チリの風  その833  2019年4月29日―5月5日

今週は美術館巡りをしました。先ず、モネダ宮殿文化センターでターナーの水彩画展。すごい量でした。それから考古学博物館で先住民写真展を見学。そこはいつも行く場所なので、勝手知ったる・・・ですから、何か新情報はないかとゆっくり展示品を見歩きました。
土曜日はサッカー教室。前回に推定した通り、参加者は半減。18名でした。もちろん、それでもしっかりプレーを楽しみました。意外に大人が多かったですが、彼らにとって怪我をしないでサッカーを楽しめる教室になっていますね。
日曜日はマラソン練習。3名で楽しく走りました。

(政治)

1)ピニェラ動向
韓国には1泊だけで火曜日の朝に彼はチリに到着。彼はタフです、そのままモネダ宮殿に行って記者会見。しかし不思議なのはアジア外遊の成果を話すのではなく前日起きたべネスエラ問題が中心でした。
テレビのニュースにもそれだけ、大統領府の公式ブログにもその日の動きはべネスエラ関連事項だけが掲載されました。なにそれ?
また彼が外遊中、チリで最も話題になった彼の子供の同行問題につき彼は「全く不正・疑惑はなく、自分の子供は政府の公式行事には参加していない」としました。しかし、それに付け加えて、政府機関に家族の同行についての政府案を作成するよう指示したとしました。世論調査では65%の市民が子供同伴は理不尽としています。
彼の家族問題のエラーは2回目で、最初はアルゼンチン大使に自分の兄を任命したことです。まだ公私混同の問題を理解していませんね。あのバチェレットの息子が、ピニェラのモラルのないのにはがっかりするとコメント。自分のモラルはどうなのと言いたいですが、いつものように右も左も同じですね。
裁判所・検察の問題、警察軍の不祥事など内政で重要問題の未解決事項は山積です。進展がないのは何故かな?手を打つのが怖いの?
2)ベネスエラ問題
4月30日のテレビ番組はこのニュースばかりでした。チリ国内のことではないですよ、外国のことが全局、朝から晩まで報道されるなんて行き過ぎですね。
その日の動きですが、クーデターが起きたような始まりで、グアイドがマイクを握って民衆の前で、「今日がその日だ」と煽っています。政治犯として自宅監禁になっていたロペスも脱出して、グアイドと合流、マイクを握りました。彼を拘留していた軍が彼の逃げるのを見逃したわけですね。彼らの周りには軍人がいました。つまり一部の軍隊は反政府についたわけです。それでクーデターと大騒ぎになりました。そのロペスは集会の後、チリ大使館に駆け込み、亡命を要請。もちろんチリ側はそれを承認。どのようにチリまで連れてくるのか想像しましたが、少しあと、チリ大使館を出てスペイン大使館に入所。それはチリ大使館は狭いし、既に他に保護されている人がいたからでしょう。5つ星ホテルを探しているの?なんでも彼はスペインのパスポートを持っているとか。出国はまだのようです。   
この先どうなるのかドキドキしましたが、その状態が夜まで続き、デモに疲れたから家に帰ろうかという雰囲気になりました。軍隊の中の政府側と反政府側の銃撃戦はありません。政府側軍のデモ隊への銃撃もなし。銃による死傷者はほとんど無し。
アメリカ政府はマドゥロキューバに亡命するため飛行機に乗る寸前までいったがロシアの指示でそれを取りやめたと発表。それほど緊急事態だったのかと思わされました。
翌日、労働者の祭典メーデーでしたが、動きはほとんどなく膠着状態。そこで思ったのですが、このストーリーはおかしい。「殺し合いの緊張感はほとんどゼロ」、つまりク-デターと言われる状態にまで行っていなかった、適当に抑えようと政府・反政府側で了承事項があり、それに従って動いていった。そう感じました。
政府側が反政府で立ち上がった軍の部隊を制裁するという動きも出ていません。
軍を抑えた方が勝つのは明白です。しかし軍人も社会の混乱・緊迫は日常に感じているわけで、個人もしくは組織として反政府に走るのは無理はありません。軍隊のトップ、政府側の最重要軍人の家族は軍隊が政治から手を引くよう要求しています。
もちろんそこには秘密があって、軍の高官は国営石油会社の役員になっており、そこからも収入があります。それをクーデターで失くすのは・・・でしょうね。
初日、マドゥロが出てこなかったのは反政府側についた軍が全体のどれくらいなのか調べていたかもしれません。10%くらいならドンパチになっても勝利は間違いないけど、3割、4割にもなればどちらに転ぶかわかりません。その場合は最悪キューバに逃げ込む手段を確保する必要があるわけですね。
今回グアイドを担いだ一部の軍隊の部隊は彼とどのようなコンタクトを取っていたのかがカギです。しかし反政府軍の軍人が逮捕されたというニュースは出ていません。
確かにロペスはスペイン大使館での記者会見で、このクーデターの前に何人もの軍の高官と面談したと確認しています。クーデターが成功すると見込んで行動を起こしたのでしょうね。
現在、彼に裁判所から拘留命令が出ています。彼はピニェラとも電話で話をしたとコメント。
この件にアメリカが介入しているのは明白で、トランプは軍事介入も視野に入れています。そこで私の推測ですが、どうしてグアイドが逮捕されないのかを考えると、向こうからカラカスにもし彼を逮捕、ひどい例では射殺をした場合、アメリカは直ちに軍事介入すると警告しているのではないでしょうか。彼は群衆の前に何度も立っていますから、彼を逮捕するのは、軍にとっては容易な事です。違うかな?
逆にマドゥロに取って、グアイドを放置することは自分の政権にとって危険なわけですが、その状態を続けることで、ロシアや中国の援助が継続するという風にも考えられます。
開始から約1週間立ちましたが、ズルズルと継続中。政府が反政府側の人間を逮捕するとか、政府系軍人が反政府系軍人を逮捕するという話も聞こえていません。これは私の推定が当たっている証拠では?
トランプとプーチン大統領が電話で1時間話したそうですが、中心のテーマは北朝鮮とべネスエラ、お互いに相手側に君の好きなようにはやらせないとくぎを刺しあったのでしょうね。
しかし政府・反政府側は一瞬間違えば両者とも死に至るわけで、毎晩、ゆっくり眠れるはずがありませんね。
それからデモ隊の数が激減するのは当然ですね。デモをすることで生活できているわけではないですから。  
さて今週のベネスエラ問題の結論です。今日、日曜日、グアイドは、火曜日のクーデター計画は自分たちの失敗だったと認めました。この先どうなるかな?     
いつも言うようにチリに住んでいてよかったなと思います。 
チリでもここに在任のべネスエラ人が大勢集まって反政府運動。移民の人はもちろんほぼ全員、反政府です。
今週はチリの風よりべネスエラの風と言う雰囲気ですね。

(経済)


1)チリ株式市場の動き
世界の株の動きは面白いですが、チリの場合、2,3,4月と3か月連続でマイナスの数字。4月の株価は前月の1.37%マイナスでした。
2)労働法案の改正
政府は同法を改正するよう準備していますが、現行の5日制を二つに分け、5日制と4日制にしたいとしています。それは4x3と言われますが、月曜日から木曜日まで働き、金・土・日と休むわけです。現在チリの鉱山はこの方式を多く使っています。
ところで現法案は週の労働時間を45時間にしています。野党側はこれを40時間にするよう要求しています。私はもう昔から週40時間労働と思っていましたが、法律では違っていました。

(一般)

1)メ-デー
いつものように労働組合がデモ行進、それと違う覆面グループがデモをして商店を襲い放火して大騒ぎ、毎年同じことが返されます。
2)車両規制
冬季の間、いつものように大気汚染軽減のため車両規制があります。2011年以前に登録された車は週に1度、走行禁止になります。最初の5月2日はナンバープレートの末尾が0,1の車でした。サンティアゴ市内の高速道路の内側は通行できません。初日100台以上の車がこの違反で処罰されました。罰金は100ドルほどとか。                  汚染が進んで非常事態まで来ると排気ガス対策車の新しい車も規制の対象になります。
3)最古の文明
オソルノ周辺のピラウトで15600年前の人の足跡を含む人類の生活跡が確認されました。これはチリで最古の遺跡になります。モンゴロイドがアラスカへ入ったといわれる年代より古いですから、アメリカの原住民はアジアからそのルートで来たという説がおかしくなります。私もチリの歴史を話すとき原稿を書き直す必要があります。
4)地下鉄利用客
先週にもこの話題は出ましたが、今週、4月30日に、利用客が295万人を記録し、1日として過去最高になりました。首都圏の住民が二人に一人はメトロに乗るわけですね。いや、普通は往復に使用するから4人に一人が地下鉄を使用することになります。
5)南の大雨
今年は雨が少ないと言われていましたが、プエルト・モン周辺で1日100ミリの雨が降り洪水、橋の陥落など事故が起こりました。
6)キリスト教会のスキャンダル
いつもと同じく新教・旧教ともスキャンダルが継続です。

(スポーツ)

1)サッカー
首位のカトリカが珍しく負けましたが、2位のウニオン・ラ・カレラが引き分けたため勝ち点の差は3とまだ首位安泰です。
人気のコロコロは3位、チリ大学は最下位をキープです。
2)テニス
ガリンは今年の初めランキングは100位くらいでしたが、そのあと急上昇。今週、ミュンヘンのATP大会に優勝で来週は30番位近くになるとか。今年に入って決勝戦に3回進出し、2回優勝です。すごいですね。

以上