チリの風  その153 05年11月28日―12月4日

 チリの風  その153 05年11月28日―12月4日

とうとう12月になってしまいました。今年も終わりかと思うと寂しい気持ちがこみ上げてきます。これは年齢のせいでしょうね。若い年代なら、逆にクリスマスに年末年始、バケーションシーズンが目の前だと張り切る気持ちが先に立って、1年が終わると言うような感傷はわいてこないでしょう。そうか、私も年を取ってしまったのか。老い先短い人生を十分に楽しまなければ・・・・と言いながら、マラソンと登山に体力・気力を使い果たす毎日です。


(政治)
1)今週は話題が何もないような毎日でした。一面トップの大ニュースは何もなし。(一般の項目に出てくる船の沈没が最大ニュース)もちろん表面化しないだけで、舞台の裏では大変な剣幕でぶつかり合っているのですが。それは来週の選挙の後に予想される政界大編成のことです。
それはさておきラゴス大統領はエクアドルに飛び、キトで向こうの大統領と面談。そこでチリとペルーの二国間の国境線は現行のものが法的に認識されたものとの合意を取り付けました。もっともペルーがチリとの国境を一方的に変更したとき、チリが合意しなかったので実効力がありませんが、今回のチリとエクアドルの合意も、ペルーは全く意味のないものと反発の声明を発表しているので有効なものとはなりません。双方とも自国民を相手のスタンドプレーと言うわけですね。
ところでラゴスの親戚の男性が公共事業省問題で起訴されていましたが、この事件に関し、最高裁判所の判断は、国(公共事業省)にも一般(民間)にも被害を与えていないし, 自分の利益を図った行動でないから起訴を継続するのは適切とはいえないと判断しました。最終決定は来週のようですが、これを受け大統領の奥さんは(起訴されていたのは彼女のいとこ)裁判所の適切な判断を高く評価したいと大喜びでした。
しかし彼はその時ラゴスの大統領選挙の参謀をしており、民間業者から金を受け取って選挙運動したことになっています。ただし疑惑を持たれた金額は日本円で100万円以下の小額ですが・・・。(もちろんそれだけじゃないはずです)
任期の最後に、したい放題のラゴスですね。もうこの件はこれくらいにしてくれないかなんて誰かに言ったのでしょうね。

2)大統領選挙関連で少し。
何と野党側RNの下院候補がサンティアゴ西部地区の与党DCの上院候補を応援しました。これは怒るでしょうね。野党の友党のUDIも自党RNの上院候補者も。これはピニェラがDCの票を1月の決選投票のとき取り入れたいので、行っている擦り寄り作戦の一つで、友党,自党との摩擦も省みず思い切った勝負に出ているわけです。確かにDCの内部は完全に分裂しており,チリが民主化した時DCから出た初代大統領エイルウィンはDC党首の作戦失敗がピニェラを助けていると手厳しい批判。そのアホな党首はDC党員の中には左翼に投票するのを嫌がる傾向があるんだよと発言。その左翼と自分たちは与党連合を結成しているのに?
野党側の二人の候補者は、どちらも自分が一次選挙に勝ち残って、1月の決戦投票に出ると言い張っていますが、このため両党の関係は日に日に悪くなっており、負けたほうの党(候補)が決選投票のとき相手側の応援をするかどうか微妙な雰囲気です。友党といっても・・ね。UDIの中心人物はピニェラが1次に勝ったら私ら全員バケーションに入るよと馬鹿にしています。
与党側も野党側も分裂寸前。政界大編成が見えてきました。

じゃここで今回は候補者の二人を少し紹介します。与党側のバチェレット(最後のトははっきりとは発音しません)は軍人高官の娘です。しかし彼女の人生は通常ではありません。73年の軍事革命の後、なんと父親はピノチェットと対立して殺害され,彼女は母親と一緒に逮捕され,収容所に。その後外国に難を逃れて出国。チリに戻ってきてから極左グループの男性と同居。ただし彼女は非合法活動はしていないようです。大学では医学を専攻。現在は社会党の党員で、すでに厚生大臣, 防衛大臣を歴任。社会党の候補者としてDCの候補と対決しましたが、DC側候補が投票の前に下りたので彼女が与党側統一候補になったもの。チリ初の女性大統領を目指す。
もう一方のRNに属するピニェラはチリを代表する企業家でランチレ航空、チレビジョン(テレビ局)他を経営。貧乏な生まれではないが,親からの遺産で財を成したのではなく自分の才覚で企業家の地位を確保している。
国会議員を経験した後、前回も大統領候補に名乗り上げたか,UDIからラビンを推すための圧力がかかり事前におろされ選挙戦にさえ参加できず涙をのむ。兄弟の中に軍事政権時の元大臣や歌手がいます。
先週も書きましたように,私の予想はバチェレットとピニェラが残って決選投票。僅差でバチェレットが勝つ。どうかな?

3)隣りの国のフジモリさん
彼の婚約者がチリに来るというニュースはチリの新聞に出ましたが、彼女がついたと言う報告はありません。まさか彼女は非合法に入国することはないでしょうね。もしフジモリが自由な身なら非合法にアンデスを越えて入国, 彼と会ってからまたアルゼンチンに出ることも考えられますが,フジモリは囚われの身ですからそれは無理、じゃ,まだ入国していないのでしょうね
それから一番新しいペルー大統領候補の人気投票で、フジモリは候補者の中に入っていません。入っていないから2位にも3位にもなれません。露骨に政治的なやりかたですね。このまま消えてほしいってこと?
ところでペルーで裁判所から出頭命令の出ているチリの企業家ルクシックですが、それらに関連してモンテシノ(元フジモリの懐刀)は権力の悪用について有罪を認め, 早く結審するよう裁判官に依頼。これならほんの1−2年の刑ですみそうですから。
しかしこいつの存在はフジモリにとって頭が痛い。何しろ秘密を全部握っているのですからね。
ところで、そのルクシックに対する裁判は彼に有利に進んでいるようで、起訴の取り消しが見込まれています。


(経済)
1)先週, 少し値を下げた銅ですが、今週は再び勢いを取り戻し, 再度新記録を更新。このためペソの対ドル価値が高まり(と言うよりドルの値打ちが落ちて)毎週のようになってしまった安値更新を継続中。今は1ドル510ペソに接近中。
これ以上ドル価格が落ちないよう、中銀が市場に介入すべきと言う声が高まっています。
日本円はドルに対し、その値打ちを落としていますが、チリペソは強い。1円5ペソだったのが、このままだと1円4ペソになってしまいそう。つまり1ドル・110円・550ペソだったのが1ドル・120円・480ペソになるのかな?
こうしてチリ人の外国旅行熱や自動車など輸入商品の購買熱が高まるわけです。
8月から10月までの平均失業率は8.1%に下がり,同期間では過去5年で最低の水準。

2)しかしチリの好調の原因は銅の高値にあるわけで,さらに考えると中国がチリの銅を大量に買い付けているのがその主因ではないでしょうか。となると中国のバブルがはじければ、チリの好調は消えていく。じゃ、来年当たり,やばいのでは?
今年、世界中で死刑になった人間は5000人くらいだそうですが,中国だけでその80%くらいとか。それはないでしょう。
いつまでも中国共産党が支配して、人口の1%?くらいの人間が楽な暮らしをするなんて続くわけがありません。そんな単純なことではないかな?
さて中国製の自動車がチリに輸入されます。ちゃんと売れるかな?タイヤに関して言えば、中国製は国別では既にブラジルと並んでチリ市場のトップシェア-を争っています。昔は日本製のトラックバス用タイヤが重要なシェア-を占めていた時期もあったのですが・・・。


(一般)
1)今年の冬、第8州のアンツコで陸軍が冬季演習中、吹雪のため40名死亡と言う事故がありましたが、今週第10州のバルディビア近辺の森林地区で27日の日曜日に渡し舟が強風で沈没、多数の死亡者を出す事故が発生しました。
湖の奥に小さな村があって、そこには道が通じていないため本土(まるで島のようです)に行くには湖を渡し舟で行くしかありません。そのボートは定員8名のところ、30人が乗っており、強風により転覆したもの。4日の夜現在で7名死亡、10名行方不明。現在懸命の捜索中。  
しかし分かりますよね。船長がもうこれ以上乗らないでくださいと言っても、そこで後2時間も待たされるのかと思うと、まだ乗れるよと言って無理やり乗客が入ってくるなんて光景が。もちろん救命具もたくさんはないし、事故っていつもそういうちょっとした隙間にあるものなのでしょうね。
村の住民はほとんどマプチェ(先住民)の人たちで、そこでは電気も水道もない生活です。学校がないので子供たちは週日は下宿して学校に、週末は自宅に帰る生活です。その日も、下宿に戻る子供がたくさん乗っていました。
私は自然が好きだなどと言って、いつかの夏休み、チロエ島の先のさらに小さい島を訪問しました。その島には車が1台もないところでしたが、それでも夜になると自家発電の電気でテレビを見ていましたから,この村よりは進歩していました。
この村人のように完全に自然の中にどっぷりつかり、文明とかなりかけはなれた生活を、楽しめるかどうか自信がありません。でもチリの中にはそういう環境で住んでいる人が多くいるのは確かです。なにしろその子供たちは、船を下りてから,自分の家までまだ1−2時間歩くと言うのですから。

2)地下鉄の開通
先週も第2号線が北側に2駅開通したニュースがありましたが,今週はもっとインパクトの大きい4号線の開通。サンティアゴは人口増加が目覚しいですが,その中でも南側への発展が顕著です。その地区の人はセントロ(街の中心)に行くのにバスを使っていましたが, 同じサンティアゴの中で1時間半とか2時間と言うような気の狂う長さがかかっていました。つまりそれだけ交通渋滞してバスが通常に走れないと言うことですが、今回の地下鉄開通で(一部未開通の箇所があってそこはバスによるピストン輸送)何とそれが半分以下の時間に短縮。往復で毎日1時間以上の時間が浮いてくるのですからね。乗客の喜ぶ顔がテレビに映っています。
私個人の通勤の様子は、朝6時45分にアパートを出て、バスでセントロのイタリア広場まで。そこで従業員送迎の通勤バスに乗り換え8時15分に会社に着きます。そうか私も1時間半か、街の一番東に住んでいて,一番西にある事務所に行くのだから。自家用車で高速道路を使えば,この半分の時間で行けるのですが、私は自動車を持っていないので。

3)泥棒
泥棒なんて世界中どこでも同じようなものですが、チリではこんな泥棒がいます。高速道路が急速に整備されてきているサンティアゴですが、その高速道路と一般道路を分ける金網が盗まれます。道路傍に設置されている緊急電話の部品が盗まれます。道路脇の電柱の電線も狙われます。雨水を流す大きな樋が盗まれるのですが,それはアサード(焼肉)をするために盗むとか。
合計すると何千万ペソの損害ですよと高速道路を運営する会社の重役が渋い顔。しかも一般ユーザーの危険が増えるわけで, 単なる泥棒ではすみません。困ったものですね。
続いて,泥棒の話。高層マンションの上層階にも泥棒が入るようになったのですが, エレベーターを使わず上まで登っていくので、スパイダーマンのようだと言われています。そんなグループの中に少女によるグループがあり、スパイダー・ガールと呼ばれています。で、そのグループの一人はなんと今年に入って3回つかまっています。もちろん捕まらないほうが多いから、毎月泥棒しているのでしょうね。しかし年少ということで、刑務所には入らず保護監督処分になりますが、監督はもちろん行き届かず、こうして毎月泥棒を続けているわけです。彼女にとって、生きるのは簡単でしょうね。いつまでその好運が続くのか?
さて法律が改正になって来年中ごろから14歳から17歳の年少者でも刑務所に収容することが可能になりました。彼女にとってはピンチです。

4)携帯電話の数が急増
チリの携帯はその数1100万を越え,人口の70%以上が持っていることになっています。つまり高校生以上なら全員が持っていることになるのかな?

5)大学入試
来週の月曜と火曜日に大学の統一テストが実施され全国で18万人が受験します。

6)海開き
もう暑い日が続いていますが, 公式に海開きになりました。ビーチにはたくさんの人出です

7)アントファガスタで原油を漏洩した船が2600万ドルの罰金で出国を認められ、パナマに向け出航しました。
近くの漁民が泣いています。誰も魚を買わなくなり、私たちに補償は1ペソもなく,どうやって生きていけばよいのだろうって。


(スポーツ)
1)サッカー
その日、今回も入場券が手に入らなかったので私はサッカー場にいけませんでした。南米カップの準決勝のホームゲームです。
カトリカ対ボカ・ジュニア-。カトリカファンは盛り上がっていました。で,私はいつものマラソン練習に、カトリカのユニフォームを着て出発。私の練習コースはサッカー場の近くを走るので、練習中,少し大げさですが、通る車が全部私のユニフォームを見てクラクションを鳴らします。大声で「カトリカ・グランデ(すごいぞカトリカの意味でしょうか)」と叫んでいきます。まぁ中にはフジモリと叫んでくる車もありましたが。急な坂を登って、苦痛で顔がゆがんでいましたが、猛烈に応援され、東京マラソンで復活した高橋尚子の気持ちでした。
ところで、肝心の試合。それがなんと大方の予想を裏切って0対1の敗戦。テレビで試合を見れなかったので,ラジオを聞いていましたが、敵のゴールにがっかり。それでも引き分けにならないか(もし1対1の引き分けならカトリカの決勝進出)と固唾を飲む時間が続きましたが,そのまま試合終了。球場を埋め尽くした満員のファンもがっかりして家路を急ぎました。
敵地で2対2の互角の勝負をしたのにホームで引き分け狙いの守りの姿勢なんて,不愉快な試合運びにがっかり。
もちろん翌日、会社につくと、私の事務所にコロコロ・ファンが入ってきて、嫌味たっぷりの慰めの言葉をかけていきました。
一方,プロリーグのプレーオフは準々決勝が終わりました。準決勝の組み合わせはカトリカ対ラ.セレ-ナそしてラ・ウー対コブレ・サル。となると決勝はカトリカ対ラ.ウーの大学チームの間でしょう。
ところで、サッカーの試合とは関係ないのですが、チリサッカー協会の会長はサンチェスです。色が黒いのでチョコパンダ(チョコレート色のパンダ)と馬鹿にされています。しかし名前はともかくこいつがくせもので協会を牛耳って実権を離しません。今週,彼を批判したコンセの選手を出場禁止処分にしたら、選手会が怒り出し、会長が辞職するまで戦おうとなっています。
あのサラスもそのグループに入り会長を厳しく批判。現在のチリサッカーの低落は彼の責任というわけです。どうなるかな?


以上