チリの風   その154  05年12月5日―11日

 チリの風   その154  05年12月5日―11日
表紙http://www.geocities.jp/peter_fujio/の写真を私の知人である飯田さん撮影のオソルノ富士に替えました、しかし彼の腕はすばらしい。この写真は偶然の一瞬をとらえた自然のものなのか創作ものなのか疑うくらい。チリの南部って魅力のあるところです。私も退職したら、南部に住もうかなと考えています。
さてサンティアゴは週日,曇りの日が続き,暑くないので助かると思っていたら,週末になって天気が快復,カンカン照りになりました。気温は34度まで上がってもう木陰のないところは歩けないくらい。で、日曜日の選挙も、暑い日差しの中でおこなわれました。


(政治)
1)もちろん、最重要項目は大統領と国会議員選挙の話ですが,結果はどうだった?それはさておき先ず前哨戦の話から。
いろいろあるのですが、バチェレット候補応援バスがチリ南部から首都を目指して運行中,衝突事故が起こり,その事故で5名死亡。その翌日、選挙運動最終日で大掛かりな集会が予定されていましたが,彼女はそれを中止しました。その中止指示をした彼女について,人道的な立場から最適な決断だとするものや、最重要政治集会を交通事故で中止にするような神経ではとても大統領職は勤まらないとするものまでいろいろでました。
それから選挙戦の終盤に、立て看板の候補者の顔を破る、切り裂くという行為が横行したのですが、なんとそれを野党側の友党であるはずの2党の運動員がお互いに行っていたことが判明。自分が勝つより相手を蹴落とすほうが大事?
それから面白かったのが、野党二党間で、もし二人のうちのどちらかが第2次の決選投票に勝ち残こった際の取り組みを決めようとしたら、ピニェラは全面協力に決まっているではないか,いまさら約束なんか意味がないと蹴りました。もちろん、彼は勝つつもりですから,勝ったらその次点で弱いほうの処分を決めればよい。勝負の決まる前に相手に有利な条件で決めるのは馬鹿らしいとの考え。
さて4名の大統領候補の顔ぶれですが、もう一度記載しますと、与党側の政党はキリスト教民主党(DC)と社会党系のPS,PPDの三党が主なもの。ここから社会党系の女性候補のバチェレットが選挙戦に参加。一方,かって軍事政権を支えていたグループの野党は最も右翼のUDIとやや中道のRNの二党。ここからUDIのラビン,RNのピニェラ。その他に共産党を含む系統のグループからヒルチの計4名が候補者になっています。

2)で、その結果は?
まだまだ、その前にラゴス大統領は任期最後のメルコスール会議に出席のため,ウルグアイに飛びました。そこで同僚のブラジル大統領から過分の誉め言葉をもらい上機嫌。しかしその会議の主役は同メルコスールに参加を検討中のベネスエラのチャべス大統領で、石油を武器に南米をアメリカに対抗する基地にする試みを着々と実行中。もちろんアメリカは逆にこの動きをどう利用するか考えながら見守っているのだろう。しかし石油は権力にとって何よりも素晴らしい武器になるものです。
さて大統領がチリに戻ってからの話ですが、先に出たバチェレット候補の応援バス事故に関して、同じような事故が過去に起こった経緯から、記者がラゴスにこの橋の監督官庁たる公共事業省の設計もしくは運営ミスが事故の原因ではないかと聞いたところ急に怒り出し馬鹿も休み休みに言え、みんなの努力をしらないのか?だって。テレビのニュースで見て私はあきれてしまいました。こんな男がチリの歴史に残る名大統領と諸外国から絶賛されているのか?
さらにその公共事業省関連の不正問題を審議していた最高裁判所は最終的に担当裁判官が起訴していた事件をすべて訴訟に値しないと結論づけました。この件ではラゴスの訊問も予定されていただけに、これで彼が留置所に入ると言う悪夢から開放です。しかし彼は運がよい(もしくは権力の行使が上手い)ですね。もちろんこうした司法の判断に疑問をていする声はでていますが。

3)さてお待たせしました。結果です。
しかしチリのメディアの選挙報道は異常でした。朝6時から全チャンネルが一日中実況中継です。そこまでやる必要があるのか?
ところで、私は朝マラソン練習をすませてから投票所に行きました。その体験から次の三つの提案をします
1) 選挙投票の義務化を廃止し自由化する (不投票の人間の罰金をなくする)
2) 男女別に投票するのを止め,同じ投票所で男女が投票できるようにする
3) 選挙立会人を役所の人間に任せ、一般人の強制登用を止める
もちろん、こんな提案を日本語でチリの風に書いても意味はありませんが、それくらい私は現行制度を疑問視しています。
奥さんとご主人がわざわざ違う投票所に行くなんて、何の意味があるのかな?
それから投票所の変更も止めてほしい。私は1988年にチリに民主主義が回復してからずっと投票していますが,今回まで同じ地区に住んでいるのに投票所が3ヶ所変わりました。今回また変わりましたが、私はインターネットで調べました。でも国民全員がその方法を取れるわけがありません。現にその日投票所であった近所のおっさんは以前の投票所にいったら張り紙があって新しい場所に変わりましたとあったのでしようがなく歩いてここまで来たと言っていました。

結論。 1次で50%を越える候補がでず、2次決戦に持ち越し。
    2次決戦に残ったのはバチェレットとピニェラ。まぁ私の予想どおりでした。

さぁこれから政界再編成を含む楽しい見ものが始まります。決選投票は06年1月15日です
一方の上院、下院議員選挙は与党の圧勝に終わりました。あまり与党が勝ってしまうと楽しみが少なくなるのですが。

4)隣国の話題
もちろん最初はペルーのフジモリ。彼の話題は完全に消えています。もちろん意図的に出させないのでしょう。ペルーとチリの間の協定でもあるのかな?で、今週,記事になったのは元フジモリ党の幹部がサンティアゴを訪問し,彼と面談。これくらい。同じサンティアゴにいるのに全く彼のニュースに触れないのが不可解。少なくともその元幹部はフジモリが元気だったこと,来年始めにペルーでの選挙運動の開始の話を記者に語っていました。しかしペルーではフジモリ派の運動が地方を中心に蜂起?しはじめていますが、なんだか昔、彼が粛清したセンデロ・ルミノーソ運動みたいで笑ってしまう。
一方,選挙が間近に迫ったボリビアではコカ生産業者代表のモラレスが強そうで、国の混乱が心配される。選挙の争点になっているのがチリとの関係ですから、わが国としても注目しないわけにはいきません。他国の事ながら、彼らがチリを無視しても、もしくは対立しようとしても同国にとって有利にならないと思うのですが・・・


(経済)
1)物価上昇率
11月の物価上昇率が発表になりました。0.2%で、ほとんどインフレはないです。隣国アルゼンチンが高いインフレに苦しんでいるのとは対照的です。今年の通算では4.0%になります。

2)銅価格の上昇
何回,このフレーズを書いたか覚えていません。しかし私にはその理由が未だに理解できません。石油の値段が一段落しているのになぜ銅価格だけこのように上昇しつづけるのか?チリのメディアにもこれからもまだ上昇するだろうと言う記事は見られましたが,その理由について明快で説得力のあるものはありませんでした。
で、ドルは毎週のように対ペソの価値をうしなっています。
その結果,チリの11月の輸出は37億ドルと前年対比なんと40%アップ。いったいどこまで好調が続くのか?1―11月までの合計は360億ドルで前年の25%アップ。それにしても銅価格の上昇がここまで影響しています。


(一般)
1)鉄道の開通
ラゴス大統領も臨席して第9州と第10州の間に鉄道が開通。ヴィクトリアとプエルト・モンの間で400kmを6時間半で結びます。
運賃は約700円。早く首都サンティアゴと第10州まで直行の特急が走ると良いのですが。

2)先週の風でお知らせしたチリ南部マイウエ湖の渡し舟の遭難は行方不明者の死体が発見できず困窮の度合いを深めています。何しろ湖の深さが2―300メートルとかで湖底をロボットが探っていますが,結果が出ません。しかし住民が少ないことがサービスの低下の原因で政府の援助も期待できず,これからも同じような事故が続くことが心配されます。
例えば8州に川を渡るのに毎日空中に張った一本の鉄線にぶらさがった箱を手で動かしている場所があります。いつなんどき鉄線が切れるなり、強風で箱がゆれて数人乗っている乗客が川に落ちる事故が起こるかもしれません。こうした厳しい状況はチリの南部に散見されています。

3)殺人事件
殺人事件なんて別に珍しいこともないですが、このケースはちょっと違います。イキケで貧しい木造の長屋に住んでいた70歳の老人が8月から行方不明になり,捜索していたところ死体が発見され,犯人も見つかりました。この老人、町で物乞いをしていたらしいのですが、なんと調べると50億ペソほどの資産家で金や銅鉱山の採掘権も持っていたらしい。それらを巡って悪いやつに殺されたのですが、そんな何億円もの金を持っていて貧困生活をしていたなんて?
老人は金の価値がわからなかったのか、金の使い方が分からなかったのか,本当に貧困生活を楽しんでいたのか不思議です。

4)観光
観光産業は各国にとって重要な産業ですが,遅ればせながらチリでも力が入ってきています。今年の見通しで総売上は45億ドルですから、チリの11月の輸出額を上回っています(向こうは1ヶ月、こっちは11ヶ月の合計ですが)とくに多数の大型観光船のチリ入港が目を引いています。もっと外国人がチリを訪問してほしいものです。日本からももっと観光客が繰ればよいのですが。
さてヴィーニャ・デル・マルと言えばチリを代表するリゾート地ですが、そこに5つ星のシェラトンホテルが完成。来週から開業とか,以前あったホテルがつぶれたのを買い取って新築したものですが、写真を見るだけでも立派なもの。古いホテルの時期に何度か入ったことがありますが(宿泊は1度だけで,後はコーヒーを飲んだくらい), 海に面した素晴らしい立地条件を持ち、観光客の人気のホテルになるのは間違いありません。 

5)12月8日はカトリック聖母マリアの祝日です。
で、サンテァイゴから約80kmの距離にあるロ・バスケス教会へなんと60万人もの信者が集まりました。中には前日から歩いて教会を目指すグループや教会の近くについたらそこからほふく前進で汗と涙を流す信者など、毎年恒例のチリにおける熱狂的カトリック信者の存在を示しました。


(スポーツ)
1)サッカー
いくらチリが参加できないとは言え、Wカップはサッカーの世界最大のお祭り。で、そのドイツ大会の組み分けはチリでも話題になりました。私は日本代表として,ブラジルには既に今年のコンフェデ杯で引き分けの実績を示しており、クロアチアにも何とか引き分け1勝2引き分けで決勝進出としています。ごめん豪州には勝つつもり。
しかし3連敗でもしてしまえば,また職工さんグループから昼食時,散々馬鹿にされることになるのだか
(参加も出来ない君たちから批判の言葉を聞く耳はないねと言い返しますが・・・・)

2)ところで国内リーグは準決勝ですが、1回戦は地方で行われ、アウェーのチリ大学はコブレ・サルにまさかの敗戦。カトリカはラ・セレナと引き分け。次は来週、首都でホームの2回戦となります。
またラ・セレナに準準決勝で負けてしまったコロコロはチーム崩壊の様子で、主力選手の放出、監督コーチの交替など大地震

国内は悪いニュースばかりですが,チリ人が監督するスペインのビジャ・レアルは好調に勝ち進み,国内リーグは現在3位、欧州選手権もベスト16に入り破竹の勢い。何でも4万人の小さな町で,彼らの試合があると3万人がサッカー場に集まるとか!!


以上