チリの風 その834  2019年5月6日―12日

今のサンティアゴは昼頃は暖かいけど、朝晩は冷え込みます。土曜日の最低気温は2度でした。
さて今週は久しぶりに家族でチロエ島など南へ旅行。フルティジャル、カストロ、アチャオそしてダルカウエで宿泊しました。普通、旅をするのは知らない場所に行くわけですが、今回の旅は前回と同じ目的地で、泊まったホテルも同じ、なんとその内2カ所は同じ部屋に入りました。それでも海辺の歩道を散歩するとか世界遺産の教会を訪ねるのが趣味なので楽しく遊んできました。
日曜日はマラソン練習。出発時は少し寒かったですが、走っていると汗が出てきます。何とか完走してニッコリ。

(政治)

1)政界の混乱
ピニェラは過去に20年ほど国民改革党RNの中心メンバーでした。RNは現政権を最右翼のUDI党と並んで支えていますが、先日のアジア訪問時、RN党首はそれに参加せず、ピニェラはRN党総会に参加せず、両者の連携が途切れています。RN党首は政権を支える最大党の我々を軽く見るような現政権を喜べるはずがないとしています。
同じことが野党側にもあり、バチェレット政権で内閣副長官をしたアレウイが「社会党はバチェレットを放棄していたとは思えないが、有効な支援をしなかったと言える。自分は社会党員だったが、政府の一員だったので社会党から冷たい目で見られたのは知っている」とコメント。与党でも野党でも同じことがあるわけですね。
日曜日は母の日だったので厚生大臣と女性省大臣は二人で病院を訪ね、新生児を抱くお母さんにお祝いの言葉を掛けました。バチェレットが得意だった仕事ですね。
その厚生大臣は最近、健康保険の問題で、国営のフォナサ、民営のイサプレがうまく運営されていないとクレームされ苦しい立場にありますが、私の今回の旅で二つ、良いニュースを見つけました。チロエ大島の前にあるアチャオ小島の突堤で海を見ていると、救急車が来て止まりました。そのあと、少しして海の向こうから高速ボートが近づきました。そして病人を救急車に乗せました。その船は政府の救急ボートと書かれていました。大島、小島、孫島の中で病人を搬送しているわけですね。すばらしい。それからダルカウエを歩いていると新築の大きな建物を見たので、ここにもショッピング・モールができたのかと思ったら、看板に皆様の健康のためにと書かれていました。新築病院がもうすぐ完成です。
2)司法の混乱
ランカグア地方裁判所に所属の検察官アリアスが部下のモヤから不法行為をしていると訴えられましたが、検察庁官のアボットはアリアスを職務停止処分にしました。アリアスは、逆にモヤを不正行為の疑いで訴え、モヤの自宅が捜査されると携帯電話が12個もあり、パソコンの中に各検査官の情報も入っていました。スパイ行為になるのかな?しかしその二人はバチェレットの息子夫婦の問題、警察が偽情報でマプチェを動かしていた事件、カトリック教会の年少児性的問題などを調べており、集めた情報を不正(不法)に利用していたことになると司法のシステムが崩れますね。
なんとそれに加え、監査局の違法行為が調べられることになりました。監査局は政府から独立してすべての公的機関を監査する権利がありますから、時には反政府のようになることもあり、頼もしい機関というイメージを持っていましたが、司法機関と同じく、権力を持つと怪しいことが行われるという悲しい風潮に巻き込まれてきたようです。 市民調査で81%の市民はこうした機関に存続の危機がある(もう信用できない)と考えています。チリの近代の歴史が始まってから初めてのことです。
全く根拠のない私の推測ですが、このスキャンダルが始まったのはバチェレットの時です。彼女の息子夫婦が農地を安く買ってそれが宅地になった段階で高く売ってぼろもうけをすると言う事件がありましたが、それが暴露されたとき、モネダ宮殿の2階部隊は事件のもみ消し、もしくは罪を軽くするように司法界に持ち掛け、それが何らかの動きを見せたとき、それを担当していた地方検察官の二人がほかの事件にも適用しようとしたのではないでしょうか。どうかな? 
3)ベネスエラ問題
私の予想が当たり、政情に大きな変化はなく小刻みに動いています。国会の副議長が逮捕されたのが最大の話題です。なぜ議長のグアイドを逮捕しないのかと思いますが、お互いにマジな攻撃はしないという約束があるのでしょうね。
南の旅から戻ってきたとき、空港から家までウーバーを使いました。運転手が良く目的地の場所が分からないので聞いてみるとべネスエラから今週来たばかりとか。コロンビアを経由して陸地でチリまで11日かかった由。知り合いから、この仕事を用意してもらったらしい。早くここに落ち着いて家族を呼びたいと言っていました。チリとコスタ・リカが彼らの目的地のベストです。
2018年の労働ビザは22万5千件と前年対比55%アップで許可が出ましたが、そのうち55%がべネスエラ人でした。

(経済)

1)銅価格と為替
銅はポンド当たり2.78ドルと下がり、為替は1ドル686ペソとペソ安に動いています。
2)今年度の経済成長
ラライン大蔵大臣はチリの成長率を3.5%とし、外からの影響でぐらつく部門よりチリ国内で確保する部門の方が大きいから、中国・アメリカの対立が起きてもこの数字が達成する確率は高いとしました。

(一般)

1)宗教界の混乱
先週、検察長官とカトリックで合意した年少児性的問題の捜査方法について、長官はそれを破棄し、もう一度被害者側の声を聴きたいと姿勢を変更。これはカラディマ神父に暴行されたと訴えているグループが検察はカトリックと手を組んで事件の捜査を棚上げしようとしているとクレームしたからです。ローマ法王は一層のチリ神父の追放を考慮しているとか。いつまで続くのかな?
プロテスタントの方は司教を更迭する方向に動いています。集会で投票が行われ、司教を変更することになりましたが、それが組織の中で明白になっていないため、現在は二人の司教が存在する最悪の事態。
2)犯罪問題
以前、コデルコ総裁の家に爆弾が送り込まれ負傷者が出ました。今年の初めにバス停に爆弾が置かれ負傷者が出ました。今回はメトロ社長のところに爆弾が送られましたが、無事に処理が完了。同じような事件が何年も続いているのに犯人グループの捕獲ができません。
しかし不思議なことに犯罪数は2018年、6年ぶりに被害者の数が減少しました。政府は自分たちの努力が実ってきたと自賛。ピニェラも大喜びでした。野党は2018年はバチェレット政権とピニェラの努力が重なっていると、自分たちもそれに参画しているとコメント。
3)観光
チリのパタゴニアで有名なトレス・デル・パイネ国立公園は設立60周年を迎えました。今までの世界の7不思議に、参加を認められ世界8不思議になっています。24万ヘクタールの広大な地域に山・川・湖・氷河そしてそこに住む動物が人気です。その中心地プエルト・ナタレスに直行便を飛ばすよう計画ができています。
さて南部パタゴニアの広大な土地をトンプキンス未亡人がチリ政府に寄付しましたが、今週、ピニェラはその未亡人をモネダ宮殿に招待して感謝の意を表明しました。
観光客が増え続けているので、現在建設中のサンティアゴ新空港を、さらに大きくする計画が発表されました。
4)児童の体力
世界49か国の児童・学生の体力テストでチリは下から2番目になりました。9―11歳の児童の中でスポーツをしているのは5人に一人とか。これは政府の問題より各家庭の問題ですね。

(スポーツ)

1)サッカー
国内リーグ戦は1位カトリカ、2位コロコロとなっています。チリ大学は今日も引き分け、最下位をキープ
しかしリベルタドール杯に参加のチリの3チームは全部、1次予選で敗退。最低のレベルです。アルゼンチン、ブラジル、ウルグアイはこのカップ戦で25, 18, 8度も優勝していますが、チリはわずか1度だけ。国別ではチリはアメリカップに2連勝していますが、チームとしては南米で最低レベルです。と言うのは優秀選手は欧州などにわたり、チリでプレーせず、他国の優秀選手を引き抜く金がないというわけです。
2)ラリー
チリのコンセプシオンで今週開催されたWRC世界ラリー選手権で日本車が大活躍。私はテレビの実況中継を見ましたが、知識がないのでどうなっているのかよくわかりませんでした。
3)テニス
今日のテレビの番組で「テニス・ゲート」としてマフィアがチリのプロのテニスを操っているとか。金を出して選手に勝ち負けを指示するわけですね。南米だけでなく欧州でもこの手の話は溢れているとか。悲しい現実です。


以上