チリの風 その1020 2022年11月27日ー12月4日

1週間の南部の旅を終えて戻ってきました。気温は約10度の差がありました。例えば最高気温がサンティアゴは30度、プエルト・バラスは20度という感じです。今日、日曜日は首都圏で34度まで上がっています。暑い。
もちろんどこでも、そこに住む人は精いっぱいの努力をして生活しているのは当然です。何もしないで楽しい生活を送れるわけはありません。
旅に出て、いろんな人と知り合いになって話が進むのが面白いです。今回は二組ありました。先ず飛行機の中で知り合った家族(おばあちゃん、母親、6か月の赤ちゃん)がなんと同じホテルに入っていて、毎朝、朝食を隣のテーブルに座って食べながら話をしました。それからホテルの近くのレストランで毎晩夕食を取りましたが、そのオーナー親子と知り合いになり、話が弾み、大学を卒業した息子さんが日本に興味があると言うのでサンティアゴに来た時、招待したいと言いました。また日本訪問をしたいならいろいろお手伝いできるとしました。
嫁さんがドイツケーキの作り方を習うためにそこに行ったのですが、彼女が3日間その実習をしているとき、私はそのプエルト・バラスとフルティジャールの町を歩きました。不動産屋に行って売りに出ている家の見学もしました。
そうしていろんなことを楽しめるのが幸せです。

(政治)

1)ボリッチ動向
 エルウィンの像
 モネダ宮殿の前の広場に民主化してからの初代大統領エルウィンの像を立て、そのお祝いをしました。キリスト教民主党の彼が就任したのは1990年のことですが、軍事政権の後の初代大統領ですから、彼の責任は大変なものだったでしょうね。一方的にピノチェットを批判すると彼の支持者との対決がひどくなるし、逆に全くそれに触れなければ民主化運動のグループから批判を受けるでしょうから。私は彼は4年間よくやったと思います。
 来年、軍事革命50周年になりますから、ボリッチはそれをどう取り上げるか考えているでしょう。
 外交問題
 ボリビアがオランダのハーグ国際法廷にチリを訴えていたシララ川問題はチリのその川の水の使用に不正はないと結審されました。
 その川はボリビアの領土からチリの方に流れているので、チリはその川の水を盗んでいるのではないとされたわけですね。
 それからペルーからカスティージョ大統領が火曜日チリを訪問。モネダ宮殿でボリッチと面談しました。その日のうちにリマに戻りました。
 彼はもう何回も国会で大統領職を罷免されそうになる事態に直面していますが、毎日何を考えて仕事をしているのでしょう。

 検察総長の任命
 ボリッチが名指ししたモラレスは上院で否決されました。与党の中で反対票を投じた議員がいるわけですね。いつもと同じ与党内の混乱。
 彼は自分が15年間、検察官として働いていた時の情報が流されて、それが反対票になったと言われるが、それは不適切なことではないだろうかと政府を批判するようなコメントをしています。
 似たようなケースですが、新憲法に関し、だれがその憲法を作るのか、それがいつまでたってもはっきりしません。今の様子では国会で新憲法設立委員会を作り、議員が半分、一般市民が半分の数で憲法を用意するとなっても国民は喜ばないでしょうね。

(経済)

1)月例経済成長指数
中銀発表の指数は10月はマイナス1.2%でした。
来年はマイナス成長は間違いないと言われますが、それではその次の2024年にどれだけプラス成長が見込まれるのか計画してほしいですね。
大蔵大臣はチリは来年からTPP11に加盟すると発表しました。外国資本がチリの鉱山に投資をしてくれるかな?
2)銅価格と為替
 1ポンド3.78ドルとかなり上がりました。そのため1ドル885ペソとペソが強くなっています。
 1ドル1000ペソを超した時もあったのですが、10%以上もペソが強くなりました。 何度も書いていますが、このまま銅価格が上がるとチリ経済の成長率はマイナスではなくプラスになるはずです。
3)新車の販売
 11月の新車の販売は31708台と前年同月の18.7%減少でした。
 経済の停滞、市民の購買意欲の減少はもう間違いないようです。

(一般)

1)コロナ問題
 毎日の新規患者数は4000人ほどで増えることはなく、陽性率は14%ほどで安定。最近、良くも悪くもなく落ち着いています。最初の患者が出
たのは2020年3月ですから、もう33か月前です。この2週間で患者数が28%減少したと言われますが、それはPCR検査数が減少したからです。
 さて、以前は旅に出ると、ワクチン接種証明書(移動パス)があちこちで要請されましたが、今回は一度も見せることはありませんでした。
 私たちの乗った便は往復とも満席でした。ホテルの客も食堂を見ると、私たちの使った一番早い時間は満席でした。観光・仕事の国内での動きは完全に元に戻っていますね。
2)大学入試
 入試申請した学生の9割が受験とか。ところで今年の学生数は昨年より5万人も減っています。義務教育の子供が学校をやめてその後どう生活するのでしょう。この辺は政府はもっと手を入れて、コロナで親が失業したというのが理由なら奨学金を出すのがベストではないでしょうか?

3)暴動騒ぎ
 3年前の社会騒乱から、デモ隊が一番集まったのはイタリア広場です。そこに立っていたバケダーノ将軍の像はほかの場所に移されましたがその広場は荒れたままになっていました。それが今週から手が入って、広場に芝生の緑が見れます。その緑が続くことを願います。
 マプチェの問題ですが、裁判になっているマプチェグループのリーダーのジャイツルに25年の懲役が検察から要求されました。彼が有罪になって刑務所に収監されたらそのグループは全力を挙げて攻撃に出るでしょうね。木材会社だけでなく、学校・市役所・教会そして警察署を襲うでしょう。彼の弁護士はこれは犯罪問題ではなく政治問題だと政府を批判しています。政府はこの刑期は納得できるとしています。
先週のトラックのストは収まったようですが、新聞にブリオネスのコメントが掲載されました。彼はピニェラ政権の大蔵大臣をして大統領候補になった人です。「トラック業界の圧力に正当に対応できず、彼らの要求を呑む事態は政府として大きな問題を抱えている。これは氷山の一角で、きっと似たような例がほかにもあるはずだ」としました。
チリが民主化してから中道左翼は何回も政権を握っていますが、大きな問題はなく政治を動かしていました。今回のボリッチはそれらと比較してひどい状態というのはよくわかります。つまり彼の政権の基礎の新左翼共産党が知識経験が少ないので運営が上手くいかないのでしょう。


以上