チリの風 その185 06年7月31日-8月6日
そんなわけで日本を訪問していました。久しぶりの日本、今回は友だちの飯田さんご夫妻の世話になって四国に出かけました。88ヶ所の巡礼の旅と古い神社を訪問しました。全長1300キロの88ヶ所を踏破するには2ヶ月はかかると思われますが、第9番目のお寺まで、徒歩と車で訪問。その素晴らしさに感嘆しました。神社は天の岩戸神社と立岩神社で、古の日本を感じました。そのホテルの蔵書に阿波の国が日本のオリジンとする本があって、一気に読み終えましたが、それによると高千穂とか奈良にある天の香具山も全部ここから出たものとなっています。フーム、どれが真相かわかりませんが・・・
(政治)
1) もちろんチリの風ですから、チリの政治を一番に紹介するのが順当ですが、最近の世界情勢、本当に面白いですね。手に汗を握るとか、この先を読むのが碁の盤面をにらんでいるような楽しさがあります。世界的に見れば最重要項目は中東ですが、チリのメディアでは親近感のあるキューバ関連がそれ以上のボリュームで報道されています。
さて中近東の混沌さが継続すれば世界破滅に近づく可能性さえありますが、アメリカが何を狙っているのか良く分かりません。イスラエルを助けるふりをして、その実力を超えたところまで戦線を伸ばさせ、最後は自滅するように仕向けているようにも見えます。もちろんそのときは喧嘩両成敗の形でアラブ側にも大きな被害が残るでしょうが。これで利を得るのはどこか?誰か?
チリのフォクスレイ外相は何を考えたのかチリの軍隊をレバノンに派遣してはどうかとコメント。身分相応と言うのを知らんのかな?
さてキューバのカストロの健康問題が緊迫度をましてきて、もう少しで政界から脱落の様子。カストロ抜きの困難さをキュ―バ政府が克服できるか、友だちのベネスエラがどうでるか、アメリカは例によってどの方法でちょっかいを出すのか、楽しみです。
チリを巡る国際情勢ではアルゼンチンとの対決が決定的になり、ガスの供給停止と大幅値上げを通告してきたキヒネル大統領にチリ側も反応、バチェレット大統領が糾弾の手紙を出しました。そのまま対決状態が続くのは好ましくないと判断したキヒネルは釈明の手紙を出し、関係改善を図っていますが、確かなのは、この先、チリのエネルギー源確保が見込まれた段階で、両国の対立はさらに決定的になるでしょう。
バチェレットは2年以内にエネルギ―源の確保を図り、現在の不安定な状態から脱出するとしています。
しかしアルゼンチンからの天然ガスを使用しないことになると既に投資した15億ドルが無駄になると報道されていますが、そんな甘い計算でよく自国の将来を託したものです。当時の大統領はDCのフレイですが、いまだに国会議員として働き、大統領再選まで狙っています。私ならこんな男にもう一度?と思ってしまいますが。
それにくらべるとペルーとの関係は急転直下によくなりました。ペルー大統領就任式にリマを訪問したバチェレットは最大級のもてないを受けたほか、軍隊パレードにも招待されました。何と彼女はペルー国歌を他の出席者と一緒に歌い、ガルシア大統領のそばで、まるでペルー側の人間のように振舞っていました。大統領が替わっただけでここまで極端に変わるものでしょうか?ペルー国民は先月まで、一番憎いのが隣国チリと言っていたのですから。大統領が替われば国民感情まで変わるとはとても信じられませんが、いずれにせよ両国間の経済関係の改善も急ピッチで進みそう。(しかしそのガルシアは少し前、ペルーを壊滅的状態にまで追い込んだ人間なのですが・・・、チリのフレイよりまだ悪い)
このため、なんだかボリビアのニュースが消えてしまいました。ボリビアだって独立記念日に憲法改正の大事な集会が行われているのですが。
2) もうずっと長い間続いているので、新鮮味がなく、またかと言う感じですが、公共事業省の汚職関連で、国鉄の社長が起訴されました。彼は2日ほど、留置所に拘置され、国鉄社長の職は辞任しました。
拘置所から出るときにラゴス(前大統領)の支援に感謝していますと、訳の分からないコメントをしている。チリの裁判所の無能振りにも困ったものだが、何も理由がなく現職の国鉄社長を起訴するわけがないから、もちろんこいつも何か臭いところがあるはず。
その他に国会議員のオミナミも選挙のときに失業対策費用を選挙運動に使ったと批難されているが、早く政界の浄化を図ってほしいもの。右翼も左翼も同じだが、セコイことをして金を稼ごうとするのは見飽きた。
(経済)
1) 「新記録が出ました。スポーツの話ではありません。」こう書き出すと何のことかなと思われそうですが、これはその文章の直訳で新聞論壇に掲載された大学の経済学者のものです。
つまり06年の上半期の国家経済は4,2%の黒字(60億ドル)となりこれは新記録と言うわけ。前年同期は2.8%の黒字だったのですが、何しろ銅の値段が記録破りで、儲かってしようがない状態です。
で、もう国庫に金が溢れている状態を利用して、それを単に貯金に回すのではなくどう使用するかが問題と結んでいます。
2) 7月の物価上昇率は0.5%になり、今年通年の予想は4%とか。
昨年に比べ上昇しているのはガソリン価格関連がメインです。しかたがないかな?
3) ところでその銅鉱山ですが、国営のチュキカマタで大規模な落盤が起き、生産に支障をきたしています。これで大幅に生産が落ちることは免れないが、何とか受注しているオーダー分の納入はできるらしい。
一方民間の鉱山エスコンディーダでは労働者が賃上げを要求して来週月曜日からスト入りを予告、この先どうなるか予断を許しません。給料のアップのほか、儲けの分け前をよこせとし、とにかく2800人の組合員の要求総額は38億ドル(かそれ以上)と言われます。本気かな?彼らの労働条件は普通4x4で(4日働いて4日休み)給料は4000-5000ドルと言われますから、普通の会社の課長部長レベルです。
チリを代表する2大鉱山がかかえる問題は深刻で、世界の銅市場への影響は避けられないと考えられています。
4) とうとう落ち込んできましたね。2002年から順調に伸びてきた住宅の販売が6月に限ればサンチィアゴでは19%、全国平均でも16%の減となっています。このため06年通年の売上予想は前年対比3%アップの予想を2.3%減少に変更せざるを得なくなっています。苦しい建設業界。
そうは言いながらまだ町中ではマンションの建設がさかんです。
そして、同じように、国民にこの先の見通しを聞く調査では過去5年間で見られなかったほどの苦いもので、調査に応じた3000人はこの先のチリは今までのような甘いものではないと感じています。
そこで新聞に「国家は繁栄、国民は疲労」とする論文が掲載されました。
(一般)
1) 先週は低温のため雨が雪に変わり、サンティアゴ市内にも雪が降ったそうですが、(私は日本にいました)、今週は雨が降らないので大気汚染がひどくなり、二日の水曜日、とうとう準非常事態宣言が出されました。このため触媒装置のついた排気ガス対策車が20%、それのついていない車は60%の走行規制が出ました。
その日、課内会議を実施することになっていたので、セールスマンから、自分の車を使えないため、半時間ほどミーティングに遅れると電話が入りました。雨が降らないとスモッグがひどくなる状況は改善してもらいたいですね、いつか。
その夜、公園を走りましたが、確かに空気が汚いので口を使った呼吸をやめて鼻からしました。もちろん速度は大きく下がります(そこまでして走る必要はない言われそう)
幸いなことに週末に強い風が吹き、スモッグを吹き飛ばしたので、澄みきった空になりました。アンデスの雪山がきれいです。おまけに日曜日の夜、サンティアゴは雨になり、ほんの10mmほど降ったら水害状態。情けないこと。
2) 今週の一般の話題はチロエ島にかかることになっていた橋の建設が、9億ドルと言われる高い建設費用を理由に中止になったことでしょう。これに怒った島民が船の渡し場を中心にブロックし交通を止めました。
バチェレットはこれに対し橋の建設だけが市民生活ではないとし、島民の生活重視の政策を取る発表。憤る島民を静めることができるか?
政府与党内ではキリスト教民主党は橋の建設はその費用だけで結論を出す問題ではないと再考を要求していますが、その他の与党は橋をかけろといっているのは建設業者だけだと訳のわからないコメントを出しています。
前の2代大統領が橋の建設を推進していたのは、全くコスト計算もしないで言っていたのだろうか?それにしても橋の建設は、国の発展には欠かせないものだから、もう少し柔軟に対応できないかな?国庫にはその橋を幾つも作れるほどの金が眠っているのだから。
3) 犯罪の増加
もうこのチリの風で、犯罪の増加は何度も取り上げていますが、先週、私の勤務する会社のサービス工場に4人組のピストル強盗が入りました。現金や事務用品が盗まれましたが、可哀相に秘書の女性は首飾り、指輪とか盗まれています。昼食時にその話が出て、フジオさんがいたら賊とどう対決するか見ものだったと言われました。私は過去10度以上、犯罪者と対戦していますが、それも一番最近の対戦でも6・7年前のことで、もう実戦経験が薄れていき、勝負に勝てない気がします。強盗のピストルに撃たれたとすると、仕事関連の事故でないため保険は使えないだろうし、従業員でアジア人は私一人だから、もし賊の一人でも逮捕されれば、あとで仕返しが待っているのは間違いないとか?!
じゃ、そういう犯罪に巻き込まれたら、何もしないでじっと見ていれば良いのかな?
4) バスのストライキ
鳴り物入りで登場したトランサンティアゴ交通計画ですが、旧システムとの入れ替えがスムースに行かず、苦戦していることは既にお知らせしています。今週はそのバス会社の運転手が待遇改善を要求してストに入りました。当初の政府案ではこうした不都合は新システムでは起こらないはずなのですが・・・。
5) ナショナル・ジオグラフィーと言えば、知る人ぞ知る地理歴史の分野では世界的権威ですが、それがチリのバルパライソに地震・津波が襲ったらとするシュミレーションを発表。高層ビルやエスカレーターが転覆している想像写真をだしました。これに同市市長は反応し同市に対する深刻なダメージを起こしたと裁判に持ち込むことを発表しました。
しかし津波がきたら海辺の街が壊滅的ダメージを受けるのは、別に同誌が発表しなくても自明ですよね。
6) 8月14日からショッピング・センターなど人が集まる場所での喫煙は禁止になります。ちゃんと実行されるのかな?
7) 8月16日から地下鉄4号線が営業開始。フロリダ地区とラ・システルナ地区を結ぶ線です。距離は8キロ、駅の数は6です。地下鉄の距離もドンドン伸びていますね。この調子で私の住んでいるロス・ドミニコスまで来てほしいもの。地下鉄はバスに比べると格段に便利ですからね。
スポーツ)
1)サッカー 国内リーグ戦は3試合目になっていますが、今期の特徴は有名チームが弱いことで、カトリカもチリ大もコロコロも一度も勝てません、引き分けか負けてばかりです。その負け振りは歴史的といわれていますが、負けることで歴史に残っては・・・
さて私の働いている会社は毎年、社内サッカー大会を催します。(ミニサッカー)今週その決勝戦があり、リキャップ工場チームが出場したので、私も応援に参加しました。日ごろ工場で汚れたタイヤを前に奮闘している部下の工員さんがユニフォームにかえて颯爽とボールを蹴っていました。ただ若手の社員でもちょっとおなかが出ているのが気になりましたが、7対6で勝って優勝。次の日の昼食は食堂に頼んで特別テーブルを準備してもらい優勝記念祝賀昼食会。盛り上がりました。このあたりチリの会社で働く楽しさですね。
さてチリのナショナル・チームは来週コロンビアと親善試合。ヒメネスなどの中盤がどうチャンスを作るか、前回の欧州遠征で見せたレベルを今回はサンティアゴで見せてもらいたいものです。
以上