チリの風  その124 05年5月9日―15日

アパートに暖房が入りました。集中暖房ですから部屋の温度を20度にセットすると一日中20度が保たれます。チリのアパートもなかなかなものです。


(政治)
1)しかし驚きましたね。今週のトップニュースです。大地震が二つも。
その1は右翼側の推す大統領候補ラビンが、なんと88年の軍事政権継続可否の選挙で、今のように人権問題、銀行の不正貯蓄が顕在化していれば自分はピノチェットに投票しなかったと発言。右翼側をあわてさせました。UDI党首は既に歴史になってしまった事項を過去に遡ってコメントするのは適正なやり方とは思えないとやんわり釘をさしましたが、新聞の投書などでは過激に彼を非難するものも掲載されています。まぁ裏切り者ということです。
彼はそのあと自分の良心にそって発言したからこれを再度変更するつもりは無いと確認。さて私の推定では、彼はこの発言の前に野党側の各党に連絡し、事前了解を得てから実行している。
このコメントの真意は、
a)与党間の予備選挙で左翼社会党系の候補が勝つだろう。
b)すると中道キリスト教民主党の票はどこにいくか?
  キ民党の投票を取るために極右の票は切り捨てても、中道にスタンスを変える必要がある。で、ピノチェット批判を行う。
  さてこの先どうなるか?

その2はそのラビンを大統領選の候補として推していた野党RN党が突如方針を替えて自党からピ二エラを候補に決定。これで右翼陣営も二人の候補が出現したわけです。しかしこれには驚き、桃の木、山椒の・・・です。

2)我らのピノチェット問題
彼の個人弁護士がチリ銀行から訴えられました。チリ銀行のアメリカ支店は連邦政府から虚偽の申請を理由に多額の罰金を課せられていますが、それをその弁護士に払わせようとするものです。彼はピノチェットが持っていたお金を自分の名義でチリ銀行のアメリカ支店に預金したもの。チリ銀行がその際何故正当の過程を踏んでこの資金の出所を調べなかったのか疑問が残るが一応、チリ銀行としては損出をカバーできればと訴え出たもの。
彼はもちろんピノチェットに泣きつくでしょうが、さぁいよいよピノチェットの正念場がちかい。
とはいえまだ神通力はあるようで、今週も小癪なピノチェットの息子が収監されそうだったのが何とか逃げ切りました。
その他、元軍隊の秘密組織DINA長官が左翼グループの誘拐殺人などすべての組織犯罪はピノチェットの指示によるものと発表しましたが、インパクトはなかったです。

3)国際問題
チリは現在、人権問題でキューバと、領土問題でボリビア(そしてそれを応援するメキシコ、べネスエラ)と、武器の輸出問題でペルーと懸案事項を持っています。
さてペルーでおこなわれたアンケートではペルー人の大半はチリを敵と認識しているとか、ペルー人実業家はトレド大統領の反チリ政策はチリとの経済協力にとって逆効果と反対しているとかが流れてきます。
まさに4面楚歌です。ところで隣国同士が上手くいかない他の例としてブラジルとアルゼンチンが困った状態です。今週ブラジルで開催されたアラブ・南米国際会議で、アルゼンチン大統領は事前のスケジュールを変更し、ブラジルに知らせず突如帰国してしまいました。この理由として現在メルコスール(南米共同体)としてブラジル・アルゼンチン間は完全に無関税ですが、ブラジル製品の競争力が高いため、ほとんど一方的にブラジル品がアルゼンチンに流入しています。これを何とか是正させてほしい(一部輸入関税の設定)と要求したところブラジルがそれではメルコスールの終焉を意味すると全く相手にしてもらえなかったことが理由らしい。
ところでその会議に出席したパレスチーナの大統領マゼンはそのあとチリを訪問。チリには南米最大級のアラブ系社会が存在するらしい。たしかにアラブ風な名字を日常よく耳にする。


(経済)
1)世界60カ国の競争力をスイスの会社が毎年発表していますが、今年のそれによるとチリは昨年より1ランクアップで19位でした。
しかしその下に日本、イギリス、ドイツが並ぶのですが、チリの競争力が日本の上とはどうしても信じられません。それによるとチリの問題点は最新鋭科学技術力が低い、また強い点は製品の価格が低い。これって永久にチリ人労働者の給料が上がらないということなのでしょうか???

2)鉱山開発
カナダの鉱山会社社が申請している第三州にあるパスクア・ラマ鉱山の開発は環境保全問題から進展がありませんが、これに関し同社は同鉱山のある地区の郡、村役場にたいし同地区の振興開発費用の援助を発表しました。
はっきりいえば、文句を金で買いたいということでしょう。さてどうなるか?このニュースが出たとき、私は出張でちょうど第3州のコピアポにいましたが、さすがに即時全業界に流れました。全国ニュースになったのはその後です。例のセルロース工場との関連もあって政府の対応が注目されます。
それから鉱山に関する新税(ローヤリティ)は新法案成立の後も、中小鉱山はこれの対象にしないなど政府と鉱山会社の間で微調整が続いています。


(一般)
1)銃の所持保管
チリでは一般人の銃の所持が認められています。はっきりした数字はないようですが10%以上の家庭で銃が保持されているようです。その他に非合法に保持している家庭も多いとか。
ところで、今週そのために2件の事故が起こりました。1件は子供が銃を持って遊んでいて、間違っておかあさんを射殺。もう1件は高校を退学させられた学生が家にあったライフルで自殺というもの。家庭に銃を持つのは強盗が侵入したときに自衛するというためでしょうが、統計上では、このように犯人と向かい合って使うのではなく間違って使われて事故を起こす原因になっているようです。従って、一般人の銃器の保有について政府は新法案を検討しています。

2)ビーバーの暗躍
今年始め私は世界の最南端パタゴニアに行ってウシュアイア旅行記を書きましたが、その中にカナダから持ってこられたビーバーがパタゴニアに住みついてしまったと出てきます。
そのビーバーが北に進出してプンタ・アレナス周辺の森林をあらすので政府は害獣として駆除を始めるとニュースになりました。しかしウシュアイアからプンタ・アレナスまでバスで12時間もかかるのに、ビーバーは海を乗り越え北を目指して進んでいるようです。まさか北といっても故郷のカナダを目指しているのではないでしょうね、渡り鳥のように。
しかし私のような素人の目にはバーバーが木を切るといっても自分たちのダムを作るために倒すわけで、輸出むけに切る人間とは問題の質が違うように思えますが・・・。
ところでパタゴニア観光でアルゼンチンに大きく遅れをとっていたチリですが、ここにきて体制を取り直したようで、プエルト・ウイリアムス(ウシュアイアに面したチリ側の町)から観光船の運航を始めるようです。

3)新しく開通したばかりの首都圏北湾岸高速道路で、道路を逆送した車が対向車と衝突。一人が瀕死の重症をおいました。運転していたのは女性で酒酔い運転だったらしく批判をあつめています。彼女は道路標識が悪いため進入方向を間違ったといっていますが。


(スポーツ)
1)サッカー
a)6月のオランダにおける世界選手権に出場する20歳以下のチリ代表はアルゼンチンで同国代表と親善試合をおこない1対1で引き分け。この次は愛知で日本代表と戦います。
b) よかった!リベルタドール杯に出場中のチリ大学はアルゼンチンで引き分け、2回戦に進出。次はブラジルのサントスです。
c)公式戦の試合中、審判を殴ったウニオン・エスパニョラのゴール・キーパーが22試合の出場停止処分を受けました。もう今年の出場はないことで実質チームからクビを申し渡されました。

2)テニス
a)ATPハンブルゴの大会でチリから参加した2選手は1回戦を勝ち抜きました。特にマスの場合は世界ランキング3位のロヂックに勝ったので、これは楽しみと思わせましたが、二人とも2回戦であえなく敗退。オリンピック以降、まったく目が出ない状態です。
b)で、今週始まった国別世界選手権の3連覇に赤信号。
2年連続でこの大会に優勝したチリは今年もと甘い夢を見ていましたが、1次予選の同じ組みにアルゼンチンが入り(彼らのメンバーは世界1で何とランキング10位までに3人が入っている)彼らに勝たなければ決勝進出できません。さぁどうなるか

少なくとも15日の第一戦にはチェコを軽く破りましたが。


以上