チリの風  その244  07年10月8日―15日

チリの風  その244  07年10月8日―15日

この週末はスポーツ三昧でした。土曜日は日本人学校の生徒を連れて近所の山で登山教室。 生憎の曇り空でしたが、子供は元気で、降りの道なんか走っていました。で、彼らに付き合った私はクタクタ。

日曜日は天気も私の元気も回復し、マラソン練習。いつもの16Kを2周する、なんと32キロ走。バレリアからそこまでする必要があるのと言われましたが、3時間を目標に仲間と出発。1周目はきっちり走り、2周目も順調でした。ところが26K地点で犬が出てきて私の足をがぶり。そこまで。(これはホンマの話です)その家の女中さんは私が犬を蹴ったから噛んだと言い張ります。私が蹴りを入れたのは事実ですが、道路に飛び出した犬に噛まれて大人しくしているわけは無く反撃してキックを入れたわけです。痛む足を引きずって警察にその報告に行ったら、まず病院に行って診断書を取り、それをもってここにくることと言われました。その報告書は裁判所に送付されるので、その後、出頭呼び出しを待つのが順らしい。じゃ弁護士を雇ってだらだらと長い裁判が始まるわけか。そんな余裕は私にはとても無いと、家に戻ってアルコールで傷口を消毒し、膏薬を塗って様子を見ることにしました。

さて日曜日から夏時間が始まりました。そうそう月曜日は祝日で休み、チリは3連休です。

(政治)

1) チリの政治情勢は刻々と変化していますが、多分チリは今世界で一番面白い動きの国の一つと思います。ベネスエラのチャベスのアホさも楽しいし、アメリカのブッシュの能天気さは抜群ですが、チリのバチェレットの勘違いも底抜けに楽しめます。それをチリの風の読者が感じなければ、これを書いている私の力のなさでしょう。

さて今週の政界の動きですが、何と右翼側の代表格ラビンが私はバチェレットのファンで、もし要請があれば大臣職にもつきますと爆弾宣言。

彼は以前バチェレットの人気が落ちているのは明らか、彼女はラゴスの手腕はないといっていたのですが、それを180度転回させ、「彼女の言うことは信用できる、100%信用できる、まだ30ヶ月もある彼女の任期の間、彼女の政権が上手くいくよう手伝いたい」としたわけです。

彼に続いてあと二人、最右翼のUDI党の人間がこれに追随。喜んでしまったバチェレットは少し前、自分の情勢が悪かったとき、攻撃を少しでも弱めてもらおうと考えて作った右翼との協調路線を破棄し、私はチリをしっかり握っているとコメント。どないなってんのかな?

そのバチェレットは多くの随行員と週末ローマ入りしました。イタリア政府とのネゴの後、ローマ法王の接見を受けるらしい。彼女って、無信仰者だったと思ったが、違ったのかな?それとも政治的宣伝のためにはカトリックの総本山でもどこでも行くのだろうか?

2) 先週の世界の話題になったピノチェット派の大量逮捕を演出したセルダ裁判官ですが、今週、彼はワシントンで勲章を受けたときの演説内容で問題を起しています。その一部はピノチェット一派の財産は武器の購入時の賄賂から来ているかもしれないとした発言で、そんな可能性があるのだったら、一派を洗いざらい逮捕する前に調べてほしい。

また裁判官がこのような巨額の賞金を受けることに是非についても問題になっており、世界の注目を浴びたセルダ裁判官ですが、一転してこのアメリカ訪問が楽しい褒美旅行ではなくなってきたようです。

3) 前ラゴス政権のアキレス腱の一つは国鉄ですが、ドミンゲス総裁が突然辞任しました。その理由は政府の支援が得られないからとなっています。

なにしろ、チリ国鉄は赤字垂れ流しで10億ドルもの巨額の損失をかかえています。

列車などの購入に疑惑がもたれる他、新線が開通してすぐに不通になり、巨額の投資が全く生かされていないのは、

A) 計画に問題があるのか(実行不可能なのに選挙前になると地域住民へのサービスのため新路線の開通をアピールするとか)

B) 実施方法がずさんなのか。(管理能力がない)

C) 投資の一部(大部分?)が汚職の対象なのか?

確かに彼の前のアヘンホ総裁は不正問題で国会訊問されている。

   こういう状態のなかで総裁は政府の援助がなければ国鉄運営は出来ないと、その職務を投げ出したわけ。

   で、前ラゴス政権の時の経済大臣だったロドリゲスがその職につきましたが、さてどうなるかな?

4)   DC(キリスト教民主党)の政治綱領総会が実施されました。民政化してか 

ら初代と2代目大統領を送り出した由緒ある政党ですが、昨今は低迷を続け次の大統領選挙でも勝てそうにありません。それを見越してか、あるグループは与党連合に残ることの是非を問いたいとしています。

   

(経済)

1) この項目のトップニュースはなんと言っても強いペソの扱い方です。いくら何でも1ドル500ペソは割らないだろうと思われていましたが、連日の記録更新で一挙に493ペソまで進みこれは過去8年間で最高。

   輸入品(特に自動車)の価格が下がってきています

   このペソ高と近年にない高いインフレがこれからのチリ経済にどんな影響を与えるか注目されています。

2) サーモンの生産はノールウェイに次いで世界2位のチリですが、海産物全体の生産ではまだ70万トンで世界8位です。因みに1位は中国で3200万トンでダントツ。2位はインド283万トン。3位はベトナムで143万トン。日本は7位で75万トンとか。

これからも海産物の需要は増加する傾向にありますが、自然からの漁獲高の増加は期待できず、重要の増加はすべて人口の産物に頼ることになるらしい。

(一般)

1) たまにトランサンティアゴの件も書かなければいけません。

   しかし安全と思われていたメトロ(地下鉄)で事故が続出。月曜日、第1号線で急ブレーキがかかり満員の乗客15名が将棋倒しで負傷。同じ事故が再度1号線で起こって乗客の間に不信感増加。

また1号線から4号線の乗換えをしようとした乗客が、4号線の終電に乗り遅れ、家に戻れなくなり抗議行動。これなんか運転手が、この電車ではもう他の線への乗り継ぎはできませんとアナウンスすれば防げる問題なのですが。

   1号線は私も毎日使っているので、これからつり革にちゃんとつかまっていなけれななりませんね。

   地下鉄の現在の平均時速は23キロです。バスは当初の計画では平均時速20キロで走ることになっていましたが、実際は17キロ、ピークの場合それが9キロまで落ちることがあるらしい。で、遅いバスをやめて地下鉄に乗客が殺到するわけ。

2) 今年の初めポルトガルでイギリス人の子供マディが行方不明になった事件がありますが、それに関しチリで占い師をしている女性が、子供のいる場所を透視し、その場所をポルトガル大使館に届けました、子供の生死に関しては明言を避けましたが、彼女の両親はその事件に関係していないとコメントしています、21世紀になってもこういう特殊能力者のコメントを大使館は受けるのですね。

3) 原住民の数

いつだったか、日本の方とチリに住む原住民の数について論争したことがありますが、(私の数字が低すぎると言う指摘を受けて)

2006年の政府調査ではチリの原住民(チリではインディへナと呼ばれます) は全人口の6%です。たったの6%です。大半がマプチェで、約70%を占めるらしい。原住民の60%が首都圏、9州それに新設された14州の3州に住んでいます。私の働く会社のリキャップ工場の工員さんの中に占めるマプチェ系の人は約20%です。

心配されるのはたった23%の人間しか自分たちのオリジナルの言語を理解しない点で政府は消えゆく言語の保護対策を考えている由。

それと後からチリに来た移民の子孫との差は目立っており、学歴でも収入でも原住民系は遅れている。ただしその差は以前に比較すると減少しているらしい。収入の場合では原住民系が平均19万ペソ、それ以外は26万ペソという数字が出ている。

それに関連しての数字ですが、1987年に全人口の45%が貧困と記録されていました。それが年々減少し、2003年では19%、2006年は14%となっている。その14%のうちの3%は最低限必要な物資も手に入れられない極貧層に分類されている。

(スポーツ)

1) サッカー

  いよいよ始まりました。ワールドカップ2010年南ア大会の南米予選が。

  一番印象的だったのはウルグアイボリビアを5対0で破った試合で、あまりに一方的なのでボリビアがかわいそうでした。

  さてチリです。意外、予想通りのどちらの書き方も当てはまるかもしれませんが、試合は2対0で負けました。しかしその2点ともフリーキックでアルゼンチンの誇る強力フォワードを完全に封じることに成功しました。もちろんその代償に多数のイエローカードを取られました。つまりチリの守備陣は反則を犯してでもゴールを守ったことになります。しかしその反則から退場者が出てしまい、その後はもう互角の戦いはできませんでした。

  チリに運が無かったので1点も得点を挙げられなかったというべきか、運が良かったのでアルゼンチンの3点目を防いだとも言うべきか。実力の差があったのは確かで来週の第2戦、対ペルーを期待します。

2)スキー

  スキーのシーズンが終わりましたが、今年は約60万人のスキー客がありスキー場は大繁盛したようです。一番人気のあったのはネバド谷とコロラドスキー場で共に13万人、ついでチヤン温泉スキー場で12万人とか。

以上