チリの風 その1016 2022年10月31日ー11月6日

先週、最高最低の気温差が20度と書きましたが、今週はそれが25度になったサンティアゴです。
月曜日に最高気温が30度、最低気温は5度を記録しました。夏と冬が一日にあるような??
体調は少しづつ良くなってきたので、仲間と近くのカランの丘歩きをしました。そのうちまた10キロを走れるようになりたいです。
私のマンションの壁に問題が見つかったので改修工事をしました。排水管の故障で、私個人の問題でなく建物の問題だったので、ビルの管理者の責任でした。技術者が来て働き三日で工事は終わりました。
この部屋は売りに出ていますが、今月半ばに、何組かの家族が見学に来るとか。売れるかな。
日曜日のマラソン練習は3人で実施。私はコースを早歩きしました。こうして毎日何かすることがあるというのがうれしいです。

台所の花壇に生まれた2匹の小鳥は外へ飛び立ちましたが、親子4匹で時々戻ってきます。それは毎日、私が水と餌を用意するからです。

1)ボリッチ動向

今週の話題は年金制度の改善です。
現在年金を受け取っている人の72%は最低賃金より低い額とか。同じ金額をためても女性は男性よりもらう年金が少なくなります。それは女性の方が平均寿命が長いからで性による差別をしているのではありません。科学的根拠からです。
今回ボリッチが提案したのは、現行の年金積立(給料の10.5%を自動的に引き抜く)の額を6%上げることです。これで貰える年金が大きく増えます。それから、その増加分は現行のAFP民間年金運用会社に渡さず、政府の機関に入ります。一部は個人、残りは共有年金に貯められます。それに関し、新聞に各自が預けた金がどこに行くかわからないのでは市民の同意を得られないと書かれています。
もちろんその他にもいろんなコメントが出ています。AFP会社連合は不公平な改定を認められないとしました。政府機関の手に渡ると、政府はそのお金を好きなように使えるが、それは認められるのかとする声もあります。政府の運営ではコストが安いと言われますが、それは正しいのか間違っているのかわかりません。さらに基礎年金保障がありますが、チリの住民権のある人は年金をもらえるわけで、これを求めてまた不法移民が入ってくると言われます。その人たちはほぼ全員が正規の職に就かず、不法・不正の仕事をしますが、それをいつか正式移民の手続きをして年金を受け取るようになるのを狙うわけです。
さて新左翼の過激派は、3年前から政府に要求していたように民間のAFPを閉めて、全部国の管轄にしようとしています。
国会でどう結論が出されるかわかりません。同じような政府案はバチェレット、ピニェラの時にも出されましたが、成立しませんでした。
さぁ今回はどうなるかな?
しかし現行のチリ年金システムは世界で高い評価を受けています。上位は欧州の国ですが チリは世界の16位、その下の17位はドイツ、日本は35位です。
チリ方式は各自が貯めた基金を運用して年金のベースにするため若者が増えても減っても全く影響しません。日本と違いますね。私はこのシステムが始まった最初の月から利用しています。ピノチェットの仕事ですが、私は好きです。

もっとも今週のボリッチ動向で一番目立ったのは、政治関連ではなく、彼が自転車通勤を始めたことです。彼の自宅からモネダ宮殿まで2.7キロですが、自転車でのんびり通勤を始めました。彼の前後に警察の護衛がついているのでしょうが、楽しそうに通勤しています。新聞の風刺漫画にガソリン代が高くなったので車をやめて自転車にしたのだと描かれました???

1年以上前の話ですが、彼が次の大統領選挙に出馬されますか?と聞かれたとき、私は経験がないから参加するつもりはありませんと答えました。その半年後に、私は今までの経験を生かして大統領になりチリをよくしたいと発言を変えました。それを聞かれると、自分を支える新左翼の力を自分の経験ということができるはずだと軽く逃げました。その新左翼が現在、政治混乱の原因になっているわけですね。
ただ彼は当初の方針を変えるつもりはないと言い張っています。
2)下院議会議長
共産党のカリオラが今月からその職に就くはずでしたが、今週、共産党はそれを辞退すると発表しました。3月に現行議長が選ばれ、彼の次ぎに共産党議員が議長に選ばれると合意に達していたのですが、この8か月の間に各党と共産党との関係が悪化し、他党の援護が薄れていったわけです。
さて14日の選挙でだれが議長にえらばれるのでしょう。予想では野党(右翼)が与党側のDCなどと手を組んで過半数の78票を確保したとされています。つまり、毎週書かれているように政府側の分裂が目立っているということです。これに対しボリッチは与党側の団結を訴えています。9月の新憲法投票で惨敗を喫しましたが、またこの議長選挙で側近の共産党議員が議長になれず野党側が指導権を握れば恥の上塗りですね。
この日曜日、第5州の大統領別荘に各グループ代表と政府関係者が集まりこの議長選にどう対応するか話し合ったとか。新左翼の代表を与党側は推すとしたいようです。

ボリッチとそのグループは自分たちはチリを変える、古い頭の人間が民主化以降チリの政治を統治してきたが、それを新しい考えで大きく変えるのだとしたわけです。それが全く機能せず、市民の離脱は明白です。犯罪、特に麻薬組織の急増など、新憲法とは全く関係なく現行憲法で対処できるわけですが、全くしませんでした。毎月発表されるいろんな機関の市民調査で彼を支持するは急下落です。4年の任期を完了できないだろうとするコメントが出るのも無理はないと言えます。


ところで、ここで少しチリの議会の歴史をまとめてみます。
1988年に軍事政権継続可否の国民投票が行われ、僅差で民主化が決定しました。そして最初の選挙で中道左派のグループが大統領を出しました。初代・2代目はキリスト教民主党DCが続き、その後、社会党PSとそこから分かれた民主のための党PPDが2代の大統領を出しました。そのころ、共産党新左翼はその中道左派グループの近くにいましたが、メンバーに入ってはいません。その後、ピニェラが初めて右翼として大統領につきました。
さて今回の選挙で、その中道左派グループが協力して候補を選ぶことをせず、各党が勝手な動きをしたので、共産党新左翼の候補に勝てませんでした。そしてその二人の争いで新左翼のボリッチが勝ったわけです。3月の政権開始の時には閣僚や政府高官は多くが共産党新左翼でした。ところが風が代わり、その二つだけでは上手くいかないことが分かり、中道左派グループから人材を選んでいます。先の内務大臣交代がそのケースです。ボリッチは与党内の合意を図る・進めるとしますが、自分の方針がはっきりしていませんからね。
共産党新左翼政権運営の経験がないので、口先だけで相手を説得する力がありません。あと3年ボリッチがどの選択をするかははっきりしていますね。

(経済)

1)チリ経済の落ち込み
2021年2月以降初めて、10月はマイナス成長になりました。もう経済停滞がはっきりしてきました。
 新車の販売が18か月ぶりに対前年で数字が下がりました。
2)銅価格と為替
銅の価格は9月13日以降で最高の3.59ドルに上がりました。するとペソが対ドルで強くなり1ドル948ペソです。
 銅の価格が上がるのはうれしいですが、どうしてこの状況で上がるのでしょう。不思議です。
3)ジニ係数
 貧富の差を図るのにこの指数が使われますが、チリの基本指数(所得ベース)は他国とほとんど同じとされています。ところが政府が関連するとそれが急に悪くなります。なにそれ?と思いますが、北欧などでは、高所得層には高い所得税をかけるので上下の差が縮みます。ところがチリの場合は、それが少ないので所得格差が開いたままとか。高所得層への増税は長い間、論議されていますが、一向に実現しません。ここでボリッチは思い切った方針を立ててほしいもの。そうすると少しは人気が戻りますよ。高所得層への税金が2倍になったら、ボリッチの人気も2倍になるかも。甘いか?

(一般)

1)高校デモ
 100年を超す歴史を持つ名門高校INBA高校の前でまた暴力デモ。6名が逮捕されました。そのうち2名は同校の学生、その他は一般人でした。新聞の社説にどうしてちゃんとした処置を取らないのかと書かれました。今年に入って587件の暴力事件が起こっているが3.2%のケースだけ関係者が処罰がされたらしい。つまりほぼ全員に処罰はされていないわけです。

マプチェ問題も同じで倉庫やトラック・重機に放火されました。しかし同地区で森林業などの会社を運営するのは至難の業です。
いつまで経営を続けられるか毎日苦悩ですね。経営者だけではなく従業員もそうですが。
2)山火事
また山火事の季節です。既に39か所で山火事が起こっています。
関係ありませんが、大気汚染の問題で2酸化炭素の量がチリは世界平均を超え、ラテンアメリカで最悪とか。悲しい事実です。
COP27世界大会がエジプトで始まりました。ニュースに出ますが、チリではそれに関し以前の熱気はなくなりました。
3)テレトン
障害児を援助する機関の費用を集める運動です。年に一度、この時期に行われます。行事の最後は国立競技場で行われます。6万人の観衆の前で国内外のアーティストがショーをするのですが、朝の2時まで続いたらしい。そして集めた金額は目標を超えて373億ペソでした。もっともその多額の基金はテレトン運営者の関係者の懐に多くいくようですが。
4)コロナ問題
今週で一番新規患者数が多かったのは土曜日で8745人。もう毎週その数を増やしています。さらに悪いのは陽性率でその日19%を記録しています。つまりどちらもこの数週間で最悪の数字です。政府も市民も反応していませんが。
5回目のワクチン接種が始まっています。今月は70歳以上の人が摂取する権利があるとか。

(スポーツ)

1)サッカー
リーグ戦が終了しました。人気3チームの結果はコロコロは引き分け、カトリカは勝利、チリ大学は敗戦でした。その結果、優勝はコロコロ、カトリカは5位、チリ大学は13位(全部で18チームです)
そしてコロコロは国際カップのリべルタドール杯、カトリカは南米カップに参加します。

もう一つのチリカップ戦は決勝をウニオン・エスパニョウールとマガジャネスが争います。
人気3チームは早々の敗退でした。


以上