(政治)

1) 大統領教書
5月21日はイキケの戦いを記念する海軍栄光の日で祝日です。海軍のパレードが各地であります。またこの日にバルパライソの国会で大統領教書が発表されます。過去1年間の実績と次の1年間の目標発表ですね。
今年のピニェラは昨年の生き埋め炭鉱労働者の救出の話からはじめ、出だしは好調でしたが、大地震の復興のあたりからおかしくなりました。被災者救援用家屋の建設に関して、(野党側ではほとんど進んでいないとするのに)大統領は大きな進歩があるとコメントすると場内からクレームの大声が上がり、緊張しました。
あとで、分かりましたが、被災者のための家屋建設は政府と被災者の間で合意に達してから、完成した家を受け渡すまでには約2年かかるとかで、その大きな認識の差が政府と被災者の間に溝となって隔たっているわけです。
ピニェラの演説は約2時間に及び、一番注目されたのはエネルギー問題。ついで注目されたのは先の政権で増加した貧困層の絶滅(減少)で、それは今までの政権が目標に掲げながら達成できなかった項目です。
その他に話題になったのは出産後3ヶ月の公式休暇を6ヶ月に延長する法案で前日まで国会でもめました。
長いピニェラの演説で、参加者のなかにうつらうつらする人の姿が目立ちました。それより問題はかなりの議員が携帯電話でツウィッターを使って外と連絡をしていることでした。テレビのニュースに出ましたが、国会議員がコソコソ外と連絡を取り合っているのは異常でした。おまけに隣の同僚と話をしたり、チューインガムを食べて・・・これがチリの議員レベルでしょうか。

2) 催涙ガスの取り扱いも今週の大きな話題の一つと言えます。デモがある度に警察が催涙ガスを発砲します。これが身体に悪い影響を与えるとして政府は今週始めこの使用を見合わせることにしました。確かにその後に行われたデモで警察はそれを使用しませんでした。 ところが21日の前日に、内務大臣のヒンスピテルは「世界各国で、(ここでスイス、ドイツそして日本の名が出た)デモ隊鎮圧に催涙ガスは使用されている。チリの警察が購入しているものはそれらの国が購入しているのと同じ工場の製品なので、人体に与える影響は無いと判断される。従いこれからもチリでの催涙ガスの使用は継続される」としました。5日間だけで催涙ガスの身体への影響はないと判断したわけです。それなら使用中止を発表する前に検討すべきでしょうね。これはいかに21日のデモを恐れているかのシンボルみたい。
ところで、その前日20日の反アイセン水力発電所のデモですが、全国各地で実施され、サンティアゴでは4万人といわれる人間が集まり大騒ぎ。それから21日のバルパライソも1万人以上が反政府デモ。どちらも最後は放水・催涙ガスが集団弾圧に使用されました。

3) アイセン水力発電ダム計画
まだまだ尾を引きそうです。政府はたとえこれが理由で政府の人気が落ちることになってもチリ国の将来を考え、計画実施に向け全力をあげるとしています。  ラゴス元大統領は先週、チリのエネルギー源を考えるときに、アイセン水力発電所にノー、原子力発電所にノー、すべてにノーでは将来はなりたたないとアイセン案に賛成の立場を見せましたが、野党連合から厳しい批判を受けると、前言を覆し、アイセン案に反対しました。定見がないのか、情けないですね。
ピニェラは教書の中で、声をあげてアイセン水力発電所建設を謳いあげ、今までの政権のように重要事項を先延ばしにすることはしないときっぱり。また前政権は石炭を使った火力発電所を多数建設し大気汚染を招いたと切り捨てました。 これに関しては野党側は、「全く事実を認識していない。それらの発電所はアルゼンチンからの天然ガスを燃料として使用するはずだったのだが、アルゼンチンが契約を破棄しガスの供給を停止したため石炭使用になったもの」としています。
野党側は国民の60%がこのダム建設に反対しているため、ピニェラ政権を倒すための有利な材料ととらえ、ダム反対の空気を煽っているものでしょう。
大統領の演説中に野党議員がダム反対の横断幕を掲げましたが、それを取ろうとする与党議員ともめたり、与野党激突の雰囲気は会議終了後も継続でした。


4) コダマ建設問題はくすぶっているだけでまだ火を噴きません。マスコミにでないように隠れて揉み消し工作とかしているのでしょう。