チリの風 その852 2019年9月9日―15日
サンティアゴは月曜日と火曜日、久しぶりに雨になりました。火曜日は雷雨でした。もっとも深夜だったので私は寝ていて気が付きませんでした。今日の日曜日も走っていると大粒の雨がぽつりと降りました。最低気温が2,3度と寒い日がありましたが、最高気温は25度にもなるので地下鉄に乗ると冬服を着たおばあちゃんと半そでの若い女性が並んで座っています???
今週もいろんなことがありました。例えば、初めて応急手当の講習会に招待されて行きました。救急車が来るまで患者をどう助けるかと言う具体的な話で、例えば心臓まひの人の救助法を全員がプラスティックの人形を使って練習しました。それからコンサートに行きました。ベートーベンの交響曲第8番でしたが、迫力ありました。でもそれから長い時間が過ぎているのに彼やモーツァルトをしのぐ音楽家がなぜ現れないのでしょう?
土曜日は登山教室。10名以下といつもより少ない参加者でしたが、楽しく初級広場まで4時間コースを歩きました。いつも同じことを書きますが、小さな子供が大人と同じように山歩きができると言うのがうれしいです。
マラソン練習もしてしっかり体調を整えていますが、今週は10キロ67分。少し前10キロの目標を50分台にしていたのですが、もう70分寸前。高校生の頃32分で走ったのですが、2倍以上。17歳と72歳の差ですね。厳しい現実。
(政治)
1) 軍事革命記念日
チリで9月と言うと18ですが、11日の軍事革命記念日も大事な日です。野党はモネダ宮殿の前に建つアジェンデの像の周りで集会し、その後いつものように彼の遺体を搬出したモネダ宮殿の出口のドアに花を飾りました。
政府はこれに関し公式行事を実施しませんでしたが、ピニェラはマイクに向かって「1973年のこの日、大きな出来事があったのは明白だ。そのころチリの社会は政治・経済・市民生活に大きな問題を抱えていた。それを倒した軍事政権が人権問題を起こしたのも確かだ。しかしそれを46年後の今も同じように双方が憎みあっていてよいものだろうか。私たちの子孫に残すのはそれを元に、これからどう進んでいけばよいかを考えるべきだろう」としました。与野党両方からピニェラのやり方に不満が出ましたが、私はピニェラの考えに賛成です。
野党側のDC党元党首のサルディバルはピノチェットが市民を殺害・拷問をした軍隊の人間を少しでも処分していれば現在の状況は変わっていただろうとコメント。右翼側は彼らは軍が市民を殺したことしか言わず左翼側の暴力事件の話が出ないのは不可解としています。UDI党党首が左翼ゲリラに殺されましたが、その犯人が逃亡したブラジルからチリの送還されてきたのは先日のことですね。
確かにアジェンデのころのチリは今のべネスエラと似たような状況で、人が列を作っていると何のためかわからなくても列に入ったと言われます。例えばトイレットペーパーが売りに出ていたとか。スーパーマーケットから商品が姿を消した状況が続いたわけですね。鍋たたき運動と言って、夜に市民が道路のふちで集まり抗議しました。市民生活を破綻させたアジェンデ政権の批判とそれを武力でつぶしたピノチェット批判が並ぶわけです。
そのピニェラは日曜日、新教福音派の総会に出席。ピニェラ夫婦だけでなく政府関係者・国会(与野党)・司法など多くが出席しました。先日の大司教のスキャンダルがあったのに出席者はミサに興奮し、手を振り、首を動かし感動していました。テレビでそのミサが中継されたので私はテレビの前に座ってみていました。熱心な信者はキリスト教でもイスラム教でもユダヤ教徒でも同じだなと感じました。ミサの中でラ・アラウカニア州のマプチェ問題が出て私たちの同胞、先住民のマプチェを援助する政府の仕事を期待したいとされました。彼は来週、旧教カトリックの集会にも出席します。
2) 国会議員の仕事ぶり
テレビの特別番組で議員が国会でどのように仕事をしているかが報道されました。議長が開会を宣言しても議員席にほとんど誰もいない状況が映されると唖然としてしまいます。議会にほとんど来ないような議員もいるとか。チリの議員は世界的に見ても高給取りなのに仕事場にいないなんて。数時間も遅れて議場に来た議員にそのあと質問すると、私は議会の外で仕事をしていましたと回答。それが国会議員の言うことかと思わされました。ピニェラが言うように議員数を減らすと言うのはすぐに実施してほしい政策ですね。
(経済)
1) 経済成長率の推移
JPモルガンの発表で2020年のチリの経済成長は2.3%です。今年の後半から数字は良くなり来年は計画通りの高成長を見せますと胸を張っていた大蔵大臣はこのニュースをどう見るのかな?チリの中銀も来年は3.1%の成長を予想していますが。命綱の銅価格が米中貿易戦争で低迷継続ではチリの近い将来は暗いですね。
最もチリの予想成長率の数字はラテンアメリカ平均より高く、他の国はさらに厳しい状況が予想されています。
2) 銅価格と為替率
銅価格はポンド当たり2.7ドル、為替は1ドル707ペソと大きな変化はありません。
3) 新車の販売
8月の新車の販売数は33059台と前年対比15%ダウンと過去4年で最悪の数字。となるとこれから年末にかけて同じ傾向が続きそうですね。
(一般)
1) 18の大騒ぎ
来週の18の前にこの週末多くの車が外へ出ていきました。フォンダと言いますが18を祝う屋台がすでに営業を開始した地区もあります。来週はチリ中がお祝いで大混乱になりますね。交通事故やそのほかの事故があまり起きないよう祈りたいです。
2) 飲料水の推移
2008年から2018年の間のチリの飲料水の変化は次の通りです
ミネラルウオーター2.1倍。ジュース1.5倍。ビール1.2倍。コーラ5%マイナス。
そうかコーラを作っている会社は落ち着いて眠れませんね。
3) キンテロの大気汚染
時々ニュースになりますが、昨年の大騒ぎから1年経ちました。汚染の元凶はエナップ国営石油会社とかコデルコ銅公社が上がっていますが、その責任者の更迭とか、最悪の場合、工場閉鎖になるでしょうが、そんな処置は全く取られません。そんなことをしたらどこにも新工場を設立できないとかいう泣き言が出て、政府があやふやにしているのでしょうか。マスコミ報道も今一つです。
ラテンアメリカの中ではチリは民主的と言われますが、この件を見ていると政府が本気で市民の安全を考えていないように見えますが、どうでしょう。