チリの風 その846  2019年7月29日―8月4日

とうとう8月です。チリでは老人に、今月を乗り越えればまだ長生きできますよと言います。冬が終わって春が来るということですね。
今週は4日もスポーツを楽しみました。トレッキングは石碑から初級広場に行く登り道を選んで歩きました。久しぶりだったので面白かったです。    
土曜日はサッカー教室。その日の最低気温は0度でしたが、午後は25度まで上がりポカポカの温かさ。23名の大人・子供が集まってサッカー練習をしました。最後の練習試合は盛り上がりました。しかし大の大人が子供相手に本気でプレーですからね。ワイワイ騒いでゲームを楽しむのは最高ですよ。                          
日曜日はマラソン練習。走っていて、昔はランナーズ・ハイを感じましたが、今ではそんな好調は来ません。疾走から失走に変わったのかな?いやその内、失踪かもしれませんね、悲しいけど。それでもまだ走れるだけマシや。
さて久しぶりにコンサートに。チリのオーケストラですが、40名の奏者が指揮者にまとめられ一つの輪になって、演奏。その連帯が素晴らしい。最後は盛り上がりました。                              
それから日本の商社のチリ支店開設60周年記念式典があり参加しました。私はそこで20年間、もうずいぶん昔のことですが、働きました。顔なじみに出会ってうれしかったです。過去の思い出だけでは生きていけませんけれど。

(政治)

1)ピニェラ動向
少し南のマウレ州を訪問し、農業を充実していくことがチリの発展の基礎になると強調。果物・ワイン、それにサーモンは命綱の銅の後を追いかける品目ですね。
オソルノの水道会社は政府機関の調査で問題点が明らかになっており契約を打ち切られる可能性が出てきましたが、半年ほどの精密調査の後、最終結論はピニェラがとるとか。市民は配水には問題ないがまだ水質は信頼できないと心配しています。
政府と司法の応酬が続いています。政府は裁判所が法の裁きで国の秩序を守るということができていないとクレーム。裁判所側は不可解なクレームだと一蹴しています。
その一例ですが、麻薬関連で有罪になり刑務所に入った男が、2度脱獄を図り、そのとき一人の看守を殺しました。その犯人が今年、裁判所から仮出獄が認められました。刑務所内での行儀が良かったのでしょうか、もちろんちゃんと法律に基づいてやっているのでしょうが、一般市民には理解できない判決です。
それに関連しますが、先週の話題の爆弾騒ぎは収まりました。同じ犯罪が継続しているということはそういうグループがあることが、声明まで出ていますから、確認されているわけです。それにも拘らず警察の動きが悪く犯人グループが捕まりません。また1,2か月の後、同じような事件が起こるでしょうね。
しかしそれよりひどいのは、ピニェラは安全な街づくりを始めると発表しましたが、サンティアゴの11地区に麻薬組織が根拠地を維持していることです。そこまでわかっていたら何故警察の手が入らないか不思議。そのうちの一つラ・レグアに昔、私は入ったことがあります。犯罪組織の小説を書くときに、そこをテーマにしたからです。
ところでこの3か月、車の運転手に麻薬テストをしています。アルコールテストは昔から行われていますが、新たに麻薬テストが加わったわけです。100人に1人はそういうのがいるだろうと想像しましたが、結果は、1008名をテストしたところ228名から反応がありました。つまり5人に一人は麻薬を使っていたわけです。          
チリが麻薬にそれほど汚染されているとは思いませんでした。メキシコは酷いとかブラジルのリオは最悪とか思っていましたが、チリも同じようなものですね。政府は何をしているのかな?
それに一般の項目で出てくる大気汚染問題もあります。
ピニェラの人気が低いのはこうした問題に打つ手がぬるい、もしくは手を打っていないことから来るのでしょう。もっと極端に言えば政権が機能していないということになるのでは。バチェレットもひどかったけどピニェラも不合格ですね。右も左も方針が確定されていないということでしょう。
人気のないピニェラでも国会議員の数を減らす、再任に限度をつけるという提案は市民の大多数85%が賛成しているとか。ちゃんと手を打てば市民は見ているということですね。

(経済)

1)銅価格と為替
経済戦争の影響か、世界で株価が下がっているようですね。その影響で銅価格が2.6ドルに下がり、チリには苦しい状況。為替も1ドル711ペソとペソ安が進んでいます。
2)労働時間の短縮
野党側から、特に共産党ですが、労働時間を現行の45時間から40時間に短縮するよう提案が出て、議論されています。
過去の話ですが、2005年にチリの労働時間は48時間から45時間に短縮されました。もっともそのころでも、私が働いていた会社は1日8時間週5日で40時間労働でした。
OECDの数字ですが、オランダもデンマークも48時間が法律で定められた労働時間とか。スイスはチリと同じ45時間とか。意外ですね。労働時間短縮が各企業にどういう影響を与えるか議論されています。
日本の場合、平成30年度の厚生労働署の調べで違法な労働時間の企業では月平均80時間が半数もあるとか。毎日4時間の残業ですね。それは過労死が起こるレベルだそうですが、それが一向に改善されないのが不思議です 。

3)発電
石炭や水力・天然ガスなど従来の方法でない発電が進んでいますが、風力・太陽光による発電はチリでもかなり実施されています。今週のニュースでチリは世界の中で第11位にランクされているとか。
風力発電は中国が首位ですが、先月、日食ツァ-でラ・セレナにバスで行ったとき道路わきに多数の風車が並んでいるのを見ました。丘や海に並んだ風車は素晴らしい景色とは思えませんが、少なくとも太陽光発電のパネルよりは我慢できますね。

(一般)

1)カトリック神父の破廉恥
最近この種のニュースが出なくなりましたが、もちろんなくなったのではなく、飽きたのでマスコミに大きく報道されなかったのでしょう。ところが今週はイエズス会の重鎮ポブレテ(すでに死亡しています)がなんと二十数人の女性を強姦していたことが分かりました。彼はピノチェットの時代から政府高官と関係を維持し、カトリックの重鎮でした。チリで最も有名な貧民救済の施設「イエスの家庭」にも関連していました。その彼が40年もの間、多くの女性を性的に傷つけていたことがイエズス会の内部調査で確認され、お詫びの記者会見がありました。彼の銅像を置いたポブレテ公園は、銅像を廃棄し名前も変えられました。しかしカトリックはみじめですね。神の名前で市民を抑え、その力で女性をいじめ、だれもそれをとがめないなんて。ローマ法王はこの醜聞に全くコメントしていません。
2)キンテロ地区の大気汚染
汚染発生源の一つと言われるENAP国営石油会社は当社の社員で汚染から健康に問題を出した人間はいないと強気の発言。イランからの原油が汚染源と言う指摘もありますが、調査は進んでいません。         
問題は、同地区の市民、特に子供の健康に影響が出ているというのに対策が進んでいないことです。問題が爆発した昨年から1年経つのに同じことを繰り返しています。ピニェラも環境大臣も無能・無策です。
3)バス会社のスキャンダル
首都圏から南部のテムコに行く2階建てバスが横転し6名の死者を含む46名の負傷者を出しました。そのバスは機械に問題があっただけでなく(例えば速度を表示する仕組みが機能していなかった)走行許可の書類にも違法があったとか。2009年に製造されたそのバスは過去23度、車両検査を受け7度違反が見つかっていたらしい。
運転手は逮捕されました。彼だけでなく整備課長やその会社のオーナーも逮捕され裁判になります。それほどひどいバス会社があるとは知りませんでした。政府はそのバス会社の長期路線の営業許可を取り消しました。つぶれるでしょうが、被災者への支払いを確保するため、その会社のバスを差し押さえしたようです。
4)移民問題
もう毎週の話題ですが、今週のニュースとして移民の子供の方が学校での成績が高いと発表されました。労働者だけでなくべネスエラなど高学歴の移民が多いからでしょうか。
過去5年間でチリ人が移民を見る目が変わったと言われます。移民は安月給で働く、犯罪に手を染めるというイメージがあったのですが、それが変わり移民も新チリ人だと思い始めた様子です。
ただ北部を中心に移民の不法建築が手入れを受けていますが、部屋を借りるにも正規移民の書類がなければ不可能で、空き地に掘っ立て小屋を建てるのが唯一の方法と思われるのでしょうね。

(スポーツ)

1)パンアメリカ大会
リマで開催中のパンアメリカ大会でチリは17個のメダルを取り(その内、4個は金メダル)、メダルを取った22か国中の11位です。チリの力はそれくらいでしょうね。メダルの多いのはアメリカ、ブラジルそしてメキシコです。
2)サッカー
国内リーグ戦の後期第2戦で首位のカトリカは勝ち、2位のコロコロが敗れたので勝ち点が9と大差になり、リーグ戦が盛り上がりません。人気チームのチリ大学は今日も引き分けで16チーム中の15位。これでは下部リーグに転落です。なんでも監督が更迭されたらしい。


以上