1) バチェレット
息子夫婦関連の裁判が始まりました。大騒ぎです。
バチェレットはホーン岬発見400周年の記念儀式に出席するためフエゴ島に行く予定でしたが、急きょ取り消し。その裁判のためです。
余談ながら、ホーン岬を発見したのはオランダ人で、故郷の名前をその岬につけたもの。発見は1616年1月29日。
さて安く農地を購入し、それを転用して住宅地にし、高額で売り払うと言うのが息子夫婦の会社の作戦でした。息子の嫁ともう一人の男がカバル社の共同経営者。今回の裁判で会社の二人のオーナーや地元の役所係員(便宜を図った)、その仲介をした人間などが数多く起訴されました。
バチェレットはその日、午前中はいろんな面談をこなし、それをテレビ局は全て録画していますが、いつものようなニコニコ顔の愛想を振りまきました。その後、大臣を入れず何時間か例のモネダ宮殿2階部隊の社会党員の女性ウリアテと作戦を考え、裁判についての自分の見解をテレビカメラの前で発表しました。
それを見ましたが、顔が引きつっていました。「私にとってこんな悲しいことはない。しかし大統領としての責務は完全に継続したい」と切り上げ、質問は受けずに姿を消しました。
内閣官房長官は「法律の前にはすべての国民は同じという理論を大統領は実現している。素晴らしい事実だ。」
与党側の議員は三権分立が確認されたと自画自賛。
私の見る目は全く違います。先ずは息子が起訴されなかったことです。彼はこの仕事の前は内閣府に働いていました。その職を他の人間と競って勝ち取ったのか、大統領の息子として席を作ってもらったのか疑問ですが、そこで得た情報を他人に流して商売をした可能性があります。この事件でもチリ銀行副社長との面談に出席している関係者です。それが見逃されたのはお母さんの影でしょうね。
カバル社のオーナーの一人は自宅謹慎処分で裁判所の呼び出し以外には家から外に出られないのに、共同経営者のもう一人のオーナー(息子の嫁)は国外出国は不可だが、月に一度警察署に出頭するだけの義務。刑務所行きの噂もあったのにまったくの自由が認められました。その差がひどい。 バチェレットは悲しいことがあると、なんだか自分が被害者のようなコメントをしますが、息子夫婦は政府内の情報を盗み、それを使用して巨額の収入を得ようとしたわけで、犯罪行為でしょう。この売買方法と同じことを他の土地でも実施しようとしていた形跡があるから、常習犯ですね。裁判が進むともっと他のことも明らかになるでしょう。
そうそう、与党の議員が裁判が始まったと言っても有罪にならない限り、犯罪人ではないとしました。
その理論で行くと、息子の嫁が有罪になって刑務所に入ることになれば、バチェレットは息子に離婚するよう頼むの? 与党内でバチェレットの人気はさらに落ちるのは明白だから次の地方選挙で彼女と一緒に写真を撮って選挙ポスターに使う候補者はいなくなるのではとコメント。
ブラジル・アルゼンチン・チリと南米3国で女性大統領が誕生しましたが、アルゼンチンは既に消滅、ブラジルも消滅寸前、続いてチリですね。
もう一つの出来事は、昨年、バルパライソで警察の放水車がかけた水でデモ隊の学生が転倒し、意識不明で緊急入院した事件がありました。学生は命はとりとめましたが、時間がたっても身体が元に戻りません。事故の後、バチェレットは学生の父をモネダ宮殿によび、早期に回復するよう祈っていると励ましました。
それに関して右翼UDI党議員が覆面デモ隊が各地で乱暴狼藉の犯罪行為をしているのは周知の事実。放水して学生を負傷させた警察官を犯罪者のように扱い、その負傷した犯罪グループのメンバーを大統領が擁護しようとするのはもってのほかとコメント。負傷者の家族が名誉棄損で同議員を訴えましたが、裁判所は言論の自由を認めました。
これだけ防犯カメラなどが発達しているのだから、その放水事故が起こる前にその学生が何をしていたか調べれば、簡単に学生の父親が正しいか、その右翼の議員が正しいか分かるでしょう。
2) 汚職国家
チリはラテンアメリカの中で最も透明度が高いと考えられてきましたが、2015年の数字ではウルグアイに抜かれて2位になりました。世界ランクでは168か国中の23位です。
全然関係ないけど、新生児の死亡ランキングで195か国中、チリは3.1人とラテンアメリカの首位。世界では195か国中の29位。日本は2.1人で6位。さすが、すごいものですね。
3) 大統領候補
与党の左翼系の中心政党はPS社会党とPPDですが、それぞれ大統領候補が出ました。イサベル・アジェンデ(アジェンデ元大統領の娘)とラゴス元大統領です。どちらも高齢で若手が出ないところが問題。これでは与党が負ける可能性が出てきましたね。
4) マプチェ問題
まだマプチェの放火騒ぎが継続です。以前はテムコのある第9州が問題地点でしたが、最近は第8州、9州の隣の15州にも飛び火し、車両や家屋への放火の他、警察軍との銃撃戦もあり、警官が負傷しています。政府はマプチェをテロリストとして裁判所に訴えています。前のピニェラの時に政府がマプチェをテロ容疑で訴えると野党(今の与党)は問題を大げさにしようとするのはいかがなものかと批判していましたが、昨今は彼らもテロ容疑で訴えています。しかしマプチェの組織もイスラムISのように粘りますね。