チリの風  その142   05年9月12日―18日

チリは18(ディエシオチョ)一色ですね。18日の建国記念日を中心に国中が盛り上がっています。16日の金曜日、ほとんどの役所・会社は半ドンで昼食時、チリ料理エンパナーダとかアサードでお祝いです。私の働いている会社は毎年の行事ですが、始業前に本社社屋の前でチリ伝統のクエッカの歌と踊りを楽しみました。プロに混じって社員の中から何人か踊りに参加しました。
私のアパート近くの公園はサッカーをする若者を追いやって、今や凧揚げファミリーが占拠しています。土曜日は気温が20度にもなり、凧にぴったりの風も吹きました。チリ人にとって飲んで食っての楽しい休日です。


(政治)
1)しかし1980年にピノチェットによって作られた憲法がやっと改正されました。最近ラゴス大統領を批判するような文章が多かった気がしますが、これは大ヒットと思います。よく4年もかけて野党側の議員を説得したものです。主な改正点として大統領の任期を6年から4年に、国民の投票を得ず国会議員になった任命制議員の廃止(これはピノチェットが自派を増やすために使った作戦)また4軍(陸海空警察)の長官の罷免権確保などです。
大統領官邸で、多数の招待者を前に新憲法にサインするラゴス大統領の誇らしげな顔がテレビで報道されました。
ところで今週彼は国連総会に出席のためニューヨーク訪問していましたが、(そこで、メキシコ,ペルーの大統領と面談)この行事に参加するため旅先での行事をキャンセルしてチリに戻った由(前もって決まっている日時を忘れたのかな?)
このあと18の種々の行事に大統領任期最後の年として参加することになるわけですね。

2)大統領と国会議員(上院と下院)選挙の候補者登録が締め切られました。大統領の方はおなじみの政権側一人、右翼側二人のほかに、共産党系から一人が立ちました。この他に原住民を代表してマプチェ族の若者が立候補届け出をしましたが、彼を支援する人間の3万5千人の推薦名簿に不備があるとして却下されました。彼はもちろん、またも原住民を不法に差別する試みだと訴えています。

3)我がピノチェットは依然として衰えぬ人気を誇り、毎週のようにニュースになりますが、今週はイギリスの武器製造の会社から2百万ドルの賄賂をもらっていたと英国新聞が書きました。その授与の一番最後はなんと2004年です。政府はこの事実をつかんでいなかったと声明。ただ国家安全委員会はこの詳細を裁判官に渡していたと発表。
この他、武器の非合法輸出に関しての事件で制服軍人が行方不明死亡している事件があるのですが、それが今回犯罪対象として正式に捜査が始まりました。どうなるピノチェット!
しかしその一方、人権問題で訴えられている裁判で、木曜日,その一つの119人の左翼系人間の行方不明事件に関して、最高裁判所の合議で彼の精神鑑定の実施を担当裁判官に指示しました。つまりまただらだら時間がかかると言うわけ。そして翌日もう一つの事件(コンドル作戦)の方は彼が老齢という理由で裁判の進行を見合わせるやの見解が発表されました(一つが無理なら他の理由の裁判も無理だと思いますが,裁判所の不思議な判断にはついていけない)まだまだ波紋を呼びそうです。
司法関係の他の話題ですが、例の旧ドイツ・グループの共同体がチリ政府の監督下に置かれることになったと書きました。それが今週,裁判所からその監督を中止すると発表。これに反発した国家安全委員会の委員長が、彼女のHPにこれを全く理解できない判定と抗議。これに司法側がさらに反発して、それはたんなる政治アピールでしょうだって。いったいどうなっているのだろう。
そしてピノチェット関連の裁判を受け持っていて、最近退官したグスマン元裁判官は現在のチリ司法界は腐っているとフランスの雑誌にコメント。(これに関して、もっとおもしろいのはピノチェットを裁く立場にいながら、彼を逮捕も有罪にも出来ず、逃げるように退官した男が、辞めてから自分の職場を批判するのは意気地が無いときつい批判あり)
最近、チリの風で司法の見解を理解できないと書くことが多いですが、これは
a)私が司法について良く分かっていないことと、
b)裁判所(裁判官)に良いイメージをもっていないこと
が関連しています。
もっともチリだけでなく私は日本の裁判システムも良く知りませんが。
私がチリの司法に持つ悪いイメージとは次のような経緯から来ています。
チリに来てからこれまで10度ほど,犯罪者と対戦したことがあります。これに勝って犯人を警察に引き渡した場合、警察との関係は消え、裁判所との関係が始まります。で、裁判所は私を彼らの好きなときに呼び出し(私の都合は関係無しに)おまけに犯人と対面させるなど後々に問題が起こりうる素地を作ってしまいます。さらにこれらの義務を行う善意の一般人の私をまるで犯罪人のように取り扱ったり・・・


(経済)
1)銅の展覧会
銅が有史以来どのように世界中で使われてきたかなどを展覧したもの。
アジア,アフリカ、アメリカの各地で作られた銅面や壷が興味深いものでした。また現在の銅産業関連の情報では、なんと確認されている世界の銅の埋蔵量の39%はチリに存在すると言うのは驚きでした。,銅に変わる素材(グラス。ファイバーなど)が普及しない限り、チリの銅産業はこれからも安泰が続くわけですね。
会場の入り口にマインで使われる世界最大級のタイヤが置かれ入場者の注目を引いていました。そのタイヤって日本製ですよ。

2)ルクシック・グループが、ペルーでパスタ工場を建設しようとしてペルーの自然保護法律に引っかかり、多額の損害を出して撤退を余儀なくされただけでなく、未だにペルーの裁判がペンディングになっているのを、チリに対する差別だとして逆にペルーの裁判所に提訴しました。同じ場所でアメリカの工場は操業を許可されているのにチリの工場は不可はおかしいですからね。

3)中国との自由貿易協定はかなりすすんでいるようです。中国はチリ品の75%は即刻関税ゼロで調印したいといっているようです。

4)サーモン続き
子供と夕食をとりながらサーモン養殖について話をしていました。彼は大学の海洋工学部最終学年で鮭の養殖をテーマに勉強しています。私がフレートを下げるために、骨や皮の不要な部分を取り外すと発言すると彼は、おとうさんそれは話が違うよ、製品の付加価値を上げるためチリでは骨や皮を取り除いているんだよって。スーパーマーケットですぐに食べられるようになっている方がマルまま並んでいるのより購買意欲をそそるのは当然です。もしチリからまるまま輸出されていれば、日本のスーパーで売るには国内で誰かがその処理をしなければなりません。そのときの日本の人件費は、チリのそれの10倍でしょうね。で、その分チリで加工処理を始めたのは正解なわけです。チリは中国には勝てませんが、人件費はノルウェーを始めとする他のサーモン生産国よりはるかに安く、これが高い輸送費をかけなければならないにもかかわらずチリ産サーモンの競争力を上げ、世界的にシェア-アップした主要な原因でしょう。
さて例のアメリカ人がチリ政府にサーモン養殖の拡大規制を呼びかけた件はまだ波紋をよんでいて、大学の海洋工学部学部長が新聞に投書を出し、食品の生産は人類の歴史上、農業であれ漁業であれ、一日も休むことなく続けられている。チリのサーモン養殖もその線上で、チリ政府の監督を受けながら国民に貢献している仕事だとし、アメリカ人の的外れな発言を拒否するとしています。その大学は私の息子の学んでいるところでした・・・。


(一般)
1)「18」というのはチリ人にとっては旅行の季節。日本のお盆休みみたいな感じもします。今年は3連休でしたが、大挙して,百万人以上が、首都のサンティアゴから故郷に、外国に出かけていきました。(高校までは来週1週間も休みになります)
所で私もサンティアゴの旅行宣伝に協力しました。www.shallwetravel.com を見てください。これを見てチリに行ってみようという人が出るかな?
しかし自分で書いておいて、こんなことを言うのは何ですが、あまり力がこもりませんでした。私のHPに出てくる旅行記やエッセイは自分の好きなことを書いているので、後で読み返しても楽しいのですが、この観光案内なんて・・・。ごめん。
でも飯田さんの写真(カバーページのもの)は素晴らしいでしょ。他の写真は誰のものか知りませんが、写真と見出しの説明がぴったり一致していないようですね。
しかし旅に出て事故は困りますが、第2州に山登りにいった2グループがラスカン山とジュジャイジャコ山に吹雪に閉じ込められ救出を待っているなんて気の毒なニュースがあります。サンペドロ・デ・アタカマと言えば、チリ北部の観光地ですが、その近くの4千m級の山に登っていて吹雪に見舞われたというもの。その地区で牧畜をしているおっさんが泣いていました、これでワシの羊がみんな死んでしまうと。
ただ2州の雨は,普通ではないのですが、タルタル近くの半砂漠地帯でお花畑が出現。これはもう10年以上もなかった現象とか。

2)さて、南の方で列車の転覆事故がありました。第9州のことです。事故現場が森林地区で近くに自動車道路が無く、怪我人を警官が抱いて4キロ離れた道路まで運んだと言うのですが大変でした。しかもその事故原因が線路を固定する金具が盗まれたためと聞いてがっかり。そんな奥深いところまで泥棒に行くなよと言いたいところ。見つかる可能性が少ないと見たのでしょうね。しかしチリの泥棒問題は困ったものです。

3)妊娠高校生問題
妊娠した女子高生が退学になるなど、この問題は以前から続いていますが、今回は文部省が気合を入れてこの問題に取り組み,両親、学校の啓蒙を取り入れた対策をしたいとしています。日本も同じような問題があるのでしょうが、簡単に中絶ができるのでチリほど社会問題にならないのでしょう。
首都圏のある高校では妊娠高校生が40人もいると発表されました。

4)落書き問題
少し前,クスコのインカの壁に落書きして捕まったチリ人がいましたが、それは何も外国での問題だけではなく、チリ国内の問題にもなっています。建物やその外壁に書くほか、彼らはバスの内外にも落書きします。ところで来月から開業予定の新交通システムではそういう「汚染」されたバスは運行が認められていません。つまり仕事に入る前に落書きを消さなければならないわけです。で、まだ操業開始前なのに、スプレーで落書きされてしまった新型バスがあって会社の頭痛の種になっています。運転手の中には落書き小僧をスパナなどを持って追いかけるのも出てきています。落書きするのは高校生などが多いようです。


(スポーツ)
1)テニス
そう言えば、昨年の今ごろ、チリのデービスカップ戦は対日本でしたね。
入場券を日本テニス協会からもらって応援に行ったのを思い出します。今年は同じアジアのパキスタンとの試合。今年も5対0で勝ちそうです。これに勝つとチリは再度ワールドグループに復帰するわけですが、そこで踏みとどまるのが難しい。

2)ホッケー
女子ジュニア-のホッケー世界大会がチリで開催中で、開催国のチリが意外の活躍です。

3)サッカー
クラブ別南米カップに参加中のカトリカはアメリカ・ワシントンでDCユナイテッドと対戦、ずっと勝っていたのに最後に1点許し、引き分け。それでも来週サンティアゴでの対戦が楽になりました。これに勝てばベスト8に進出です。


以上