チリの風 その125  05年5月16日―22日

土曜日(21日)の最低気温はサンティアゴでマイナス1度でした。それから木曜日最近では珍しい暴風雨になり、その日私は首都圏の隣りの第5州に仕事で行きましたが、往復の車の中、ワイパーがきかないほどの強い雨でした。サンティアゴの水害騒ぎはいつもの通り。もちろん近くの山はくっきり雪化粧です。水力発電のための水瓶が一杯になってよかった。


(政治)
1)5月21日というのはチリにとって単なる祝日ではありません。(イキケ海戦の日)
国会で大統領が過去1年を振り返り、次の1年をどうするかの教書を発表するのが恒例になっています。
今年で任期の終わるラゴス大統領にとって最後の演説機会でしたが、陸軍のまさかの大事故(下記の一般の項)が出てしまったので、国が3日間の喪に服すなかでの教書発表になりました。従って政府関係者を集めての昼食会などすべて中止。
さてその教書の中で目立ったのは、エネルギー関連でアルゼンチンからの天然ガスに頼る国策を変更し、石炭発電の増大、さらに原子力発電も考慮中とし、波紋を呼びそうです。石炭発電では空気汚染が現在より悪くなり危機的状況におちいるだろうし、原子力の安全性は?
演説が終わって、聴衆の拍手を受けていると大統領は感極まって、涙顔になりました。お疲れ様。
さて今週、現政権最後?の試みかもしれませんが、政府建築の低所得者用住宅で支払いが滞っている人への援助が発表されました。
8万所帯への援助となるとか。

2)大統領選挙
先週、突如、第4の候補が現れましたが、そのピ二エラが好調で、彼が戦線に登場してからの最初の投票予想で、いきなり3位になり、これはもしかすると思わされます。右翼側のエースだったラビンは候補期間が長すぎてもう一般市民から飽きられている気配があり、新鮮な彼が中道グループの票を取り入ることが出来れば、ラビンを抜いて12月の第1回投票で2位に入り、上位2人で行われる決選投票に残る可能性があります。新聞ではこの二人の比較として軍事革命が起こった73年9月11日どこにいたか、軍事政権時、どのようにそれに関わったか、88年の軍事政権継続可否の投票にどう関わったか、現在ピノチェットをどう考えているかなど詳細にわたった比較が掲載されて、さすがにマスコミも良く調べていると分かります。
さてこれからどうなるか。先月より格段に面白くなった大統領選挙です。
DC党内でも4位に低迷中のアルベアル元外相を外し、他の候補を出そうとする動きもあり、同じ政党の仲間も信用できない最悪の事態。4人入り乱れてのデスマッチになってきました。
まぁ隣国、アルゼンチン、ボリビアやペルーにくらべるとましですが。


(経済)
1)環境汚染
既に過去のチリの風でお知らせしていますが、カナダのバリック・ゴールドという鉱山会社が第3州アタカマでパスクア・ラマという鉱山の開発申請を行っています。ところがこの鉱脈が氷河層の下に位置することから、その氷河を全部取り除く必要があり、それが同地区の自然環境に与える影響は甚大で、一度鉱山が開始されると同地区の自然回復は不可能としてチリ以外の国でも反対運動が行われています。
その中で何と同社は百貨店が週末の新聞に入れる広告雑誌(チリではこの種の宣伝がはやっています)並みのものを月曜日の新聞に入れ、如何に自社が環境保全に関心を寄せているかを訴えました。私もチリで鉱山関係の仕事を25年もしていますが、これだけ力の入った宣伝は始めてみました。既に先行投資をしてしまったので、ここで事業の撤退は本社として認められないという意気込みでしょう。地域社会との協力体制を訴えるのはもちろんのこと、自然環境問題についても取り入れ水の水量自主規制とか、排水の浄化施設の整備徹底とか、コナマ(環境庁)規制の遵守とかが細かく説明されています。もっとも首黒白鳥の死亡から問題になっているセルロース工場でも政府の規制は遵守していると言っていますから、それが実際に自然破壊規制にどれだけの有効性をもっているのか私には判断できません。
またこれに関連してブラジル・アマゾンの原生林がこの1年間、過去にないほどの規模で破壊されているとの記事が掲載されました。過去にフランス・ポルトガルを合わせた面積(68万平方メートル)が流失し、昨年は2,6万平Mがなくなっているとか。地球上から酸素がなくなっていくわけです。

2)労働時間
既に法律で今年の1月から1週間の労働時間は48時間から45時間に短縮されましたが最近行われた実際の労働時間調査でもそれが裏付けされました。73%の労働者が45時間以内、22%がそれ以上となっています。

3)自動車の販売数
今年1―4月の自動車販売数は58000台で、前年対比27%アップとなり、このまま推移すると05年の新車販売台数は過去最高となりそうです。
1位のチェブロレット・コルサに2位のトヨタ・ジャリスが肉薄中。


(一般)
1)しかし日本にもこんな事故がありましたね。
陸軍の冬季訓練で山に入っていた第8州の連隊が基地に戻る途中、吹雪に巻き込まれ50人ほど行方不明(すでに20数名が死体で発見されています)
もちろん吹雪の中を行進するのは通常ではありませんから、一部の兵隊や下級幹部から、今日は避難所で天気待ちをしたほうが良いのではとの意見が出たはずですが、そこは軍隊、俺たちは一般市民ではないんだと大声を出されその隊長の指示のもと死の行進に出てしまったというわけでしょう。その他、冬季の訓練にもかかわらず、装備が軽すぎたという批判も出ています。平時の事故としてはチリ軍隊が始まって以来の死者になっています。
ついでにと言うとなんですが、1978年チリとアルゼンチンがパタゴニアで対峙したときの記事が新聞にありましたが、ある日の午後3時に攻撃開始というところまでいったそうです。兵隊の話ではビーグル海峡のその名前も知らない小さな島を争っての戦争が正に開始寸前だった由。戦争がはじまっていれば、今回の事故の死者50人ではすまなかったでしょうが。

2)この大事故に比べるとなんとも馬鹿らしいニュースですが、例のスターウォーズ3が封切りになりました。で公開初日になんと映画の主人公の服装をした客が映画館に多数集まったらしい。それも首都圏だけでなく地方都市でも。しかしチリには暇人が多いものですね。

3)サンティアゴの公共バス代が10ペソあがって350ペソ(60円)になりました。


(スポーツ)
1)リベルタドール杯の2回戦に進出したチリ大学は、ブラジルのサントスにホームで2対1と競り勝ち、来週のアウェイに3回戦進出の期待を持たせました。引き分けでも良いのですが。
一方、チリのナショナルチームは練習試合として第5州選抜と対戦し1対0で勝ちましたが、テレビで見ていて全く面白くなかったです???

2)テニス(国別世界対抗戦)。
やっぱりアルゼンチンの壁は厚かった。ドイツで開催中の世界大会ですが、4カ国で結成する1時予選で、チリはフランス、チェコには難なく破ったものの最終戦、無敗どうしで戦ったアルゼンチンに完敗、決勝進出を逃し3年連続の優勝は達成できませんでした。残念です。


以上