チリの風  その245 07年10月15日―21日

先週の日曜日、マラソン練習中、犬に噛まれた件をチリの風に書きましたが、それに対し、読者の方から、徹底的に裁判所で争うようにとか、狂犬病で死にますよとかのあたたかい励ましのお言葉をいただきました。しかし何とか傷口も小さくなってきてこれ以上悪化することはなさそうです。

今週は出張でチリ北部のイキケに行きましたが、足が良くなってきたので時間を作って砂浜を走りました。途中、子供サッカーに見とれて、靴を波に濡らしてしまいましたが、ビキニのおねえさんを見ていたわけではありません。

そこまでは良かったのですが、土曜日、日本人学校のサッカー教室で、足の故障。今回は太ももの筋肉が肉離れしたようで歩けません。これでしばらくの間、トレーニングはお預けですね。残念。

(政治)

1) バチェレットは約1週間のイタリア訪問を終え帰国しましたが、このイタリア訪問の内容が私にははっきりしません。彼女はチリの軍事政権から逃げて1975年にローマに入っていますから、感慨深い訪問だったことは間違いありません。

しかしそんな個人的なことや、ローマ法王との面会が最重要事項のように新聞に書かれていますが、何やそれという感じです。

笑ってしまうのは丁寧にバチェレットが法王と一緒にいた時間が表示され、彼女の39分はベネスエラのチャベスアメリカのブッシュより何分か長かったらしい。再び、何やそれですね。

しかし彼女も作戦が甘い。チリ国内でローマ法王が人気があるなら、彼と話した内容を国民に知らせるとか、法王からこんな励ましを受けたとか宣伝に使わなければ。

楽しい外国旅行とは違って、一方の国内には問題山積です。例の国鉄問題は、世界銀行の調査結果としてラゴス時代の施策はすべてエラーとされています。つまり乗客の見積もりの根拠があやふやなこと、政府から派遣されてくる国鉄幹部は仕事より政府との関係が重要とする人間だったとし、根本からラゴス批判となっています。その報告書によると現在のチリ国鉄は実際には破産状態としています。

その国鉄関連のコンセプシオンの路線で、関連業者が国鉄からの支払いがないとして、自分たちが建設した停留所から天井やイスを取り戻しました。もちろんこれは裁判所の許可があり違法ではありません。乗客の怒ること、怒ること。一体どうなっているのでしょうね。アホな国鉄幹部はじゃまたテンダーをして、違う業者に停留所の建設をやらせましょうだって。出来ている停留所を壊してまた新しくやるの?それなら約束した金額を業者に払ってください。

また刑務所が政府高官に仕事を頼みその代償に給料を支払っていた件で元刑務庁長官が自分の時代にも政府高官への給料支払いはおこなわれていたが、それは政府からの指示で実施されたもので、自分が彼らに何らかの意見を求めたことは無いし、レポートを受領したことはないときっぱり。つまり高官への不正2重給料だったわけですね。

笑ってしまうのは彼の次の長官が、いや確かにそれらの政府高官は仕事をしてその報酬を受けており、まったく知らないと報告した元長官は任期が短かったからだろうと訳のわからない批判をしています。

最後になりますが、バチェレットはあちこちのインタビューで、「チリって男性中心の国でしょ、女性蔑視もしくは軽視の風潮があって、私を批難するとき、決まって指導力がないとか言って、政府の問題じゃないことでも女性大統領の責任にするのよ。」とコメントしています。こんな彼女の政権がまだ後2年も続くのですよ、えらいこっちゃ。

そんな彼女も今週の日本雑誌「アエラ」の表紙を飾ったようですね。改革をになう女性リーダーとして。日本雑誌も見る目が甘い?

2) ピノチェット問題

終わったようで、まだまだ継続する問題ですが、今週の話題はピノチェットの蓄財です。セルダ裁判官が発表した数字は総額2600万ドルですが、今週のマリン法廷調査官の発表ではその3分の1以下の7百万ドル。これだとセルダ説(国の機密費を持ち出さなければこれだけの額を蓄積できないが崩れかけてしまう)に疑問が灯ることになり、じゃ実際はどうなのかという新たな論争になっています。ピノチェットも最後に焦って金を盗んだのは事実でしょうが、それを過大評価して世間に大見得を切ったセルダ裁判官もまずい立場になっているのは確かです。おまけに彼は自分のしたことは(ピノチェット一派の逮捕)多くの国民の支持を得ているとアメリカの授賞式でコメントしたのも問題になっています。裁判官は政治家じゃないですからね。

3) 南極の領土が取られる

   今までチリ領土だと言い張っていた南極の一部を突如イギリスが領有権を主張。このままだとイギリスが戦争もなしにチリ領土を取り上げる可能性もあるらしい。最も今までのチリの主張も別に国際的に認められていたわけではなく、単にチリが領有権を主張していただけのもの。その証拠に隣国アルゼンチンが主張するアルゼンチン領土はチリ領土と一部重なっていますが、それが元で戦争がおこった実績はない。さてチリやアルゼンチンなら少なくとも自国に隣接して存在する南極ですが欧州の英国なら領土主張に根拠乏しく、依然として彼らの頭には植民地主義が残っているのでしょうか?南極には天然資源がたくさん埋蔵されていますからね。

4) 人権問題の世界大会がサンティアゴで開催

   今までこの大会は北半球のみで開催されたらしいが、今回始めて南半球のチリにきました。世界の関連裁判官が集まりましたが、その中にハーグの国際法廷で働く大和田氏もいて、新聞に彼の写真が掲載されました。テーマは各国の人権問題に国際機関がどう関与するかなどです。

5) そうそうイベロアメリカ頂上会議が11月チリで開催されますが、それを利用してチリの左翼が、チャベス、モラレスを呼んで大集会を企画中とか。

この2人に、キューバカストロエクアドルのコレア、ニカラグアオルテガなどがラテンアメリカの1グループを形成しているわけですね。ブッシュに言わせれば悪の枢軸となるのでしょうが。

しかしただでさえも与党内をまとめられないバチェレットが、与党内の左翼が彼等と大集会を催し、それに反対するDCが、この集会を阻止しないバチェレットを批判する構図が今から見えるようです。おばちゃんもここら辺で自分のスタンスをはっきりさせた方が良いのではと思いますが、どうでしょう。

(経済)

1) 最近の物価上昇や金利の上昇から、まず家屋の販売にブレーキがかかり、それが一般消費財にも影響してきたと報道されました。07年の最後になって経済成長にブレーキがかかってしまったわけですね。

1ドルは500ペソ台に戻りましたが、そこで留まっています。しばらくは1ドル500ペソでフィックスですね。

2) エネルギー問題

この先のチリの最重要課題ですが、アルゼンチンからの天然ガスが契約どおり納入されないことから電気代が毎月のように上がって家計に影響しています。それに原油価格の上昇が年末にかけてチリ経済に大きく影響してくるでしょう。

アイセン地区の電力用ダムの建設は環境保全とからんで単純に行きそうにはありません。

(一般)

1) イキケのフリー・ゾーンに行きました。久しぶりでしたが、モールだけを見ていると商品があふれ、多くの人がショッピングをしていて、通常の世界ですが、その外の工業地区を歩くと全然イメージが違います。とにかくそこでは日本車(廃車でしょうね)があふれています。泉幼稚園、仙北生協とか書かれた車や自家用車が並べられ、そのハンドルの位置を換える作業が進み、それが終わると車をトラックに積みこみ近隣諸国に送り込むわけです。ボリビアパラグアイのナンバープレートがついていました。しかしチリのスペイン語と違うスペイン語が話され、またそのセクッションはトイレも無いので衛生問題もひどく、座って食事している人もいましたが、別の国にいるようでした。

2) 薬局チェーンに罰金

避妊剤か堕胎剤か知りませんが、「翌日の錠剤」と呼ばれるその薬はチリで正式に製造許可も販売許可も出ていますが、大手の薬局チェーンではこれが販売されていません。そこで厚生省が店頭に並べるよう指導した所、反応が無かったので3300万ペソ(約600万円)の罰金となったもの。しかし避妊やエイズ問題で政府のキャンペーンをカトリック系などのテレビ局が放送拒否することは今までもありましたが、薬の販売を薬局チェーンが拒否するなんて、チリはそれほどカトリックが強い影響力をもっているのですね。

たまには言いましょう。がんばれバチェレット、カトリックに負けるな。でもそのバチェレットは法王の前で神妙にしていましたけれど。

3) 強盗に警官が射殺される

犯人グル―プと対決した警官が銃撃戦の末、射殺されました。これに関し、野党は一体政府は何をしているのか、犯罪グループがサンティアゴ(他の都市でも同じ傾向ですが)の街を支配しているのを黙ってみているだけだと批難していますが、実際バチェレットは何をしているのでしょうか?ローマから戻った彼女はその警官の葬儀に出向いて、家族に慰めの言葉をかけ、警官に発砲することはチリ国に発砲するのと同じだとコメントしていますが、言葉だけでは問題の解決には至りません。そうでしょ?

ついでに警察の話題です。この2週間ほど、警官の同性愛問題が話題になっています。自分はゲイのため警察から追放されたとする2名の元警官が名乗り出て訴えました。警察軍の長官は私たちは警官の性愛癖で辞職させることはないときっぱり回答していますが、この先どうなるでしょう。

4) サンティアゴも中心街での街頭商人(もちろん税金も払わないし、扱っている商品が疑わしい、つまり不正で不法です)の一掃を計画していますが、それに共に彼らから商品を買った一般市民への罰金案も出ています。

まぁ、これは信号を守らない歩行者は罰金刑とするという条例と同じで、多分この条例で罰金を払わされる市民は一人もいないでしょう。もし誰か最初の犠牲者が出れば新聞テレビに大きく報道されるでしょう。

5) 心霊士の活躍

先週、チリの心霊さんが、ポルトガルで行方不明になったイギリス人の女の子が見つかる可能性のある所在場所を大使館に報せた件を書きましたが、その女性は今週、同じように行方不明なった男性の写真をもとに所在地を感じだし、家族と一緒にその土地に行った所、死体を発見しました。彼女はこうして所在地を過去に何度も発見しています。しかしそんな不思議な力が存在するのですね。

6) チリの数学力アップを日本が援助

世界の生徒学力検査の数学では日本は570点で世界5位にランクされていますが、チリは387ポイントで下位に低迷。これを何とかしようとチリ文部省は日本に援助を頼み、筑波大学などから教授数名の派遣を得て、チリ各地で模範授業をおこなってもらいました。

もちろんその日本にシンガポールや韓国中国に負けず世界のトップになってもらいたいです。

(スポーツ)

1)サッカー  とうとう勝ちました。

ワールドカップ南米予選で、初戦アルゼンチンに負けたチリですが、ホームに戻ってきて対ペルー戦を同じスコアでお返し、2対0で勝利を飾りました。テレビの解説者なんか喜んでしまって、まるで2010年の南アカップに行けそうなことを言っていますが。世の中それほど甘くはありません。2対0の数字が言うほどの差は無く、逆に前半彼らのゴールが決まって1対1になっていれば勝敗は分からなかったはず。それが運ですよと言われそうだが、運で勝ったのなら、喜びもそこそこにすべきでは?

   11月はウルグアイパラグアイ戦が予定されており、喜び、苦しみが続きます。

   一方国内リーグは、最も人気のあるチームの対戦(コロコロ対チリ大学)が国立競技場を満員にしておこなわれましたが、結果は引き分けでした。

3) テニス

ATPのマドリッド大会に参加していたゴンサレスは順調に勝ち進み、3回戦まで進出しました。そこまで世界6位だった彼は、この大会に勝ち進んでこの位置をキープして、年末の世界のトップ8が集まる上海大会の出場権を確保したい所。しかしその後、格下の選手にあっさり負け、彼の順位は来週は8位まで落ちそうとか。世の中甘くはありません。

後2ヶ月のレースを、彼がどう乗り切るか注目ですね。


以上