チリの風  その908 2,020年10月5日―11日

首都圏の週末の最高気温は30度にもなっています。私の顔はもうかなり日焼けして黒くなってきました。
この月曜日、何か月ぶりかですが、サンティアゴのすべての区の自宅待機令が解かれました。ということは必要があれば警察の許可なくても誰でも週日は外へ出ることができるわけです。その日、8か月ぶりにチリ大学病院に行って静脈血栓症の為の血液検査をしました。地下鉄の1号線と2号線を乗り継ぎますが、以前は朝早い時間、ぎゅうぎゅう詰めの満員の乗客だったのに、その日はかなりすいていました。学生はいないし、会社員も自宅勤務の人も多く、また失業者も関係しているのでしょう。同じように、山歩きをするためバスに乗りましたが、以前と違って空席がありました。やっぱりまだ完全に元には戻っていきませんね。
日曜日のマラソン練習は先週と同じで、仲間と楽しく走りました。

ところで新しいプロジェクトのニュースが来ました。
パタゴニアの人たちの援助です。この3月に嫁さんと行ったプエルト・ナタレス地区にスポットを当てています。
チリの風の読者の皆さんの援助を期待します。
「毛糸で南米パタゴニア地方の女性達の経済的安定を支援するプロジェクト」
https://camp-fire.jp/projects/view/334309

(政治)

1)ピニェラ動向
  領土問題
  南米本土とイースター島の間に独占水域などを認めさせ、チリ領土増大を目指すアイデアを国連に提出するとか。アルゼンチンがまたチリと領土問題を起こし、揉めそうに見えます。
  警察軍組織改正
  今、一番盛り上がっている話題がこれです。先週のイタリア広場のデモでデモ隊員が川に落ちて負傷と言う事件がありましたが、彼を後ろから押したとされる警官は裁判になります。昨年以来のデモ隊と警察の衝突で警官の発砲した弾丸でデモ隊員が多く負傷していますが、それらの警察官の行動、その指揮者も法規にのっとって行動しているのか、自分勝手に好きなことをしているのか分からないとして、警察軍の組織に緊急に手を入れることになりました。
  ピニェラは、政府案を国会に送るから早期に新組織に改革して運営したいとしています。このために各界のトップがモネダ宮殿に集まり、ピニェラの前で議論をしました。アボット検察庁官は警察軍の組織改正を大声で要求しています。会議中、該当の警察軍長官は全く発言しなかったらしい。国会で野党はその長官の罷免を要求しています。チリでは陸空海警察の4軍制度です。

  憲法改正投票はあと2週間に迫りましたが、全く熱気はありません。賛否の両グループがデモするのもあまりありません。私は32年前の10月5日の軍事政権継続の国民投票の緊張・興奮が忘れられませんが、今回の選挙は私が行っても行かなくても同じような気がします。多分、他の人も同じように感じているでしょう。世論調査では60%が改正に賛成、40%が現行憲法維持と考えているとか。
 2)国会の喚問
  前厚生大臣マニャリッチが国会に呼ばれましたが、彼に対する疑惑は彼が下から上がってくる数字、新規患者・死亡者数にいろいろ手を加えていたのではないかと言うものです。また医師協会が提案した都市閉鎖を彼は即時に実行しなかったため患者が急増したことも問われています。最も日本の医師会では都市閉鎖にあまり意味はない、マスクをつけても病気に感染するとなっているようですが、そのアイデアはチリでは報道されていません。それから内務大臣も喚問されそうですが、先のトラック業者のスト、マプチェの暴動騒ぎに手を打てない、間違った対抗手段を行っているとする質疑です。
 3)大統領候補
  いつもの3名の人気調査ですが、今週はハヅエが首位で16%、次いでラビン13%、3位にマテイ9%と続いています。3名とも現職の首都圏の区長ですが、共産党の区長が一番人気があるというのは不思議ですね。

(経済)

1)物価上昇率IPC
  9月のIPCは予想以上の0.6%で過去12か月で3.1%です。それでもまぁ順調ですね。銅の価格はポンド当たり3.08ドルと高値安定。チリの大きな援軍になります。為替は1ドル797ペソと先週と大きくは変わっていません。
2)政府の市民援助金
  中産階級向けの援助金で、不正に支給を受けた市民が多くいると先週報道されました。すると議員の中から、今回は特別事情だから、堅いことを言わず、全員にその援助金を渡すことにしようとするコメントが出ましたが、政府はそれを受けるつもりは無いと提案をキッパリ断りました。その議員は同じようなせこいことをしているのでしょうね。今までのところ15000人ほどが不正受領したお金を戻してきたとか。アボット検察長官はそれの不正者は犯罪者として取り扱いたいとコメントしています。
  ネットで見ましたが、同じような問題が日本でもあったようですね。チリ政府はレベルが低いと先週、書きましたが、日本にも同じことがあるなら、「どこの国でもある問題ですね」と訂正します。厚生年金の自分が積み立てた金を引き出すと言うテーマは第1回が終わったのにまだ継続していますが、政府はそれとは別に死期が近づいた病人の年金引き出しを許可する法案を至急に作成するよう国会に要請しました。どうなるでしょう。

(一般)

1)コロナ問題
  以前に比べるとニュースになるのが少なくなりました。というのは、ほとんど新しい動きはなく、連日の新規感染者数は1500名、死亡者50名、感染率5%くらいが続いています。患者数が増えた時はPCR検査数が増えた時です。今まで普通1日3万人だったのに、それが4万人になれば患者数が1800名になっても不思議はありません。バルパライソ州のバルパライソとビーニャの待機令が緩み、来週から週日は自由に歩けることになりました。次の月曜日が祝日なので、この週末は3連休、多くの車が郊外に出かけましたが、警察の許可証を持たずにビーニャなどに出て行こうとした車は途中の検問所でストップがかかり、土曜日だけで4000台ほどの車がサンティアゴに戻るよう指示を受けました。
 2)マプチェ問題
   先週、グループに襲われたトラックに乗っていた労働者が一人射殺されました。犯人捜しは進んでいません。今週は15台のトラックが火をつけられました。その地区の警察・陸軍は何をしているのでしょうか。不思議です。そのトラックのオーナー社長は問題が起きても、警察・検察・州などの誰もコンタクトしてこないとクレームしています。トラック業界は先日のストは終了したのではなく一時停止したものだから、政府の対策が妥当ではないとなれば再度ストに入ることを宣言すると厳しい姿勢です。
   マプチェグループのこうした犯罪行為の資金は民間会社の森林の木材を伐採して、それを闇で売ることから来ているとか。グループはここは自分たちの土地だから、森林伐採の権利は自分たちの手の中にあるとしています。国会で野党から喚問を受けそうな内務大臣はこの事件の後、直ちに南部のアラウカニア州に飛んで事情を調査しました。トラック会社の社長とも面談したとか。
ところで今週メキシコの大統領がスペインとバチカンに500年前に起こったスペインのラテンアメリカ侵略について反省・謝罪が欲しいと訴えましたが、全く無視されているようですね。スペインは反省など全く感じないようです。最もチリの場合、今ここに住んでいるチリ人の多くは最近移住してきた欧州人の子孫で、マプチェ問題・スペインの強奪・殺人などにほとんど興味がないようです。

  3)反政府運動
   この金曜日もイタリア広場にデモ隊が集まり、昨年と同じように投石・放火をしました。バスが2台燃えました。デモ隊は信号を何台も壊しました。昨年のケースと同じです。信号がないので来週から車の運行に支障が出ると言うのは当たり前ですね。しかし今週のデモ隊の数はわずか1500人でした。ただ昨年の最大時は100万人が集まったわけですかから、勢いは違いますね。中央部だけでなく、都内各地で同じような暴力行為が起きています。略奪・放火は犯罪ですから、その犯人を捕まえて裁判所が適切な判決を確認していけば、悪質デモは減少すると思いますが、捕まっても直ぐに釈放されるので、警察署を襲うとか、バスに火を付けるなどの行動が全くなくならないのです。警察に問題があるなら、国会、検察。裁判所にも責任はありそうです。いつまでこうした暴力行為が続くのかな?


(スポーツ)
1)サッカー
   国内リーグ戦はいつもと同じカトリカの首位は揺るがずリーグ戦終了はもうすぐです。さてワールドカップの南米予選でチリはウルグアイと敵地で対戦。1対2で負けました。チリのPKを審判が見逃したと話題になっていますが、今まで見た100試合以上のチリ代表戦の中で、これほど緊張・興奮しなかった試合はありません。チリもアメリカップを連勝してアメリカの星だった時代もありますが、もうその勢いはなくなりました。過去の栄光ですね。来週、ホームでコロンビアと対戦します。
2)テニス
   フランスのロランド・ガロス大会で女子ダブルスでチリ人のグァラッチは決勝に進出しましたが、残念2位に終わりました。最も彼女はアメリカに住んでいて、スペイン語はほとんどわからないとか。


以上