チリの風  その865   2019年12月9日―15日

今週の一番の話題は日本人学校の中学生に特別授業としてチリの歴史を仲間の峰村さんと二人で実施したことです。先住民の話から独立の後の近代化の基礎になった太平洋戦争までを説明しました。
11月にガイドの仕事が取り消されたので、当分はないのかと思いましたが、今週、久しぶりに市内観光のガイド。次の予約も入っているので今月は通常化するみたいです。                  
土曜日の登山教室は11名で実施。アポキンドの滝まで往復7時間半で歩きました。運が良かったのはそれまで30度以上の気温だったのにその日は最高気温が25度まで下がり、暑くなかったことです。参加者の最年小は6歳の竣介、仁太君でしたが、二人の健脚には驚かされました。誰にでも行けるコースではありませんが、全員無事に戻って来れました。感激するみんなにおめでとうと言いました。
日曜日のいつものマラソン練習は4名で走り、その後、嫁さんの作ったケーキを食べながら会話を楽しみました。      
こんな風に今週は楽しく忙しい毎日でした。

(政治)

1) ピニェラ動向
月曜日の夜、ピニェラは全テレビ局を通じて新政策の発表をしました。いつもの数分ではなくそれよりずっと長いものでした。それは120万人ものデモ隊があふれたサンティアゴの市民の要求に接近すると言うもので、例えば汚職を重要犯罪として取り扱うとか、金持ち会社が話し合いをして価格を高く設定すのを認めないと言うものです。これは既にチッシュペーパー、鶏肉、薬品などの分野で価格操作が違法となりましたが、ほとんど会社側には被害は出ません。その仕組みを変えて、該当重役を刑務所に送ると言うわけです。最高5年の刑になるとか。
また健康保険の男女の差をなくすると言うのも新方式です。妊娠・出産のある女性は同年代の男性より高い費用を払わされていましたが、来年からこれが同レベルになります。つまり女性の経費が下がり、その分を男性が負担する。この方式を確認するよう政府は国会に送ります。
最近のデモで男女の差別廃止が謳われますが、その典型の例ですね。もちろんこれらは右翼のピニェラが悪かったと言うのではなく、それ以前の左翼政権も全く手を付けていなかったわけです。
与野党の中で唯一、こうした問題にはっきりした態度をとっていたのは新左翼ですが、次第にその「新」の色があせ旧左翼と同じようになってしまったのは事実です。今週、人間党が新左翼グループから脱退することを発表し、新左翼グループは壊滅寸前です。
ところで、長い間継続中の暴動騒ぎは、継続ですが、頻度は極めて下がっています。このまま落ち着くのか、再度、爆発するのかはわかりませんが。世論調査では70%の人がまだデモは継続すると考えています。

さてこの火曜日、ピニェラは隣国アルゼンチンの新大統領就任式に出席する予定でしたが、前日に南極に行く空軍機が行方不明になったため、突然、取り消ししました。
結局、その飛行機は墜落し全員死亡ということになりました。機体・遺体の収拾が始まっています。事故の原因はまだ未定です。ただし、事故の6日後に、空軍はその飛行機が2016年に事故を起こしそうになったことがあると発表しました。
ただ不思議なのは訪問中止が発表された後にも大統領府の報道では彼はアルゼンチン訪問と書かれていました???
ところでその就任式にラテンアメリカの大統領はわずか3名だけ参加。ウルグアイパラグアイキューバです。新大統領のフェルナンデスはブラジルの元大統領ルラと非常に親密な関係を持っていたので、ブラジルの大統領は出席をせず(右翼と左翼です)、ボリビアの新暫定大統領は右翼ですから招待すらされなかったとか。いやはや。右のピニェラも行きたくなかったのに呼ばれたので、何か不参加の理由を捜していたのかな?
2) しかしそれより重要なのは前内務大臣の弾劾が国会で成立したことです。テレビの番組で上院でのその議論を見ましたが、野党議員が、彼に「チリで人権問題があることは世界に報道されています。その問題を解消・軽減するのはあなたの仕事だったが、全くそれに取り込んでおられなかった。ですから国会としてあなたを糾弾するのは当然でしょう」と言う感じ。彼はその批判は全く見当違いと回答。投票の結果、彼は敗れ、これから5年間公職につけません。
その後、同じ容疑でピニェラを弾劾する手続きが始まりましたが、野党側の議員の何人かがそれに同調しなかったため、国会で取り上げられることにはなりませんでした。         
こんな意味のない時間つぶしの国会活動を続ける彼らを見ると 、議員の数を減らすと言うピニェラ案を何とか実施させたいものです。弾劾されたチャドウィックの側近はこの国会決議に対し世界人権員会に持ち込むことを考えているとか。議員は私は人権保護をしなかったと弾劾したが、根拠のない理由で私を弾劾したのは彼らだということですね。
もしそんな冗談が通れば、チリの国会は面子丸つぶれですね。
3)民政化30周年記念
今から30年前にチリの民政化が行われました。1989年12月14日に大統領選挙が行われたわけです。それは1970年以来の選挙でした。73年の軍事革命は17年間継続したことになります。もちろん私も投票し、結果を緊張して見守ったのを思いだします。中道左翼でキリスト教民主党のエイルウィンが勝利しました。
4)区民投票
全国で合計220ほどの町村で市民投票が行われ、新憲法問題などを14歳以上の区民が投票に参加しました
ネットによる投票を入れて2百万票以上が投票されたとか。
その結果ですが新憲法が必要は80%、投票の義務化は65%、麻薬・汚職などの有罪者は公職につけないなども
多数の人に認められました。
5)COP25  
  長々と続いています。どういう結論になるのかよくわかりませんが、パッとしない国際会議と言う
  イメージになってきました。開催国のチリのリーダーシップが足りないとあからさまに批判する国もあるとか。
  ところでチリは排気ガス抑制から火力発電所を少なくすることを表明していますが、
  エネルギー大臣が2025年までにそのうちの10カ所は閉鎖するとコメント。
  ピニェラはこの会議に関し、大きな進歩があったが、それで十分だと言うものではないとコメント

(経済)

1)銅価格と為替
  銅価格はポンド当たり2.79ドルと高めに落ち着き、このためペソは1ドル767ペソまで
  強くなりました。830ペソまで落ちましたからね
  最終決定はまだのようですが、米中貿易戦争が終焉(もしくは停止)になりそうなので。この傾向は来年初め
  まで続きそうですね。チリのとって最高のストーリー。
 2)人事開発    
   国連の数字ですがチリは42位に位置し、ラテンアメリカ内ではトップ。
   それによるとチリの弱点は貧富の差がひどすぎる、長所は男女の差が少ないとか。
 3)失業率
   暴動騒ぎが始まってから、失職した人の数が10万人になりました。
   昨年同期の85%アップ。これから先もこうした悪い数字は継続でしょうね。
   調子の悪いニュースはいくらもあるでしょうが、新車の販売は11月は前年対比28%の減少。
   ペソが弱くなって輸入車の価格が上がれば来年は新車の販売は激減するかもしれませんね。

(一般)

 1)露天商の取り締まり
   暴動騒ぎが始まってから警察は、露天商を取り締まる余裕がなくなりましたが、ここに来て、手が空いたのか再度違法
   の露天商を取り締まっています。
   良いことと言えるでしょうか?


以上