チリの風  その887  2020年5月11日―17日

天気予報が当たって先週より涼しい日が多かったサンティアゴです。今週の最低気温は2度まで下がりました。火曜日は最高気温15度、最低6度でした。そんな日の午後、太陽の当たるベランダで本を読む贅沢を楽しんでいます。
さて大変なことになりました。昨日の土曜日から首都圏全部が都市封鎖です。それまで私はスポーツ・散歩、買い物が自由にできましたが、また警察の許可がないと外を歩けません。スーパーマーケットに行けるのは週に2日です。今までは80歳以上だったのですが今回から75歳以上の人はどんな理由でも外に出ることが禁止になりました。いつまで続くか分かりませんが、大変なことです。
100年に一度のことですから、誰にもどうすればよいのか経験はなく混乱が継続です。

政治

1)ピニェラ動向

急激に患者数が増加したコロナウィルス問題についてピニェラはネットを通して前大統領とテレビ会談。会議に参加したのは左翼のフレイ、ラゴスとバチェレットです。もちろん現状を見ながらどの方向に進めばよいか各自の見解を聞きだした由。
それからいつものように到着した217個の人工呼吸器を飛行場まで受け取りに行きました。カメラに向かってこの機器を寄付してくれた起業家連盟に感謝の意を表しましたが、彼はそれが好きなのでしょうね。
それらを総合して今日の夜9時に全テレビ局で演説。「チリは今までになかった脅威に面しています。都市封鎖はみなさんの生活に大きな影響を与えますが、それがコロナウィルスに対抗する有効な手段で、皆さんの協力があれば短い期間で終わらせることができます。みなさんの生活を保障するために各種の手段で援助を用意しています。国民の団結、これがあればこの脅威に打ち勝つことができます。がんばりましょう。」

医師連合の会長が、私たちが以前から要求してた全サンティアゴ封鎖を実施せずこのような最悪事態を招いたマニャリッチ厚生大臣は責任を取るべきと批判しました。ただその組織の前会長はこのような事態に悪口合戦をしても意味はなく、全員が協力して事態の軽減を図るべきとコメント。その通りですね。
それから二人の前厚生大臣がテレビの番組で討論をしましたが、少なくともチリで現在進行していることは欧州やアジアで既に経験済みなのでそれをどう生かすかと言う点が欠けていたとみられます。
ピニェラはこれらを受けて同大臣をかばう発言をしました

2)失業率
労働大臣がもしかすると今年末の失業率は過去最悪になるかもしれないとしました。つまり20%ほどになるかもしれません。失業者数は150万人にもなりそうとか。
マクドナルドが3400人、ラタム航空が1400人の社員をクビにしたとか毎日ニュースになります。2019年のチリの貧困層は人口の9.8%でしたが、今年は13.7%に上がるとか。 
貧困家庭に食料が入った袋をプレゼントするのは始まったようです。全部で250万個とか。

経済

1)銅価格と為替
1ポンド2.34ドル、為替は1ドル823ペソと先週とほとんど同じです。
今年のチリの経済成長率はマイナス4%でしょうか。もっと落ちるかもしれませんが。
チリの命綱の銅の生産はまだ今のところ順調のようです。最も社員・下請けの従業員の首切りは始まっていますし、コロナウィルスに社員がかかり、そのセクションが機能しなくなったところが出ているとか。大変ですね。

一般

1)コロナウィルス
感染患者数は43781名、死亡は454名。
今まで毎日500人くらいだった新規患者が先週、一気に1500人まで増え、それが今週
は2500人を超えました。もちろんそれは通常な状態ではないとし、首都圏全部の封鎖措置が取られたわけです。
しかし問題は都市封鎖でコロナウィルスの動きを抑えても、ワクチンができるまで
病気を抑えることは困難です。一時、勢いが弱まったので、規制を緩めるとまた病気
が勢いを取り戻すということは欧州や韓国で起きています。つまりこの先1,2年も都
市封鎖が続くかもしれないとすると、経済が弱まると言うより破綻する可能性が高まり
チリ全体の、いやこれは世界全体の問題になるかもしれません。
チリの患者数は10万人当たり44人。死亡者は患者数からすると100人に一人と非常
に低い数字です。メキシコは患者10名に一人の死亡者が出ています。そこの死亡者数
は中国を抜きました。
チリの場合、つまりそれほどコロナウィルスの問題は厳しいものではなく、従って国
の経済の動きを全面的に止める必要はないと言う声も出るわけです。ただ病院の施設が極限に近づいた今、のんきなことを言う時期ではないとされています。

社会党員で上院の副議長をしているキンテロスが陽性になりました。議員の初感染
です。彼は自宅のあるプエルトモンに飛行機で帰りましたが、病気拡大をしていると
批判の声が上がっています。彼と同じ委員会で働いていた議員が全員、感染の疑いが
あると調べられています。確かに今日、二人目の議員の感染者がでました。DC党の
ピサロですが、これから議会の運営もテレビ画面で討論することになりそうです。 
この二人の議員とコンタクトがあった大蔵大臣などの政府関係者も自宅待機をする由。
ピニェラは検査の結果は陰性でした。

麻薬関連
自宅待機令で麻薬の需要が高まったとか?? そして外国から麻薬が入ってこなくなったので国内の麻薬グループの持つ麻薬の価値が上がり彼らの商売はばっちりですが、敵対するグループの争いが増えているとか。

全首都圏で自宅待機令が発令されたので、交通は極端に制限され、昨年以来、反政府
運動の中心地になったイタリア広場の周りに、人も車も見当たらないと言われます。
私の部屋の窓から外を見ても誰も乗っていないバスとか自家用車が時々通りますが、歩いている
人はほとんどなし、太陽の出ている午後とは思えない風景です。バス・地下鉄は通常運行を継続とか。

全首都圏に自宅待機令がでた土曜日、約3万人を取り調べたところ、約1000名の人が許可証を持たず道を歩いていたとか車を運転していたとして警察に逮捕されました。許可証がいると知らなかったか、いちいち細かく警察が調べないだろうと見たかどちらかですね。

キリスト教の教会で信者の集まりがあったとして神父が逮捕されました。今は信者の集まるミサは禁止されていますから。

南部の地方で大雨になり、一部で土砂崩れが起き行方不明者がでています。
コロナで死ぬのも土砂崩れで死ぬのも運が悪いですね。


以上