の内容について国会内、党内、組合内で理解しあっていないことがよくわかります。明日の月曜日に教員組合が全国大会を開催し、ストの継続問題と委員長の罷免を話し合うとか。スト参加者の7月の給料は平均で30万ペソほど下がるようですが、手取りが半分になったら応えるでしょうね。
3) 火傷問題
もう29年も前になりますが、軍事政権時代に反軍事政権デモがあったとき、二人の若者が軍隊のパトロールにつかまりました。軍隊の車で空き地に連れ込まれ、そこでガソリンをかけられた後に火を放たれました。一人が火傷で死亡、もう一人は大やけどを負いました。
それに関与した軍人側に秘密を守る約束ができ、これまで検察が情報を手に入れる手段がなかったのですが、一人がそれを白状し、今週、6人の元軍人が起訴されました。
殺された若い写真家の母親がバチェレットに、「あなたのお助けが必要です。犯罪の真実を明らかにするため、私の横にきて裁判を見守ってください」と要請。バチェレットはその母親を助けたい気持ちはあるでしょうね。しかしサッカーのチリ代表を助けるのとその被害者の母親を助けるのはかなり状況が違いますから、じっくり考えているでしょう。
もう一人の大やけどを負った女性は顔がまだやけただれていますが、カナダに住んでプロとして仕事についています。
 ニュースにピノチェットがこの事件についてコメントしているのが報道されました。軍隊側としてはその二人は火炎瓶などを持っていて、事故でそれが破裂・火災を起こし二人の生命に影響を与えたと全く逆の見方をしています。ピノチェットがテレビに出てくるのは久しぶりでした。白状した元軍人はピノチェットの言ったことは全くの嘘だと証言しています。検察は元軍人を起訴し、裁判に入ります。
似たようなケースですがチリのフォークソングの代表のようなビクトル・ハラも軍隊に殺されています。その事件でも元軍人の自白が出て、裁判が始まる可能性が出てきました。 もう40年も前のことですが、こうした問題が出てくると突然時間が止まってしまうようです。
私は北大時代に全国学園闘争を経験しました。日本なら、警察に調べられても殺される可能性はなかったと思いますが、チリでそれをやっていればあの世行きだったでしょうね。

(経済)

1) 為替問題
1ドルが661 ペソまで来ました。過去6年半で最悪の数字
銅の価格がポンドあたり2.37ドルと最低レベルまで落ち明るい見通しがありません。
ところでチリの銅の生産価格ですが2005年にはポンドあたり0.9ドルだったのが、2014年には2.2ドル。140%のアップで年間では毎年10%の上昇でした。それでもまだチリの銅産業は赤字になっていませんね。
2) 工業生産指数も経済指数も全部低め、落ち目、下がり目と言う状況で、どこまで落ちるかわかりません。サッカーで優勝した時の興奮した雰囲気はどこに消えたのかな?
もっともいつも言っているようにチリがいくら不調と言ってもアルゼンチンやブラジルよりずっとマシと思いますが、違うかな?

(一般)

1) 家屋の販売
チリ全体で、特に首都圏で今年は家屋の販売が伸びています。そうか景気が良くなったのかと考えるのは間違い。来年から家屋の売買に消費税がかかることになったからです。それを避けて今年中に家屋を購入しようとしているわけ。家の販売よりマンションの販売が伸びています。なんと合計で前年対比20%以上とか。逆に言えば来年は売れ行きが激減するでしょうね。
ところで6月はサッカーの南米大会があったので、チリを訪問して来た外人観光客を含め小売業の成績が伸びたと思われましたが、残念ながら逆でマイナスの数字になったようです。
2) デモ隊員の死亡
コデルコの鉱山サルバドールで働く下請け労働者がストに入り道路封鎖などをしていたところ、警察と衝突が始まり、警官の発砲で一人の労働者が死亡しました。不思議なのは発砲された弾丸が重機のローダーに当たって跳ね返ったのが労働者に身体に入ったことと、1発ではなく30発ほど発砲されたことです。
この道路封鎖で町に食料やガソリンを積んだトラックが入れず住民の生活に影響していましたが、日曜日に一部のトラックの通行を認めたとか。その町で実施されるはずのサッカーの国内リーグ戦は延期になりました。そこのチームが前シーズンの優勝チーム、コブレサルです。しかし下請け企業の労働者がコデルコの一鉱山を封鎖し、その城下町をコントロールするのは自然なことでしょうか? デモとかストは理解できても力で一つの街を思うように動かすのは認めがたいのですが。その鉱山のマネージャが正社員が鉱山に入れないのでメンテナンスなどがどうなっているわからず危険な状態だと言っています。
サンティアゴでは逆に犯罪者が警察に発砲。警官が生死の淵をさまよっています。それから高価な車が狙われる事件が多発していますが、最近、有名人も狙われテニスのマス、サッカーのロハス(先の南米カップの選手)、昨日はフロリダ区の区長もやられました。
3) 大気汚染
政府の打つ手が当たらないので、大気汚染問題は一向によくなりません。この日曜日、準非常事態宣言が出ました。以前なら週末に、そんな宣言が出ることはなかったのですが。 木曜日の準非常事態の日に山歩きをしていました。10時ころはセントロ(中心部)はスモッグに覆われているのに東部はきれいな空気、それが12時ころになると東の方までスモッグが上がってきました。山の上は清浄でも、街に降りると私たちは汚い空気を吸っているのが良くわかります。

(スポーツ)

1) パンアメリカン大会
チリは金メダル5個で第10位に終わりました。アメリカ、カナダに勝てないのは当然ですが、ベネスエラやグアテマラより低いのは不思議な気がします。サッカー以外のスポーツにチリは目が向いていないのでしょうね。
2) サッカー
国内リーグ戦が始まりました。コロコロ、カトリカは初戦を飾り、チリ大学は引き分けでした。
先に飲酒運転で事故を起こしたビダルは法廷で指示された奉仕活動を実施しました。青少年にやる気を出させるセミナーとか、消防署に西院入りのユニフォームを寄贈するとか。今日、ドイツに飛んでバイエルン・ミュンヘンに入団とか。  次のワールドカップ予選が10月から始まりますが、チリの初戦はサンティアゴで対ブラジルです。どうなるかな?


以上