チリの風 その143 05年9月19日―25日

さて18の建国記念日週間が終わりました。国中にはためいていたチリの国旗も片付けられました。今年は天気に恵まれ、各地で行われた催し物が大盛況だったようです。また事故も少なく平穏でした。景気が順調に回復しているので、昨年はアサード(焼肉)パーティが出来なかった家庭でも今年は家族そろって肉を食べることが出来たとテレビのニュースに出ていました。


(政治)
1)さてチリの愛国行事の中に政財界や司法関係者など国の中枢が集まる行事が幾つかありますが,その一つは教会のミサに参加するしきたりです。そのカトリックのミサでサンティアゴ大司教が、チリの現状を見るに富みの分配の格差はほとんどスキャンダラスと最大級の言葉で糾弾しました。これにはさすがのラゴス大統領も驚いたでしょうね。面と向かってあなたの政策は失敗ですと言っているわけですから。次の大統領はこの問題を少しは軽減してくれるかな?
その大統領選も時間だけたって、内容の深化は全く無く、候補者間の討論会も無いし、各自が勝手にチリ各地を回って、それがニュースになるだけで、何の面白さもありません。それにこれだけ勝敗がはっきりしているレースも珍しいでしょうね。
もう一つの行事は、軍隊パレードですが、今年が最後の参加になるラゴス大統領とチェイレ陸軍長官は公衆の面前で固い握手。ところでそれに先立つ記者会見で、大統領は軍事政権下の人権問題に関し、軍人の犯罪は裁判で決着をつけつつある。当のピノチェットはもう表面に出てくる役者でないが、軍事政権に協力した民間人もその自己責任を表明する必要があるのではないかと催促のコメント。これについて野党側は、時代錯誤のコメントとか、それならアジェンデ政権に協力した左翼側の人間の自己批判も一緒に頼むと冷たい反応。
それからラゴス大統領は、自分の親戚が政府関係機関の仕事を請け負っているとのメルクリオ新聞の記事について、自分の親戚は仕事が出来ないのに私のコネで就職しているような記事は事実と反すると同新聞の社長に私信を送る。ところがそれが新聞の記事になってしまい大騒ぎ。
大統領は 私信が新聞に掲載されるのは本意ではないが、これで自分の考え方が明らかになっただろうと、冷たい返事。
ところで先週、新憲法が発表されたと書きました。新憲法は従来の憲法と違って民主的に作成されたと言われます。しかし新聞に投書があって、何を寝とぼけたことを言うのか?批判されているピノチェットの1980年憲法はちゃんと国民投票を実施して信任されている。それが今回は・・・だって。(国民投票はありませんでした)
おまけに変更されたのはごく一部で、実際はピノチェット憲法の継続ではないかって、確かに言えてる。


(経済)
1)チリの経済が順調というのはこのチリの風で既に何回も書いていますが、今週のIMFの発表では、国民総生産は世界48位(ラテンアメリカでは6位)、国民一人当たりの収入は世界58位、ラテンアメリカでは2位でした。05年推定で一人当たり6200ドル(日本はその6倍の36500ドル)と順調に上がってきています。
で、チリの通貨ペソがこの先米ドルに対し,切り下がるのか,切り上がるのか論議を呼んでいます。一部の経済評論家はチリ経済の堅調のため切りあがって1ドル500ペソになるだろう。一方ではブラジルやアルゼンチンの苦境はチリに影響必死で、たとえ銅の価格が高値安定でもペソの値打ちは落ちて1ドル570ペソまで行くだろう。
(現行は1ドル530ペソです)どっちが正しいのかな?
銅の値段は今週また上昇して1ポンド180セントまで来ました。しかし1ドルを割っていた時代が長かったのですが、上がりだすと止まらないものですね・・・

2)日本との自由貿易協定
チリと日本の間で自由貿易協定が結ばれそうです。今年11月調印を目途に会議が進んでいるらしい。(11月に韓国でAPEC大会が開催されるので、それを利用してラゴス大統領がアジア訪問、日本で調印を計画中とか)

3)ルクシック財閥は、最近その創始者が死去しましたが、勢いは劣えず、アルコール飲料の世界で競合他社を買収して勢力拡大をはかり、ピスコ酒の場合、シェア-100%が目前とか!
それからこのグループはパスタ工場問題でペルーの司法ともめているとお知らせしましたが、ペルーの副首相が、ルケッチがペルーを訴えるとは片腹痛い。該当裁判に関係したルクシックグループの重役を裁判にかけるため、国際警察に彼らの逮捕を要請することも可能と脅しています。

4)ワインの生産は順調に伸びて,2005年は過去最大の生産量になるらしい。7億9千万リットルの生産が見込まれるとかで、昨年の30%アップ。
一番生産の多いのは第6州,ついでその隣りの首都圏です。サンティアゴから南に向かって車を走らせるとブドウ畑の中を走るようなところがありますからね。


(一般)
1)ロビンソン・クルーソ島の話題が二つ
もちろんロビンソン・クルーソは小説の主人公で、本当の島の名前はフアン・フェルナンデス諸島です。さてその島の一つにロビンソン・クルーソの原型になった人物が住んでいたのですが、その住居後が見つかったとし、発見者として日本人探検家高橋さんの名があがっています。しかし高橋さんが日本人会館でこの件で講演会をしたのはもう何ヶ月も前のことで、どうして今ごろ?という気がします。
もう一つは新しい話題で、とうとう海賊が隠していた財宝が見つかったと言うもの。さてその所有権ですが、最初は発見者グループとチリ政府が50%ずつと言われていたのですが,だんだんトーンが変わってきて、最初に協定書があれば、業者が25%、政府が75%ということになるはずだが、その協定がないので、今回は全額政府のものになるだろうだった。それで発見者グループは納得するのだろうか?

2)酔払い運転で今年の2月事故を起こしたバルパライソ港の汽車の運転手は50ペソの罰金を支払ったらしい。(約10円)の罰金。
それは実際の話ですか?と聞かれそうだが、この罰金の基になる法律は1931年に出来たものでそれが未だに改正されず使われているらしい。ところで酔払い運転で鉄道会社をクビになった運転手は。現在はタクシーの運転をしているらしい。

3)アルゼンチンの航空会社アルゼンチン航空がストに入り、愛国週間でブエノスアイレスを訪問していた多数のチリ人が飛行場で足止めになった。チリの航空会社スカイが飛行機を飛ばし、それらのチリ人の何人かを救出したらしいが、運の悪い旅行者はそのストが終わった24日まで4日間ブエノスで足止めだったとか。


スポーツ)
1)テニス
デービスカップの世界リーグ復活戦のチリ対パキスタンサンティアゴの国立競技場で行われ、チリが5対0で圧勝しました。あまり勝ちすぎると面白くもありません。私の部下がテニスの国際審判員の資格をもっていて、この大会もなにかお手伝いをしたそうで、その線から、私に入場券を一枚差し上げますと持ってきました。昨年、日本が戦ったときはテニス場で大声で日本の応援をした私ですが、圧倒的にチリが勝つだろう試合に興味も持てず、入場券を彼に返してしまいました。来週に世界リーグ戦での対戦相手が決まります、

2)サッカー
国内リーグ戦で今年無敗を誇るカトリカは今週もコロコロ相手に引き分けで首位を堅持。南米カップでもアメリカ代表のDCユナイテッドに勝って準々決勝に駒を進めました。
しかし今週のチリの風で取り上げたいのはそれで無く二人の監督の話。

(その1) ボンバレと言えば、チリのサッカーファンなら誰でも知っている有名解説者です。もともとプレーヤーで82年のスペインWカップにチリ代表で出ています。こいつがテレビやラヂオに出演するとめったやたらに他人を批判をしまくって自分がチリでもっとも素晴らしい監督と吼えます。で、やっとその彼に出番が回ってきて、チリでは強豪の一つコブレ・ロアの社長が彼を訪問し、監督就任を依頼、その次点で99.9%自分は監督になると発表しました。それが何と翌日、チームのダイレクター-会議で、ボンバレの要求は高すぎる、また実績がないと彼の就任を拒否,他の人間を監督に任命しました。 
彼はもう二度とどのチームとも交渉しない。自分は病気になったと番組を全部けってしまいました・・・・

(その2)チリナショナル・チームの前監督のオルモスはその職を解任されたあとアルゼンチン・チームの監督に就任しましたが、今週チームの不振に責任をとってそれを辞任しました。しかし勝負の世界は厳しいですね。

3)女子ホッケー
チリは1次リーグ戦を勝ち抜き2次リーグ戦に進みましたが、そこで強敵に阻まれ結局10位で終わりました。まぁええやん。

4)登山
雪のため第2州の山で遭難していた二つのグループは無事救出されました。
良かった。


以上