(政治)

1) バチェレットの外遊
チリの風の読者はチリ政府が外交を重視し、バチェレットが世界中を飛び回って獅子奮迅の活躍をしていることはよくご存じでしょう。今週は彼女はガイアナを訪問しました。
私は南北アメリカを全部踏破しようと、大げさかな、訪問しようとしていますが、ガイアナ3国だけが未踏です。ベネスエラのエンジェル・フォールに行った時、そこは国境近くだったのでガイアナに行く気になりましたが、両国は国交がないので、入国不可能。カリブの島トリニダード・トバゴまで飛んで、そこから空路入るか、陸路ならブラジル経由ですが、ブラジルはビザが必要。それで入国を諦めました。 
そんな辺境の旧英国領のガイアナを彼女は訪問し、カリブ国会議に出席するとともに、その国に大使館を開設しました。
こうして活躍する彼女ですが、チリ国民はまったく評価しません。今週発表の世論調査では支持するが21%、反対が72%。この調査が始まって10数年で最悪の結果になっています。
もっとひどいのは政府を支持19%、不支持は79%です。 
それでもあと2年間近く、チリ国民は不愉快でも彼女を大統領としなければなりません。 
しかし彼女より不人気の大統領が南米にいます。ブラジルは13%、ペルーは19%、バチェレットが3位で22%、4位はベネスエラのマドゥロで23%。いやはや。
先に彼女が発表した通り、この月曜日に教育法案が国会に提出されました。大学教育の無償化には財源が必要ですが、大蔵大臣は新税法を作るつもりは全くないし、景気が大きく改善されない限り現在の手持ちの余裕が大きくなることは無いと、現状では完全無償化は不可能との弱気のコメント。新労働法が可決すれば投資が減少し景気は一段と落ちると見られています。
与党の共産党は軍隊が特別銅法案でコデルコの利益を吸い上げているなら、大学教育の無償化のために、なんでも良いから新税法が可能なはずと大蔵大臣見解に反対のコメント。
新聞の論説に、これに関するバチェレット批判が載りました。「バチェレットは全ての人を満足させる教育法案は実現可能ではないとしたが、これは全くその通りだ。しかし彼女の提出した法案は全ての人に不満足を与えているが、それはいかがなものか」こんな痛烈な意見が新聞に掲載されるのはさすがチリですね。
この日曜日に法案に反対する家族デモが行われました。教育の無償化はどうなったのか、一家の借金を増やすだけの高等教育かとクレームしました。 
一方カトリカ大学の学長が、この数十年、大学学長連盟が教育相と組んでチリの高等教育の発展を図ってきたが、この法案はそれの終焉になるほどのひどいものだと糾弾。
確かに大学・学生・家族とみんなが反対する法案ですね。 専門家は実現不可能なことを公約にし、それを実現させると主張し続けることが問題をさらに深刻なものにししていると考えています。

2) チェィレの起訴
元陸軍長官だったチェイレが起訴され拘留されました。軍事革命の起こった1973年9月から1か月後に、ラ・セレナで「死者の行進」事件が起こっています。軍事政権に逮捕された左翼系の人間を集めて拷問、最後は殺してたのですが、その場にチェイレはいました。
後に彼は出世して陸軍長官になりましたが、彼は始めて公式の場で、チリ陸軍は人権を侵害し拷問・殺人を実行したと、逮捕の理由があるかないかは別にして、犯罪行為が行われたのを認めました。 
もっとも彼はそれに関連して、自分はどんな罪状を犯したとはコメントしていません。
彼の拘留に関して、与党側から彼を援護する声が出ています。例えば、その事件の時、彼は少尉だったから、上司の命令が出れば、それに従わざるを得なかったと。その理論で行くと彼の昔の上司を逮捕するよう働きかけるべきでしょうね。
人権問題を取り上げて他の問題から目をそらそうとするものだと言う意見も出ています。
しかし如何に「元」とは言え、陸軍長官を拘留するなんてチリの裁判システムは進歩しました。昔なら彼が拘留されるなんて想像もできませんでした。
彼は無罪になるかも知れませんが、裁判にかかるだけで、チリの民主化が良くなっていることを感じます。

3) 社会党元党首の妻(前妻と言うコメントもあり)の年金問題
チリの年金は平均で20万ペソくらいです。今回、問題になった女性は毎月500万ペソ以上の額を受領しています。妻か、前妻か分かりませんが、彼女の夫は社会党の元党首で、現在の下院議長を務めるアンドラデです。
彼は、それは彼女の問題で私を批判するのはいかがなものかと知らないそぶり。この週末に行われた社会党の集会でも仲間の支援を得たとニコニコ顔。 
ところで、その女性は刑務局のダイレクターの職を終えて、年金生活に入っています。チリの年金制度は各自が積み立てた資金を民間の会社が運営して、それを原資に年金がもらえるのですが、刑務官の場合は全く別の仕組みで、警察などと共通ですが、年金の6分の1はその組織、6分の5は政府が供出しています。何や親方日の丸か。
しかし格差是正を打ち出す現政権の中枢の社会党が、こんなひどい状態に関し、彼女が不正をしてその金額を取ったのではなく、正式の計算でそうなったのだから後ろめたいことはないとコメントするなんて。こいつらを全部、次の選挙で落としたいです。
日本も年金の原資が5兆円ほど昨年失われたそうですが、ほとんど問題にならず、今回の選挙で政府側がその責任を取らされなかったのが不思議です。
4) マプチェ問題
 今週も南部で覆面マプチェが家屋に放火し、農業労働者を銃撃しています。政府も少しは腰を入れたようで、前回はバチェレットが一人でテムコを訪問し、内務大臣を無視しましたが、今回は内務大臣を送り、マプチェを含む関係者を集めて会議をおこなっています。1回限りではなく、これから何回も継続しそうです。何らかの結論に到達できるかな?    
マプチェに家族を殺されたとか、放火されたなどの被害者側は会議の席に呼ばれていないとクレームしています。