チリの風 その186 06年8月7日-13日

チリの風 その186 06年8月7日-13日

今週は雨の降った日や気温が下がって寒い日もありました。それでも会社の仕事を終えて外に出ると、今まで真っ暗だったのが、少し西の空に明かりが残っています。春が近い!そう思ってマラソン練習で丘の上に駆け上がったらシルエラの花がちらほら咲きはじめているのに出会いました。
さて金曜日の夜、コンサートに行きました。モーツァルトです。先月、豪州に行ったときもシドニーのオペラハウスでモーツァルトを聞きたかったのですが、そこで3泊もしたのにあいにくモーツァルトの演奏会に当たりませんでした。ちなみにサンティアゴでは千円で聞けましたが、シドニーでは一番安い席でも1万円と言われました。


(政治)
1)バチェレットは今週、コロンビアとエクアドルに外遊。
そこで南アメリカ太平洋岸軸になるコロンビア、エクアドル、ペルーの3カ国との関係強化を打ち出す計画を明らかにしました。アンデス国家共同体(CAN)への参加も考えられています。
これは今までの大西洋をにらんだアルゼンチン、ブラジルとの軸から方向を変えていく前触れなのでしょうね。
で、メルコスール(南米数ヶ国の共同市場)との関係が微妙になり、アルゼンチンが主要メンバーのこの共同市場からチリが脱退する話が出ています。天然ガスの供給でチリと対立するアルゼンチンは自国産の牛乳、肉をチリが輸入しないと批判して、この問題を国際機関に提訴するとしました。で、そんな国と共同歩調は取れないとする声と、隣国との関係は最大限努力して友好に保つべきとの声があります。またアルゼンチンのチリへの敵対政策は国策ではなく、キヒネル大統領個人の考え方との意見もあるが、大統領が自国の政策を決定するのだから、これを個人の資質の問題に摩り替えるのは感心できない。
   因みにチリのフォクスレイ外相はアルゼンチンのガス問題についてもうすべて決着がついている。これ以上のコメントはしたくない、おまけに契約を締結したのは現政権では無いとしている。
   ブラジルとの盟友関係は温存しながらアルゼンチンとの距離を取ろうとしているのは明白。
   ところでベネスエラはチリとは全く逆にそのCANを脱退してメルコスールに加盟と言われます。
さてそれにくらべるともっとはっきりしたニュースはボリビアで、モラレス大統領が海の問題を条件とせずにチリと外交交渉を始めたいと持ちかけてきました。ペルーばかりスポットが当たるのは容認できないとのことでしょうか、チリにとっては良いことです。さてどうなるか?
それに関連して、モラレス側近の女性のご主人がチリのアリカで農家手伝いをして生計を立てていると報道あり。ボリビアの就職難も深刻ですね。彼はちゃんと大学で法律を勉強しているのに。

2)しかし政府の混乱に輪をかけた野党側の低迷で迫力ある舌戦になりません。例のチロエ島の架橋の件で、政府側は橋の建設案を廃案にしましたが、これにキリスト教民主党(DC)が反対していたため、島の中ではDCが敗北、その他の与党が勝利と感じられています。
しかし、その勝ったとされる与党の一つPPDで党内の争いからある若手議員の党籍離脱問題が起こっています。
一方の野党はRNが政府提案の選挙方式改定の議論を受けるとしたので政府はそれを評価しましたが、もう一つの野党UDIはこれを批判。
またそのRNは党首が前大統領候補ピニェラは政党活動か企業家のどちらかを選んでほしいとコメントしたことから内紛。ピニェラはちゃんと両立していることは国民が見ていると冷たい反応。
最近のチリの政治は与党野党の戦いでなく同じグループ内での争い、さらに党内でいがみ合ってまったく正常な政治的活動が見られない。
これからの大問題になるのは、例の選挙方式で(同一グループが1位2位を占めても反対側の3位が当選する仕組み)これをバチェレットは国民投票で変更したいとし、与野党を巻き込んだ大問題になりそうです。

3)さて先に出たチロエの橋の件ですが、建設案は廃棄され、その代わりに本土と島を結ぶ連絡船を新しくする、道路の建設(舗装)、病院などの医療施設の充実などを図ることになりそうです。


(経済)
1)エスコンディーダ・マインのスト継続
  労働組合員が鉱山に通じる道を封鎖して、組合員以外の労働者の入山を阻止する動きを見せました。しかし同じ鉱山でも、石炭の鉱山で働く労働者は銅鉱山よりずっと極悪な労働条件で、給料も数分の一、不公平ってあるんですよね。エスコン労働者が要求する一時金3百万円なんかどう考えてもチリとは思えない数字です。それを私が昼食時に言うと、全員賛成でしたが、中に一人だけフジオさん、いったいエスコンは幾ら儲かっていると思っているのですか?人件費なんてほんの一部なんですよという援護の声がありました。
まぁそれくらい銅の鉱山が儲かっているということでしょうが。06年の半年でエスコンのそれは70億ドルとか。確かにすごい。ストに入ると毎日1500万ドルのロスが出るそうですが、それくらい大したことないのかな?

2)エネルギー危機
  チリに危機は存在するのかと言う議論が盛んです。一番多いのはチリにエネルギー危機はない、アルゼンチンのガス問題からコスト問題が表面化しているが、それとエネルギー危機とは結びつかない。また原子力発電はチリの現状にはそぐわないと言うのが一般的です。他に問題としては大気汚染関連で、性急に許容範囲を明確にする必要があるとなっています。例えば石炭の使用が本格化すれば、大気汚染は現状よりはるかに悪くなるでしょうから。


(一般)
1)少し前、高校生が国を麻痺させた事件がありましたが、その後、一応平静を保っていました。今週、首都サンティアゴのマイプ地区などで、公立高校の生徒が区の教育責任者と面談し、教育改善がなされていないと抗議。その後デモに入りました。ここでそのグループが暴走、警察と対決するだけでなく近所の商店に侵入し商品を持ち出し、近くの建物に投石し大混乱。しかし高校生グループが商品を盗み出すのがテレビのニュースに出るのを見て、チリの将来は暗いと感じました。学校や家庭でこいつらに教育をしていないのか?チャンスがあればどこでも盗みを働くような人間が将来、事務員、工員、技術者になって社会に出て働けばどんな結果が出るか明白でしょう。悲しい。
もっとも高校生の問題にしていることは根拠があって抜本的な改革はともかく、バチェレットが約束した中で簡単にできるはずの市内バスの学生証明書の有効時間についてさえ(毎日終日使用できることにする)未だに改正されていないなど政府の熱意のなさが見える。
しかし前回の騒動で、教育大臣が更迭されていますが、新大臣も前と同じくらいアホなようで、今回の事件に関し無能振りを発揮しました。

2)個人情報がブラックマーケットに流出
厚生年金や健康保険を扱う会社から個人情報が闇市場に流出とのニュースが出ましたが、それを規制する適切な法律がないことが問題になっています。それから個人情報が流出しているのはそういった企業からだけでなく、国税庁、税関、さらに選挙名簿管理室などからも流れているらしい。どうなっているのか、この国は?

3)タバコ締め出し
来週の月曜日から公共の場所でのタバコの喫煙が禁止になります。南米でもっとも厳しい条件とか。ほんまに実施されるかな?
私の働く会社でも、喫煙者は事務所の外に出て吸うことになっていますが、横着して事務所で吸っている人間がいますからね・・・
これが来週からは、事務所内で喫煙があると政府機関に届を出せば、吸ったその本人ではなく会社が罰金を受けることになります。
日曜日、ショッピング・モールにいったら確かに一日早く禁煙のお知らせが掲示されていました。

4)政界を巻き込んだ幼児売春、暴行などの大スキャンダル、スピニャック事件はもう3年前のことです。その彼が政治家のために幼児を集めてパーティを開いたとか、それをフイルムにとったとかの罪状が、すべて罪状不十分、もしくは訴えが訴訟期限が切れてからとかで帳消しになり、年少児との性的交渉のみ有罪となるらしい。で、もう3年も拘留されているので、条件付で保釈される可能性がでてきたと報道されました。そんな人間の話はどうでもよいのだが、この事件で一人の少女が彼のパーティに呼ばれ、そこで政治家を見たと証言し大問題になりました。結局それが嘘の証言と分かり、彼女と彼女に付き添っていた神父の二人が偽証罪で有罪になりましたが、一体何のためにその偽証をしていたのか未だに不明。つまり大騒ぎをしたあげく何もなかったわけです。

5)この月曜日サンティアゴのパトロナート地区の商店街は40%の店が黒旗やパレスチーノの旗を掲げて店を閉めました。それはその店主がアラブ系の人たちで、イスラエルレバノン攻撃に抗議するもの。そのあと近くの教会でミサに参加、土曜日にはレバノン系住民を中心に集会とモネダ宮殿へのデモ行進を計画。チリにはイスラエル系とアラブ系の移民は多数いますので、これからこの種のヒッチは増加するはずです。


(スポーツ)
1)サッカー
  常連チームが勝てない状況が続いていましたが、今週はコロコロ、カトリカは順当に勝利を収め、惨めな下位位置から脱出中。
  さてイギリスのリバプールに加入したゴンサレスはデビュー戦となったチャンピオンリーグの対マカビの試合で後半残り数分の所で途中出場し、いきなり勝利を決めるゴールを決め欧州中から注目されています
来週の水曜日はコロンビアとの親善試合。さてサンティアゴのホームでどんな試合を見せてくれるか。

2)テニス
  久しぶりに素晴らしいニュース。ATPのトロント大会でゴンサレスは強豪を押しのけて準決勝まで進出。3回戦は世界ランキング4位ルビシックにも勝っています。しかし準決勝で世界1位のフェレルと対戦。これまで6度対戦して一度も勝利なし。さて今回は・・・、せっかく1セットはとりながら結局2対1でまた敗退。7連敗か。
一方、ポルトガルのシニヤー大会出場上中のリオスはとうとう決勝で昔の世界1位のマッケンローと対戦、これを軽く破って優勝しました。翌日の新聞にはリオスがビッグ・マックをたいらげるとでました。

以上