チリの風 その1034 2023年3月3日ー12日

ラパヌイ(イースター島)から戻って来ました。久しぶりのその島への旅でしたが、車の数が多くなったのに驚きました。それから犯罪がほとんどないと聞きました。犯罪のあふれるサンティアゴから見ると天国です。警官もパトカーも見ませんでした。
また街がきれいなことに感心しました。ちゃんと掃除をしているのですね。素晴らしい。
モアイ像を見る半日ツァーを2度しましたが、自然は上手く保護されています。山火事になった場所も落ち着いていました。さて887体あると言われるモアイですが、どれが初期の7世紀ころの作品で、どれが後期の17世紀のものか教えて欲しいです。どこが違うのかわかりません。
食事も素晴らしくマグロの刺身がおいしかったです。
飛行機の便を増やせばもっと観光客は来ると思います。私たちの乗った便は往復とも満席でした。もちろん、島での仕事はばっちり決まりました。
仕事の後、サンティアゴに戻ってきてからは通常で、マラソン練習も2回、登山は一人で初めて第4展望台に登りました。土曜日はサッカー教室でしたが、いつもより人数の多い20名近くが参加しました。練習の後、今月に帰国する二組の親子を励ますため胴上げをしました。
つまり仕事があってもなかってもこうして毎日人生を楽しんでいます。いつも言うように幸せです。
この月曜日、スーパー月曜日と言われました。夏休みが終わり、仕事・学校が通常化したので交通渋滞がひどくなったわけです。私の住居の前の道路で信号が青になっても車が数珠つなぎで動かず、クラクションを鳴らして怒っていました。
まだ最高気温が30度の暑い日が続きますが、朝晩は涼しくなっているサンティアゴです。

(政治)

1)ボリッチ動向
大臣・政府高官の入れ替えが話題になっていましたが、ボリッチは週の始め「必要があればそれを私は実施する。与野党の政党の要請でそれを実施するつもりはない」ときっぱりとコメントしました。その通りですね。しかし彼の場合は、自分の意志ではなく政党の言うように動きますよ・・・
その時点で、人気のある大臣は1位がマルセル大蔵大臣(59%の支持)、2位がトア内務大臣(54%)でした。逆にひどいのがグラウ経済大臣とウレフォラ外務大臣で30%と低迷です。
上記を木曜日に書きましたが、金曜日には大臣変更のニュースがマスコミに溢れました。それは素人の私でも想像できることでした。
交替したのは(させられたのは)5名でした。しかし笑ってしまうのは、その新大臣就任式の会場に、当初7つ並んでいた椅子を係員が二つしまったことです。
つまり7名の交替を準備していたのに最後の段階で急に二人減らしたのですね。
新大臣に関し、注目されるのは年齢が上がったことです。もう若手バリバリは止めて経験のある中高年を使おうと言うわけですね。
共産党新左翼から中道左派への変換もあるようです。その5名の中では外務大臣が注目されました。あちこちで問題を起こしていた前大臣はあっさり退いたようです。その他に15名の次官も交替されました。外務省は大臣・次官の交替で大掃除の様です。公共事業省の前大臣は、「私は仕事ぶりから交替されたのではなく、党の間の話し合いで外されたようだ」とコメント。そうでしょうね。悲しい事実。

それと同じように重要な事項は、昨年、政府が準備した税制改正案が国会下院で拒否されました。ボリッチは「政府は国民のために税制改正を用意したが、国会はそれを拒否をする」とし、責任は自分たちではないとしています。これは昨年新憲法案が否決されたときと同じ調子です。共産党新左翼が金持ちから金をとり、貧乏人に渡すのだとしますが、それが通らないわけです。そこで、今年の政府支出は大きく制限され、種々の計画の実施をやめるか国債を増やすかしか手はありません。もちろんこの否定議決を喜んでいる層もたくさんいるでしょうね。
これでボリッチの公約は大きく変更されることになりそうです。もちろん政治問題になりますね。この事態にボリッチは自分は諦めない、再度挑戦すると言っていますが、与党の中の分裂を終わらせる(軽減する)ことが出来ないと国会で彼のアイデアが承認されるわけがないです。新左翼共産党中道左派の対立はまるで敵対関係の様です。この先の可能性として上院で審議をさせれば、成立するのは過半数ではなく5分の3以上の賛成がいるのでほぼ不可能でしょう。ということは新法案の内容を入れ替え、多くの議員の賛成が得られるようにして再提案することでしょう。与党議員全員が賛成すれば勝てるですが。

さてその拒否された税制改正案を作ったマルセル大蔵大臣は今まで高い評価を得ています。この1年間、2022年を何とか凌ぎ、予想ではマイナスだったのですが、今年もプラス成長をする可能性が出てきています。TPP11に再加入したことも評価されています。各自の積み立てた年金を引き出す案は否定されたのはチリ経済には好影響でしょう。インフレ指数や高金利の問題も少しづつ改善しています。もっとも政治の不安定はチリの外部からの評価には否定的に見られます。彼がこの改正案否決にどう対処するのか注目されます。

ボリッチ政権の1年目が終わりますが、新憲法可否の投票で惨敗、囚人の恩赦問題、彼の近くで働いていた高官が麻薬問題でFBIに調べられた事件、今回の新税法否決など、惨めな問題が続いています。
2)新憲法委員会
委員の選挙が近づいてきました。5月7日です。今週、地下鉄の駅の外で誰かが候補者のパンフレットを配っていました。その近くで他のメンバーが大きな旗を振りまわしていました。それをもらってきて後で読みましたが、一番右のグループで、先の大統領候補になったのがリーダーでした。この選挙は国会議員の選挙と同じではありませんが、市民は同じように考えるので、自分の好きな政党から出た委員候補に投票します。そこで私の予想は共産党新左翼系の当選は前回より少なくなるです。さぁ、どうかな?それから右翼は統一候補ですが、左翼は二つに分かれているようです。

(経済)

1)銅価格と為替
 中国の銅の輸入が、この1・2月に88万トンと前年同期にくらべ9.3%減少でした。
 それが影響しているのか今週の銅価格は1ポンド当たり3.97ドルと先週より下がり、ドルは公式レートで1ドル801ペソでした。
 銅価格の低迷でボリッチの公約がますます実施困難になります。
 銅が駄目ならリチウムで行くとされますが、どうでしょう。
2)インフレIPC
2月のIPCがなんとマイナスになりました。マイナス0.1%でした。ガソリンと食品の価格が下がったのがその原因のようですが、26か月ぶりのマイナス成長でした。過去12か月では11.9%の上昇です。ただ次の3月、4月は再度プラス成長になるだろうと予想されています。元チリ中銀総裁が一か月くらいマイナスでも大喜びするのは間違いだとしています。
3)新車の販売
2月の新車の販売は24491台で前年対比17%の減少。1-2月合計も22%減と、雰囲気は悪いですね。
4)株式市場
そのIPSA指数はボリッチが政権を取ってからの1年で17.4%の上昇です。多くの人がきっと喜んでいますね。

(一般)

1)強盗
水曜日に飛行場で強盗事件が発生。マイアミから来た飛行機に巨額のドルが搭載されていたのですが、それを知っていたグループ10名が、重火器をもって襲い掛かりました。警備団がそれに反応したので、銃撃戦になり、かなりの発砲がされたとか。それぞれのグループから一人ずつ死亡者が出ました。犯人グループは警備団が執拗に抵抗するのであきらめて逃走しました。私が空港にいた翌日の話です。危ないですね。
同じような事件が2014年にもあり60億ペソが盗まれました。それは世紀の犯罪と言われますが、今世紀最大の被害額でした。今回のグループはそのグループの真似をしたのか、一部が重なっているのでしょう。警備員の抵抗が予想以上だったのでしょうね。射殺された警備員の家族は警備員の安全について政府の見解を疑問視するコメントを発表しています。
南部の地区で放火事件が起き、それに関連してトラックが銃撃され負傷者が出ました。トラックのフロントガラスが銃弾で崩壊されました。怖いでしょうね、そんな地区で働くのは。マプチェのグループの犯行と言われています。
サンティアゴでINBA高校の前で、数十名の高校生が道路に物を置きそれに火をつけました。通行遮断です。一部の学生は真っ白のオーバーオール服を着ていました。今までと同じような事件です。
2)山火事
44万ヘクタールが燃えました。2500軒が延焼とか。早く雨が降ってほしいです。学校の授業が始まりましたが、延焼した学校での授業は困難なようです。
南部の消防グループが発表しましたが、消火活動中に120名の消防員が攻撃を受けたとか。消火せずに燃やしてしまえと言うことでしょう。
3)コロナ問題
 今まで新規陽性者が1000名ほどでしたが、今週はそれが水曜日から今日まで5日連続で3000名を超え、陽性率も14%を超えるほどです。しかし政府も市民も全く憂慮していません、
4)8日は国際女性の日でした。
 チリの各地でその女性デモがありました。もちろん暴力的なデモではなかったですが、デモの参加者の数は半端な数でなくサンティアゴ中心街の道路はデモ隊であふれていました。女性省の大臣もサンティアゴでそのデモに参加しました。モネダ宮殿でも記念式典があり、政府はバチェレット元大統領を招待しました。そのバチェレットは政界などの表舞台に戻るだろうと予想されています。

さて世界でどの国の男性がよく家事を手伝うかというのが記事になりました。1番はキューバで平均2.8時間。次いでスイスとニュージーランドの2.6時間。
チリは2.4時間と上位でした。最少が日本で43分。韓国が57分で下から2番目でした。どうやって測定するのか知りませんが、何となく当たっているような気がします。

(スポーツ)

1)サッカー
国内リーグ戦の8試合目が終わった段階で首位はカトリカ、2位はワチパト、3位はチリ大学です。もっとも明日にも何試合かあります。
今週の話題はチリの2大人気チームのコロコロとチリ大学が対戦したことです。
コロコロのホームグラウンドで行われました。入場者は35000人と上限が決められましたが、確かに満員に近い入場者でした。
チリ大チームの乗ってきたバスに投石があってガラスが何枚も割れました。それが現在のチリでは普通なのですね。
さてサッカーの話ですが、チリ大学は過去20年以上そこで一度も勝ったことがありません。いつ勝利を勝ち取るかと言われても毎年敗戦でした。さぁ今年は?
引き分けでした。


以上