チリの風  その246 07年10月22日―28日

チリの風  その246 07年10月22日―28日

今週なんとサンティアゴで最高気温31度を記録した日がありました。もう真夏の雰囲気で、セントロ(中心部)ではアイスクリームが飛ぶような売れ行きだったとか。夏といえば、そうそうショッピングセンターでクリスマスの飾り付けがされました。年末が近いですね。

さて今週、ヒラリー・クリントンが60歳の誕生日を迎えました。還暦というともう老人の仲間入りのシンボルですが、彼女はそんな風には見えません。夫の醜聞にも耐え、次期大統領候補として脂の乗り切っている感じさえします。

週末,日本人会の敬老会がありました。100歳の女性を含め75歳以上の方を祝福しました。私も敬老会の皆さんやヒラリーに負けずに、60歳から落ち込まないで逆に成長していきたいです。心配していただいた足の故障は軽減し、週末軽くジョギングできるようになりました。

  • (政治)

1) しかしチリの政界はますます面白さを加えています
  女子軽視を嘆いて問題をかもし出したバチェレットに意外な援兵が出たことは既に書きました。右翼側の前大統領候補ラビンは犯罪者との戦いに右翼も左翼も無いとし、政府への全面支援を約束したことです。野党は,何それ?と当初は無視,蔑視もしくは困惑の姿勢を見せましたが,ラビンが内務大臣とその件について面談した後、世間の彼を見る目が好意的なので,急にスタンスを変更し、野党2党の党首もモネダ宮殿を訪問し内務大臣と面談しました。たった一人の人間の動きがチリ政界を変えたわけです。もっともそれは点を稼ぐだけのジェスチャーですから、この運動が最後まで上手くいく保証はありませんが。

物置から古い雑誌が出てきて,数年前の雑誌ですが,そのトップに若年層の犯罪者の取り扱いとして刑務所にいれるのが良いのか,更生施設にいれるのが良いのかとなっています。数年前から同じことを言っているわけですね。

と、一見、バチェレットに有利な風向きですが、彼女が公衆の面前に現れると、住宅を購入しながらその借金が返せない返済不能グループが出てきて話を邪魔します。彼らは警察に捕まっても全く気にせず,再度抗議行動を繰り返し大統領の頭痛の種。週末は彼らが自宅まで押しかけ(大統領は自宅に不在でしたが、警察と2時間の揉みあい)大騒ぎになりました。

また今週,彼女はチリ南部に行く予定でしたが急にそれを取りやめ。理由はマプチェの抗議行動がありそうだから。じゃどこへもいけませんね。

おまけに新交通計画トランサンティアゴが一向に良くならず、一般利用者が裁判所に訴え出ている事件もあり、年末までに改善できなければ現政権への批判は高まる一方です。もちろん犯罪問題とは異なり、これに関して野党は政府に協力するといっていません。

2)今週一番ショッキングなニュースはスペインのバルセロナの地下鉄内での暴行事件でしょうね。スペイン人の若い男が,エクアドルからきた16歳の女性に白昼,暴行を加えたもの。それがちゃんと撮影されテレビで放送されるのですからすごい。その男は,「私は酔ってたんだ、それだけ、人種差別なんか関係ないよ」と涼しい顔。チリの法廷と同じようにスペインの法廷もレベルが低いので,この男を刑務所に送り込みませんでした。エクアドル政府はスペインに正式抗議をする由。

エクアドル人はスペインに数十万人住んでいるらしいが,それはスペインとエクアドルの間にヴィザ不要の取り決めがあるからで,その取り決めの背景はスペインがエクアドルの天然資源の開発に特権を得たいからと思われる。まぁ政治の世界はそんなものだろう。

しかしこれに関連しますが、チリ人観光客をマドリッドの飛行場で不法に?逮捕,強制送還を繰り返すスペイン政府の考えがどうにも理解できません。チリ国内のスペイン資本の会社に少し圧力をかけてみたらどうかな?私は以前スペイン資本の電話会社に入っていたが、大分前にそれを止めてチリ資本の電話会社に替えました。

これがチリに飛び火して(?)、何とチリ政府はチリに滞在中の約2万人といわれる不法滞在者の恩赦を発表しました。観光ヴィザで入ってきて働いている外人に在留許可を与えるというもの。半数以上はペルー人なので,ペルー政府との関係改善を狙ったものだろう。ペルーでガルシア大統領への批判は高まるばかりで彼を指示するとする層は僅か30%です。

3)ピノチェット事件の続き

  しかしそんなこともあるわけですね。ピノチェット一族を根こそぎ逮捕させ、その裁判が始まる前にアメリカにチリの人権問題で貢献があったとして表彰状と共に巨額の賞金を受けたセルダ裁判官が、チリに戻ってくるとアメリカでの言動に関し最高裁判所から訊問を受け、その興奮が終わらぬうちに,何と彼が裁判所に持ち込んだ23名のうち15名が裁判に値しないと放免されました。記者に囲まれた彼はにこにこしながら逃げていました。しつこく記者が大打撃ですねと聞くと,「私の顔は衝撃を受けているように見えるかい?」と微笑んで事務所に消えました。どんな神経をしているのかな,この男。じゃ今回,放免された15名の不正蓄積はこれ以上追及されないというわけかな?喜んでいるでしょうね, その人たち。

4)イギリスの南極領土宣言に驚いたチリ政府は、国会議員が南極訪問したり、

資金不足から閉鎖されていた古い基地を再度活用する方針を立てるなど対策に追われています。

6) 隣国アルゼンチンの大統領選挙がこの日曜日実施されました。現大統領

の妻が勝ったようですが,これでチリ・アルゼンチン両国の大統領が女性になります。ヒラリーが勝てば,アメリカも女性の首長・・・。

ベネスエラは食糧危機に見舞われているようですが,じゃチャベスを女性大統領に変えたほうがいいかな?

そのアルゼンチンでおこなわれた世論調査で、アルゼンチン人はチリ人を好きか?の質問にノーが56%、アルゼンチン人はチリ人より優れていると思っているか?は64%がイエス。チリ人はアルゼンチン人を好きだと思っているだろうか?ノーが61%。はっきりとした結果ですね。アルゼンチン人に南米の中で自国以外ではどこに住みたいかのトップはブラジルの40%、2位はウルグアイの25%、次いでベネスエラの13%でした。

  • (経済)

1) 先週と同じく、ペソ高,株式市場の好調、原油高からガソリン価格の急上昇が報じられました。物価上昇率も今までの年間2―3%をはるかに越えて07年は年間7%が予想されています。

チリペソは対米ドルのレートが切り上がっています。再度1ドル500ペソのラインを割って490ペソに接近しています。同じように対米ドルで切り上がっている通貨は1位がカナダドル、2位がブラジルのレアル、3位が豪州ドルらしい。(ということはブラジルからチリに入ってくる産物は通貨の関係で値上がりしているわけですね)

2) 銀行が貸し出し基準を厳しくしたためマンションなどの売上に影響していますが,それとは全く逆に事務所として使われる場所の不足が指摘されています。トップと呼ばれるA基準の事務所は,サンティアゴではラス・コンデス区に集中していますが、2000年に13.5%あった空室率が現在は0.6%となり、要求を満たせません。建設は順調なのですがそれを上回る需要があるわけです。まだ金持ちの会社が多いわけですね。

それに関連してラス・コンデスで区役所の基準を変えた事務所用ビルが建設されて問題になっています。つまり区役所から低層ビルの許可を得ながら高層ビルを建設した例です。出来てしまったからしようがないとするのか、壊させて再度適切なビルの建設をさせるのでしょうか。多分,罰金を払わせて終わりになるのでしょうね。ずるい奴が勝つ仕組み?

3) 風力発電の開始

少し前,第四州に出張したとき,大きなプロペラが道路わきに設置されていると書きましたが,いよいよ来月11月からそれを使った風力発電が開始されます。そのプロペラは先端までの高さが112メートルとか。3600万ドルの投資で年間47000メガワットの発電を予定し,これは8万人の需要を賄うものらしい。さてどうなるでしょう。

  • (一般)

1) プエルト・モンの青少年更生施設が全焼し、収容されていた10名の人間が焼死しました。これは彼らが脱走を図って、寝具などに火をつけたところ、出口が閉じていたため(脱走を防ぐためには当然の処置)焼死したもの。しかし自業自得というべきか,因果相応なのか、政府の問題なのか?

2) 外人はサンティアゴを評価

首都サンティアゴの住民はここはあまりにも忙しく騒がしい、交通に問題あるし,環境汚染もひどい、生活水準は望むレベルに無いと自分の住むサンティアゴをあまり評価しませんが, 外人は逆に高く評価しているという記事が出ました。最も大きく評価が分かれたのは生活のリズムという点で,チリ人はわずか4%が納得できるとしたのに対し,外人は33%が素晴らしいとしています。東京からきた日本人なら、ここは東京より落ち着いているとするのは当然でしょうね。また一般に,外人の方がチリ人より給料が高いのでこういう評価が出るのは当然ともいえますが。

3) 観光シーズンの開始

   豪華観光船がチリに続々入港してきます。サンティアゴの近くのバルパライソ港には今月24日から来年5月までに49隻、合計8万7千人の観光客を運んでくるらしい。前のシーズンは31隻だったの大幅増加になります。どんどん来て下さい。

4) 先週チリを代表する2チーム、チリ大学とコロコロの試合がありましたが,その試合の後,地下鉄で中心街に向った観客が駅や車両を破壊するなど暴れまくりました。これをうけて地下鉄当局はこういった危ない?試合の直後は地下鉄の運行を中止する措置を取る可能性を検討し始めました。地下鉄の駅が閉められれば,当然バスで帰ることになり、そのバスの中で乱暴狼藉は目に見えています。じゃ次はバスも運行を止めれば、サッカー場への便が無くなり、自家用車か自転車だけになれば、静かなサッカー見学になるでしょうね。それではチリサッカーも死んでしまう。

  • (スポーツ)

1)上位のチームが順調に勝ち進んでいます。アウダックス・イタリアーノが首位を走り、コロコロ、チリ大学など人気チームがその後を追いかけています。来週,コロコロはそのアウダックス(水曜日)とカトリカ(週末)と対戦するので,その結果によれば首位進出も夢でないが,逆に2敗すれば負ければ中位転落もありえます。さぁどうなるかな?


以上