チリの風 その141 05年9月ー5日―11日

しかし週末になると天気が崩れるパターンが3週間続いています。土曜日の息子のサッカー試合は今週も流れたし、日本人学校の学芸発表会も霧雨の中でした。もっともこっちのほうは内容が充実していて、館内は熱気に包まれていましたが。しかし日曜日は一転、快晴。で、マラソン仲間と16kを本気で走ったら,今シーズンの最高記録。周りのアンデス山脈は真っ白です。


(政治)
1)先週、フォークランド島戦争について書きましたが、読者の反応が多数ありました。140回になるチリの風の歴史で一番でした。
その島は現在イギリス領ですが、それ以前にフランス、スペインもこの島に関連しており、他の地域と同じく、領土問題なんて勝ったものが正義と言う例です。(ジャマイカは現在英語を話しています。その島は当初スペイン領だったのですが、それがイギリスに奪われたわけです)
それからアルゼンチンがチリ領土侵入という問題について,新聞に論文や投書が多く掲載されました。アルゼンチン国民一般には反チリの風は無い,最近話題になっているのはすべて嘘っぱちだとするものと、これとは全く逆に1978年にサッカーのワールドカップで勝った時、興奮した国民がこれでWカップは自分たちの手に入った。次はイギリス,それからチリに勝つのだと叫んでいたのは忘れたのかという投書もありました。
大統領候補の一人バチェレットは今週アルゼンチンに飛んで、キヒネル大統領と面談し両国共通の戦略を考えたらしい

さて今週の話題としては大統領府と司法界の戦いと言うところでしょうか。ラゴス大統領が、警察がせっかく犯人を逮捕してもなんだかすぐに仮釈放されてしまっているが、そういった裁判所の方針は容認しがたいと噛み付いたら、元裁判官が大統領恩赦で、重大犯人として刑務所に入っていた諜報機関の元司令官が刑務所から出されたのはいかがなものかと噛み付いた。
そぁどっちが正しいのでしょうか?

2)大統領選挙がいよいよ本格化。候補者の届出が開始されました。

3)我がピノチェットは最初人権問題から、その後不正貯蓄問題に加え、今週は武器の不法輸出の点でも捜査が開始されました。武器を不法に売った代金が彼の懐に入ったのだろうと言うこと。
 さてもう彼は老齢で、いつ死んでも不思議ではありませんが、次期の大統領(になるだろう)バチェレットは彼の葬式は国民葬のような形では行わないときっぱり。これには右翼が噛み付いて、国を破綻の中に陥れたアジェンデの銅像憲法広場の前に立っているのはどういうことかって。
 ところで、今度は同じ右翼内の争いです。86年にピノチェットが襲撃された日を記念して毎年ミサが行われていますが、それに出席したチェイレ陸軍長官がピノチェット派の人間から裏切り者として米粒などを投げられました。ピノチェット側としては陸軍が政府と最近仲良くしていると映るんでしょうね。しかしラゴス大統領は今週UDIが出した人権問題で服役中の軍人の刑罰を軽くする案を指示すると発表したのですが・・・

4)9月11日
 この日、1973年のことですが、アジェンデ政権が倒れました。自殺とも他殺とも言われますが、大統領執務室のモネダ宮殿が軍隊に包囲、爆撃された後の死亡です。それ以来、この日は反政府デモ隊と警察が大騒ぎを繰り広げると言うのが通例でしたが、それも毎年、少しずつ下火になって、今年もサンティアゴでかなりの規模のデモがありましたが、昔の激しさはありませんでした。時代の変化を感じます。


(経済)
1)ガソリン価格
 大統領が銅の高値を利用してガソリン価格安定のための基金を設立するとのアイデアを発表しましたが、これにクレームがついて銅の生産によるコデルコの利益は国民全部のもの、それをなぜ国民の一部、車を持っている人間にだけ還元するのか・・・確かに言えてるが、そこまで政府に因縁をつけなくても。 
1リットルの最高値は620ペソ(約110円)に設定されていますが、この価格はチリ人にとっては厳しい値段です。
これに関連して、飛行機会社も、航空運賃の値上げはしないが、石油代高騰分を消費者負担として求めると発表しました。国内線、国際線で異なりますが、おおむね20−50ドルとなるらしい。

2)サーモン騒動
先週、チリの風でお知らせしたようにアメリカ人実業家がチリ政府にこれ以上サーモンの養殖を増やさないよう規制出来ないかと訴えましたが、サーモン養殖はチリの重要産業だけに話題を呼んであちこちに波紋が。
チリ、ノールウェイ、スコットランド、カナダが世界4大鮭の生産国ですが、チリは最後発にもかかわらず市場を見る眼がしっかりしており、他国が鮭を丸ごと輸出するのに比べ、チリは皮をむき、骨を取ってすぐに食卓に乗せられる状態まで加工して製品を出しています。そして骨や皮は肥料として使用されており自然汚染をすることを極端に減少しているとチリサーモン生産業者組合は発表しています。
しかも欧米の生産国は消費市場に近いので製品にかかる輸送費の割合がわずか5%くらいですが、それがチリ産の場合は30−40%にもなるといわれ(それも鮭をまるごと輸出しない理由ですが)生産コスト削減にチリ企業の力が入っているのは良く分かる。
実はかなり昔のことですが、私はこの鮭の養殖用のフィシュ・ケージの売込みをしたことがあります。そのとき沿海で養殖すると汚染問題が出るが、それを避けて近海まで出ると、コストが上がってしまいペイしないと聞いていました。さてサーモン問題これからどうなるのか?

3)コデルコ
国営銅公社のコデルコは先日採算性の悪いサルバドール鉱山を閉山すると発表しましたが、銅の値段がこれだけ良いのにとか、この閉山でサルバドールの街がゴーストタウンになってしまうとか内外から反響がありました。そこで今週、急転直下で、この鉱山に大型投資を行い閉山を見合わせると発表されました。大統領選挙の前に人気に影響することは止めようなということでしょうか。


(一般)
1)国連による世界の民度ランキングが発表になりましたが、チリは平均年齢78歳、一人あたり国民所得10300ドルなどの基礎数字を元に、全体で6位上がって37位まで上昇。日本はランキングを二つ落として11位。 がんばってほしいですね両国とも。
1位はノールウェーですが、やっぱり住みやすいのでしょうね、北欧は。

2)コカイン愛用者ランキング
 世界のトップはスペインらしい(2.6%)。ついでアメリカ。コロンビアは健闘して6位(1.6%)、しかし同じ6位にチリが来るのはどういうことか?こんなランキングでトップテン入りはいやだ。全く理解できません。

3)サンティアゴの新交通計画実施までほんのわずかを残すだけですが,先日この計画に使われる新型バスを見ました。ところで、これらのバスが運行され始めると、現在走行中のバスのうち約4000台が走行禁止になります。で、政府としてそれらのバスをチリの地方に売却させるかペルーに輸出することを計画しています。

4)スパイダーガール
何だか変なタイトルですが、新聞にちゃんとそう出ています。4人組の少女が(13歳から17歳)遊興費欲しさに盗みを繰り返していたのですが、身軽な彼女たちはマンションの5階まで苦もなく登っていくと言うのです。でももう同じ罪で4回も逮捕されているのですが・・・。


(スポーツ)
1)サッカー 
その1)Wカップの南米予選でブラジルに赤子の手をひねるようにあしらわれたチリですが、この惨敗は国内で尾を引いて、選手の素質、トレーニングの内容、さらに一部の選手が夜の町に繰り出していたとの噂も出て(監督は否定していますが)雰囲気は落ちる一方です。
その中でも最悪なのは、チリのゴールキーパーのネルソン・タピアが相手フォワードとユニフォームの交換をしたことです。
おまえ、まさかそのときサインしてくださいと言ったんじゃないだろうなと言われています。私はその試合をもちろんテレビで見ていましたが、彼がユニフォーム交換をしたのは画面に出ませんでした。で、信じられるかな、それが試合終了後でなく、ハーフ・タイム終了後だったということ???

その2)一方,国内リーグの人気カード伝統のコロコロ対チリ大学(ラー・ウ)の試合が行われました。これをクラシコと呼びますが、まぁ日本のプロ野球阪神・巨人が対戦するようなもの。もう巨人が弱いので阪神巨人は人気ないかな?ラー・ウが1対0で勝ったのですが、その結果はさておき、両チームのファンが球場内外で騒ぎ、なんと死者まで出る騒ぎ。
両チームのファンが銃や刃物を持っていたからの結果で、まるでアルゼンチン・ファンみたい。試合の内容はアルゼンチンのそれより低いのに・・・・・ 

その3)南米カップに出場中のカトリカはペルーのアウェーで2対0で敗れましたが、初戦の大勝がものをいって合計得点で勝り、準々決勝に進出。
次はアメリカのチャンピオンDCユナイテッドとの対戦です。

2)テニス
開催中のUSオープンですが、チリの選手は勝ち進めずマスはベスト16にはいれず敗退しました。がっかり。


以上