チリの風  その861  2019年11月11日―17日

夏の暑い日が続いているサンティアゴです。
水曜日、日本人学校の運動会がありました。今年で39回目ですが、私は第1回から参加しています。しかし子供の元気はすごい。各種目をこなし、踊り、走り、飛んでも疲れを見せません。最後のリレーは感激モノでした。大げさですねと言われるかもしれませんが、懸命に走る子供の情熱が私の心に届きました。この運動会は今までの最高の一つでした。
山に入ってトレッキングをしました。週日なのでほとんど誰にも会いませんが、木陰に座ってのんびりと鳥の声を聞いていると究極の喜びを感じます。最もしばらくすると家に帰ってコーヒー・ケーキを食べようと思います。いつもの習慣ですが。    
土曜日はサッカー教室。20名の参加者でした。暑い中、時々休みを入れながら楽しく練習しました。                                
日曜日のマラソン練習は5名で実施。元気よく走りました。

(政治)

1) ピニェラ動向
ピニェラは1か月も続く暴行騒ぎを抑えるため次の3つの提案をし、国民の合意が必要としました。
その1 平和への願い、暴力に対抗する団結
  2 公平なチリを目指す連合する力
  3 新憲法の設立とそれを目指す過程の方向性
もちろん、与野党の大半から賛成の声が出ました。
そして新憲法設定に関し来年4月に国民投票が行われることになりました。この過程で与野党が協議し、合意に達したわけですが、午後に始まった会議は次の日まで続き、何度も破局寸前まで混乱した由。一番、譲ったのは最右翼のUDI党と言われます。もしこれが真実とすれば、彼らは与野党を上げて新憲法と言っているときに自党だけが反対すれば次の選挙に影響すると見たのでしょう。
4月の国民投票で、新憲法の制定が否決された場合は現行憲法が継続して使用されます。
ピニェラは4月の投票に反対していたので、話し合いにそれほどかかわらず後ろに隠れていました。また共産党は唯一、会議に参加しませんでした。

さて今週は労働組合連合のゼネストとマプチェ青年が警官に殺害された1周忌の二つの動きがあり、各地でデモ隊が警察と衝突しました。放火・略奪は継続です。(もっとも週末にかけてデモ隊の数、暴力事件の数は少なくなってきています)     
そうした事件で逮捕された人間の大半は以前に捕まった前歴を持っているとか。彼らの犯した事件で、一番多くの人が迷惑を受けているのは地下鉄とスーパーマーケットの火災です。
首都圏の南の方のプエンテ・アルトからセントロへ地下鉄なら1時間ですが、今はバスを乗り継いで2時間、3時間もかかるとか。毎日それを往復に費やせば、1日で3時間も多く交通に使うわけで、気力体力の限界ですね。しかし喜びのニュースです。来週の月曜日から地下鉄が一部開通しますが、その中にプエンテ・アルト行きの4号線が入っています。ただし全線開通は来年末と言われます。
それから小さな村でス-パーマーケットが全焼し、毎日の生活に困ると言う声もまだあちこちで聞きます。

マプチェ青年殺害事件については、1年前のチリの風を読んでほしいですが、各地でマプチェの旗を掲げたデモ隊が行進しました。南のコンセプシオン市で、公園に設置されていたペドロ・デ・バルディビアの像が壊されました。そのペドロは1541年にサンティアゴに入ったスペイン人です。首都のアルマス公園に彼の銅像があります。その下に「チリ建国の父、われらが英雄ペドロ・デ・バルディビア」とありそれを作ったのはチリ中央スペイン人会です。バルディビアは彼らには英雄、マプチェの人には領土に侵入し、殺人・暴行を繰り返した犯罪人ということになりますね。 
2) 2020年度の国家予算が下院を通過し、上院に送られました。どうなるかな?

(経済)

1) 銅価格と為替
銅価格は2.64ドルと下がり、為替は1ドル800ペソを超えてチリペソは歴史的な低価格になりました。この過度の上昇を防ぐため中銀が手持ちのドルを使って市場に介入したようですが、市場を抑える力は足りなかったわけです。しかし新憲法案が合意に達すると1ドル783ペソまで戻しました。同じように株式市場もなんと8%も一気に上昇しお祭り気分です。
ペソが下がると輸入品の価格は上がりますが、政府はガソリン価格を15日間動かさないよう援助したとか。ガソリンが上がるとまた暴動が起きるからかな?
2) 暴動1か月の影響
港湾事業は労働者のストもあり動きは低迷
鉱山業は労働者・物質の移動などの動きが落ち生産に影響。
家屋の販売はこの1か月で40%の減少
発電総量は2.2%の減少
観光業では観光客の35%が中止もしくは延期を選択。例の大きな国際会議が中止になったのでホテルのキャンセルは70%まで上がっている。
首都圏の労働者のストで街にごみが溢れたが、金曜日に収拾される
大学入試が2回目の延期。来年1月6日と7日になった。
暴動が治まらないので、政府は退職した警官を1000名再雇用する方針を決定。警察官が暴動を抑えきれなければ、再度、軍隊の起用が考えられますが、ピニェラはその決断を下すのを嫌がっているよし。

(一般)

1) 山火事
ブラジル、アメリカ、豪州で大規模な山火事が起きていますが、チリでもとうとう山火事のシーズンが始まりました。今週首都圏から海岸の方に行く道路の近くの森林が燃えだし、両方向とも車の通行が禁止になりました。5カ所の火事の中で現在も3カ所で延焼中で合計2千ヘクタールが燃えたらしい。近くの地区の家屋にも火がうつりました。放火の疑いで2名が逮捕されています。
2) 移民
今週、べネスエラ人の医者と話をする機会がありました。その医者は「チリは母国より経済的に落ち着いているのは確かだが、生活・文化としては母国の方が好きだ。マドゥロが交替すれば母国に戻りたい」とか。
中米からメキシコを通過してアメリカに向かう移民の行列が以前は話題になっていましたね。最近は全く報道されませんが、その行列は現在も継続中とか。つまりマスコミの好みで報道されたり報道されなかったりするのですね。
チリの暴動騒ぎが日本で報道されるときはチリは貧富の差がひどい国で、それを国民がクレームしているとなっているようです。わずか1か月前のことですが、APECやCOP25の国際会議を開催する国としてチリは南米の優等生と報道されていました。貧富の差なんて1か月で起きません。つまりニュースは本当かウソかよくわかないわけです。
チリの貧困層の数ですが、1990年は国民の68%、2017年は8.6%です。またジニ係数ですが2000年には0.55でしたが、2017年は0.49と少し良くなっています。つまり貧困問題は毎年悪くなっているのではないことが分かります。
外交関連で国連の人権委員会の幹部バチェレットはボリビアの件で、同国は危険な道を歩いているとコメント。メキシコに亡命したモラレスは国民が要求すれば自分はボリビアに戻るとし、彼の支持者が警察と死者が出るほど戦っています。

(スポーツ)

1) サッカー
この週末から国内リーグ戦が再開するはずでしたが、もう1週間ずらすとか。おまけに上位の対決、カトリカ対コロコロがあるその来週の26戦を日程の一番後ろに回し、27戦目を来週にするとか。カトリカの優勝が決まってしまえば、その後のリーグ戦の興味が薄れますから。しかしチリのサッカー連盟も姑息ですね。
チリは国際親善試合でペルー、ボリビアと対戦する予定でしたが、両試合とも取り消しました。チリのナショナル・チームの監督はコロンビア人ですが、試合がないなら私の仕事もないから辞任することもあり得るとコメント。

以上