(政治)

1) 今週の最大の話題はサンティアゴのサン・ミゲル刑務所の火事です。ちょっとした火事ではありません。刑務所の一部が全焼し、何と81人の焼死者を出しました。焼死なので身元がまだはっきりしていない囚人がいます。チリのテレビ局は例によって、全チャンネルが他の番組を放棄してこの件だけを放送しました。なんでも原因はこの刑務所に入っている囚人の2グループが喧嘩をはじめ、そのどちらかがガスボンベを火炎放射器のように使って攻撃、部屋の中の衣類、シーツなどの燃え広がったと言うもの。監視の人間がその喧嘩を止めに入らず、火災になってからも消防車を呼ぶのが遅れ、また囚人を外に出さなかったのでほとんど全員が焼死したもの。もちろん、収容できる人間の2倍もの囚人が入っているとか、刑務所の設備があまりにもお粗末とか、問題が取りざたされていますが、この刑務所問題は最近の20年間、同じことが繰り返されています。ラゴス元大統領はすべてを前政権に被せようとするならピニェラが大統領をする資格はないと批判。法務大臣ラゴスほど刑務所問題に力を入れると言った大統領はないが、彼ほど何もしなかった大統領はいないと逆襲コメント。要するに問題さえ起きなければ、誰も何もしないのが実情でしょうね。
焼死した囚人の家族が誰の責任かを問う裁判を起こしました。これが電気のショートから起こった火災なら国の責任を問う裁判も盛り上がりますが、囚人同士の喧嘩が発端と言われますから、一方的に国を攻めても・・・・その裁判はどうなるでしょう。
もっとも、2グループの喧嘩論は見せ掛けで、実際は脱走するために混乱を演出したものの、刑務所の外に出る前に自分の一生が終わってしまったと言うことかもしれません。
刑務所内では携帯電話を所有することは禁止されているのに、多数の囚人がその家族と火事の混乱の中で電話で話をしていたのが印象的。いったい刑務所のなかの管理はされていないのかな?電話だけでなく、ラヂオ、テレビ、食事を作るガスコンロとか、何でもあるらしい。この火事の前に囚人がロンとかピスコなどのアルコールを飲んでいたらしいが、それは囚人の家族が差し入れているのか看守がこっそり販売しているのか分かりません。給料が安いのでこうした物資を囚人に売って小遣い稼ぎをする看守が多いのかな?

2) この事故が同刑務所のほかの建物に入っている囚人に影響して看守ともめたり、他の都市の刑務所でストが始まったり、まだまだ騒ぎは広がりそうです。
新聞にチリの場合、囚人一人当たり最高月40万ペソかかるとか。チリの一般家庭の平均収入より上で、何でそんなにお金がかかるのかな?その3分の1は食費らしい。
また刑務所の数はチリは181とか。日本はほとんど同じの187箇所らしいが、人口比でいくと日本に犯罪が少ないことが良く分かりますね。

3) 野党連合の苦渋
大統領選挙に敗退して以来さっぱり盛り上がらない野党連合ですが、1年近くたっても相変わらずで、市民の意見調査では、その顔となるのにふさわしい政治家は、いつもと同じバチェレットで他にはいません。何と彼女を応援するのが46%、2位のトア(PPD党首)が5%、ラゴス元大統領が3位で4%。あまりの差に驚きますね。来週チリを訪問するアスナル前スペイン大統領は野党連合の将来につき、連合に共産党を入れることはDCとの間のヒッチを大きくし、将来への問題を残すだろうとコメント。じゃ、DCはピニェラの出た中道の国民改革党と合併するのがベストでしょうね。それはチリ政界にとっての大地震になりますが。

4) パレスチナ認証
ブラジルとアルゼンチン政府はパレスチナを独立国として認証し国境線を1967年の6日間戦争以前のところに戻すことを要請していますが、これにチリも続くことになりそうです。まだ正式に発表されていませんが、ピニェラはパレスチナ訪問を計画中です。
その6日間戦争の直後、68年に私はイスラエルに行ってキブツで約1年、働きましたが、中東の情勢は本当に複雑で全貌を理解するのは難しい。何年か前、エジプトとヨルダンを訪問して、対岸にイスラエルを見たとき、不思議な気がしました。当時、イスラエルのスタンプがあるパスポートではアラブ諸国には入れなかったですから。
しかしイスラエル(とその同盟国アメリカ)の影響力が低下しているのは疑いないですね。