チリの風 その639  2015年7月27日―8月2日

いよいよチリは冬本番の8月です。日本は熱中症の夏本番でしょうが。木曜日にサンティアゴに雨が降りました。その後の青空は素晴らしい。チリ国歌のように青空と雪に輝いた山々、大気汚染がなくなりますからね。それがいつまでも続けばよいのですが。
久しぶりに今シーズンの新記録を出そうと気合を入れて一人でマラソン練習をしていると太ももに痛みが。すぐにスピードを落としました。がっかり。山歩きも今年28回目。週に1度のペースで山に入り自然を楽しんでいます。日曜日は雨で仲間と走るマラソン練習は中止でした。

(政治)

1) 共産党の狙い
共産党はバチェットを潰そうとしているのではないかと考えています。彼らが一番政府に忠誠心があると今まで書いてきましたが、バチェレットの公約を何が何でも全部実行させようとする共産党のやり方は現在の「新多数」連合を混乱させ、公約実行が不可能になった段階で組織が解体する可能性があります。その時に、次の大統領選挙で「新多数」から共産党と敵対するキリスト教民主党を削除し、共産党社会党で政権を狙うと言うのが私の考える筋書きです。深読みしすぎかな?
そのチリ共産党がコロンビアのゲリラ組織ファルクと共同闘争をしていたことがメールなどから明らかになっています。現在の党首の名前も出ていますから、チリ社会で反共産党の動きが高まるでしょう。もちろん共産党はコロンビアの平和を願ってファルクとコンタクトしたが、武力闘争をチリで行うためではないとコメント。両者の間で取り交わされたメールが明らかにされましたが、同志、反帝国主義、闘士など時代遅れの文言が連なっています。
前大統領候補のマテイはバチェレットをこの件で裁判所に訴える動きを示しています。既に2008年にコロンビアからこの話はチリに出されていますが、当時の大統領だったバチェレットはテロリストのファルクと組んでチリのマプチェ闘争を裏から支援した共産党の責任を何も問わず、おまけに今回の政権ではその共産党を与党の中に入れたとしています。
政府側は大統領選挙に負けた彼女はかわいそうにバチェレットをねたんでそんな訴訟を考えているのかとコメント。

しかしエル・サルバドール鉱山から始まったコデルコ国営銅公社の下請け労働者争議は他のマイン、チュキカマタやエル・テニエンテに波及し、大問題になっています。
コデルコは下請け労働者の雇用条件をどうこう言う立場にないとコメントしていますが、彼らの10%を本社採用に切り替える動きはあります。
その労働争議の後ろに労働組合連合がいますが、その会長は共産党員です。これが他の私営の鉱山に飛び火すればどうなるのかな?
2) 明日の月曜日、新多数連合の大集会が開かれます。現在の混乱した政情、失われた市民の信頼感、公約の実現性など問題は山積でそれをどう解決していくかと言う集会になります。政府関係者と与党関係者全部が集まる大集会です。
しかしその前に共産党に疑惑がでましたし、バチェレット自体も息子夫婦関連の土地売買問題で野党側から厳しい追及を受けていますから、始まる前から前向きの姿勢ではありません。
そうそう右翼側も同じような新右翼合同大会を開催する予定。大同合併かな。

(経済)

1) 欠損
この6月の国家収支が0.3%の赤字になったと報告されました。これは2009年以来のことです。収入は4.2%増加したのですが、支出が8.6%も増えたために起きたとか。税収入が伸びないとこの傾向が継続しますね。それでもその6月の経済成長率は、まだ未確定ですが、予想では2.2−2.7%で、少し上向いてきました。
今週、経済セミナーが行われ、現在政府が進めている改革案の調整(改革案の見直し)が討論されました。大蔵大臣は経営者側の不信感を軽減することが重要課題としましたが、前大統領のピニェラは政府案の変更が最重要事項と主張しました。彼はまた立候補するつもりですからね。
2) 失業率が6.5%と安定しています。
さてペソが674ペソまで下がり、今年に入ってからの下落率は11%になり、これはブラジル(22%)やコロンビア(17%)などと並び世界的に高い数字になっています。
銅の価格は低め安定ですが、中国の経済停滞がその原因と専門家はコメントしています。しかし今年の5月頃、銅価格は今よりずっと高いポンド3ドルに近いところにあったわけで、その後、6月、7月に中国に大転換があったとは思えません。つまり中国の銅の需要が急激に減少したからと言う理由はあまり信憑性がないですね。需要供給の問題ではない、薄暗い後ろの世界のやり取りなのでしょう。

(一般)

1) デモ隊焼き殺し事件
29年前に反軍事政権デモの参加者を軍用車で連れ出し、ガソリンをかけた後、火をつけた事件が注目されていますが、アメリカ政府からそれに関連した文書が公開され、それによると当時のピノチェット大統領はこれに関し戒厳令を引き、口を開かないように陸軍に指示を出したとなっています。
彼の時代に行方不明もしくは殺害された人間の数は少なく見積もっても3200人となっています。一説では3万人です。 時のリーガン大統領はこの事件の後、軍事政権継続を望まず、民主化の動きを応援したと言われます。
これに関連して元軍人で有罪判決を受けた人間が収容されている特別刑務所を廃止するよう要求が出ています。特別待遇をするなと言うことですね。
またその頃の軍による殺人・拷問などを調べた調書が50年間公開されないことになっていますが、これを即時、公開するよう要求が出ています。
右翼側の政党は共産党の問題に目がいかないよう持ち出されたことだとクレーム。どっちもどっちかな?
これはバチェレットに直接かかわってきます。前の政権の時もバチェレットは人権問題に積極的にかかわらず、軍隊を敵に回すことを避けてきたからです。自分の父のことを忘れたかのように。
2) 5年前の鉱山事故をもとに作られた「33人」と言うハリウッド映画が完成しました。その試写会に向け、監督・俳優がチリ入りし、土曜日にモネダ宮殿にバチェレットを表敬訪問し、夕食を楽しみました。あれから5年ですね。
私は一部の人間は助かるだろうが、大半は死ぬと思いましたが、間違いで、全員救助されました。チリの救助陣も大したものですね。その33人のうち、何人かは現在も他の鉱山で働き、何人かは自営業を営み、何人かは失業状態ととか。人生はいろいろあるわけですね。
3) 教員組合のストは終焉し、授業が始まりました。最後は腰砕けで、何を2か月もかけてやってきたのか、分からないありさま。世間の批判に勝てなかったわけですね。
しかしまだこの問題は続きます。今までは12月になったら夏休みが来ましたが、この長期ストで、12月も来年の1月もクラスが続いたら、不平不満が続出でしょうね。