チリの風   その836  2019年5月20日―26日

予報が当たって今週のサンティアゴは最低気温がマイナスの日が続きました。そのため路上生活者が一人凍死しました。月曜日、小雨が降ったのでアンデス山脈の山は白い雪で覆われています。朝早く山歩きをするとき手袋が必要です。
隣人で先日奥さんを亡くしたご主人を招待してコーヒーを飲みました。彼は93歳ですが、通常に歩行もできるし会話もできます。記憶力も素晴らしく、私にとって理想の人です。20年後、心身ともに健康な彼のような老人になりたいです。無理かな?
土曜日はサッカー教室。20数名の参加者で実施。小さな子供が多かったです。                            
今週も登山、サッカー、マラソンとスポーツを楽しみ、旅行代理店で仕事の打ち合わせ、毎日、何かすることがあるのは幸せです。

(政治)

1) ピニェラ動向
5月21日のイキケ海戦の日の記念行事にイキケに飛びました。普通は海軍本部のあるバルパライソのパレードを指揮するのですが、海戦のあった街に向かったわけです。今年はその海戦から140年の記念日でした。            
太平洋戦争の最重要戦闘のその戦いについて、私がチリで一般に考えられている説と違う見解を言うと、チリ人は私に「お前はペルー人か」と言い返します???
ピニェラは首都に戻ってきてフランスに向かうサッカーの女子代表チームを受け入れモネダ宮殿で応援の式典。どうなるかな?
さて彼の息子をアジア外遊に同行させた件がまだもめていますが、彼は「民主化して以来、初代のエイルウィンから、前大統領バチェレットまで全員が何かの機会に家族を同行させている。それが批判の対象にならず、どうして私の場合だけ突き上げを食うのか理解できない」とクレームしました。野党側の政治的な文句だろうというわけです。
ただ、息子二人の旅行費用は全部自分が払ったと言っていますが、往復の便は空軍機で、軍は航空運賃を要求していません。
政府としてはそれ以上どうしようもないところで、与党のUDIの議員が監査局に、バチェレットの外遊時の家族・知人を招待した時の記録(費用も含む)を調べるよう要請。泥試合になりますね。チリの議員の質が低いことを見せています。      
実はこのほかにも問題があってピニェラの息子は会社を設立し、親父と(つまり政府と)仕事をしています。それは不適正でしょうね。
2) 中産階級の増加
自由・発展(L y D)組織の発表でチリの中間層は大幅に増加しています。2006年は極貧・貧困層が52%、中産階級が43%、上流が5%でした。それが2017年には25%、65%、10%に変化しました。もちろんその間の政権が、がんばったわけですね。ピニェラとバチェレットです。
ただし中間層の基準がいろいろあって、例えば最低賃金の何倍から何倍までの間と決められたりしますが、OECDの基準ではチリの中間層は48%で、これはメキシコに次いで2番目に低い数字とか。アイスランドは72%にもなるらしい。いずれにせよ、少しずつでもよくなっているというのは良いニュースですね。                               
今週の話題としてピニェラはその中間層の援助を掲げました。病気やケガの時の支援、失業時の援助、教育・住居なども含め全分野で中間層の安定化を図るとしています。もちろん意気込みは素晴らしいですが、どこからその資金が出てくるかが問題です。口だけでは誰でも言えますから。世論調査ではピニェラを支持するは33%と低め定着です。
先日、刑務所でのスキャンダルを書きましたが、今年に入って61名の刑務官が解雇されました。その中の悪質な収賄などのケースは裁判になっているとか。一応,正常化の動きはあるわけですね。

(経済)

1) 経済成長率
第1四半期の成長率が1.6%と予想より低くなりました。少し前に今年の成長率3.5%は堅いから、夜に落ちついて眠れると豪語していた大蔵大臣にテレビ局が、これでは3.5%は無理と言われますので、夜ゆっくり眠れますかと聞くと、子供のようにぐっすり寝ていますだって。ホンマかな。
Oecdの予想数字はまだ3.4%ですが、もっと下の数字で終了すれば大蔵大臣の首が危ないですね。
2) 物価上昇率IPCの問題
それを計算する組織INEに問題があるわけですが、犯罪として誤った数字を発表したという説も消えず、実態はまだはっきりしません。問題の人間を法廷に立たせると疑問点はすぐに明らかになると思いますが、各部門の思惑があるので、大問題と言われながら、実態解明の手続きが遅いです。
3) 銅価格と為替
ポンド当たり2.68ドルと低いレベルが続き、為替は1ドル695ペソで終えましたが、一時700ペソの大台まで行きました。
4) 航空会社の業務提携
ラタム航空は欧米のアメリカン、イベリア、英国航空BAの3社と提携を結ぼうとしましたが、独占禁止法などの関連で、それは最高裁で否決されました。ラタムの社長は残念な判決だとコメント。
5) 携帯電話
中国のメーカー,フアウェーが新聞に全面広告を出し、「当社の製品は世界1の機能を持ち、アプリに関しても、現在・将来ともに最高のサービスを提供します。したがって現在使用中の顧客も、これから購入してもらう方にも安心して使用していただけることを保証します」としました。

(一般)

1) マプチェ問題
永遠に続くでしょうが、今週も南部のマプチェ地区で建設機械が燃やされました。先年、警官にマプチェの青年が射殺された事件で検察はその警官(今は元警官ですが)に15年の懲役を請求しました。しかしまだなぜその警官が無抵抗の青年に発砲したのか、その後、その青年を車盗難グループの犯人で銃撃戦になったためと虚偽の発表をしたのは何故か、それを写すビデオを事前に消していたのは自分の犯罪を隠すためなのか・・その元警官の考えがよくわかりません。

2) 大気汚染
南部の街ではすでに警報が出ていましたが、この土曜日、サンティアゴでは初めての警告が出ました。これで家庭での材木などを使った暖房は禁止、自動車の走行制限も増えました。
3) 国民文化財の日
この週末、20回目の文化財の日として1900件もの行事が行われました。たとえばモネダ宮殿が解放され、一般市民がその中を歩きました。美術館、博物館、それだけでなく中心部で一番高いエンテル・ビル、国立競技場も解放される場所に入ります。
私の家の近くの消防署が解放され、多くの人が並びました。それは消防車にその人たちを乗せて町内一周するからです。辺鄙なところの灯台なども入れてチリ各地で通常は入れないところが見学できました。
4) 麻薬組織との闘い
先日、麻薬組織の人間が相手グループに殺されたとき、その葬式に派手な事件が起きました。組織の本部がある地区でグループが街頭に出て銃を空に向かって乱射。打ち上げ花火を派手に連続して、地域の住民を恐怖に陥れました。警察はほとんど手を出さず麻薬グループのやりたい放題。
マスコミでこれが報道されると政府の無策ぶりがはっきりし、内務大臣はこのような事件が繰り返さないよう検討中とか、UDI党から警察のほかに軍隊を使用しようとする声も出ました。チリもメキシコみたいになってきましたね。悲しい実態。
5) ビールの人気
2013年に7億2千万リットルの生産だったのが2018年には10億Lと35%の増加。販売価格をドルで比較すると20億ドルが38億ドルと5年で約2倍になっています。チリ人のビールファンが増えているわけです。
6) 旅行者の死亡
サンティアゴの中心部にある簡易ホテル(airb&b)に宿泊していたブラジル人旅行者6名が死亡。原因は暖房か調理に使われたガス漏れとみられています。古いビルで、ガス漏れの検査でそのビルは問題あるとされたのに住民は問題を放置していたようです。観光庁のチェックがいきわたってないわけですね。
7) チリの携帯のアプリ
チリで一番人気なのはワッツ・アップ(94%)。フェースブック(82%)そして車のユーバー(49%)です。

(スポーツ)

1) サッカー
国内リーグ戦の結果ですが、首位はカトリカ、次いでコロコロ、3位はウニオン・エスパニョーラです。
人気のチリ大学は久しぶりに勝利をおさめ。13位(下から4番目)に上昇しました。
ところでチーム別の南米カップで、今週カトリカはエクアドルにわたり敵地で対戦、なんと0対5の惨敗を喫しました。マスコミでチリは国別では輝いているのにチーム別では南米の最低レベルと言うのはどうしてかと、いつもチリの風で書いていることが議論されました。
2) テニス
チリのナンバー2になるジャリ―はジュネーブの大会で決勝まで進出、世界ランク5位のスベレブに激戦の末、惜敗。来週はランクを大きく上げてフランスのロランドガロス大会に向かいます。
3) 登山
フアン・モルはチリ人で初めて酸素ボンベの助けなしにエベレストに登頂。しかし頂上近くの行列は信じられない光景ですね。

以上