チリの風その247 07年10月29日―11月4日

チリの風その247 07年10月29日―11月4日

チリのサンティアゴでは天気が良くなって、気持ちのよい生活を送っています。

私の11月の週末は土日ともスポーツで明け暮れそうです。仕事のほうも順調で,10月のリキャップ・タイヤ商内は何と操業開始以来過去7年間での最高記録を出しました。工員さんに新記録が出たらアサード(焼肉)ですよと約束していたので、肉の用意も必要です。社長と話していなかったので、会社が金を出さなければ自腹を切る必要があったのですが、そこは「レストランに連れて行くとかなりの出費になりますが,工場裏の芝生でやれば、それほどでもありません」と持ちかけると,じゃ、そうしようと承諾が出て,会社の金で派手に飲んだり食ったり出来そうです。

少し前にチリの大学での卒業論文用研究について質問を受けましたが、息子に聞き出したのでお知らせします。チリの大学での卒論用研究の資材,設備は大学生個人が用意できるわけはありませんから,普通はその大学に付属のものを使用させてもらいます。もちろん実験材料費は個人負担となります。これを軽減するためには,政府の援助を受ける他、教授の研究を手伝うがありますが、その場合は費用は大学負担です。そのときの実験数字を加工して卒論に使用する手がありそうです。(ただしすべての大学がこれと同じ基準かどうかは保証の限りではありません)

(政治)

1) トランサンティアゴラゴスの反撃

  何しろ今年2月に始まった新交通計画は8ヶ月たっても上手く機能していません。地下鉄はそれまでの80%増しの乗客を運んでいるそうですが,毎日,東京並みの混雑はそれまでと大きく異なるのは明らか。バスの運行も以前より少ないし,停留所の設置もおかしいし,路線も変更されて不便になりました。とにかくバスを待つ乗客の長い列はそれまでは見られなかったのに,今では日常です。

  さてこの問題の根源はこの計画を作成した前大統領の失策と従来考えられていましたが,バチェレットは「先生」のラゴスを表立って批判することは避けていました。ところがそのラゴスはその一般の印象を変えようと私の計画は熟慮されたものだったがそれを実行する力が現政権には無かったと文書で発表、矛先をバチェレットに向けました。しかしこのおっさん,何を考えているのかな?もう一度大統領につきたいとする彼は現政権をバカ呼ばわりして,だからチリは私が必要なのですよというつもりなのだろうが、そんな彼を誰が慕うだろうか?彼に言ってみたいですね、「おっちゃんも、ピノチェットと同じように大分、国の金を持ち出したのだろうから,もう政治に口出しするのを止めて,海岸の別荘にでも住んで大人しくしていればどう?」って。いつも彼女に厳しい批判をしていますが、これではバチェレットがかわいそう。

2) イベロアメリカ頂上会議

  来週チリで開催されるこの国際会議も問題を起しそうですね。与党のDCは参加国のキューバとベネスエラの民主制を厳しく批判しているし,野党のUDIなんかチャベスはチリ国にとって好ましくない人間として取り扱いたいとコメントするほど。

  しかしこれは外交だけの問題でなく、内政でも重要なポイントです。民政化した当時,与党連合の中心となっていたキリスト教民主党(DC)は最近の2代の大統領を左翼(社会党系)にとられ、次回は何が何でも自党から大統領を出すと意気込んでいますが、アルベアルの人気が今ひとつ盛り上がらず、野党側のピニェラに完全に押さえ込まれています。それを打破するためにこのイベロアメリカ頂上会議を各国の左翼系大統領とチリの左翼が組んだお祭りにさせないとするのは当然で表面にでない所で、与党内の嫌がらせ合戦が盛り上がっているはずです。しかしチャベスはチリで何をするかな?

3) 野党と与党の間に立って,活躍するラビンの評価が高まってきました。何しろ,今回発表された次期大統領可能候補のリストで3位に急上昇です。相変わらず1位はピニェラで、続いて2位はDCの女性党首アルベアル,そしてラビンが続くわけです。DCはこれに反応して,これ以上アルベアルの存在を脅かすことが無いように政府がラビンをちやほやするのは止めてくれとクレームしたらしい。子供のけんかのレベルも大きくなってきたわけです。

4) しかし大統領の人気の下落は避けられそうもありません。物価高,犯罪の増加,トランサンティアゴの失敗、教育問題, 医療施設問題、不正給与の刑務所問題, 国鉄問題、もう毎日,市民のクレームが大統領官邸に山のように届いていると思います。もう昔のようにそんなメールは見ないのかな?それとも毎日,そんな山のようなメールを見ることで時間つぶしをしているのかな?

(経済)

1) 今年の出超は国民総生産の10%に達する予定。現在までの国家収入は200億ドルらしい。

2) チリの国際競争力の上昇

  このランキングで日本は赤字国債の拡大から世界ランクを落としていますが,チリは尚も上昇を続け、総合で世界26位に入っています。スペインやポルトガルより上ですよ???!!!

最もいつも思うのですが,世界の100以上の国をどうして同じ基準で評価できるのでしょうか?

  チリの弱点として労働者の解雇コストが高く世界の81位なんて言われても、アフリカのチャドやアジアのモンゴルと同じ基準で比較されているのでしょうか?女性の労働への進出は世界最低ランクの109位ですが、ホンマかなと言う気がします。

3) ドルの続落

  1ドルが493ペソになり,これは1999年以来の低い数字になりました。2002年なんか1ドル800ペソ寸前まで行ったのですよ。そのころ、誰がこんなペソ高を予想できたでしょう?少なくとも新聞・雑誌などの経済欄でその種のコメント見ませんでした。プロの目もたいしたことは無いわけですね。

4) 最低賃金

 チリの最低賃金は今年6月から14万4千ペソです。経済成長率が思ったように伸びないのでこの増額を見送り,来年中ごろまでこの金額が継続とか。日本円にすれば約3万円。物価が4分の1とすれば,日本の実質12万円。やっぱり日本でもチリでもこの賃金での生活は厳しいですね

5) コデルコ(国営銅公社)の営業成績が過去5年で初めて下落とか。生産

コストの上昇とストが影響しているらしい。親方日の丸式の経営の限界かな?

6) 失業率の低下

サンティアゴ首都圏での失業率が8.0%に下落。経済の好調さを見せています。この傾向は2008年も継続と予想されています。

7) チリで売られている靴(運動靴や各種の靴)の90%は中国産と新聞に発

表されました。しかしこんな中国と離れたチリの靴需要の90%を供給できる中国の生産力は異常ですね。

8) チリの輸出(2007年1―9月)

チリからの輸出先のトップは中国で15%。2位が米国で14%,3位が日本で11%でした。日本向けの輸出で目立つのは魚でチリから出るマスの80%、サーモンの30%は日本向けとか。また銅の輸出の28%も日本向け。

(一般)

1) 世界の島コンクールで,世界の111の島の中からデンマークのファロエ島がトップに選ばれました。私の大好きなチロエ島が世界3位に入りました。これは島の伝統保持を基準にして判断しているそうで、素直にうれしいです。このチリの風の読者の皆さんにも訪問してもらいたい。このブログの旅日記の中にチロエの素晴らしさを書いていますから読んでくださいね。

私の訪問先の中ではギリシアのコルフォ、ポリネシアのボラボラが上位に入っていました。

2) チリ人の信条調査として,チリ人は年々,社会が対決姿勢を深めていると感じています。これは金持ち対貧乏人,会社と従業員、与党と野党などほとんどあらゆる項目で対決姿勢が高まっているらしい。

また将来について,以前のような明るさを感じなくなってきているらしい。将来が暗いと感じて生きるのは気が重いですよね。

3) 広島に原爆を落とした爆撃機の機長が死亡したと新聞に載りました。任務を全うしただけとか,戦争に勝ちたかったとかという乗組員のコメントも同時に書かれていますが,複雑な気持ちですね。

4) 例のその翌日の錠剤に関し,ローマ法王がチリの問題に言及したらしいが、バチェレットはすべての場面で社会が自由な選択を得られるようにするのが自分の役目と強調。大手薬局チェーンは一つの薬局に少なくとも(ほんの僅か)1−2個置き、罰金を逃げる動きをしているらしい。

5) アルゼンチンのバンドソーダステレオのサンティアゴ公演

1980―90年代に活躍したアルゼンチンのバンド・ソーダステレオがこのほどバンドを復活し、南米公演をしていますが,チリでも2回公演しました。その2回目の国立競技場に出向いた私の娘は感激のあまり泣いてしまったとか。だって演奏は完璧だったんだからとか・・・・。

サッカー場を2度満員にする力は確かにすごいですね。

6) 9月の航空機の乗客は対前年21%アップの72万3千人だったらしい。

国内も国際線もランチリの一人勝ちです。しかし私たちは今,来年夏の休暇の航空券を捜していますが,それに必要な1月中旬の安い券は全部売りきれ状態。すごいですよ。この辺はそのうち詳しいことを書きます。

(スポーツ)

1) サッカー

  欧州サッカー界で一番活躍しているチリ人は選手でなく監督のペレグリーニです。彼は現在はスペインのビジャレアルの監督ですが,同リーグ2位と健闘中で,その彼にイギリスのチェルシーのほか、同じスペインの他のクラブ,オランダからも乙波が来ているらしい。勝てば官軍,どこからでもお呼びが来ますね。

さてチリ国内リーグは人気のコロコロが水曜日トップのアウダックスに屈辱の4他1の敗戦。そして日曜日にカトリカと対戦,これにも負けると赤信号でしたが,1対0で勝ってほっと安心。カトリカ・ファンの私はまた月曜日,工場で大勢のコロコロファンからバカにされるわけです。

2) テニス

  年の後半に入って不調が続いていたゴンサレスですが、やっと年末に世界トップ8が集まる上海大会の切符を手にいれそうです。同じ人間でこの大会に2度、出場するのはチリでは彼が始めて、彼がチリを代表するテニス選手という証明のようです。

以上