チリの風  その942 2021年 5月31日ー6月6日

いよいよ6月、冬になりますね。この週末、サンティアゴは曇り空で、すっきりしませんでした。
普通、サンティアゴの外気温は真冬でもそれほど下がらず、零度以下にはなりません。もっと南のパタゴニアでもマイナス10度にはほとんどなりません。太平洋を流れる海流の影響と言われます。私は札幌とトロントでマイナス20度を経験していますから、ここの冬は少し寒いねと言うくらいです。
さて山歩きとマラソンをしていて、後ろから来る人に追い抜かれることがあります。今週もそうでした。私が追い抜くことはありません。と言うことは私の速度がほかの人と比較するとかなり遅いと言うことになります。何それ?高齢ですからね。
それでももちろんスポーツは継続します。
火曜日、少し雨が降りました。朝、走っているとポツリポツリと。雨に弱い私はそれで走る方向を変え家に戻りました。
やる気が足らん。次の日、山歩きをした時、上から見ると街はスモッグに覆われていました。たった一日でスモッグがこれほど多いのはチリの経済活動が正常化している証拠ですね??
ラソンを4日、山歩きを1日楽しみました。
イチョウの木のそばに実がたくさん落ちています。そこに野鳥がグループを作って集まり、腹いっぱい食べています。いつまで続くのでしょう、そんな幸せな風景は。

(政治)

1)ピニェラ動向
 火曜日、最後の教書を国会で発表しました。もちろん人数の制限があるので招待されたのはほんのわずかな議員でした。   
彼のスピーチは「民主化が始まったころ、チリの平均寿命は73才だったがそれが80歳まで伸びた。そのような良いことと反対に麻薬関係など犯罪が増え、市民の安全が脅かされるようになった。今回のコロナ問題は終焉が近いと思われるが、その後、それまでに国民が持っていた夢や希望が戻るようにしていきたい。新憲法は国民の声を聞くが、それが国を分断するようなことにはしたくない」
彼は1時間半ほど話しましたが、私はそれを全部聞くほどの気力はないので始めと終わりを少し聞いて、その時、話された内容をまとめたのが上の通り。ゴメン、知ったふりして。
さて教書を大統領官邸レポートで読みましたが、その中で注目されたのは、同性の結婚を認めることと、コロナで市民援助が遅れたことの自己批判をしたことでした。

翌日、彼の演説内容についてマスコミで取り上げられたのは下記のような点です。
1)1番話題になったのは、同性間結婚の承認です。以前から左翼はそれを認め、右翼は反対していましたが、ピニェラは突然今までの見解を変えたわけです。与党内から裏切り行為だと言う声も上がっています。テレビの番組でピニェラはそれを聞かれると時間がたつと人間の考えも変わるのですよと回答。政府内でも揉めています。UDIからもう駄目だ、ピニェラを大統領から降ろそうと言う声も出たとか。新聞に全く予想されなかったと書かれています。
2)人権問題
 先の社会騒乱でデモ隊に多くの負傷者が出た件については、警察も軍隊も規則に則って行動した。ただその一部の警官・兵士がその規律を破った例があるが、それは組織の責任ではなくその個人の問題だとしました。もちろん、それは言い訳ですね。組織のコントロールが出来ていないと言う証拠でしょう。昔は、チリでは警察と言う組織は市民から尊敬されていましたが、幹部の不祥事や警官のスキャンダル、例えばマプチェ青年殺人事件、などから評価は大きく変わり、近年は嫌がられる存在になってきています。
3)コロナ問題からの市民援助
市民への援助が遅れたという批判があるが、当初からそれを念頭に私は政策をとっていたとし、市民援助が遅れたかも知れない点は自己批判するとしました。
演説のあった翌日に市民援助の額と期間を増やすと発表しました。国民の大多数、1500万人ほどが受領する権利があるとか。
議会で大統領の提案は承認されました。
4)厚生年金問題
彼は現行制度は順調に機能しており、大きな問題はないとしていますが、最右翼のUDI党議員が毎月の様に積み立てた年金を10%引き出す運動があるが、それを止めて100%引き出させればよいのではとコメントしました。つまり次の政権に責任をすべて投げ出すと言うことですね。今まで10%引き出し運動のリーダーだった新左翼ヒレスも同じく100%引き出しを提案しました。
しかしUDI議員の次のコメントはひどい。各自が貯めた年金を政府が全部吸収するなら、その前に全部引き出すのが最善だと。
もう次は共産党が政権を取ると思っているのかな?
今の年金の仕組みが悪いとしそれを変えようとするなら、それの次のシステムを考え、それを発表し、どこが違うかどちらが良いかを考えるのは当然でしょうが、今の民間運営のシステムは嫌だ、国がやればよいのだと言うだけでは単なる嫌がらせにしかなりません。親方日の丸式でうまく行くわけはないでしょう。

さて演説のあったその夜の番組で、その演説についてコメントを求められた新憲法委員会の左翼の委員が「彼の4年の政権が失敗だったと言うことを認めたのでしょう。マプチェ問題も長々と話したが、結果が悪いのは明白だ。」とコメント。
ところで、そのマプチェ問題ですが、今週も家屋・倉庫・トラックへの放火犯罪が継続しました。現地の検察官がマプチェの運動の資金がどこから出ているか緊密に調査したいと発表しました。金が外から来ていれば大問題ですね。例えば、コロンビアの麻薬の金がアルゼンチンにわたり、それが同じマプチェの間でチリとアルゼンチンが手を組む。これならチリのマプチェグループの口座を捜しても金額は振り込まれていないでしょう。彼らはもちろん後ろからマプチェを操るわけですね。
ラテンアメリカではメキシコ、コロンビアは政治・社会不安がかなり厳しいですね。

新聞に既成の政党(右でも左でも)を支持するのは中高年、新左翼共産党を応援するのは青年と言う記事が出ました。私がチリの風で、新左翼共産党に反対するコメントをするのは私が老人と言う証拠かな?いやはや。

(経済)

1)経済成長率
 世界銀行の予想ではチリの今年の成長率は5.5%、IMFも似たような数字。これから順調になっていくとみられています。
 経済機関イマセックの発表では4月は13.8%と予想以上に伸びたらしい。良かった。
2)新車の販売
 1ー5月の合計で今年は14万3千台、前年対比53%アップとか、昨年は車を買う人はいなかったようですからね。

(一般)

1)コロナ問題
 ひどいことになっています。新規患者数が3日連日8000名を超え(金曜日は8867人と過去2番目の数字)、感染率が10%を越えています。
 死亡者数も一日230人まで上がり、最悪の状況が継続です。緊急病床はもう99%とか言われます。
 医師協会が私たちの声を聴かないなら政府のコロナ対策会議から出ていくとしました。
 彼らは先週始まった移動パスを中止させようとしています。ピニェラはそのパスの運営について検討するとし、翌日、内容を一部訂正させました。厚生省が悪いのか政府の姿勢に問題があるのかでしょうね。
 首都圏は一時、全地区が自宅待機令に入り、その後、少しづつ緩んでいましたが、ここに来て逆に全日待機のレベル1に下がる区が続出です。もう首都圏の半分以上の地区がレベル1に戻っています。
 私の住むところも危ないと言う噂が出ています。
 ワクチンを打った人が毎日増えているのに状況が毎日悪くなるのは不可解ですね。
 今週は苦しみですが、来週は少しは良くなるのかな?2回接種した人の数は820万人です。
 ただ患者の中で20歳以下の割合は昨年5月は9%、今年は18%。つまり中高年はワクチンを打って感染しなくなったと言うことと、青年は自宅待機を無視して秘密パーティに参加とかが影響しているのでしょう。
 金曜日に首都圏の街で96人逮捕されたパーティがあったとか。体育館でも借りて踊りまくったのかな、その人数は異常ですね。
 中国のワクチンが年少者も接種できるというニュースが出ました。

(スポーツ)

1)サッカー
 国内リーグ戦は今日までの段階で首位からカトリカ、ラ・カレラ、イタリアーノです。人気のコロコロは4位、チリ大学は12位です。
 ワールドカップの南米予選が再開され、チリは今回まず敵地でアルゼンチンと対戦。1対1の引き分けでした。昔はチリがゴールをしたら、窓を開けて大声でそれを知らせていました。通行人の人も驚いていましたが、今はそんな情熱はなくなり、その日は試合の最初と最後を見るだけ。アルゼンチンの方がレベルが高いのはわかりました。
 次の試合はホームで来週火曜日対ボリビア戦です。

 さて今月にアメリカップが行われますが、開催地だったアルゼンチンはコロナ問題から破綻寸前で、とても会場にはなれないと諦め、なんとブラジルで実施されます。
 ブラジルは世界的にひどい状況ですが、大統領は問題ないとしています。
 彼が都知事なら東京オリンピックもやるでしょう??
 ところがブラジル代表チームは参加したくないと言っているとか???
 そのアメリカップでチリは初戦でまたアルゼンチンと対戦、2週間先のことです。
2)テニス
 グラン・スラムの全仏オープンに参加したガリンは1,2,3回戦と勝ち抜いたが、残念4回戦で惜敗。ベスト8には入れませんでした。


以上