チリの風 その857 2019年10月14日―20日


天気予報はあたりませんでした。今週は雨の日が多いと言われましたが、雨は月曜日だけ、しかも月曜日はかなりの雨量と見込まれましたが、ほんの小雨、今週の予報は外れでした。

さて、えらいことになりました、ピニェラ政権の存続の危機です。そんな大げさなと思われるかもしれませんが、このチリの風を読み終えてから判断してください。

先週、スポーツをやりすぎて限界まで行ったので、今週はレベルを下げました。何でそこまでやるの、それは体力が落ちると気力に影響すると思うからです。人生最後の日まで楽しく行きたいです。
土曜日のサッカー教室は20名の参加者で楽しく実施。練習の後、家に戻るためバス停に行くと、もう今日はバスの運行はありませんと聞きました。それで学校に戻り、先生に頼んで彼の車に乗せてもらって戻ってきました。歩いたら2時間以上かかったはず。
日曜日のマラソン練習は誰も来なかったので一人で出発。途中、道路に昨夜の抗議行動に使われた焼け焦げた大型機械がありました。それは車の運行に影響するから、何とか一人で歩道に運びあげました。手が真っ黒に汚れました。途中で10キロを走る気が消えて、ショートカットして家に帰りました。                                              
その後、学校関係者を招待してチリの歴史のプレを行いました。これは昨年に続いて峰村さんと二人で学校の特別授業で社会の時間にチリの歴史の話をするからです。
しかしデモ隊の暴力行為は日常生活に大きな影響を与えますね。

(政治)

1) 暴動騒ぎ
サンティアゴの地下鉄の料金が先日最高30ペソ上がりましたが、それに抗議する運動が始まり、とうとう非常事態宣言が出されました。それによって軍隊が街に出るとデモ隊は「なぜおまえたちが俺たちを監視するのか、所属の基地に戻れ」と抗議の声。それでも暴力行動が継続して、とうとう土曜日の夜、夜間禁止令が出ました。特別な場合以外は一般市民は夜10時から朝7時まで外出できません。私がチリに来た40年前と同じです。最も夜10時にベランダから外を見ていると動きが急に止まったのは確かですが、それでも歩いている人やバイク・車も見えました。軍の監視は40年前の厳しさはありません。
スーパーマーケットに侵入して商品を盗むのは日常茶飯事でテレビのニュースで、店から商品を持って出てくる人が列を作っているほど。それならなぜそこに警察・軍隊が行かないのでしょう。
私の家の近くの地下鉄の駅の前で市民が鍋たたき抗議をしていたので、その一人のおばさんにどういう抗議ですかと聞くと、「地下鉄代の値上げ、電気代の値上げ、薬の値段が下がらないと市民の生活が悪くなっているけど、それは誰の責任ですか」と答えがありました。
夕方、ピニェラはテレビカメラの前で、地下鉄の値上げを撤回しますとコメント。しかしそれでもデモ隊の暴力行為は全く止まりません。しかし首都圏だけでなくバルパライソコンセプシオン、イキケ、プンタ・アレナスまでと全土に混乱は広がっていきます。これはいつまで、どこまで継続するのか誰もわかりません。月曜日に、地下鉄・バスが動かなければ、チリは瀕死になりますね。もっとも大事な1号線の場合、大半の路線は営業するが、一部は運休とか。4号線は何か月か運転休止と言われます。

この事件を時系列的に調べると、地下鉄のただ乗り抗議は月曜日から始まりました。火曜日の新聞には大量のタダ乗りデモが行われ5つの駅が閉鎖されたとなっています。火曜日には約1000人の乗客が代金を払わず駅に突入。警官が出て駅員を援助するのが通常化しています。水曜日は大量無賃乗車を防ぐため地下鉄駅は安全確保のための対策を実施となっています。つまり当初は単なる無賃乗車の取り押さえ問題だったわけです。そして金曜日にそれが拡大し暴動騒ぎが起こり商店の略奪、車やビルへの放火が蔓延となりました。
このため、非常事態宣言(軍隊の使用)や外出禁止法が出されました。
私の推定ですが、今回の暴動騒ぎは、当初、一部の学生が遊び半分に地下鉄の無賃乗車を計画し実施。それをネットで宣伝すると反響が大きく、2度目を実施。その段階で一部の野党(xx党)が興味を示し、自己傘下の労組に指示し反政府運動として鍋たたき運動をやらせる。それが一般市民に広がり幅が出て、首都圏だけでなく各地で鍋たたき運動が始まる。それを利用した覆面グループが商店の略奪を始める。もう誰のコントロールも効かない。違うかな?                             
ピニェラは地下鉄値上げ撤廃を発言しましたが、反政府グループにとっては、それが目標だったはずなのに、ほとんど喜びの声さえ出てきません。

野党議員が軍隊を都内の警備に使うのは軍事政権時と同じだとクレームしました。2010年の南部の大地震の時、市民の商店略奪が停まらず、大統領はいやいや軍隊を使いましたが、それは左翼のバチェレットでした。つまり野党議員は記憶力が悪いか、なんでも自分の都合の良いように筋を作るかのどちらかですね。デモ隊がピニェラ辞めろと書いた旗をもって歩いていましたが、チリ共産党の党首はピニェラに辞任するよう要請しました。

さてこれが継続すると、もしくはいったん終焉しても来月のCOP25、APECの2大重要国際会議の時に再発すればピニェラは世界で面子を失います。そうなると野党側だけでなく与党からも彼を外す動きが出て、代理の副大統領に代わる可能性があるわけです。
今回の混乱は1990年にチリの民主化が始まって以来最悪の状況と報道されました。私もそう感じます。    
モネダ宮殿の危機とか、先週誰も想像もできなかった事件と言われますが、政府でもマスコミでも考えできなかった事件なのですね。

チリ人の反応ですが、商店略奪者などを「今頃、家に帰って酒を飲んでぐっすり寝ているはずだ」「正常人とは思えない、こいつらキチガイだ」とか「軍隊が発砲すればこれら犯罪者は射殺されるかも」とか激しい意見も聞きました。反政府、もしくは反社会勢力の数が予想以上に多かったのは事実ですが、平穏が大事とする正常(通常)チリ人も多いことは間違いありません。
さぁ明日の月曜、どうなるかな?多くの学校・会社が休みになりそうです。略奪事件で笑ったのは、数十カ所で略奪行為があり、1カ所だけ、軍隊がそこに入り、店の中にいた数十人を全員確保し、床に寝転ぶよう命令しました。たった1カ所ですが、犯人は警察の調べの後、裁判所に行くわけで、この先の人生は真っ暗ですね。  そのほか、銀行や事務所を襲い放火、バスや地下鉄の車両に放火する事件が多発して、消防車が足りずに燃えている銀行の前を消防車が行き過ぎる場面もありました。ほかの場所に行くわけです。
日曜日の夜のニュースで内務大臣は「今日の略奪事件は40カ所、その後に放火された店舗での焼死者を含め7人が死亡」と事態が一向に収まっていないことを認めました。
2) 裁判所と憲法法廷
先週、その二つの法廷がにらみ合っていると書きましたが、両者のトップがニッコリ笑って手を握っている写真が掲載され、両方が和解を宣言となっています。問題点は何でどう合意に達したのか詳しいことはわかりませんが、もう喧嘩は止めましょうということになったのでしょうね。裁判所とか検察とか、あまりピンとこない組織です。

(経済)

1) 経済成長率
チリの成長率は2024年まで一人当たり成長率は伸びが悪く、先進国との格差が広がる一方とか。今はチリの下に位置するウルグアイにも抜かれそう。
2) 10年ごとの成長率
軍事革命が起きた70年代は平均成長率は2.5%でした。その後の10年間は3.8%、6.1%、4,2%と順調に伸びてきましたが、この10年間、2010年代は3.5%とパッとしません。この先も、来年以降も困難な状況で明るい光は見えていません。
3) 銅価格と為替
1ポンド当たり銅価格は2.61ドル、為替は1ドル710ペソでした。

(一般)

1) 犯罪の増加
家族が犯罪にあったとするのが41%になり、2014年以来最悪の数字になりました。昨年まで毎年この数字が下がっていたのですが。モネダ宮殿にとって犯罪を抑えると言うのは最重要テーマのはずですが、うまく機能していませんね。それがこの週の暴動騒ぎに関連するのでしょうね。

(スポーツ)

1) サッカー
チリナショナルチーム赤道ギニアに3対2で勝利、久しぶりですね、国際試合で勝ったのは。しかしこの名前も聞いたことがないようなチームと勝負する意味はあるのでしょうか。よくわかりません。             この日曜日、首位のカトリカが2位のコロコロと対戦し、もしカトリカが勝てばシリーズ優勝が決まるはずでしたが、例の暴動騒ぎで中止になりました。実施されれば両チームのファンが暴動を繰り広げることになったでしょうね。
2) テニス
数年ぶりに来年、チリでATPツァーが開催されることになりました。

以上