(政治)

1) 次期大統領選挙のメイン候補者は与党側がキリスト教民主党(DC)のフレイ元大統領、野党側は国民改革党(RN)のピニェラですが、国民人気調査ではピニェラが大差をつけてトップです。

現在の与党グループの中でラゴス、バチェレットと二代続けて左翼系の大統領が出たので、中道のDCは是非にも次期大統領は自党からと狙っていたが、当初のDC候補は力のないアルベアル女性党首。これでは社会党などからでるラゴス、インスルサ候補に勝てるわけがない。したがって、私の読みは「DCは与党連合から離脱し、野党側のRNに連合を呼びかけ、一気にチリ政界が左翼、右翼そして中道と3極化する」だった。

ところがラゴスが自爆、インスルサが自信を失い候補者辞退してしまい、左翼系候補者が消滅。アルベアルは昨年末の地方選挙でDCが惨敗した責任を取って党首を辞退し選挙戦から落脱。急遽、元大統領で新味の全く無いフレイが急上昇。彼の運の良いことは認めるが、バラック効果は新味のある若手にしか期待できない。フレイのようなおっさんがバラック効果を狙えるわけがない。

と、いつもと同じコメントを書いていると、週末になってDCを除名になった党員を中心に結成されたPRI党からサルヂバルが大統領選に参加を発表。少しは面白くなりました。元DCだけに与党側の票を食うだろうから民主化以来負けを知らず4代続けて大統領を取っている与党連合にはピンチです。また社会党系の若手も参加の意志を表明して風が出てきました。

なに、選挙戦を面白くするため野党側もきっとそのうち内紛が出てきますよ。

とは言え、半年前はバチェレットを支持する層が下落し、支持しない層に圧倒されていましたが、ここにきて、彼女の人気が回復し44%対39%で彼女を支持する層の方が上回っています。なんでかな?彼女のどこが大統領として責務を果たしているといえるのでしょう?

2) バチェレットのキューバ訪問

彼女が計画する来月のキューバ訪問に与党DCが反対しています。人権を認めない共産主義の国にどうしてチリ大統領が訪問しなければならないのかというわけです。社会党系の議員は、それをいうならDC議員が何十回も中国訪問しているのはどういうことかと質問しています。思想的にはともかく実質ではすべての社会主義共産主義の国が失敗したことは事実ですが、逆に資本主義の国が成功していると言えるかな?

で、政府はバチェレットがキューバについてもフィデル・カストロ元大統領には会わないとか作戦を考えているらしい。茶番ですね。

3) 選挙方式

   チリ現行方式は選挙人登録は自主的に、投票は義務的に行われます。これを全く逆にして選挙人登録は強制的に(自動的に)するが投票は自由にするという見解が強くなってきました。日本はもちろん自動登録、自主投票ですね。今のやりかたでは窮屈だと登録をしない若年層が増加しているのを何とかしようとするのがこの動きの趣旨です。上院で既に可決され、次は下院です。

4) 人権問題

   軍事政権下の行方不明者の家族に援助金が支払われています。それを不正に利用していたケースが最近数件見つかりましたね。ところが今週は、それが意外な方向に発展しています。その不正を暴露していたRNの女性議員ルビラールは陸軍の元秘密部隊の長官をしていたコントレラ(服役させられた)の秘書から情報を入手していたと報道されました。政府側はこれを追求し、未だに野党側は軍事政権下の黒い部分と手をつなぎ、反政府運動をしているが、いいかげんに現実に戻ったらどうかと同議員の国会人権問題委員会の辞職要求を含め反撃に出ました。しかしピノチェット対アジェンデの戦いは何十年たってもチリを二分しますね。