(一般)

1) 地震の被災者救援
政府は1千万ドルほどの費用で被災者救援物資を購入し、直接被災者の手に入るよう配送を実施中。既に各地に救助隊が到着し、食料品、飲料水、衣服などの支給を行っています。サンティアゴの場合、街のあちこちで救援物資 (腐らない食料品とか毛布とか) を集める場所が設定されています。
2) 略奪行為                                    地震の起こった土曜日は平穏でしたが、日曜日から商店、スパーマーケットでの略奪行為が始まり、それは月曜日の夜に軍隊を前面に押し出すまで継続されました。8州に5300人、7州で2000名の兵士が平穏維持のため街頭にたちました。これに先立って外出禁止令がだされ、その初日は夕方から翌日の昼まで18時間に渡る極端な外出禁止令になりました。外出禁止時間は現在短縮傾向にありますが依然として出され、今しばらく継続される見込み。
3) テレトン
金曜日の夜から丸一日、全テレビ放送局の共同番組としてテレトンを実施しました。これはチリの得意の手で、従来は身体障害児童の援助基金集めに使われましたが、今回は地震被災者援助のためでした。開会式にはバチェレット、ピニェラの両大統領が出席、現職と来週からの大臣も並び、もちろん政治だけでなく経済界、司法関係、4軍、カトリック関係とチリを代表する人間の勢ぞろい。国連の総長も急遽チリ入りしてこのイベントに参加しました。金曜日の夜から土曜日の夜中まで休まずぶっ続けで全テレビ局が歌手、俳優、スポーツ選手などを集めショーを続けます。それもチリ人だけでなく、スペイン、南米各地からも応援出演があり、それらのショーの合間にいくら献金が集まったかアナウンスして盛り上がるというもの。もちろん各地の被災状況、その中でヒーローとして他の被災者を助けた人が紹介されます。結局300億ペソ(約60億円)が集まりました。もちろん一般市民だけでなく、各社が競って寄付金を出し、援助合戦のようでした。しかし目標の2倍の金額を集めたこの催しはすごいですね。私も金曜日の夜の早いうちに近くの銀行に行きました。月曜日は会社で行われている献金にも協力します。被災者を助けるというのは大きな被害を受けなかった人間の大事な仕事ですね。
4) 建物の破損・崩壊
土曜日、チリのマンハッタンとして知られるラス・コンデスのビル街を訪ねましたが(サンハッタンって言われるんですよ)外から見る限り大きな崩壊・破損は見れませんでした。まぁ素人の私が見てもわかるはずがありませんが、建築のプロの内藤さんの言葉によると、「私の住んでいる高層マンションを上から下まで異常が無いかチェックしたが、確かに構造・設計・施行ともによく出来ていてチリの建築レベルが高いことを確認した。それも地震対策が織り込まれていることは素晴らしい」の由。サンティアゴで建設したビルに問題が出たパス社のオーナーは、「地震対策はビル設計の段階から織り込み済み。わが社が施行した100にもおよぶビルのひとつが不幸にして崩壊の危険を見せたとしても、それはわが社のビルが基準を満たしていないという証明にはならないと思うがどうですか」としている。コンセプシオンで6棟、サンティアゴで1棟の建物が危険度が高いとしてダイナマイトを使用して人工的に倒壊させられるらしい。
そのアパートに住んでいた人の悔しさ、苦しみ、財布の痛みは尋常ではないでしょうね。
さて義務教育の学校はほとんどがこの月曜日から新年度の授業が開始されますが、サンティアゴ市内のいくつも学校で校舎の破損から授業が始められない様子。軽度の場合は開始時期を遅らせることですみますが、重度の場合はその学校の生徒を近所の学校に移すことが検討されています。
その他、水を入れるタンクや飼料などのためのサイロが地震で傾いてしまいその倒壊が心配されていたが、サンティアゴ近郊で一棟が転倒し死者を出しました。
5) ところでチリの地震と日本のマスメディアの関係について触れてみたいと思います。日本のテレビで、この週末になっていまだにチリ地震の件について略奪とそれに伴う火災の映像が流れていると聞きました。朝日、毎日とか時事通信が特派員をチリに送り込んだようですが(他にもあったらごめん)それらのニュースを配信する会社は何をしているのかな?
そんなんもう無いで!既に終わっているニュースを繰り返して流すことはそれを受ける側に誤ったイメージを植える重大な過ちと思いますがいかがでしょう。
産経新聞の記事で「地震後1週間たっても混乱は収まらず国民の間にバチェレットに対する批判が高まる」とありましたが、現地を全く見ていませんね。悲しいくらいです。いやアホらしいというほうが正しいかな?
それからその批判の対象になっている略奪行為ですが、それはアメリカではロスアンジェラスを初め各地で起こっているし、欧州でもありました。日本でも阪神大震災のとき商店の略奪行為があったが、報道管制を敷いてそれを知らせなかったと聞きましたが、報道関係者の方なら真実をご存知のはずですよね。チリの風に、「私はその時xxテレビに働いていましたが、そのとおり、略奪行為が発生しました。そしてそれを取材しましたが、デスクの判断で報道されませんでした」なんてコメントが来るかもしれませんね。
それを無産者階級と資本家階級の対決とすると大げさになりますが、切羽詰れば普段は通常の人間でもなんでもするのも真実でしょう。もちろんチリの場合、それがかなりの数になったのは真実です。しかしチリの警察はテレビのニュースなどにでた映像から犯人を特定し、逮捕し始めました。それに地区の近所の人間が警察に通報したというのもあるそうです。それを知った犯人が、刑を軽くしてもらいため自首をして商品の返還を申し出た人間もいるらしい。もちろんこうした事件の再発を防ぐためには悪質な人間の逮捕、留置、裁判、刑務所行きが必要でしょう。しかしニュースで見ましたが取られたテレビの数は5や8台ではなく数十台でした???!!!もちろんそれを戻されても再度売りには出せないでしょうから、それらの商品はあちこちの施設に寄付されることになるでしょうね。
今回のチリの例では、それを防ぐ手段はあったのですがバチェレットがそれを嫌がったと私は見ます。
その手段とは、軽い順に

  1. 警察で防ぎきれない場合、軍隊を出動させる
  2. 外出禁止令を出す
  3. 戒厳令を敷く

です。
しかしそのいずれもがかっての軍事政権を思いださせるもので、父親を軍に殺された彼女としては自分の政権の最後の週にそれを発動させたくなかったのは間違いありません。アメリカのワシントン・ポスト紙が彼女の決断の遅さを批判する記事を載せましたが、それはチリの勉強が足りないからでしょう?
またチリの「国際社会への援助要求の遅れ」と言う記事なんかほとんど笑わされるほどのレベルですね。チリとハイチを混同しているのかな?必要があれば要請するし、必要が無ければ要請しないのは当然と思います。
さて外国からの援助が到着し始めました。アルゼンチン、米国、ロシアからの援助機が到着。しかし外国から高い費用をかけて飲用水を運んでくるのはもったいない気がします。チリ国内で自給できますから。
最後にチリがこれほどの大地震だったにもかかわらず死亡者が少なく、一部の地区を除き、1週間でほぼ通常生活を確保したことは諸外国で起きた大地震と比較して、極めて例外的と言えるほどのすばらしい対応ではないでしょうか。日本なら、次は関東大震災の可能性が大ですが、その時、この規模の地震が起こったとしたら、チリと同じくらいの被害で抑えられるか、また早急な復旧が図れるでしょうか?準備は出来ているかな?。
それにしてもこの地震の後、日本の各メディアはチリ在住の日本人に電話をかけまくったと思います。どんな情報でも良いので教えてくださいと。しかし最初から書いているようにチリの二つの面(表と裏、良者と悪者)大災害による被害とそれを乗り越えて立ち上がろうとする力を書かねばなりませんが、少なくとも今までのところ日本報道は負の面だけを見ているようです。そのほうが一般受けするのですよと言われたらもう返す言葉もありませんね。それならチリがんばれと言う替わりに日本がんばれと言わなければ。