(政治)

1) 学生運動
教育問題が一向に解決しません。もう3ヶ月目。教育大臣を入れ替えて雰囲気が変わるかと思ったが、学生・教師組合側は一体となって、提示された政府案を拒否し、更に闘争を継続しています。今週の木曜日、全国レベルで大掛かりなデモがあり、多数の逮捕者を出しました。政府関係者がデモの許可をしないと発表しても無視され、デモ隊が集結して警察と衝突したもの。その夜、デパート(ラ・ポラルとリプレイ)の倉庫が略奪・火事に見舞われる。同じ暴徒でしょう。      
暴力行動と平行して市民の間で鍋たたきが始まりました。これは反政府の行動としては古い歴史があり、最初はアジェンデ政権のとき、その次はピノチェット政権、そしてこれが3度目の登場です。
ところで教師組合のリーダーのガハルドは内務大臣のヒンスピーテルはユダヤ人で、彼のやっていることはイスラエルの暴行と同じと批判しました。彼はパレスチナ系なのかな?
彼らの要求の中に、これ以上政府補助を受ける私立学校を増やさないというのがありますが、それなんか、どこかのグループの利益を守るためではないでしょうか?教育を商売にするなと言いながら。
公共の乗り物に年中学生運賃が適用されるようにと言う要求もあります。現行システムでは休みの期間中は学生は大人の料金を払います。
彼らの要求の究極は教育は社会の責任だからすべて無料にせよですが、それを受けるには多額の予算が必要で、目標に近づくためには増税が避けられません。(これが次の問題点になります)
政府の対応がいまひとつすっきりしませんが、このままでは学生の全員留年、大学入試の中止と言う異常事態が起こること、教育費の無料(もしくは政府補助の大幅増額)のためには増税は不可欠で、チリの教育のレベルは低いと怒る両親はそのためには自分たちに責任がかぶさってくることを考える必要があります。
それにしても3ヶ月も学生が闘争を維持するのは通常ではありません。彼らの後ろに誰がいるのか、考えてみましょう。通常なら社会党とか共産党が思い浮かびますが、今の彼らにはそんな影響力はありません。チリは市民の半数以上が左翼だと思われていましたが、ピニェラが勝ったように、チリの社会主義はイメージだけで現在の社会党はほとんど存在価値を見せていません。それでは誰がこれほど強烈に学生を援助しているのでしょう?
日曜日に同じ趣旨の家族デモがあり、政府に認められてサンティアゴの中心地を歩きました。来週の火曜日、更に学生デモが計画されていますが、この運動はどこまで行くのか想像もできないほどです。
それから同じように乗り合いタクシーのグループが道路を占拠して抗議行動しましたが、最近のサンティアゴの中心街は抗議行動のない日が少ないほどです。
私のアパートの近くでも公園の近代化に反対するデモ隊がでています。日曜日、公園地下に駐車場・レストラン街を建設する計画案の賛否を問う投票が行なわれました、私は今のままのほうが良いと思っています。即日開票の結果80%の市民が開発反対を表明しました。
 
2) ピニェラの人気
もうとどまるところを知らず人気度が下がっています。今週の発表では彼を支持するのはわずか20数パーセント。民政化が始まって以来の最低の数字。それから国民の間で、自分は右翼とか左翼とか分類していたのはもう過去の話で、現在は大半の国民が自分の政治色を明らかにしません。どっちでも無いということでしょうね。
ピニェラは増税法案を準備しているようですが、それは命取りになるかもしれませんね。頼みの与党側からも見放されて。元大統領のフレイはアルゼンチンを訪問して、ピニェラ政権は統治能力を失い崩壊寸前とコメントしました。
いつも書いていますが、政府を支持する数が少ないだけでなく野党を応援する市民の数はもっと少ないのは当然でしょう。全く役に立っていないのですから。


(経済)
1) 株式市場
昨年はチリの株式市場は世界的に見ても素晴らしい成長を見せていましたが、今年は全く逆に下降を続け、今年の始めにマークした最高記録から22%の下落。世界経済危機の2008年ころの水準に戻ってしまいました。              しかし世界の傾向はチリと同じで株式市場の落ち込みぶりはまるで安定化に入る兆しを見せません。株や投資信託に金をつぎ込んでいる人は眠られませんね。       
ペソは460ペソに近づき、ドル離れははっきりしています。原油の価格は一時100ドルを越えていましたが87ドルとひどい落ち込み。銅は意外に堅調で4.3ドルの高値安定。
この先、ロシアみたいにドルをやめて金にしようという動きが目立ってくるのでしょうか。アメリカ国債なんか紙屑になるのかな。
2) チリ経済の成長
しかしチリの経済は堅調です。今年の前半を8.1%の成長で終えました。専門家はこの数字は今年中継続するだろうと予想しています。銅の価格が高値安定する限り国庫の増収は確実で、2012年も確実に成長を続けるでしょうね。その意味からもチリの株式市場が落ち込んでいるのは不可解です。