チリの風 その99 04年11月14日―20日

先週末の大雨のあと、急に夏型の気圧配置に変わり、今週は30度をこす暑い日が続きました。やっと夏らしくなって良かったという声と、こんなに暑くてはたまらないと言う声と・・・。


(政治)
1)APEC
A)もちろん、APECの話題がトップでしょうが、私にすれば意外におとなしいと言う気がします。もっと賛成派も反対派も盛り上がると思ったのですが。ところで、日本のメディアが、これについてあまり触れていませんね。何故かな?
さて水曜日の夕方、バスで市内を走ってみました。モネダ宮殿(大統領官邸)の前も通りましたが、全く通常でした。街中にクリスマスのように何か特別の飾りでもあるのかと期待しましたが、何もありませんでした。
木曜日も地方から首都に入る高速を走りましたが、通常と全くかわりはありませんでした。
市内のいたるところで道路工事が行われていますが、全く通常どおりで、期間中特別の配慮をすると言うことは無かったようです。まぁありのままを見てもらうと言うことかもしれませんが。
反対派のデモが盛り上がったのは金曜日でした。(チリ全国は通常の勤務日でしたが、首都サンティアゴだけ会議のため休日になった)
政府から公認されたこのデモは当初1万人くらい参加するだろうと見られていたのに、なんと数万人。最近にない参加者数になりました。
これはAPEC反対と言うより反ブッシュと見られています。
そのデモの最後に、デモ隊の一部が火炎瓶で警察と一戦を交え、もちろんいつものように商店への略奪行為もあって、街じゅう騒然。バスや地下鉄のサービスも止まり大変でした。(昔、日本で全国反戦闘争のとき学生が戦ったのを比較すると、迫力が無かったが)
でもそれは一日だけで、土曜日はまったく動きがなく、サンティアゴ市内を大勢の外人(アジア人が目立った)が歩き回っていました。

B)さて公式なほうでは、チリと中国の間で自由貿易交渉がまとまりました。
(日本も同様交渉中だが、いつものとおり遅い)
しかし中国のすごさが感じられたのは、この先数年の同国の銅消費予想は銅生産で世界一のチリのコデルコ銅公社が生産倍増をしないと間に合わないと言うこと。逆にいうと、コデルコは中国向け販売だけで、全生産を売り切ってしまうと言うことです。
で、今回話が進んだのは、中国が資金を出して、チリで銅の生産をしないかでした。
この迫力の前には日本もかすむ。
おまけに中国は資金を出すからチリとアルゼンチンの国境にトンネルを作る計画を提案している。これで大西洋と太平洋が結ばれる。

C)ロシアのプーティンもしかめっ面で、チリ大統領と会談していましたが、軍事力が激減し、国内に民族問題を抱え、経済的には見るものもないとあって、会談の内容も希薄だったみたい。
昔、ロシア製の乗用車ラダがチリ市場を席捲した時期があったが、それもすぐに消えてしまい、トラック、タイヤなどどれも品質が悪いと全く馬鹿にされている。で、チリ企業のロシア進出を歓迎する、そのとき両国で2重に税金を取らないようにしようというみみっちい内容だったらしい。

D)それにしても会議期間中の韓国製品の新聞紙上の宣伝広告はすごかった。
自動車会社を始めとして、1面全面で韓国大統領のチリ訪問を歓迎します式の広告を出し、その量は他国を圧倒していた。我が日本はほとんどゼロと寂しい実績。まぁ意気込みの違いだろう。

E)それにしてもブッシュの傍若無人ぶりも目に付いた。まるで他の20人の主席は目ではないと言う態度で、会議でも式次第なども無視して、彼の発言だけが注目を浴びているようだった。しかし国際的な協力をえて国際テロと戦うなんて宣言しても、結局はアメリカの指示に従うと言う感じで、こんな状態がいつまで続くのか不思議だ。
彼のボディガードはチリの国内法を無視して200丁の武器を持ち込み、約束を守らず会議場に入ろうとしてチリの警察ともめていたのが不愉快だった。またチリ大統領との晩餐会に全参加者をアメリカ側の金属探知機で検査させてもらうとしたので、さすがにチリ大統領も激昂し、晩餐会そのものを取りやめにしたのは立派!!

2)人権問題
APECの陰に隠れそうだったが、軍部の犯したすべての人権問題は先に成立した特別法案(一定期間、一定の量刑に関してはこれを不問とする)の対象としないことが最高裁判所で確認されました。
これを受けて、陸軍長官が辞任するのではないかと言う噂が出ました。(先に陸軍長官は、軍隊の犯した罪を認める発言をしており、これは裁判所から罪の不問との引き換えの発言だったのではないか、従い裁判所との調停が上手くいかなかったのだから辞任するのではと見られたもの)
APECで忙しいラゴス大統領がわざわざ彼と面談し、辞任の噂を取り消しています。
また裁判所の中でも軍事政権時代、裁判所は正しく機能していたかとの問題に内部が二分されているとの報道あり。やっぱり軍事政権には怖かったのでしょうね。

3)ピノチェット問題
久しぶりに出ましたよ。彼の話題。今回の騒ぎは彼がどうしてアメリカの銀行にそんなにたくさんお金を持っているのと言うのがそもそもの発端でしたが、ピノチェット側は銀行から発表された金額について、その金額に行き着くまでの道筋を既に何とか説明しています。今回その口座のほかに他人名義で数万ドル持っているのが見つかったと言うもの。彼だけ特別扱いせず、虚偽発言を繰り返している家族も含めそろそろ本気で取調べをするべきではないだろうか?


(経済)
1)ドルは対円で切り下がってきていますが、対ペソでも同じ傾向で今週は1ドルが590ペソまで下がり、8ヶ月前のレベルになっています。APECでドルが湯水のように入ってきたからか。

2)サーモン戦争
欧州でチリ産サーモンに超過関税を課そうとするのはノールウェイの策略だと、係争が最終段階に入った現在チリ側はロビー活動を活発にしている由。強いものが勝つのか、勝ったものが強いのか。

3)水道料金の改定
チリの最大手水道会社アンディーノと政府の間の交渉が行き詰まり、調停に持ち込まれることになりました。スペイン資本のこの会社は下水処理問題から政府と対立し、新料金でも政府案を受け入れず、徹底抗戦の構え。

4)銅鉱山の新税
チリでは結局、国会で承認されなかったローヤリティ新税が、今週からペルーで実施されました。
ペルーでは最高3%まで課税可能になるこの税を、ラゴス政権も狙ったのですが。中国向けの将来を含めさてどうなるかな?

5)木材、セルロースもチリの輸出産品として伸びてきていることは既にチリの風でも取り上げています。
今週のニュースとしては、数年前のブーム時に比較して投資金額が下がっていること、昨年鳴り物入りでヴァルディビアに登場したセルロース生産工場の排水が問題で、野鳥が死んでいるのではないかと騒ぎが大きくなっています。工場側は全部の基準を遵守しており、同工場の排水には問題ないとしていますが・・・。


(一般)
1)世界中で一番住みやすい国は
イギリスの雑誌の発表ですが、対象になった111か国中、世界で1番住みやすい国はアイルランドだそうです。最悪はジンバウエ(昔、私はこの国を訪問しましたが、そのときはそんなにひどい感じはしませんでした)。
で、チリは31位でラテンアメリカのトップ。日本は17位でした。このニュースはもちろん日本のメディアでも報道されていましたが、やっぱり日本は住みやすさでは経済力のように世界トップクラスにはならないのですね。まぁチリより上だけど。

2)APEC関連で中国関係者がチリとの間に航空路線を検討と発表。もちろんすぐにランチリも中国との間の路線検討を発表。どのルートでどれくらいの価格に設定すれば、どれくらい客が見込めるかなんてチェック始めたのでしょうね。それが日本経由だともっと良いのに。

それとは別にスペイン系の航空会社(アエロリネア・デル・スール)に12月5日からチリの国内線への参入が認められました。チリの航空会社スカイはこれを不服として政府関係官庁に抗議を持ち込む模様。

3)離婚法が実施になる
新聞報道ではこの手続きに弁護士費用などで、約10万円はかかるらしい。これは平均月収が5万円といわれる一般の市民には払えない金額。
初日はそれでも全国で52件の申請が裁判所に出された。
日本のように簡単に離婚できるのとは大きな違いだが、それでも今まで建国以来、離婚が出来なかったのだから、大きな進歩。

4)石油の国際価格の下落にあわせ、チリでのガソリンの小売値段も下がっています。にもかかわらず、今週からバス代が20ペソ値上げになりました。でも現在のチリのバス代って約50円ですが(安い) 


(スポーツ)
1)サッカー
しかし怒ってしまった。Wカップの対ペルー戦の前日、フォワードを一人とするとオルモス監督が発表したときだ。守りに入って勝てるわけが無い。同じエラーをこの前のエクアドル戦でやっているのに、何故また!
私の危惧は的中して2対1で敗れ、チリは星取表の下位に沈む。監督の交代が急がれるところ。もう彼では勝ち目は無い。負けるだけなら誰でも出来る。何しろ彼の月給は6万ドル、ファンが起こるのも無理ない。
それにしても2対0になったあと、選手を変えて攻めに入ったら、1点を返し、さらに終了間際に同点ゴールが、入りそうだっただけに、何故最初からペルーと対等に勝負しなかったか不思議。
ペルー側は大喜びだったのは言うまでも無い。チリに数万人いるペルー人出稼ぎ者はペルーレストランなどで気勢をあげていました。


以上