チリの風  その91 04年9月19日―25日

行ってきました、デービスカップ戦。チリ対日本。25日(土)朝早くおきて朝食のあと、昼食の弁当を作って、長男武蔵と二人でバスの待ち合わせ場所に。試合はサンティアゴから約110km離れたリゾート地のヴィーニャ。
試合は週末の三日間で、私はその真中の土曜日のダブルスを見学しました。
すでに前日のシングルで連敗しているので、この日負ければ敗戦が決まるというぎりぎりの日。この日のために用意された日の丸のついたTシャツを私はバスの窓から外につるして、日本応援団が乗っていることを外の世界に示しながら競技場に。これはサッカーではよくやる手です。
試合場になる総合グランドにあるテニスコートは通常の座席に大きく上乗せされた観客席が設置されていた。中に入る前に、清涼飲料水の持ち込み禁止となっていた。確かにガラスびんを持ち込むのは危険と思ったが、プラスチックのボトルは大丈夫と考え持っていったが、それも没収されてしまった。のどが渇くと思って2本も持ってきたのに。ところが中に入ると同じ物を売っていたので、がっかりした。何故かな?
5千人収容の競技場は、私たちが着いた段階ですでに7分の入りだった。
さてその後どうなったかは(スポーツ)のところを見てください


(政治)
1)先週と同じ話題が内容を変えて出てきます
最初は、例によってピノチェット関連から行きましょう。裁判官の審問が延び延びになっていると言うのは先週、書きました。で、今週どうなったか?担当裁判官グスマンは頭を使い、土曜日にピノチェットの自宅で訊問を開始すると、金曜日の午後発表。彼の弁護士はこれはペテンだと怒り狂う。と言うのは、その訊問に異議を申し立てしようとしても金曜日の夕方ではすでに裁判所の受付事務は終了しており、延期申請要請ができない。まるでゲーム感覚で裁判は進む。で、その土曜日、ピノチェットは自宅を訪問してきたグスマンに軍隊の左翼グループ殺害計画への参与を明確に否定。ただしその時間は実質たった半時間で、用意してきた訊問の半分も進まずほとんど形を整えただけ。しかしこれを、ピノチェット側は日ごろから言っているように当方は裁判所に協力する用意があるとし、各政党はチリには民主主義がある証拠だとどちらも自画自賛。場所や時期も、被告の状況を考慮したと絶賛する政府の声もあり、まるで内容は乏しいが形を整えるのが重要と全員が言っている馬鹿らしさ。
この先どうなるのか?一番可能性があるのは、弁護士側が、被告が裁判に絶えられる状態でないことを申し出て、ゆっくり病院で彼の身体状態を調べようとするだろう。これは療養と同じことですが・・・。

2)犯罪が減らない(増加している)ことは一般市民の最大関心事の一つですが、副大統領にあたるインスルサ内務大臣が、野党は犯罪の増加を口をそろえて言うが、首都圏で犯罪の増えている区の区長はその野党側に属していると発言。これに対し野党側は、犯罪の増加(もしくは抑制不可能)の責任を区長に負わせ、政府が知らん顔をするとは何たる恥知らずとカンカン。もっとも一般国民は、どっちも選挙前の口先だけで、本気に取り組んでいないと見ています。
前大統領のフレイは祝日に海辺の別荘に行っていた先週末、泥棒に入られ、金目のものを盗られています。警察の警護がついていたにもかかわらず。面目を失った警察は懸命の捜査で今週その犯人を検挙。新聞に投書が載って、政府も身内の被害者だけでなく全部にこれくらい熱意のあるところを見せてほしいと嫌味のコメント。
犯人がつかまった理由は、前大統領の家で盗んだ携帯を何回も使ったから。

3)先週の建国記念日の行事は軍隊のパレードで締めくくられますが、その日、陸軍長官が(昔はピノチェットがこの職についていた)政治は軍隊に借りがあるのではないかと発言、問題になっている。 人権問題は、軍隊が一般市民に被害を与えたという認識が続いているが、問題の起点となったのは政治(政党)のエラーと考えられ、そうなら、軍隊のメンバーを標的とした犯人探しが唯一の目標となっているような現在の人権問題の認識を根本的に変える必要があるだろう言うもの。さてどうなるか?


(経済)
1)チリで好調なのは何もテニスだけでありません。輸出が絶好調で最初の8ヶ月で213億ドルと昨年1年間の輸出実績を超えました。
一方、経済好調を裏好けるものとして車の販売があげられますが、それも1―8月に過去6年間で最高の93千台のセールス。

2)国防費
03年の統計では国民一人あたり南米でもっとも国防費が高かったのはチリでした。一人あたり90ドルで、2,3位のウルグアイ、ブラジルの52,51ドルを大きく越しています。自慢にはならないでしょうが。


(一般)
1)犯罪の増加は別に今週のトピックスではありませんが、これは珍しいと思われたのは、スペインからイベリア航空ビジネスクラスサンティアゴに飛んできた旅行者が飛行場につく前に、財布の中身が無くなっていることに気づき、乗務員が怪しいと思われるチリ人乗客を警察に通報。逮捕されたというもの。そのチリ人は無理してビジネスに乗って、その費用を他人の財布の中から出してもらおうとしたのでしょうね。悪いやつが捕まってよかった!

2)喫煙率
何でもトップが良いというのは間違いですよね。今週の発表された青少年の喫煙率でチリがなんと南米のトップ。他の国が20―30%に比しチリは40%を超えて。何たることか!特に女子の喫煙が男子を上回っている。
日本の大人の喫煙率は低くなっていますが、一人あたりの量は3千本で世界のトップクラス。これも芳しくないことですね。

3)自動キャッシュサービスの機械は銀行が閉まっている時間でも稼動している便利なもので、もう世界中で普通のことになりましたが、それが犯罪に使用される機会も増えたことから、チリでは05年からこれに指紋の検証システムを組み込むことになりそうです。ただしその場合、毎回50円くらい使用料をいただくことになると発表されている。


(スポーツ)
1)テニス デービス・スカップ
5千人収容のテニスコートはまもなく満席になった。私たちの座った場所の横に係員が一人ついて、それ以上の入場を制限しはじめた。当然遅れてきた人間からクレームが出るが一向に応じない。
日本人グループは約30名。一人が団長になって、応援練習を開始。盛り上がってくる。
さて、試合の前に、最近現役を退いた元世界1位のリオスの表彰式が行われた。この日テニスの試合観戦に来ていたラゴス大統領も式に参加して彼にパブロ・ネルーダの詩を送った。大統領によるとどちらも世界1位だそうだ。国会斉唱で儀式は終わり、競技開始。
出だしから日本のサーブがブレークされチリのリードで始まる。もちろん世界ランキングからすれば、チリが日本に勝つのは順当だが、それは一発勝負の世界、そう理論通りにはいかないだろう。
声をからして声援を送るが、事態は一向に回復しない。1セット目も2セット目も6対3で落とし最終セットへ。
30人の応援団は5千人に負けじと大声を張り上げるが、多勢に無勢。おまけにスコアははっきりと劣勢を伝える。
日本選手のサーブは180―190Kの速さだが、チリのそれは200から210Kと速度が違った。球速に押され甘い玉を返すと、ネット際で待っていた相手にボレーで簡単に決められるというパターンが何度もあった。
「同じミスを重ねて」と私が文句を言うと、武蔵は「チリのサーブが速すぎて、日本は相手コートに戻すのが精一杯だから、しようがないんだよ」と冷たい見解。
ここは一つ意地を見せてほしいと願ったが結果はさらに悪くなり最終セットは6対1でゲームセット。日本の夢は消える。
私は不完全燃焼の欲求不満状態でコートを出る。このあと日本テニス協会の人がテニスレッスンをしてくれるというので、ぞろぞろとサブのテニスコートに。武蔵も含めレッスンが行われている間、その近くのコートで、さっき試合を終えたばかりの日本選手(鈴木と島田)が明日に備え、練習をはじめた。楽しそうにやっているので、さっきより調子がよさそうだねと言うと、「今はプレッシャーがありませんからね」だって。馬鹿者。それがプロの言う科白か。
それでも彼らのサインをTシャツにもらって記念にする。
しかし今週彼らの写真が新聞の一面を飾った日があったが、日本人がトップに来るなんて、私の貧弱な記憶ではかってなかったことと思われる。さすがチリのテニス熱はすごい。(大統領もそれを利用しているのでしょうね・・・)

2)サッカー
テニスの元気のよさと違ってサッカーは落ち目の悲しさが続いています。前回のコロンビア戦の引き分けで、チームに不協和音が目立ち、監督に反乱したピサロが次回の試合に呼ばれませんでした。不思議なものでそのピサロがイタリア・リーグで好調で、先週の試合では最高の出来栄え。皮肉なもの。選手を選ぶのは監督の権利だが、サッカー協会が、ピサロの件について不満を表明。10月の2試合(対エクアドルとアルゼンチン)の結果では監督更改の動きが出てきている。私の予想は2試合とも負けで監督は更迭だろう。


以上