チリの風  その466   2012年3月26日―4月1日

先週末はほとんど歩けないほど足の状態が悪かったので今年のマラソンは遠くから見学と思っていました。土曜日、友人の峰村さんがせめてユニフォームでももらいに行ったらと会場に付き合ってくれました。その赤シャツを着ると少しは勇気もわいてきて、日曜日のレースに参加することにしました。さてその結果は・・・
日曜日の朝、地下鉄に乗ると、乗客はほとんど百%マラソン選手。25000人の参加者ですからね。並大抵の数ではありません。私の参加したハーフマラソンでも1万人のランナー。今までなら最初の数キロは団子でその後は自由に走れたのですが、今日なんか最後まで道にランナーが溢れていました。足が痛くなれば棄権するつもりだったのですが、粘りました。もうクタクタで走っているところを平野君のおかあさんに写真を撮られました。どんな顔かな?恥ずかしい。
昨年より少し遅い記録でゴール。記録について文句は言えません。完走しただけで幸せです。マラソン練習の仲間は全員、ゴールしたようです。トップは村田さんでフルをサブ4で走りました。やっぱり日ごろの練習がものを言うわけですね。
ところで今週から訪日しますので来週のチリの風はお休みです。


(政治)
1) ピニェラの日本訪問
日本ではあまり報道されなかったようですが、チリでも少ししかニュースになりませんでした。南三陸町の高校を訪問してそこでツナミで壊されたモアイの像を見た彼は新しいモアイ像をチリからプレゼントすると約束したようですね。その町は日本の中で一番チリとつながっているみたい。津波を通じて。野田首相と会見したピニェラは日本が震災の復興に10年かかるとしているのに、チリは私の政権中に、つまり4年でそれを終えますと胸を張っていました。
日本政府が消費税の増税で混乱中を知らされた大統領に随行した財界代表が、ねっ、日本政界が混乱しているようにチリも同じようなことになりますよと忠告したみたい。
コデルコ問題ではチリと組んでいる商社としっかりやろうと激励を掛け合ったようですが、相手の英国系の鉱山会社と組んでいるのも日本の商社ですからね、やりにくいでしょうね。
彼は土曜日の朝に帰国、その足でUDI党の党大会に出席。日本にいるときは参加しないと発表していたのですが、急に気が変わった様子。理由はエネルギー省大臣アルバレスの辞任でしょうね。彼はピニェラが外国にいるのに突然、辞任を発表。先のアイセン問題で彼は政府代表でアイセンを訪問しましたが、全く話し合いが進まず、最終段階で政府側のメンバーから除外されました。それを不服としたもの。しかし彼は政府を支える最大与党のUDIのメンバー。しかたなくピニェラはUDI総会で「アルバレスは政府代表としてアイセンで大きな手柄をあげた。これからも政府のためにがんばってほしい」と持ち上げました。茶番劇ですね。

2) 今年の末に地方選挙がおこなわれますが、その候補者選びのための野党連合内の選挙が実施されました。何でも32万人がボランティアで参加したとか。各都市の首長候補にキリスト教民衆党の候補者が多く選出されたらしい。


(経済)
1) 出てくる数字が全部、チリの好況を示しているみたいです。 2月の経済成長は6.5%で、このままだと2012年は6%までいけるだろうと見られています。一時、欧州危機から今年のチリ経済を悲観的に見る考えが多かったのですが、一転して楽観的になっています。
株式市場はこの1−3月を12%アップと最近の13年間で最高の数字で終えました。
失業率が下がっています。2月の数字は6.4%。普通、夏の間は農業の季節労働者が増えるので、その分失業率が下がるのですが、最近は工業・鉱業も人手が足りないほど。政府はこの問題を軽減するため特別法を制定して隣国の労働者が簡単に入国できるようにしたいらしい。
ただエネルギー問題は将来に大きな問題を残しています。市民が火力発電所の建設は反対、水力発電所ダムは反対、原発は反対・・ではどうして発電すればよいのでしょう。

2) ただしその使いすぎが経済にマイナスの影響を与えると警告が出ています。2009年と10年はPIBで2、1.5%の黒字でしたが、2011年は1.3%の赤字。12年は更に赤字が増えそうと言うもの。政府は公共投資を抑える、中銀は一層の保守的な政策を取るよう忠告されているらしい。一般家庭の消費も最近ちょっと派手すぎますよね。


(一般)
1) ゲイ青年殺人
今週はこのニュースで持ちきりでした。1月ほど前にサンティアゴの公園で一人の若者ダニエルがネオ・ナチと呼ばれる4人組のグループに襲われ殴る蹴るの暴行を受けました。瓶で頭を殴られ、煙草の火でやけどをされたり、カギ十字マークを身体に傷つけられたりしましたが、こん睡状態のまま病院で約1ヶ月生き延びましたが、今週死亡しました。
政府もこの種の犯罪は許しがたい、国籍・人種・宗教・性的嗜好など各人はそれぞれ異なったベースを持つわけで、それを攻撃するのは認められないとしています。もっともこの種の犯罪を認めないとする法案が国会に提出されてもう7年も放置されていますから、政治家は右も左も口だけと言うのは明白です。
彼はとにかく広範な支持を受けました。彼の実家の前にがんばれダニエルと書いたパンフレットを持って多くの人が集まり、死亡が確認されると病院の前に群集が。また葬式の日はまるで有名人の葬式のようにたくさんの人が葬儀に参列しました。彼の遺体を載せた霊柩車が墓地に向かうとき、市民が道の両側を埋め尽くしましたが、もちろんそれらの人がすべて同性愛者と言うことはないでしょう。彼の死は許せない、犯罪者に正当な裁きをと訴えていました。
24歳の彼は生きているとき、将来の自分の葬式がかくも盛大におこなわれるとは夢想だにしなかったでしょうね。
彼のおばあちゃんが番組で、「もうだいぶ前のことですが、彼が神妙な顔をして私の前に来て、おばあちゃん言っておかなければならないことがありますと告白。自分は同性愛者だと」その時、集まったみんなが泣いたそうです。

2) 青年戦士の日がありました。毎年、この日、かって軍事政権時に殺された兄弟を思い出すわけですが、近年は全くそういった政治的な色彩はなく、夜になって道路を封鎖して警察隊を対決するのが常です。いつも思うのですが、なぜこうした行動のとき警察は彼らと対面するだけなのかな?機動隊の半分を道の向こう側に回して全員逮捕すれば、次の年には暴力行動は激減すると思うのですが。

3) 学校の先生の評価がおこなわれ、小学校の先生の28%は適正なレベルに無いとされました。教育大臣は約3人に一人が先生として働けないという事態は深刻だとコメントしています。教育問題が4月から出てきますが、学生とともに先生も戦うのでしょうね。

4) 今週は大きな催し物がありました。航空ショーとロックフェスチバルです。私の時代では有名なのはウッド・ストックですが、チリでもロックコンサートは盛り上がります。それからマラソン大会もありました。優勝したのはケニヤの選手ですが、一番注目を浴びたのはケビンです。彼は昨年のマラソンの日、交通事故で両足を失いましたが、今日は車椅子で10キロの挑戦し、40分台でゴールしました。
この3つの集まりはいずれも数万人が集まり盛り上がりました。

5) 山火事
そろそろ山火事のシーズンも終わりそうですが、今年は83000ヘクタールと過去10年間で最悪の数字となりました。自然発火より放火の増加ですね、問題は。

6) 交通規制
来週から車の交通規制が始ります。古いタイプのエンジンを積んだ車はナンバープレートの末尾の数字で走行規制されます。大気汚染対策ですが、役に立っているのかな?


(スポーツ)
1) ロンドンの地下鉄
何でロンドンの地下鉄がスポーツのところに出るのかな?オリンピックを前にしたロンドンはメトロの駅の名前を過去のメダル獲得者の名前に変えるらしい。で、チリからテニスのゴンサレスとマスが選ばれ、彼らの名前が駅の名前に。
日本で有名スポーツ選手の名前を使うことにし、東京の場合大手町駅マイケル・ジョーダン駅に変えたら、悪い冗談といわれるかな?

2) サッカー
国内リーグ戦は上位が動かずチリ大学が連勝を継続。
リベルタドーレス戦は参加の3チーム中、先ずチリ大が勝ち、もう一方はチリ同士のカトリカ対ウニオン・エスパニョールでしたがカトリカの勝ち、さて3チームのうち、どれが次のステージに残るかな?


以上